取材・文:ライター ゆん
プレイヤーのそばでゲームを届け続けて四半世紀。『どこでもいっしょ』シリーズで国民的キャラクター「トロ」を生み出した株式会社ビサイド(BeXide Inc.)が、いまホロライブファンの間で静かな——いや、じわじわと熱い話題を呼んでいる。
holo Indie(ホロインディー)を通じてリリースされた3Dマージパズル『ホロライブお宝マウンテン』は、Steamレビューで「圧倒的に好評」(97% ※2026年3月21日時点)を獲得。続く3Dアクション『ホロライブごろごろマウンテン』、タイピングアクション『ホロタイプ お宝ゾンビの島』と「お宝」シリーズ三部作を送り出す傍ら、オリジナルIPの対戦パーティーゲーム『フルーツマウンテン パーティ』もSteam早期アクセスで好調なスタートを切った。
今回、代表取締役社長の南治一徳氏にインタビューを行い、holo Indie参画の経緯から開発哲学、そして今後の展望まで、率直に語っていただいた。

— 株式会社ビサイド(BeXide Inc.)とは —
1999年創業。社名「ビサイド(BeXide)」は英語の”beside(そばにいる)”に由来し、プレイヤーのそばに置いてもらえる新しい何かを作りたい——そんな想いが込められている。代表の南治一徳氏は1996年、大学の仲間とチームを組みソニー・コンピュータエンタテインメント主催のゲームクリエイター発掘オーディション「ゲームやろうぜ!」に応募・合格。1999年に『どこでもいっしょ』をリリースし、2000年の第4回日本ゲーム大賞では大賞をはじめ5部門を独占受賞した。
以降もPlayStation系プラットフォームを中心に「どこでもいっしょ」シリーズを展開しながら、2009年以降、ソニーグループ作品の開発に留まらないIPの魅力を引き出す開発スタジオへと進化。近年は「ラブライブ!サンシャイン!!」公式スピンオフ『幻日のヨハネ – NUMAZU in the MIRAGE -』や自社オリジナルIP『フルーツマウンテン』などの開発を行い、受託と自社IPの両軸で存在感を示している。
— holo Indie(ホロインディー)について —
holo Indieは、カバー株式会社の100%子会社・株式会社シー・シー・エム・シー(CCMC)が2023年10月に立ち上げた、ホロライブの二次創作ゲームブランド。海外ファン制作の『HoloCure – Save the Fans!』が世界的ヒットを記録したことをきっかけに、クリエイターのゲーム制作をサポートする仕組みとして設計された。クリエイターはゲームをCCMCに申請し、審査を通過するとholo Indie名義でSteamなどのプラットフォームへ配信でき、収益の多くがクリエイターに還元される。2026年3月時点で、30タイトル以上を超えるタイトルが参加しており、個人クリエイターから企業まで幅広いメンバーが参加している。

株式会社ビサイド 代表取締役社長 南治一徳氏 インタビュー
holo Indie参画の経緯
── ビサイドさんが「holo Indie」に参画されることになった経緯を教えていただけますか?
南治: もともと一緒にお仕事をしていた、合同会社スーパーニッチ代表の新川 宗平さんからお声がけいただいたのがきっかけです。それまでのholo Indieは個人クリエイターの方が中心だったのですが、新川さんが「企業として参加できるところはないか」と探されていて、「一緒にやりましょう」とお誘いいただきました。

ホロライブIPへのこだわり
── 『幻日のヨハネ』など多くのIP作品を手掛けてこられましたが、ホロライブという巨大なIPを扱う上で、特にこだわった点はありますか?
南治: やはりターゲットがホロライブのファンの方々ですので、「単にホロライブの名前を借りただけのゲーム」だと思われないことを一番に考えました。ちゃんと「このゲームを作っている人はホロライブが好きなんだな」という想いが、プレイを通じてファンの方々にしっかりと伝わるような表現を目指しています。
ディレクターとしての役割
── 今回のプロジェクトにおいて、南治さんご自身はどのような役割で関わられたのでしょうか。
南治: 立ち位置としてはプロデューサーに近いですね。一番最初の「こういうゲームを作ろう」というコンセプトを決め、開発が始まってからは、現場のスタッフが作る中で「より面白くなるように」とバックアップしていく関わり方をしました。

チームの強みとスピード感
── ビサイドさんといえば『どこでもいっしょ』のトロなど、可愛いキャラクターを扱うノウハウが豊富ですが、その強みは今作でも活きていますか?
南治: 毎回作るゲームのタイプは違いますが、社内のスタッフで継続して開発しているので、その連携から生まれるスピード感は強みかもしれませんね。
プロモーション戦略
── プロモーション、特に『フルーツマウンテン パーティ』の展開については、どのような施策を考えていらっしゃいますか?
南治:やはりSNSでの発信や、配信者・実況者の方々に楽しくプレイしてもらうことが中心になります。限られた予算の中で、できる限りのことをやっていきたいと考えています。

Steam版とSwitch版の違い
── 今後、Nintendo Switch版の発売も控えていますが、Steam版との楽しみ方の違いなどはありますか?
南治: ゲームの内容自体は同じですが、遊ぶ環境は変わりますね。Steam版はオンラインでのマルチプレイが中心になるかと思いますが、Switch版はぜひ、その場に集まってローカルでみんなで遊んでほしいと思っています。より多くの人が遊びやすい環境になるのではないでしょうか。
ビサイドの今後
── 今後ビサイドという会社をどのように成長させていきたいか、展望をお聞かせください。
南治: そうですね……「急激に大きくしたい」といったような、大それた野望はないかもしれません(笑)。ただしかし、今の良いスタンスを維持しながら、着実に進んでいければと思っています。

『フルーツマウンテン パーティ』
ビサイドが自社IPとして展開する対戦型3Dマージパズルゲーム。フルーツを皿に投げ入れて積み上げ、同じ種類同士が触れると合体してより大きなフルーツへ——「スイカゲーム」系のシンプルなルールに、最大4人同時対戦とアイテムを駆使した戦略的な駆け引きを加えたパーティーゲームである。
2025年8月28日にSteam早期アクセス配信開始(1,200円)。「東京eスポーツフェスタ2026の対戦型ゲーム開発コンテスト・プロフェッショナル部門」にてプロフェッショナル部門で来場者投票第1位を獲得。Nintendo Switch 2/Switch向けの制作も発表済みで、オンライン対戦・ローカル4人プレイ・Steam Remote Play Togetherに対応する。Steam:https://store.steampowered.com/app/3467540/

『ホロライブお宝マウンテン』
ビサイドがholo Indieに参加したタイトルの第一弾として2024年8月1日にSteam配信開始(980円・税込)、2025年6月19日にNintendo Switch「てんこ盛りVer」も発売(2,400円・税込)。ホロライブ3期生の宝鐘マリンが主人公を務め、ホロライブメンバーが丸い「お宝」に変身した状態で登場。「フルーツマウンテン」のゲームシステムをホロライブIPに合わせてカスタマイズした作品で、Steamレビューは「圧倒的に好評(97%、856件 ※2026年3月21日時点)」と高い評価を獲得している。
Steam:https://store.steampowered.com/app/2972990/

『ホロタイプ お宝ゾンビの島』
2026年2月5日にSteam配信開始(980円・税込)。「お宝マウンテン」の世界観を共有しつつも、ゲームジャンルはタイピングアクションに刷新。ゾンビ化したホロライブメンバーを、名言・迷言をタイピングして元の姿に戻す、という独特のゲーム設計が特徴。出演メンバーはホロライブJP/EN/ID/DEV_ISあわせて総勢74名に拡大されている。
Steam:https://store.steampowered.com/app/4195460/

おわりに
「急激に大きくしたい野望はない」——そう語る南治氏の言葉は謙遜ではなく、25年以上にわたって会社全体でIPと誠実に向き合い、大切に育て続けてきた姿勢そのものだろう。ビサイドがholo Indieで見せているのは、大手IPの名を借りるのではなく、スタジオ全体のホロライブへの本気の愛情をコンパクトなゲームに込めるという、インディー精神の正統な実践だ。
「このゲームを作っている人はホロライブが好きなんだな」と伝わること——それがビサイドの「お宝」シリーズに流れる一貫したテーマである。
『フルーツマウンテン パーティ』のNintendo Switch版、そして次なる「お宝」シリーズの動向からも目が離せない。



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