【連載コラム】畑史進の「わしは人生最後に何をみる?」 第22回 昨今話題のドラクエメタルスライム脱走阻止Mod使用事件の一連に徒然と 「ゲームメディアって何だろう」「ゲームライターはどうあるべき?」「メディアでやるな馬鹿野郎」 覚悟無きエセジャーナリズムの末路

 

【文・畑史進(編集長Twitter):https://twitter.com/hata_fuminobu

 

実に二年ぶりのコラムになってしまうそうで。最近は毎週の生放送の制作から関連する準備や仕事、映画パンフの仕事や別執筆依頼、レクチャーに時間を追われて正直エンタジャム向けのコラムというのは優先順位が落ちてしまうのは仕方がない。そのため、コラムで言いたいような内容はレギュラー生放送に集約しようと努めている。

 

レギュラー生放送「エンタジャム エンタメ情報局」はあちこちで「見てるよー」と様々な意見や声を聞くようになってようやく軌道に乗り始めているかなと実感している。当初はここまで継続するつもりではあったけど、続くかどうかの問題を懸念していたけどここまで協力的になってくれた夜道雪さん、スタッフには感謝してもしきれない。本当にありがとうございます。

 

長話は置いておいて、早速IGN JAPANとレギュラーライターの渡邉卓也氏がやらかした「HD-2D版『ドラゴンクエストI&II』のメタル狩りMod使用問題」についてSNSから個人配信、ついには対面で意見を聞かれることがあまりに多くなったので久しぶりに説教も兼ねて文章で言及して書き残すことにする。

 

関連リンク:【コラム】HD-2D版「ドラクエI&II」で感じた「メタル狩り」というゲームデザインの風化

 

事前知識が無い人に向けて経緯をまとめると、産経デジタルが運営するWebメディア「IGN JAPAN」が制作しているYouTube番組内でフリーライターの渡邉卓也氏が「(要約)”本作の”レベル上げが古臭い、メタルスライム狩りが面倒。Steam版なのでメタルスライムが逃げないModを使用した」と言ってこれが炎上。

続けてこの発言を補完する形でIGN JAPANの本誌でコラムを掲載。ネット火災にガソリンを注ぐ形になった。これに飽き足らなかったのかTNT火薬でもぶちまけるように「Mod文化とチートの違い」という、大衆から指摘されていることと明後日の方向の内容の動画を投稿して、事態は目も当てられない状況になったというのが大まかな流れ。

野次馬的ではあるけど、いち視聴者としてこのMod問題については当初は「話題作りの炎上でしょ」と思っていたのだけど、流れを追っていくごとに「これもしかしたら編集部の人ら含めて問題であることに気づいてないのでは??」と思うようになって目も当てられなくなってきた。

正直なところ渡邉氏、IGN JAPAN、その他フリーライターに対して「まぁいつかこんなことになるだろうな」とは思ってきた。交流もあるので前々からボヤキ交えて警告してきたのだけどね。この「スクエニとは国交断絶上等じゃい!」スタンスでやってるなら分かるけど、そんな覚悟は無いと思うんだけどなぁ・・・。ましてや編集可能な動画でこれを上げてるってそういうふうにしか見えんし、ジャーナリズムとしての視点かと考えてみたがそうとも思えない。じゃあ渡邊氏が「ゲームラボ」系に今後シフトする覚悟があるのか?と考えても絶対そうはならんだろ。

結論、今回の一連の炎上で彼らにそこまでの覚悟は無かったと思う。今回は渡邊氏がトリガーになっただけで、これまで大事にならなかっただけで十分に誰かがトリガーになる危険性はあった。

 

先に言っておく「渡邉さんだけでなく、お前らここ数年の作品、ゲームメーカーに対する向き合い方、考え方間違ってるよ」

IGN JAPANは米国の大手ゲームメディアIGNのライセンスを産経デジタルが借り受け運営している日本版メディア。元々産経新聞はアニメやゲームの方面にめっぽう弱いこともあって広告を取ってくるにもこのあたりを強化しようとしていた。前身にサンケイスポーツが「ヲタカル」なんてメディアを立ち上げて、わしはゲーム専門でそこにたまたま紹介~抜擢されて3年近く毎週のようにコラムを書いていた。方針を聞いていたのでとにかく”倫理的に間違いのない炎上”に近い内容のコラムを書けるだけ書こうと努めてた。そんなにネタがでてくるわけもないし、原稿料も2,000円ほどと安かったが当時は駆け出しでもあったのでキャリア形成と経験を積む修行として黙々とこなしてた。

そんな「ヲタカル」も成長はしていたものの、あまりにも鈍かった。産経もグループ会社なので別会社の産経デジタルがIGNのライセンスを取ってきたくらいのタイミングで当時のヲタカル編集長からIGN JAPANの存在と紹介を貰った。今でも当時の編集長には頭が上がらん。

それ以降、IGN JAPANとは付き合いができるけど、同時にエンタジャムも兼任。発足当時はすぐにYouTubeで動画制作もしていたから出演者にエンタジャムの関係者を紹介していった。感の良い人なら畑からの導線で気づいていた。冒頭にも書いたように最近はゲーム系映画のパンフレットや生放送番組の制作などで忙しくてIGNに関わることも少なくなって、最近でもTGSくらいになった。

 

思い出が長くなった。それだけ愛着もある。

今回のMod使用問題、Modという非常にTVゲームの歴史における功罪からややこしい物が絡んでいるのと、ライター個人の過去のやらかし疑惑で問題が煩雑になったけどこれらを除いて指摘するなら大まかに分けると次のようになる。

 

1.IGN JAPANのリソース不足、ライター不足による全く意味のない一極集中化

2.ゲームメディアとしての意識、方向性の欠如、迷走

3.ゲームライター、エンタメ系ライターの意味のない意識の高さとエセインテリ化

4.一般視点、基礎学の欠如

5.スクエニだから叩いても良い

 

これくらいかね?項目1や2については他所のメディア様なので考え方はそれぞれ。わしみたいなのがとやかく言うことではない。ここからは大きく3と4の昨今のゲームライターや映画ライターなどのエンタメ系ライターのエセインテリ化に集中して話していこうと思う。

最初に言っておく、わしは「ドラクエⅠ&Ⅱ」まだ遊んでません。もうすでにドラクエⅠとⅡは遊んでるし、それなら他のゲームに時間を割きたいから。いつか空いた時間にプレイするだろうけどという感じ。

最近になってNHKの「ゲームゲノム」なんかでTVゲーム(またはビデオゲーム)というものが一種の芸術として崇め奉られるようになってきた。その視点はあると思うが、なぜかここ近年の「ゲームを語る」系のYouTube動画や文章系のコラムが激増傾向で一定の人気がある。

まず思い出してほしいのが「ゲームは大衆娯楽」であるということ。確かにゲームの制作者は色々なことを考えて作品の中に盛り込んでいるけど、あくまで前提は「娯楽」であるということ。多くの人に難しいことを考えずにプレイしてもらうことを目指して作られている。プレイヤーの「楽しい」「面白かったね」という言葉を貰うために作られている。もちろん娯楽には「怖かった」とか色々ある。感情の刺激が娯楽であり、エンターティンメントである。

「面白い娯楽」を目指して作ったにも関わらず「失敗」した作品も世の中に出てくる。そういったものが「ボンクラ映画」や「クソゲー」といった言葉で揶揄されるわけだけど、わしらエンタメ系のライターというのはそういった世の中に存在するあらゆる作品に触れて大衆に向けて紹介、批評することを生業にしている。いわゆる「人の褌で相撲を取る」ということだ。そうしたなかでも面白い紹介をする人や鋭い視点を持つ人が「人気ライター」として羽ばたいていく。わしの話をすると、こうした「人の褌で相撲を取る」職業であることを重々承知しているので少しでも自分コンテンツを作らないといけないという焦燥感を抱いて現在制作している「エンタジャム エンタメ情報局」や、過去には「ノリミドゲーム放送」などクリエイターとして別の視点から番組の制作をしてきた。

 

さぁそんなエンタメ系ライターたちだが、最近はこうしたゲームの芸術化に迎合するかのように「インテリ化」が進んできた。ゲームを学術的に語りたい人から学芸員かのように振る舞う輩がでてきたのだ。こういった傾向に対して前々から思っていたのだけど、大した内容でもないのにさもそれっぽく語ったり、コラムなんかで小難しく解説して聞かせるのは詐欺師と同じだろ。果ては今回のメタルスライム狩りのように「やっていることが古臭い」と過去の物として一蹴することが美学と思うようなのまででてきたのだ。先に結論付けると、「やっていることが古臭い」といういわゆるマンネリはそれが楽しいと思われる確率が高い、楽しいと思う人の割合が多いから踏襲しているのであって、古臭いという言葉で無くすことはできない。良いマンネリと悪いマンネリはあるが、メタルスライム狩りはドラクエにとってなくてはならない伝統である。寧ろメタルスライム狩りを目標にゲームをプレイしていたらゲームオーバーにならん限り時間をかけた分だけレベルアップしてるのが「メタルスライム狩り」なんだから。

 

ではなんでこういったゲームを知り尽くすして語るべき「ゲームの専門家」がこんな分かりやすいことをすっ飛ばしてしまったのかというと、まさにこれこそが「ゲームライターのインテリ化」の最たる例なのだ。インテリにもなってないエセインテリだと思う。あんなゲーム知ってます、最近はこれが革新的だった。だからドラクエも取り入れるべき。という非常に単純な思考でそこにドラクエへの愛も無ければ敬意もない。「俺知ってるんですよ」「俺が新しい息吹を取り込みましょうか?」をアピールしたいだけになってしまってる。今回の動画に限らずIGN JAPANで「激論」として公開された動画もこういったエセインテリの傾向があって、それを支持する視聴者もいるのだからある意味今回の炎上は視聴者も加担してきたようなもんだと思ってる。

 

ここで「色んなゲームを知っているならなおさらドラクエに新しい息吹を入れることを提唱するのは当然なのでは?」と思う人もいるだろうけど、それは完全に間違ってる。ドラクエも長いシリーズなので踏襲してきた伝統というのがある。それを「新しい息吹」の名のもとにドラクエにそぐわない要素を取り込んだらそれはドラクエではなくなるし、ファンも遠ざかって見限るのではないか?マリオシリーズが長く続くのも、FFやドラクエが長く続いているのもそれぞれの伝統があるからで時代に合わせて少しづつ新しい要素をその作品に合うものを作ってきている。縁もゆかりも無いゲームの要素に感銘を受けたからと言って長いシリーズに対して古臭いという理由でケチを付けて良いわけじゃない。

 

”インテリ化”は一般的な視点も欠如してくるようだ。最近だと「バイオハザード」シリーズや「ファイナルファンタジーⅦ」のリメイクで「ペタペタ黄色いペンキを塗りたくる問題」というのが話題になったが、あれはどんなプレイヤーにも購入してもらった以上、クリアしてもらうために設計しているのであって「全てのゲームはコアなゲーマーのために作っているのでは無い」という当たり前の視点が欠如している現れだと思う。最初にも言ったようにゲームはあくまで大衆娯楽であって一部の人達だけが愉しめれば良いというものではない。多くの人に「楽しい」「面白かった」と言われるために作られている。ごく一部のゲームを普段から遊んで「ゲームの文脈」「ゲームの文法・作法」を知っている人のためだけにゲームを作っていたら、あっという間にゲーム市場は廃れるからこうしたガイドシステムは必要不可欠なのだ。

 

僕も過去にこうした視点を持つこともあったが、「ノリミドゲーム放送」や「ノリケンサンバ」といったゲームを軽く娯楽として遊ぶ一般人が主体となって取り組む番組を制作していたら、一般人はどういったところにゲームを楽しいと感じるのか、不便、不快と感じるのかという視点を学ぶことができた。そういう意味ではエセインテリ化しなかったのはこうした経験の賜物だ。一方で大作ゲームでも「ゲームの文法・作法」に則りすぎて「ゲーマーの常識」に依存したゲームが多いのも実情だ。

 

今回のIGN JAPANの動画のように、一般的な視点からズレまくった、一般的な視点が欠如したエンタメ系ライターがここ昨今、多くなったのはこの界隈でも問題視するべきなのだ。

こうしたズレまくったエセインテリ系のライターが行き着く先に発言がだいたい「古臭い」といった伝統批判、つまるところ「俺わかってるんですよ」を主張したいがための粗探しになってくる。先からも話しているようにエンタメ系ライターは「人の褌で相撲を取る」職業。こうした重箱の隅をつつくことをするのは自由だが、少しでも自分をインテリぶって、物を知っているように見せるために不必要な指摘や提唱をすることをしてはいかんのだ。

もちろんわしもつまらんゲームは今年も数多くやってきたし、個人配信では悪態もついたが、仕事でゲームを紹介するなら「作品のいいところを一つでも多く見つける」ことをしなければならないと思って臨んでいる。これがエンタメ系ライターのあるべき姿ではなかろうか?

もちろん面白くなかったゲームや映画を論じるのは悪いことではない。だけど、悪い作品をただなじるだけなじったところでそこに生産性はなにもない。こういった世間で批判されている作品の紹介をするときには一つでもいいところを見つけてそこを最大限評価することが大切だと思ってこれまでにもそうした発言をしてきた。今でもそのスタンスは変わってない。

 

ゲームの芸術性を語ったり、自分のマウンティングやポジション確保のために「自分気づいちゃったんですよね」「わかってます」アピールに必死になっているとしか思えんのよな、今回のMod使用問題というのは。だから「メタルスライム狩りが古臭い」とか頓珍漢なこと言って、「ドラクエⅠ&Ⅱ」のレベル上げの実態に気付けない事態に陥ったのだ。こんなのメタルスライム系の討伐やってたら別に「ドラクエⅠ&Ⅱ」遊んでなくても気づくけどね・・・。

こういった動画の視聴者も同調するものばかりがコメントを残す傾向にあるので、チャンネル全体のエコーチェンバー化も炎上に加担していると思う。自己啓発系動画とかで良く見られるさも頭の良さそうなこと言ってる出演者の発言をよく理解もせずにわかった気になってる、同じ知能を持っていると錯覚しているのが昨今のインテリ系ゲームチャンネルにいるけど「あれはどうなの?」とは思う。

 

ズレにズレまくったので話を戻そう。

こうした意識高いゲームライター様(エセインテリ)がライトユーザーから剥離しまくった結果が今回のMod使用発言に行き着いたと思ってる。今回に限らず以前から爆弾を抱えていて、「ドラクエ」というよりによって一番でかいコンテンツでトンデモナイやらかしをしてくれたというわけだ。

 

最後に指摘するのが「スクエニなら何言ってもええやろ」の精神がどこかにあったと思う。まぁスクエニことスクウェア・エニックスも世界で指折りの大企業なのでちょっとやそっと適当な文句言ってもそんなにダメージは与えられないし、でかい企業だからこそ批判的な記事や動画を投稿したら注目されやすいというのはあった。面白くないと思うゲームもあったろうし、これはどうなの?的なゲームもあった。

当たり前の話だけど「でかい会社だからといって何言っても良いのか?」とはまた別だろう。別会社だけど『CONCORD』みたいに発売後即サ終みたいなことをスクエニがやらかしたら流石に骨の髄まで徹底的に叩き潰すような批判をしても、ある程度は気まずさで黙認されるだろうけど。

「スクエニだから何言っても良い」はある意味、厨二病的なマインドでもあるのでよほどの作品でない限りは止めたほうが良いんじゃないかと思う。

 

まぁ今回の件で渡邊氏が色んな媒体からそっぽ向かれて起用を見送るなんてこともあるかもしれないのでこのあたりでやめようと思うが、いい加減ゲームに限らずエンタメ系ライターはエセインテリ化を止めて本能のままにゲームを楽しむ心を持ってほしいのと、もう少し外に出て一般の人と触れ合う機会を作ったほうが良いんじゃないですかね?

 

エセインテリの思考から的はずれな批判をするのは結構ですが、その先にあるのは「楽しいと思っている誰かを傷つけている」ということに気づきましょう。

 

【文・畑史進(編集長Twitter):https://twitter.com/hata_fuminobu

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました