『モンスターハンター アウトランダーズ』開発者インタビュー Timiスタジオが手掛けるモンハンとは?

 

モンスターハンター アウトランダーズ』は、CAPCOMのライセンスを受けたTiMi Studios Groupが開発するモバイル向け新作ゲームである。TiMi Studiosは中国の深圳市に本社を置くテンセントゲームズの子会社であり、日本では『伝説対決 -Arena of Valor-』、『コールオブデューティ モバイル』、『ポケモンユナイト』といった作品で知られている。

本作『アウトランダーズ』は東京ゲームショウ2025で初めて一般試遊としてお披露目された。インタビュー後に筆者自身もプレイし、これまでに遊んだいくつかの「スマートフォン向けのモンスターハンタータイトル」と比較して、モンハンらしい要素の再現度が高いことに驚きを感じた。キャラクターデザインには、本家『モンスターハンター』シリーズでは見られない中華系デザインも見受けられ、新鮮な印象を受けた。試遊の様子はエンタジャムのYouTubeチャンネルで公開されている。

今回、TGS期間中に本作を手掛けたTiMi Studio Groupのプロデューサー黄冬氏と、カプコンのプロデューサー砂野元気氏にインタビューを実施した。

左:黄冬氏
右:砂野元気氏

 

インタビューでは、中国における『モンスターハンター』の人気や、その熱意に基づく高い再現性につながる話を聞くことができた。

  1. Timiスタジオが作る『アウトランダーズ』とは?
      1. ■ 今作の開発に至った経緯をビジネス的な観点も含めてお話いただけますでしょうか?
      2. ■ 中国で『モンスターハンター』はどれほどの人気なんですか?
      3. ■ 『モンスターハンター』といえば「モンハン持ち」などコントローラー操作がメインですが、コントローラーの対応は考えているのでしょうか?
      4. ■ ユーザーの気になるところとして課金のシステムですがこのあたりはいかがでしょうか?
      5. ■ 今回カプコンさんとのやり取りの中で「ここはやめて欲しい」などブランド方針や保護などのお話をお聞かせいただけますか?
      6. ■ 今作の冒険者たちというのはどういう存在なのでしょうか?
      7. ■ 『モンスターハンターライズ:サンブレイク』でヒノエやミノトといったキャラがクエストに参加しましたが、イメージとして彼女らをプレイヤーが操作できるようになったという感覚で良いのでしょうか?
      8. ■ 少しキツイ質問ですが、スマホでは『モンスターハンターNow』やSwichでは『ライズ:サンブレイク』、PS5・PCでは『ワイルズ』と現行で様々なモンハンタイトルが遊べるわけですが、自社IPとの競合をどう考えているのでしょうか?また、本作が持つプレイヤーへの訴求力となるものはなんでしょうか?
      9. ■ 今作のモンハンは非常に新鮮な中華風テイストですがこのデザインの意図などを聞かせてください
      10. ■ 今後、他の『モンスターハンター』作品どうしでのコラボも予定しているのでしょうか?
      11. ■ 『モンスターハンター』のアイコンにもなってるアイルーですが、今作登場するその他のオトモの彼らにどういった役割を与えているのでしょうか?
      12. ■ 一つリクエストさせてください、ラオシャンロンの復活を!
      13. ■ 最後に今後の意気込みを仰ってください。

Timiスタジオが作る『アウトランダーズ』とは?

■ 今作の開発に至った経緯をビジネス的な観点も含めてお話いただけますでしょうか?

砂野氏:2022年に、カプコンとTiMi Studiosが提携して『モンスターハンター』のモバイルタイトルを制作することを発表しました。その前の段階で、TiMi Studiosさんからサバイバル、クラフト探索の要素を取り入れた『モンスターハンター』タイトルを作ってはどうかというご提案をいただきました。企画としては、まず世界観が面白いこと、TiMi Studiosさんが熱心な『モンスターハンター』ファンであったこと、そしてカプコンとしても、多くの方が持つスマートフォンをプラットフォームとし、特に中国、アジア地域にアプローチすることで『モンスターハンター』IPを拡大できるという点でプロジェクトをスタートさせました。

■ 中国で『モンスターハンター』はどれほどの人気なんですか?

黄冬氏:詳細まで把握をすることが難しいのですが、間違いなく非常に人気のある作品です。その理由は、『モンスターハンター』が提供するゲーム体験が、この世の中に他に類を見ないものだからです。

 

■ 『モンスターハンター』といえば「モンハン持ち」などコントローラー操作がメインですが、コントローラーの対応は考えているのでしょうか?

黄冬氏:現在、私たちが想定しているのはスマートフォンでの操作ですが、ユーザーさんからも多くの要望をいただいております。今後、検討はしたいと考えています。バーチャルボタンによる操作であっても、『モンスターハンター』を遊んでいるという再現度は高めているつもりです。

 

■ ユーザーの気になるところとして課金のシステムですがこのあたりはいかがでしょうか?

黄冬氏:このゲームはF2P(フリー・トゥ・プレイ、基本プレイ無料)です。課金に関しては、シーズンパスやパック、スキン変更などを想定しております。開発中の内部ではシーズンパスのような制度を「予約カード」や「シーズンカード」と呼んでいますが、そうした課金のシステムに関しては、最終的にどのようなものを取り込んでいくかユーザーさんの意見を取り入れていきたいと思います。 その前に、我々が取り組む最も基本となる方針として、まずIPの設定をしっかりと定め、そしてユーザー様の想いにしっかりと耳を傾けて運営していくことが大切だと考えています。

■ 今回カプコンさんとのやり取りの中で「ここはやめて欲しい」などブランド方針や保護などのお話をお聞かせいただけますか?

砂野氏:TiMi Studiosさんは『モンスターハンター』ファンが多く集まっているチームなので、ある程度前提となるオファー(提案)については把握していただいています。

本作は、クラフトやサバイバル要素など、これまでのシリーズにはない要素を多く盛り込んでいるタイトルです。そのため、新しい要素を取り入れるにあたって、どこを主軸に置くかを一緒に考えました。

『モンスターハンター』が『モンスターハンター』である根本の理由、すなわち「モンスターを狩って素材を手に入れ、装備を作って、また新しいモンスターに会いに行く」という当たり前の根本の部分はぶらさないようにしています。

そして、アートワークの部分です。今回の「冒険者」という新しいキャラクターがたくさん出てくるのですが、それらのキャラクターの衣装や装備は新しく描き下ろしていただいています。その際、世界観として、狩猟で得た素材について「こういった使い方はしません」といった点や、動き方一つにしても「こういった動き方はしません」といったように、20年築き上げてきたベースの考え方をお伝えし、修正などを行っていただきました。

基本的には多くのご提案をいただき、我々が気をつけていることや、ゲームとしてこの方が面白いといった協力関係でゲームを作っています。

■ 今作の冒険者たちというのはどういう存在なのでしょうか?

砂野氏:従来の『モンスターハンター』は、プレイヤーが「ハンター」と呼ばれる人たちを操作して狩猟生活を送りますが、今作の主人公やプレイアブルキャラクターはサバイバルを行い、本来ハンターにはできないクラフトという新しい技能や自分で装備を作ることを考えた結果、「ハンター」という枠組みがない方が設定しやすいと考えました。そのため、本作に登場するキャラクターたちは「ハンター」ではなく「冒険者」という形で呼ぶことになりました。

タイトルの『アウトランダーズ』は「未知なる地へ向かう冒険者たち」という思いを込めています。

もちろん、これまでと同様に自分のアバターとなる「主人公の冒険者」が存在し、キャラカスタマイズをして好きな武器や防具を選んで冒険します。本作の特徴としては、その他にも個性的な冒険者キャラが多数登場し、出会うことになりますが、こうしたキャラクターたちもプレイアブルキャラとして操作できるようになります。ただし、他の冒険者キャラは特徴づけの意味もあり、得意な武器種が決まっていて変更ができません。そして、3つの狩猟タイプ、いわばロールのようなもの(攻撃が得意、サポートが得意など)が設定されています。

■ 『モンスターハンターライズ:サンブレイク』でヒノエやミノトといったキャラがクエストに参加しましたが、イメージとして彼女らをプレイヤーが操作できるようになったという感覚で良いのでしょうか?

砂野氏:そうですね、イメージとしてはそれに近いです。『ライズ』における盟勇だったり、『フロンティア』のレジェンドラスタのような、狩猟を手伝ってくれるNPCハンターがいましたが、そういった出会うと狩りに付いて来てくれるキャラクターを、さらに操作もできるといった感じです。

 

■ 少しキツイ質問ですが、スマホでは『モンスターハンターNow』やSwichでは『ライズ:サンブレイク』、PS5・PCでは『ワイルズ』と現行で様々なモンハンタイトルが遊べるわけですが、自社IPとの競合をどう考えているのでしょうか?また、本作が持つプレイヤーへの訴求力となるものはなんでしょうか?

砂野氏:コンシューマー作品も含めて、『モンスターハンター』作品はそれぞれコンセプトを定めたうえでゲームを制作しています。『ワールド』では最新のゲームハードで表現できる最新世代の『モンスターハンター』を作ろうというものであったり、『ライズ』であればSwitchにおいて縦横無尽に動き回るライトなハンティングアクションを作ろうというものでした。『NOW』については私がプロデューサーなのですが、「位置情報×AR」という組み合わせで作れば面白いものができるだろうと思って制作しました。

今作『アウトランダーズ』はクラフトやサバイバルといったところにコンセプトを定めており、そこに面白みを感じてもらえるユーザーさんにお届けしたいと考えています。より多くのスマートフォンをお持ちの方に『モンスターハンター』を触っていただきたいというのが目標ではあります。

■ 今作のモンハンは非常に新鮮な中華風テイストですがこのデザインの意図などを聞かせてください

黄冬氏:まずキャラクターをデザインするときの基本方針を3つ定めました。一つは、今作に登場するミドリというキャラクターは、リオレイア素材をベースにしたデザインを取り込んでいます。次に、キャラクターに対して独自の個性を持たせています。その中には和風のデザインも入れています。そして、グローバルに展開することも踏まえて、キャラクターの設定においても様々な世界の文化の要素を考慮に入れています。

砂野氏:ミドリは特にアジアンテイストな衣装になっていますが、キャラクターごとに印象も異なります。キャラクターデザインについてお話させていただきますと、本作『アウトランダーズ』は、遊びとして幅を広げられたら良いなと思っています。IPとして守るべき部分はあっても、従来のトラディッショナルな『モンスターハンター』にガチガチに乗っ取るべきというわけではなく、ユーザーさんに違和感を覚えさせないような守り方をしつつ、少し今までなかったような印象を出す部分を試すうえでも良い機会だと考えています。

キャラクター自体もとても可愛らしいですし、いろんなキャラクターと出会って愛着を持ってもらうゲームにもなっていると思います。

■ 今後、他の『モンスターハンター』作品どうしでのコラボも予定しているのでしょうか?

砂野氏:確実なことはリリースをしてからになりますが、タイミングを見てIP全体として色んな作品を盛り上げることはしていきたいと思っています。

 

■ 『モンスターハンター』のアイコンにもなってるアイルーですが、今作登場するその他のオトモの彼らにどういった役割を与えているのでしょうか?

黄冬氏:アイルーは皆さんにとってなくてはならない存在です。今作のアイルーは同行する冒険者と協力して同行する冒険者と協力して相手に高いダメージを与える技を持っています。今作新たに登場するオトモのルタコンクラフトの魅力を最大限に引き出す役割を持っています。ルタコンは冒険者が使う様々な道具やギミックを作ったりもします。

 

砂野氏:今作のクラフトは、家や施設を作って素材集めに活用したり、今回の試遊版にもあるように、ジップラインや上昇気流を使って、そこからグライダーで飛べるようになったりといった移動に役立つギミックを使えるようになったら、狩猟の前に様々な遊びが作れるだろうと思ったんです。そういった今作ならではのクラフトを使ったゲーム体験を制作してほしいとカプコンからTiMiさんにお願いしました。

イメージとしては、バリスタや撃龍槍、柵などが任意のタイミングで作れるようになったら、これまでの狩猟体験とはまた違った狩り心地を感じてもらえるのではないかと思っています。

もう一体、バフをかけてくれるサポートオトモとして、鳥のようなデザインをしたメドリーという新オトモキャラクターを追加しました。今回のオトモアイルーは、そうしたクラフト、サポート、アタッカーといったサポーターの中でも攻撃に特化したオトモとしてハンターをサポートしてくれます。

■ 一つリクエストさせてください、ラオシャンロンの復活を!

一同笑

砂野氏:今でも復活を望む声が多いですね!

 

■ 最後に今後の意気込みを仰ってください。

黄冬氏:今作の制作は我々にとって大変光栄なチャンスだと思っています。私も熱烈な『モンスターハンター』ファンとして、本作を通じて多くの人に『モンスターハンター』の魅力を伝えたいと思っています。これは素朴な気持ちとして、今後も頑張っていきたいと思います。

砂野氏:今作『アウトランダーズ』は、『モンスターハンター』として大事なところは抑えています。今まで「モンハンやろうかなぁ?」で止まっていた人に向けて「スマホだし面白そうだから遊んでみよう」という試みを入れています。加えて、これまでのファンの人にも安心して『モンスターハンター』として楽しんで遊んでいただける物になっているので安心していただけたらと思っています。

ただし、かなり新しい試みを入れているので、11月のクローズドベータテストを予定しています。是非皆さんのフィードバックを通して、我々の一方通行になっていないか、楽しんでもらえているかの指標にさせていただきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました