映画レビュー 『プレイ-獲物-』


近年のフレンチ・サスペンスは面白い上になかなか良く出来ている。エリック・ヴァレット監督による『プレイ-獲物-』も結果的に言えば面白くて見応えのある作品だった。

銀行強盗で服役中のフランク(アルベール・デュポンテル)は、強奪した大金の隠し場所を知りたがる囚人連中から命を狙われている。刑期もあとわずかとなり、愛妻と言語療養中の愛娘との穏やかな暮らしを送ることを夢見ていた。ある日、同房で心を許したモレル(ステファーヌ・デバク)の容疑が冤罪として認められ、釈放されることになった。フランクはモレルに妻子の保護を依頼し、連絡先を交換。その直後、フランクはモレルを良く知る憲兵から「彼は若い女性ばかりを狙う猟奇的殺人犯」であることを知らされ、妻子を守るべく脱獄を決意。脱獄に成功し、モレルの行方を追跡するフランクはモレルが犯した罪まで着せられ、敏腕女刑事クレール(アリス・タグリオーニ)ら警察組織に追われる……。

前半はムショ内での出来事から脱獄劇、後半は広範囲にわたっての追跡劇で楽しませてくれる。

ムショ内での残虐バイオレンスは痛々しい印象が強い。フランクの耳にドライバーを突き刺して負傷させ、喉元を噛みついて血がプシュッと軽く飛び出る、砂壁にハゲ頭をおもいっきり擦りつけて血がベットリ…前半だけでもフランス暗黒映画らしきバイオレンスの見せ場がしっかりと描ききれているのである。フランクが命を狙う囚人連中と大乱闘の直後に刑務官を装って脱獄するが、この脱獄シーンも緊張感を高めてスリリングに描かれているので、観る者にハラハラドキドキを存分に味わわせ、釘付けにさせてくれる。

フランク役のアルベール・デュポンテルの身体を張ったアクションも要注目であり、危険なスタントをしっかりとやり遂げた。多くの車が走行する高速道路をフランクと彼を追うクレールと同僚の男性刑事も突っ走るが、フランクと男性刑事は猛スピードで走行する車と車の間を真っ直ぐに走り続けるが、結局は二人ともボンネットにぶつかって転倒する。他にもフランクが走行する列車に飛び乗るシーン、フランクを助手席に乗せた憲兵が運転する車が警察の検問を突破して警察車両二台をクラッシュさせ、警官隊が銃を威勢良くブッ放して車が大横転という具合に見応え抜群のアクション演出が満喫できる。

ストーリーは二転三転し、観る者を飽きさせないドラマ展開でクライマックスへと流れ込む。エンターテイメント性を発揮させたヴァレット監督の演出力と腕前を高く評価したい。本作ももしかするとハリウッドでリメイクされるかも知れない?!

レビュアー:佐々木 貴之

『プレイ‐獲物‐』ヒューマントラストシネマ渋谷、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国順次ロードショー
配給:エプコット 
PG-12
(C) 2011 / BRIO FILMS – STUDIOCANAL – TF1 FILMS PRODUCTIONS – Tous Droits Réservés

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