本日公開!史上初の全編ゲキメーション長編映画『バイオレンス・ボイジャー』宇治茶監督インタビュー


監督・脚本・編集・キャラクターデザイン・作画・撮影の6役を担当し、3年の歳月を掛けて本作を完成させた宇治茶監督による脅威の最新作『バイオレンス・ボイジャー』がいよいよ本日5月24日から全国公開がスタートする。

日本の山奥で暮らすアメリカ人のボビーが、親友のあっくんと共に隣村に住む親友のもとへ遊びに行く途中の山で、体感型アトラクション「バイオレンス・ボイジャー」という看板に目を惹かれ、娯楽施設に足を踏み入れるという導入から始まる。施設の表向きは簡素な遊園地なのだが、実際は恐ろしい所で、ボビーは死力を尽くして施設からの脱出を図るというストーリー。

映像は一見するとテレビ東京の深夜に放送されている深夜アニメ『闇芝居』の様にも見えるが、3000枚にも及ぶ劇画テイストのイラストを使って、カメラによる撮影、編集を行うという完全なアナログ制作で行われ、随所に機転を利かせた演出が施されている。宇治茶監督はこうした「ゲキメーション」というジャンルで前作『燃える仏像人間』も手がけ、2013年度第17回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門優秀賞を受賞するなど、これから期待される新進気鋭の監督として注目が集まっている。

<ゲキメーション>とは?
ゲキメーションとは、アニメーションと漫画(劇画)を融合した表現方法。 作画した絵を切り取り、その原画をペープサート(紙人形劇)のようにカメラの前で動かし撮影していく。1976年のテレビアニメ『妖怪伝 猫目小僧』(原作:楳図かずお)で広く認知され、その後、電気グルーヴの「モノノケダンス」(’08)のPVで採用される。『バイオレンス・ボイジャー』は、世界初にして唯一の<全編ゲキメーション映画>となる。

<取材・文 / 畑史進>

監督・脚本・編集・キャラクターデザイン・作画・撮影の6役を担当した宇治茶監督

—この作品を作るに至った経緯を教えていただけますか?

宇治茶:今作でもプロデュースしてくださっている安斎レオさんが、フィギュアのプロデュースをされていたんですが、当時その一つに「もえぶつ」という女の子と仏像が融合したようなフィギュアを作っていたんです。安齋さんは大学卒業後にバイトで生活していた僕に「もえぶつ」のフィギュアを映画化したいんだけど」と声をかけてくれたのが最初で、そこから僕はこの世界に入りました。

—今作のような「ゲキメーション」というのはニッチな作風ですが、僕らインターネット創世記から見ている側からすると一種のフラッシュアニメーションにも通じるものがあります。これもその系譜を引いていたりするのでしょうか?

宇治茶:僕は大学ではデザイン科にいたんですが、デザインの勉強はほとんどせずにイラストばかり描いていたんですが、もともと映画が好きだったこともあり「映画が撮ってみたい」と思うようになったんです。最初は実写でやっていたんですが、大学の卒業制作が近づいたときに自分のイラストを活かす映像の制作手法はないかなと思っていたんです。そこで色々インターネットを見ているうちに、昔、楳図かずお原作のゲキメーションを取り入れたTVアニメ『妖怪伝 猫目小僧』という物があるのを知って、その同時期に深夜アニメ『墓場鬼太郎』のOPで使われていた電気グルーヴの『モノノケダンス』のPVが発表されて、独学で勉強して2009年に卒業制作として提出しました。

—この手の作風はある意味テレビ東京の深夜アニメ『闇芝居』がメジャーにして地位も確立されてきましたが、この作品はそこに更なる起爆剤になるインパクトがあると思いました。

宇治茶:ありがとうございます。よく似てると言われるんですが、あの作品は多分コンピューター上で動かしているのだと思うのですが、『バイオレンス・ボイジャー』は手書きで作画した絵を切り取り、カメラの前で手を使って動かしているので実際には実写映像に近いと思います。

—特にこの作品は『ロボコップ』をオマージュした部分が随所にあって、好きなんだなぁと思いました。

宇治茶:はい、ポール・ヴァーホーヴェンは『ロボコップ』もそうですが、『スターシップ・トゥルーパーズ』なんかも本当に好きですね。

—バイオレンス描写もかなり豊富なんで、そうなんじゃないかなと思っていました。

宇治茶:本当はもっと入れたかったんですけどね。作画、撮影、編集、とほとんどの作業を一人で行っていたこともあり、全ての要素のバランスを取るのに精一杯で、グロ描写ばっかりに中々力が入れられなかったということはありましたね。もっと時間があれば手を加えていたかと思います。

—途中出てくるプールは本物の液体を使われたんですか?

宇治茶:あれは色んな要素を混ぜていて、水を張ってそのまま撮影したものもあれば、カットによっては、池の水面を撮影したものを合成したりしました。合成する場合も、その素材は実際にカメラで撮影したものを使うということを、自分の中でのルールとして制作に臨んでいました。

—他にも自分を育ててくれた作品って何かあったりしますか?

宇治茶:そうですね・・・色々ありますが、『バッド・テイスト』『ローリング・サンダー』『ジュラシック・パーク』は影響が強いですね。

—この改造された後のデザインですが、最初見たときにペガッサ星人とメトロン星人、ガッツ星人を足したような感じがしたんですが、実際のところどうなのでしょう?

宇治茶:実は昔持っていたMDコンポの形がこんな感じで、これを基本にデザインしていったんです。あと、僕はマンドリルっていう猿が怖くて、そのカラーを採用したという感じですね。脚本も2回変わっていまして、最初は動物園の中の出来事ということから始まっていて、二つ目の脚本では、USJにある『ジュラシック・パーク』や『ジョーズ』のように、アトラクション内をボートで回るという構想だったんです。それがタイトルの「ボイジャー」という部分に残っています。

—途中にギロンっぽいのが出てきて、『ガメラ』も好きなんだなぁと思いましたよ。

宇治茶:オタクってほどではないんですが、あの辺のガメラが好きなんです。銃だと思ったらバリカンだったりとストーリーの流れが好きです。

—この映画を観ていて感じたのが、ウンコが我慢できなくなる悲哀というものを感じたんです。というのも、序盤にウンコを我慢していた主人公がトイレで用を足そうにも今度は中々放り出すことができない。かと思ったら今度は我慢しようにも抑えることすらできずにぶちまけてしまうシーンがあって、すごい角度から人間から改造生物に変貌されたことへの哀愁を感じたんです。

宇治茶:そこまで意識はしていなかったですね。それこそ『ロボコップ』みたいに自分の肉体を第三者に無理くり弄くられる気持ち悪さを作りたいと思っていたんです。

—トイレのシーンで気になったのは、和式便所で用を足すときにこの子はオチンチンをおさえていないんですよね。我々男性はウンコをするとき自分のホースがあらぬ方向に向いてしまってトイレを汚すことが無いように気を使ってオチンチンコントロールをするわけじゃないですか、この子はそれをしていなかったのは外国から来た子だからそれがわからなかったのかなと思ったんです。

宇治茶:これもそこまで意識はしていなかったですね。悠木さんはあの時のシーンでは顔色一つ変えずに気張ってくださいました。

—やっぱりプロですね。アフレコのときはどの様な感じでしたか?

宇治茶:アフレコのときはまだ映像が完成していなくて、イメージイラストと僕の説明で演技をしていただくという感じでした。逆に僕が声優さんの声を聞いて映像や作画を作ることができたので、キャラクターに引っ張ってもらえてすごく助かりました。

—続編は作りたいと思いますか?

宇治茶:結構言われているんですが、僕の中では完結していますね。テーマがどこかに行ってしまいそうに感じますね。

—次に全く新しい作品を作るとしたら、どの様な物にしたいですか?

宇治茶:考えてはいるんですが、まだゴチョゴチョとまとまっていなくて、でもゴア描写やグロ描写は突き詰めていってみたいですね。逆に全然違う方向で裏切ってみたいなとも思います。

—宇治茶と名乗るのはどうしてなんですか?

宇治茶:もともと出身が宇治市で、今は少し離れてしまったんですがこの作品を作っているときも実家の宇治だったんです。

—この作品を作っているときに生活とか制作環境はどんな感じだったんですか?

宇治茶:制作費はもちろん頂いていたんですが、当初2年で完成させる予定が3年もかかってしまい、色々あったんですが、実家で作画と撮影、編集が完結できるというのはありがたかったですね。

—企画とかも吉本さんに売り込みに行かれたのですか?

宇治茶:『燃える仏像人間』が2013年度第17回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門優秀賞を受賞した際に、安齋さんが話を持ち込んで下さいました。

—ダウンタウンの松本人志さんも出ていらっしゃいますが、完成版の感想とかは聞いていますか?

宇治茶:実はいただいていなくて、キャストの方もまだ多分観ていないんじゃないかなと思うんです。ただ、松本さんは『燃える仏像人間』について面白いと言ってくれて、また何か協力できることがあったらと言って下さったので、今作にも出演していただくことができました。

—松本さんの映画も特殊で、ある種のジャンルムービーだと思うんですが、松本さんが脚本を書いて、宇治茶さんが映像を手がけるとしたらどんな物が作ってみたいと思いますか?

宇治茶:どういうものでしょうね(笑)。それこそ昔の『きょうふのキョーちゃん』とかの系列もいいですよね。あとは『ビジュアルバム』も好きなのであのような雰囲気の作品もいいかもしれませんね。

—この映画は他映画のネタが豊富で、ぜひコメンタリー上映会というのをやってほしいなと思っているんです。他にもどの様な映画のネタが入っているのか教えていただけますか?

宇治茶:そうですね、本当に何度か見直して改めて自分で気づくこともあるんですが、この銃が壁に陳列されていて、選ぶシーンなんかは『コマンドー』や『キングスマン』とかそういうワクワクする感じをやりたかったですね。ビデオでの作戦指示も『スターシップ・トゥルーパーズ』の影響をモロに受けていますね。

—年齢も32歳とお伺いしたんですが、70年代から80年代に対する強いあこがれも感じました。この作品にはその時代にあった「イルカ人間が攻めてきたぞ」のような近未来の想像がそのまま絵として動き出したようなテイストで、あのとき想像された未来の方が、僕らの想像した未来より未知感やワクワク感が強かったように思えます。

宇治茶:「なぜなにシリーズ」とか石原豪人さんのイラストが大好きで、昔はめちゃくちゃ怖かったんですが、今になるとかっこよさがわかってきたんです。あとは諸星大二郎さんも好きで、似ている部分はあるかもしれないですね。

—黒電話とかが出てきましたが、この作品の舞台設定は何年代だったんですか?

宇治茶:僕らが生活してきた90年代の雰囲気を意識したんですが、特別設定はしていないですね。ただ、黒電話とiPadが併存しているんで不思議な世界ですよね(笑)。

—これからこの作品を観る方へメッセージをお願いします。

宇治茶:前作は意味がわからないとか、気持ち悪いとか色々言われていたんで、今作は自分の中では色んな方に観ていただけるようにエンタメ性を重視して作りました。PG12とついていますが、それでも老若男女幅広い人に見ていただければと思います。ホラーやグロの要素も豊富にあるので、そういった作品が好きな方にも観ていただきたいです。

—ありがとうございました!

『バイオレンス・ボイジャー』
5月24日(金)より、シネ・リーブル池袋ほか<衝撃の>ロードショー!
配給:よしもとクリエイティブ・エージェンシー
(C)吉本興業
公式サイト:http://violencevoyager.com

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