『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』入江悠監督&山田真歩・安藤サクラ・桜井ふみ・増田久美子・加藤真弓インタビュー


夢をあきらめたくない人は必見、夢をあきらめた人はもっと必見の青春映画!!



夢と現実の距離が果てしないニートラッパーの緩やかな葛藤の日々を描き、ヒップホップ好きはもちろん、ヒップホップに興味がない幅広い年代の観客も巻き込んでのヒットとなった青春映画『SRサイタマノラッパー』。



その高い評価は、2009年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭のオフシアターコンペ部門でグランプリ、韓国のプチョン国際ファンタスティック映画祭ではNETPAC賞(アジア映画最高賞)、「映画芸術」ベスト映画第6位、映画監督協会新人賞(入江悠監督)、毎日映画コンクール音楽賞ノミネート(作曲家岩崎太整)など、国内外を問わない受賞歴が物語る。
また観客からの支持も絶大で、渋谷ユーロスペースで3日間の満員立見を記録、池袋シネマ・ロサ初日レイトショー歴代動員記録1位といったレコードも樹立。
監督自らが配給も手掛けるという不屈の行動力で、今年4月に新宿バルト9にてリバイバル上映が実現。6月には小説『SRサイタマノラッパー』(太田出版)が出版されるなどまだまだ快進撃中だ。



そんな『SR』に続いて、ゆうばり映画祭とスカパー!の制作支援金を受け完成した待望の第2弾『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』。いよいよ6/26(土)、新宿バルト9、横浜ブルク13(神奈川)、ユナイテッド・シネマ浦和(埼玉)を皮切りに全国で順次公開がスタートする!


★地方でくすぶっている人を描きたい

―今回の主人公は群馬の女子ラッパー5人組。メインキャラクターのアユムは、伝説のトラックメーカー・タケダ先輩のライブや、自分達の高校の文化祭ライブの思い出を胸に、淡々と実家のこんにゃく問屋を手伝っています。埼玉のラッパーたちの乱入でヒップホップへの熱い気持ちを再燃させるアユム。そんな姿がなにやら遊んでいるとしか見えない父親など、生活と夢のギャップという誰もが抱える問題を描いています。



入江
:基本的には、コツコツ生活している人との葛藤を描きたいです。そういう人に対して、勝つとか負けるとかではなく、どう両立できるんだというところを描きたかったですね。地方でくすぶっている人をテーマにして、どんどん東京から離れていきたいんです。東京のラッパーだと普通になるので(笑)。



―主題歌がキャッチーで、一度聴いたら忘れられない♪シュ!シュ!シュ!のフレーズと、”チェンジなんかしないわ”って歌詞が印象的ですが、最初からこのイメージで依頼されたんでしょうか?



f.jpg入江
:そうです。結構時間かかりましたね。作詞の上鈴木伯周、上鈴木崇浩、作曲の岩崎太整には会って何回も駄目出しをして、完成まで何ヶ月もかかりました。
映画をご覧いただけると分かるように「チェンジなんかしないわー」と言う歌詞には、登場人物たちの「夢をあきらめない」という想いと「昔の仲間と一緒にまたやりたい」という想いがあります。あと自分の想いとして、映画製作を続けて行く中で、条件や制約など状況は変わりますが、10代で映画を志したときの思いは忘れないぞ、という意志を込めています。



―今回の魅力は個性豊かな5人の女子ラッパーですが、キャストはどういう風に選びましたか。



入江
:普通に見て、歌えそうだなって人を選びました(笑)。個性的な5人が集まったんで、キャラクター作りにも反映しました。



★やってみないと分からないラップの難しさ

―5人組のみなさんは、ほとんどの方があまりヒップホップを聴いたことがなく、ラップ初挑戦だったとのことですが、これまではラップに対してどんなイメージを持っていましたか。



山田真歩:(女子ラッパーチーム・B-hack再結成に燃える27歳・アユム役)
最初は少し恥ずかしかったですね。入江監督にはカラオケになって欲しくないって言われました。単純に型に乗せたり、真似てただ音程を合わせるのではなくて、その人らしさを出すようにって。最終的に歌うというよりしゃべるに近い、しゃべる時のリズムに乗せるって分かったら、ちょっと楽しくなった。(笑)
―ちょっとですか。
苦しかったです。ほとんど。(笑)でもラップは面白かったですね。



安藤サクラ:(実家の温泉旅館の借金の後始末で東京から群馬に戻ってきた27歳・ミッツー役)
撮影し終わってもいまいちラップが何なのかよく分らなくて。でも簡単に分かるものではないんでしょうね。ちょっとずれると「違う!」。そういう厳しい訓練を受けまして(笑)。身体的に制限されるっていうのが面白かったですね。『サイタマノラッパー』を初めて見た時に、ラップの中に独特のピンと張った細い糸があるように受け取りました。それが撮影でも面白く感じられたのが良かったし、勉強になりました。



桜井ふみ:(恋人が経営するソープランドで働く27歳・マミー役)
私もすごく苦労しました(笑)。実際の自分とラップに乗せている大きく見せたい自分のギャップが面白いですね。普通の音楽ならよく恋や愛がテーマになりますが、「もっと上に行ってやるよ!」っていうような野望や夢、欲が乗っかる音楽だからこういう映画になるのかな。元気が出ます。



加藤真弓:(男気溢れる性格で先輩に対しても忌憚ない意見を吐きまくる25歳・クドウ役)
一作目の主人公たちは全然かっこ良くないじゃないですか。ヒップホップってかっこいいけどかっこ良くない。相通じるところがあるかと思いました。



増田久美子:(父親は市会議員。ダンサーを目指す25歳・ビヨンセ役)
言葉やリリックが輝いていて頭がいいな、凄いなって思いました。映画をやったことで、初めてヒップホップというジャンルに触れて枠が広がったことが楽しかったです。



安藤
:ラップの練習始まるって聞いて、行ったら超スパルタで厳しくて。そんな簡単なもんじゃねーぞって(一同爆笑)



―リズムに乗せるのが難しかったってことですか。



安藤
:もう!そんなのはやってみないと分かんないですよ!!(一同爆笑)一生ラップはやらないって思いました。(爆笑)今は逆に時間を置いたら、ちょっとやりたいなって思ったりしますけど。



★「おかえりなさい」に大感激のゆうばり映画祭
―お披露目となったゆうばり映画祭では、飛行機が濃霧で遅れて当初予定されていた列車での歓迎セレモニーがなくなって、ゲストはバスで会場入りしましたが、いかがでしたか。



加藤
:もう誰も待ってらっしゃらないだろうなって思っていたら、たくさんのみなさんに「おかえりー!」って迎えられて興奮しました!映画を愛している人がこんなにもいる、こんなに盛り上がってくれるところが日本にあるのかって。あの光景が忘れられないですね。



山田
:大人の文化祭みたい。手作り感覚。大人になってもこうやって楽しんでいいんだ!って(笑)。親近感がわく映画祭でした。



増田
:「揚げたてよー」っておイモをすすめられたり。ホント、「お母さん!」って呼びたかったくらい。暖かい故郷的な匂いがしました。



安藤
:イモをもらっていたとは…。(一同爆笑)どうりで後ろのグループが何か食べながらいい匂いさせて入って来たと思った!映画祭のことは小さい時から聞いたことがあって、大人たちが酔っ払う映画祭だって印象を持っていましたけど、実際この歓迎なら酔っ払うなって思いました。



桜井
:バスから見ると白い雪の中に大きな黒いものがあって。よく見ると人だかりで、こんな寒い中を待っていてくださったんだって思うと嬉しくなりました。「おかえりなさい」っていい言葉ですね。温かい牛乳をいただきました。



安藤
;えー!?何それ。ショックー!(笑)


 


★女子5人組VS入江監督

山田
:入江さんは男子校出身なんですけど、女子校のこういうノリはどうでしたか?



安藤
:実際見てどうでした。がっかりした?



入江
:がっかりはしません。そんな歳じゃないんで(笑)
でも、昔はみんなで女子校の中どうなってんだ?なんて妄想する力を成長させてましたね。田舎の男子校で、対になっている女子校があったんですけど、女子校のプールの水が文化祭のオークションで出たりして。



一同
:ギェー!!(爆笑)。



山田
:ホントに妄想ありきだね。そういう不健全な(笑)。


―そういうところで想像力を鍛えて今に至る、と。



入江
:ええ(笑)。



山田
:女子が騒ぐにつれ、入江さんがブスッとしていくんじゃないかという噂があって。静かに妄想させてくれということだったのか(笑)。



入江
:(笑)。



★『釣りバカ日誌』のバトンを受け取ったつもりでいます!

―プログラムピクチャーの『男はつらいよ』『トラック野郎』『網走番外地』といったシリーズものがお好きだそうですが、その魅力は?
入江:十代でサイタマノラッパーみたいな生活をしていた時によく観てたんですよ。ダメな日常が続いていく中で、また次を見る喜びがシリーズにはあるんです。観終わるとすぐビデオレンタル屋に走って借りて行く喜び。寅さんも最終作から逆に観ていったんですけど、どんどん渥美さんが元気になっていって(笑)。
マキノ雅弘監督の『次郎長三国志』もそうですけど、昔はそういう映画が日本にたくさんあったじゃないですか。職人技があれだけ炸裂している時代ってうらやましいなって思います。たまに映画館で上映があると毎回行っちゃいます。臆面もなく自分の作品のリメイクをするところなんか、面白いですね。


―ブログを拝見すると『SR』シリーズで、47都道府県シリーズへの展開の構想があって、20作目くらいでゆうばりを舞台にしたいことですけど。

入江
:できれば実現していきたいですね。わりと本気で思っていますよ。冗談と取られがちですけど。
『釣りバカ日誌』のシリーズが終ったんですけど、勝手にバトンを受け取ったつもりでいます(笑)。


―次回は男子ラッパーに戻りますか?

入江
:まだ考えてないです。各地の美味しいものが食べられたらいいなって。あとは名産品とか。今回は群馬なのでダルマがこれでもかっていうくらい写りましたけど。●●と言えばなんだろー。そういうのを考えるのも楽しみですね。

インタビュー・記事:デューイ松田

『SRサイタマノラッパー2~女子ラッパー☆傷だらけのライム~』
6月26日(土)、新宿バルト9ほか全国順次ロードショー


<ストーリー> 
かつて群馬の山奥で、ヒップホップ音楽に憧れた女子だけのラップチームが結成された。しかし当時、女子だけのラップチームはあまりに早すぎたし、たいして人気になることもなく、彼女たちはいつのまにかバラバラになった。やがてヒップホップ自体のブームも過ぎ去り、若かった彼女たちも今はそれぞれ地味な日常を送っている。ところが彼女たちはあることをきっかけに再びラップの楽しさを思い出す。目標はただ一つ。自分たちがかつて見た夢のために、一晩限りのライブをすること。果たして、彼女たちはいくつもの壁を乗り越えて歌うことができるのか?



監督・脚本:入江悠『SRサイタマノラッパー』(ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2009グランプリ受賞、韓国・第13回プチョン国際ファンタスティック映画祭NETPAC賞受賞、池袋シネマ・ロサ(東京)と苫小牧シネマトーラス(北海道)にて初日動員歴代1位の記録更新)
出演
山田真歩
安藤サクラ
桜井ふみ
増田久美子
加藤真弓
駒木根隆介
水澤紳吾
岩松了
2010年/HD/ステレオ/95分   
配給:ティ・ジョイ    



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