
【文・畑史進(編集長Twitter):https://twitter.com/hata_fuminobu】
新年あけましておめでとうございます。
12月30日から仕事続きで、仕事納めも仕事始めもへったくれもない。貧乏暇無しとはこのことで、需要があるから良いことなのか、正直よくわからん。ひとまず夜道さんと新年の挨拶動画も出しているので、そっちも観てちょうだい。
さて、今日は2026年新年ホクホクということで、今後のゲーム業界の将来について考えていきたい。
ゲーム業界の将来と言っても、インディーゲームからゲームメーカー、ゲームハードまでめちゃくちゃ広いので、今回はゲーム業界とは切っても切れない関係になってしまった「インフルエンサー」について考えたい。
多分このテーマについて、この業界にいて一番話せるのはわしだけだと思うからだ。
ここで言うインフルエンサーとは、まぁゲーム業界でゲームソフトの紹介案件を受けるVTuberや動画投稿者、配信者、チャンネルを持つタレントや声優、アイドルなどを指すと思ってほしい。
数の大小は全く意味がないので、すべてに当てはまると思ってもらって構わない。妬みとかもないので、邪推なぞしないように。
この話は複雑な要素も含んでいるので、まずはプロモーションという点から考えていく。
インフルエンサーとゲーム業界に何の関係があるんだ、という人もいるだろうから先に整理すると、ゲームソフトの紹介・宣伝をするうえで、動画投稿者や配信者はもう切っても切れない存在になっている。
数字が大きければ大きいほど、ゲームメーカーがゲームメディアよりもVIP待遇をするなんて当たり前の話だ。昨今はゲームのプロモーションで先行プレイをしてもらい、XやTikTokで話題作りを狙うなんて常套手段になっている。
こうした番組の制作を裏で何年かやってきたり、メーカーと話をすることが多いわしの目から見ると、この流れが徐々に変わってきていると感じている。
おそらく10年後には「まだやってんの?」と言われるくらい珍しい、というか古臭いやり方になると思う。その理由は、「視聴者の承認欲求」と「推し活」が、このプロモーションに期待していた効果を出していないからだと考えている。
インフルエンサーの影響力の指標は、再生数、SNSのフォロワー数、チャンネル登録者数であることは説明不要だが、表向きこの数字がどういった意味を持っているのか考えたことはあるだろうか。
ぶっちゃけ、そこに「人がいる」ということは分かっても、その人たちの属性がどんなものかは見えてこないのが実情だ。これを正確に把握しているのは、運営か本人くらいしかいない。ゲームメーカーが知れるのは、せいぜい「脚色された事実」くらいだ。
視聴者側もなんとなく分かっているつもりでも、実際に分かっているのは自分の属性くらいだろう。
「100万人いれば視聴率1%で影響力がある」とは言われるが、実際のところ、登録者数100万人のインフルエンサーをどれだけ知っているか、と問いかけられて名前が挙げられる数こそが、本当の影響力だと思う。
さて、そんなインフルエンサーにゲームメーカーは商品・作品のプロモーション依頼をするわけだが、まず考えるべきは「インフルエンサーに紹介されて買った、観た」という体験がどれくらいあるのか、という点だ。
映画であれば、まだ「話題性」で観に行くことはあるが、それもインフルエンサーの影響というより、メディアのニュースや出演俳優、監督の名前、SNSで見かけた“ニュースの感想”によるものが多いだろう。
インフルエンサーは「ちょっと有名な一般人」であるため、メディアのように一次情報を入手することはできない。
インフルエンサーも試写や試遊、発売後の商品提供によってようやく実体験を得てネタにするわけだが、そこで話題の映画を観たり、ゲームを買うにしても、すでに世間で話題になっていることが多い。
そのため、インフルエンサーによる効果や効力が本当にあるのかは、正直かなり怪しいと思っている。
ここまで眉唾だと思ってもらっても構わないが、ここからが本題だ。
「インフルエンサーのファン」が、プロモーションしている商品のターゲット層ではない、ということが徐々にバレ始めている。
インフルエンサーは確かに影響力がある。ただしそれは商品をプロモーションする力ではなく、インフルエンサー自身の活動(配信や動画投稿)がファンの心に影響を与えているだけで、商品プロモーションとは相性が悪い。
これには「ファンの自己承認欲求」と「ファンのレベルの低さ」が関係していると、わしは考えている。
現在、多くのインフルエンサーは自己プロデュースを行い、投げ銭や自分の商品を販売する、いわゆる「推し活」によって生計を立て、活動の幅を広げている。
最初から商品プロモーションを軸に成り上がったインフルエンサーも確かに存在するが、その数はごく少ない。
こうしたファンも、商品・作品のプロモーション動画や生放送を観て「楽しむ」ことはする。しかしそれは、その動画や配信を楽しんでいるだけであって、商品への興味を喚起できているわけではない。
お金をかけたのに売上につながらない、という話はこれまで嫌というほど聞いてきた。
成功例として挙げられるのは、「スター・ウォーズ」やサンリオなど、そもそも出来上がっているコンテンツであることが多く、効果について聞いても担当者は堂々と「実感あります!」と答える(それはそれで考えものだが)。
ファンにとっては「推しが仕事をもらっている!」という事実がゴールであり、その先に商品を買うという行動がつながっていないのが実情だ。
なぜそうなるのかというと、推し活の実態が絡んでくる。
アイドル論を展開する気はないが、タレントとファンの距離が近くなった現在、「認知してもらう」ことが推し活の中心になっているのは疑いようがない。
そのため、タレントのグッズを買うことはもちろん、配信や動画では投げ銭をすることで「直接タレントに届ける」ことが尊い行為とされてきた。VTuberのコメント欄で「赤スパ」が重宝されるのが、その何よりの証拠だ。
影響力があるとされるタレントに企業案件が入ると、タレント本人はもちろんファンも喜ぶ。それは「地道な活動が実を結んだ」という達成感で完結しており、商品を買うという発想に至っていない。
これは、あるアイドルのイベントでファンに聞き込みをしたときの話だが、「商品を買ったところで、そのタレントさんのためにならないじゃないですか? 案件料もらってるんでしょ」と、真顔でこう答えられた。
いやいや、それだとそのタレントは「実態もないのに大金をふんだくった」って、もっと最悪な評価をされるだけだぞ……と、優しめに指摘しても、「でも僕、そんなにその商品欲しくないし。それなら○○ちゃんのグッズを買ったり、スパチャしたほうが喜ばれる」。
いや、それはそうなんだけど、気持ちは分かるけどね。大人になろうよ……。

角度を変えて聞き込んでも、「縁もゆかりもない企業にお金を中抜きされるくらいなら!」といった、青臭い正義感も多少はあるようで、これはなかなか厄介だなと感じてきた。
すべてがそうだとは言わないが、推し活とインフルエンサー活用プロモーションは、非常に相性が悪い。この状況はここ10年変わっておらず、今後、案件によって成り立ってきたインフルエンサーは規模を縮小するか、最悪の場合は撤退する未来もあり得る。「ファンによって殺される」のだ。
そもそも、企業案件のほうがタレントにとっては「赤スパ」よりも圧倒的に金が良い。赤スパを1万円投げるくらいなら、その金額分商品を買ったほうが、タレントに50万円規模の企業案件が振られることも珍しくない。
商品が売れ、継続して企業案件が入るほうが、よほどタレントのためになる。
あともう一つ「今日の推しの動画(配信)は企業案件か興味ないな。スルーしよ!」
これ一番最悪ね。
また、インフルエンサーのもう一つの実態として、高齢のファンが多いという点も知られるようになってきた。
高齢のファンは欲求が下がっているため、推し活に財布のリソースを割けるが、その分商品プロモーションの効果は薄く、作品のファンになる余地も見いだしにくい。
インフルエンサーに頼るより、若い層を集める企画を作ったほうが良いのではないか、という話は映画業界でも聞いてきた。
最後に雑に指摘すると、VTuber界隈では話題作りやファンサービスの一環なのか、VTuber同士の対立構造や、いじめのような構図をエンタメとして消費し、ファンも噂話としてSNSで乗っかっている。
これは青少年への教育的影響や、企業の倫理観が問われかねず完全にリスクの塊だ。
いよいよ、インフルエンサーを活用したプロモーションビジネスは、崩壊に近づいていると思う。
これを決定づけたのは、カプコンの『モンスターハンター:ワイルズ』だろう。

多くのインフルエンサーを起用してプロモーションを仕掛けたが、プロに徹したインフルエンサーはごくわずかで、ほとんどが「視聴者に迎合する」という選択をした。その結果、カプコンから「公認配信者」の肩書きを剥奪されたのは有名な話だ。
「そもそも『ワイルズ』をちゃんと作れや」と言いたい人もいるだろうが、それとプロモーションは別の話だ。クソゲーでも広告は打つ。
せっかく公認配信者の札を渡し、商品提供までしているのに、飼い犬に手を噛まれるようなことをされたら、「インフルエンサー離れ」の判断を下すのも無理はない。
今日明日で終わる話ではないが、インフルエンサーを活用したプロモーションビジネスは、今後徐々に衰退していく。
少しでも「推し」に協力したいなら、興味がなくても「推し」の仕事についていくべきだ。そして赤スパをやめて、「推し」が関わっている商品を買うほうが健全である。
推し活している人、
「推し殺し」に加担していますよ。



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