目指したのは80年代の無国籍映画!『破裏拳ポリマー』坂本浩一監督インタビュー


タツノコプロ創立55周年を記念し、異端のヒーロー『破裏拳ポリマー』が実写映画化され5月13日(土)から全国ロードショーされる。

今回、本作の公開を記念して日本のアクション映画界の至宝・坂本浩一監督にインタビューを敢行!いろいろと興味深いお話を伺ってきました!

 

 

—坂本監督これまで様々な特撮ヒーローを映像化されてきましたが、今回はどういった経緯で『破裏拳ポリマー』を実写化することになったんですか?

 

まず本作のプロデューサーの丸田順悟さんとタツノコプロさんの間で何か作品を実写化しましょうという話が進んでいたんです。僕は丸田さんとは何本かお仕事していたので、その関係で僕の名前を挙げてくれたんですよ。タツノコプロさんも僕がアクション作品をやっている監督という認識を持たれていたようで、「坂本監督がやるなら『破裏拳ポリマー』にしましょう!」という流れでオファーを頂きました。自分が好きだった作品ですし「是非お願いします!」という感じでお受けしました。

 

—作品を拝見しましたが、アクションファン、格闘技ファンとしてアガる場面だらけでした!本作で坂本監督が作り上げた破裏拳流にはオリジナル版に通ずるブルース・リーのジークンドーの要素も入っていて嬉しかったです!

 

ありがとうございます(笑)。今回、僕は“破裏拳とは何か?”という所から始めたかったんですよ。原作のアニメはそこを掘り下げる内容ではなかったじゃないですか。例えば、ジャッキー・チェンの『酔拳』とか『蛇拳』などの『〇〇拳』って、流派の型の印象が強く残りますよね。

 

—誰でも1度はマネしたくなりますからね(笑)

 

今回の『破裏拳ポリマー』も、タイトルに破裏拳って付いてるわけだから、これはちゃんと破裏拳流を作らないとダメだと思ったし、マストな事だと感じたんです。

 

 

—その名の通り、見事な裏拳アクションが炸裂してましたね!裏拳以外にもキック・関節技などが効果的に入っていて見応えもありました。格闘技としてもちゃんと成立しているなと思いましたよ。あと、ポリマースーツを装着したアクションも素晴らしかったですね。

 

破裏拳は文字で見た通り、物事を裏拳で突き破っていく拳法という解釈です。その上で型も裏拳を主体にした流派として作り上げました。ちなみに今回のポリマースーツは装着者が誰でも強くなれる訳ではなく、個人の能力を引き上げるというコンセプトになっています。格闘技が強い人が着ればそれだけ強くなるというものなんです。だからまず主人公の鎧武士が最強の格闘家でなければならないというストーリーを構築していきました。最強の格闘技は何かと考えたとき、もちろん色んな意見があると思いますが、手技が強い奴、足技が強い奴、関節技が強い奴などがいて、それを全部混ぜて戦った上で1番強い奴が最強で究極の『破裏拳ポリマー』になれるんじゃないかと思ったんです。カンフー映画脳の考え方なんですけどね(笑)。

 

 

—いやいや、ヒーローの成長譚は面白いですから。でも脚本は良く練られてましたね! 正直『破裏拳ポリマー』でここまでドラマが出来ると思ってなかったんですよ。シリアスな感じなのかと思えば、コミカルなシーンもちゃんとあって、良い感じの黄金比率になっているなと感じました。あと、本作は今までの坂本作品とちょっと手触りが違うような気がしましたが、その辺は意識はしていましたか?

 

ありがとうございます。やっぱり、これまで僕がやってきた作品とどうやって差別化するかはすごく考えました。『仮面ライダーW』でも撮らせて頂きましたが、もともと探偵物というジャンルがすごい好きだったんですよ。子供の頃に『傷だらけの天使』とか『探偵物語』をカッコいいなぁって思いながら見てましたから。なので今回は、面白い探偵物として成立する作品であり、そこに自分の大好きなカンフー映画と、その王道である復讐劇の要素を組み合わせて、さらに大人のお客さんの鑑賞にも堪える映画にしたいという思いから、ストーリーには特に力を入れました。

 

—本当にバランスの取れた飽きさせない映画だと思いましたよ。そして、それを支える重要な存在として主演の溝端淳平さんがいるわけですね。

 

今回、鎧武士を誰が演じるかという所で、いかにも番長っぽい人がやっても面白くないので、あえてイメージとは違う人が破天荒なキャラを演じた方が人間味が出るんじゃないかと思ったんです。それで色々リサーチする中で溝端淳平君の名前が一番最初にヒラメキました。これまでの溝端君の印象って、後輩役とか弟分役のような誰かに可愛がられる役が多かったと思うんですよ。それとは違う面も見せられるなと思い、演技力もあって、運動神経も良い、さらにスーツを着用する上で重要なスタイルの良さも兼ね備えているという点でオファーさせてもらいました。

 

 

—これまでのキャリアから演技力があるのはもちろん分かってましたけど、あんなに動けるとは思いませんでしたよ!トレーニングも大変だったんじゃないですか!?

 

彼とは4ヶ月間くらい一緒にトレーニングをしました。アクションのトレーニングって通常はそのキャラにあったアクションの練習しかしないんですけど、溝端君にはまず総合格闘技の練習から始めてもらいました。ひとりの格闘家として、力の入れ具合や技の掛け方などを覚えてもらった上で破裏拳流に調整しました。

 

—本気で格闘家にしちゃったわけですね(笑)

 

そうなんです(笑)きちんとした型を覚えてミット打ちやサンドバッグを叩いてもらって、「はい、ここまでが基本の格闘技です。破裏拳流はジークンドーの要素が入っているので裏拳で構えます。普通は利き手を引きますが、ジークンドーやカンフーは利き手を前に出して構えるんです。」という感じで徐々に仕上げていきましたね。やっぱり基礎が出来てない人がカッコよく構えたとしても、見れば分かっちゃいますからね。これは他のキャストにも言えることで、レッグカスタム役の中村浩二さんは、倉田アクションクラブの僕の兄弟子ですし、アームカスタム役の出合正幸君は弟弟子です。ポリマーアルテミス役の原幹恵ちゃんも僕の映画で一緒にやってきてくれたアクションが出来る女優さんですし、説得力のある役者が揃っていないとこの映画を成立させるのは難しいですよ。

 

 

—原幹恵さんは相変わらず素晴らしかったですね!まさか関節技キャラで来るとは思いませんでしたよ!

 

本人も一生懸命に苦労しながら練習してくれました。彼女はこれまで立ち技が多かったんですよね。今回はイメージを変えてバンバン投げ飛ばしたり寝技で関節を決めてくるキャラクターにしました。

 

—スーツ姿も決まってましたね。

 

実は彼女のスーツだけ造り方が違うんですよ。彼女のバツグンのスタイルを引き立てるために、ポリマーアルテミスのスーツだけ特別製です。

 

—あ、そうなんですか!全然分からなかったです!

 

他のスーツは造形部のブレンドマスターさんが作ってるんですけど、原さんのスーツだけは『GARO』など手掛けているJAP工房さんにお願いしました。ブレンドマスターさんのデザインに合わせた質感になるように衣装として作ってもらったので、原さんのスタイルもそのまま出せるし、動きやすく関節技も掛けやすくなってるんです。

 

 

—坂本監督の作品ってこれまでも強い女性が登場していますけど、そこに何か意図があったりするんですか?

 

それは単に僕が強い女性が好きだからです(笑)。可愛らしい女の子も可愛いとは思いますけど、僕が惹かれるのはシュッとした雰囲気で強さを兼ね備えた女性なんですよ。僕の作る映画にそういう女性が多いのは、僕の好みが反映されているからですね(笑)。

 

—なるほど!割と単純な理由だったんですね(笑)。坂本監督の強い女性像の原点は『ワンダー・ウーマン』(1976)のリンダ・カーターとかですか?

 

リンダ・カーターも良いですけど、僕はダイアン・レインが好きだったんですよ。『ストリート・オブ・ファイヤー』は死ぬほど観ました(笑)。僕らの世代だと、ソフィー・マルソーとかフィービー・ケイツが人気で僕も好きですけど、ダイアン・レインが1番ですね。彼女の硬派な感じとか、シュッとした感じが原点なのかもしれないですね。あと、アクションで言えば日本には志穂美悦子さんもいましたし。やっぱり子供の頃に見てきた作品の影響はあると思いますよ。

 

—それがちゃんと坂本監督の味として出てますね!趣味を反映させるのは大事ですよ!

 

はははは!マイケル・ベイがミーガン・フォックスを使い続けるように、各監督の趣味ってありますからね(笑)。僕に関して言えば、カッコいい女性の魅力は強さとその中にある健気さ。あとは、あからさまではないフェチズム系のエロさにグッときますね。女性が見てもカッコいいと思えるような、エロカッコいい女性像を作りたいんですよ。安易なエロスって男性には受けますけど、女性は見ませんからね。『仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』でそういうカッコいい女性キャラクターを初めて出したんですけど、女性のお客さんの反応を見た時に「カッコよかった」って言ってもらえたんですよ。日本でもちゃんと演出すれば受け入れてもらえるんだと分かったので、魅力的なヒロインは作っていきたいですね。

 

—そう考えると原幹恵さんはけっこう理想形ですね。

 

そう思います。彼女はプロポーションも抜群で、お芝居もアクションもしっかり出来ますから。

 

 

—話を先ほども出たポリマースーツに戻ますが、今回のデザインする際にアニメ版にあったマントを外したのは何か理由があるんですか?

 

格闘技って、ぶっちゃけ裸が1番良いわけですよ。デザインを検討する際に「格闘家の目線で考えるとマントは掴まれたり、引っ張られたりしちゃうから戦闘には不向きだよ」ってスタッフとは話しました。プロテクターとか実戦向きな要素を効果的にデザインに落とし込んでいった結果ですね。

 

—なるほど、見た目重視ではなくて現実的なデザインにしたわけですね。デザインと言えば劇中に登場する携帯電話とか車とか、全体的にちょっと古かった気がするんですけど、これって意図してのことなんですよね?

 

僕の中で1980年代のオライオン・ピクチャーズや、キャノンフィルムズの無国籍な雰囲気の映画がしっくり来るだろうなと感じた事もあって、その要素を原作の時代感とも上手いことミックスして今回の世界を作れないだろうかという所からの発想です。CGで作られた荒廃した未来でボロ布を着た人たちがいるような世界観とか、マーベルやDCコミックスの映画のような世界観ってみんな見たことがあるし、やっぱり予算的にも難しいわけです。昭和チックな匂いのする世界観は最近はあまり見ないし、新しい無国籍な感じを表現したくて、あえて昔の携帯電話や車を使ったり、チャイナタウンのような場所が出てきたり、ネオンがいっぱいあったり、良い意味でB級作品の要素が混ざった世界観を構築していったんです。

 

 

—プロダクションデザインのテーマは80年代だったんですね!

 

まさにそうです。実はフィルムのルックもそれに合わせているんですよ。後から色を調整して、80年代の映画の雰囲気を出すためにあえて黒を強くしたり、緑がかった色にしたりして、僕たちの世代が見た時に懐かしさを覚えるような感じにしたかったんです。ポリマー世代は昭和の雰囲気も味わいながらこの映画を楽しんでほしいですね。

 

—坂本監督には『破裏拳ポリマー』をシリーズ化して今後も続けて行ってほしいです!もちろん続編はやりたいですよね!?

 

もちろんですよ(笑)今回は新しい『破裏拳ポリマー』のビギニングとして、ポリマーの誕生、そして鎧武士と仲間の成長を描くことに注力しました。初めてみなさんが目にするキャラクターたちですから、まずはキャラを知ってもらって、彼らの活躍がもっと見たいなと思ってもらえるような作品にしたいと思ったんです。今年はタツノコヒーローがクロスオーバーするアニメ『インフィニティ フォース』もスタートしますけど、実写でもそういう「アベンジャーズ」みたいな事をやれたら良いですよね(笑)

 

 

■坂本浩一
1970年9月29日生まれ。倉田アクションクラブで学び、89年に渡米後スタントマンやアクション俳優として『サイボーグⅡ』(93)、『リーサル・ウェポン4』(98)、『ウインドトーカーズ』(02)などに参加。1995年、アメリカの人気テレビ番組「パワーレンジャー」シリーズのアクション監督を務め、その後プロデューサ ー、製作総指揮を歴任。『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09)、「仮面ライダーW」「仮面ライダーフォーゼ」シリーズ、『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴースト with レジェンド ライダー』(16)の監督を務める。

 

 

『破裏拳ポリマー』
5月13日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー
配給:KADOKAWA (C)2017「破裏拳ポリマー」製作委員会
公式サイト:polimar.jp

 

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