デジタルセル、ブルーレイ&DVD発売前クロスレビュー  4月17日にワーナー・ブラザースよりブルーレイ&DVDが発売される『エンド・オブ・ステイツ』を畑史進編集長とライターの鶴岡亮が徹底レビュー!(3月25日(水) デジタルセル先行配信開始)

4月17日にワーナー・ブラザースよりブルーレイ&DVDが発売される『エンド・オブ・ステイツ』を畑史進編集長とライターの鶴岡亮が徹底レビュー!(3月25日(水) デジタルセル先行配信開始)

 

 

■畑史進編集長のレビュー

 

畑史進(編集長Twitter):https://twitter.com/cefca_vader?lang=ja

 

このジェラルド・バトラーが主人公を務めた「エンド・オブ~」シリーズってすげー不謹慎ネタをぶち込むんだけど、気づく人にしか気づけないというバカバカしさがあって凄く面白いのよ。

のっけからこんな話をすると不真面目な流れになっちゃうからこの話題は後にするとして、簡単にこの映画シリーズを紹介すると、2013年の『エンド・オブ・ホワイトハウス』から続いていて、海外タイトルは特定単語の後に「~HAS FALLEN(何かの陥落)」と冠している。

過去2作ではアメリカとイギリスの主要施設がテロリストによって乗っ取られて、政治機能が麻痺し、治安が崩壊寸前まで追い込まれて、大統領を始めとしたその国のトップが人質、ないしは抹殺対象に指定される。そこでジェラルド・バトラー演じるベテランのシークレットサービス、マイク・バニングが一人で立ち上がって持ち前の戦闘術で「俺TUEEEE!」をやってのけて、最後にはアメリカを、世界を救ってめでたしめでたしという、凄く単純かつ何度も観たことがあるような内容の作品なわけ(もっと簡略するとU.S.A!U.S.A!っていう映画)。

 

 

これを聞いただけで「じゃあ目新しくないならいいかな・・・スルーしましょ」って思うかもしれない。だけど、この映画シリーズの面白いところはさっきも書いたように海外のノリで不謹慎ネタや時事ネタをぶち込んでくる所。これが既存のネタを面白く味付けしていて、観ている側は「バカなことやってんなぁ・・・」というヤジ馬感情から惹きつけられて結局最後まで観いっちゃう。というかなりずるい映画となっているわけ。詳しいネタの詳細は文字で起こすと長ったらしくなっちゃうのと、色々問題になりそうなんで過去作を観て判断して欲しい。

そんなこんなでジェラルド・バトラーの「俺TUEEEE!」を楽しむ映画シリーズの最新作が去年公開されて、近日ブルーレイ&DVDが発売されるというわけですが、この映画の見どころはさっきからおちょくっている様にジェラルド・バトラーの「俺TUEEE!」っぷりが観ていて痛快。

ほとんどの人は『300』のレオニダスを思い出すように、その外観から「このおっさんとまともに喧嘩すると勝てないですわ」っていうくらい、脳筋キャラクターを演じさせたら魅力が引き出される俳優だと思う。でもこの人実は法学部出身という凄くインテリで、『オペラ座の怪人』のファントムを演じてスターダムに上り詰めるほど感受性豊かな演技派俳優(僕の中でどうしてもジェラルド・バトラーが脳筋キャラっていうイメージがついちゃうのは最初に彼を観た作品が『サラマンダー』っていう怪獣映画だったというところもあるかもしれない・・・)。

 

 

彼の演じたマイク・バニングはベテラン故に過去の職務から不眠症や偏頭痛を持っているという、意外にもセンシティブな役柄で、脳筋キャラに終わらずに弱い部分まで繊細に演じているところも観ていて共感を覚えやすいようになっているのも従来の「俺TUEEE!」「アメリカを救うぜ!」系の映画と一線を画しているのも面白い試みだったと思う。

 

あと、名優モーガン・フリーマンもこの映画シリーズの中で着々と階級を上げているのも面白い。1作目では下院議長だったのが、2作目では副大統領、3作目では大統領に上り詰めるという順風満帆な昇進ぶりを見せている。

モーガン・フリーマンは本当に器用な役者で何でもこなすけど、彼が大統領に就任したのはスピルバーグの『ディープ・インパクト』以来2回目(2期目)。大統領役はこれを最後にしてもらえたらアメリカの方に準じれるんだけどいかがだろう?

 

 

 

 

さて、映画作品としての『エンド・オブ・ステイツ』だけど、一応今作がシリーズ最後ということもあって真面目なテイストで作られている。とはいっても大統領の釣りに付き合ったら、そこを狙われていきなりドローン攻撃をされてしまうという、いつもどおりのネタ含めた不幸なキッカケから物語はスタートしているわけだけどね。相変わらずジェラルド・バトラーの動きのキレは良いので何度も繰り返して観ていても凄く面白い。

 

ただ、全体を通してみると過去2作はテロリストという一方的な悪者がいて、そこに対してマイク・バニングが一人で大暴れして鉄槌を下すという流れだったのに対して、今作はマイクの敵がテロリストとFBI、2つの組織が敵になっているので頭を休めて観られる映画になっていないのは否めない。

 

とまぁ、前2作と比べるとかなり毒気は抜けてしまったけど、相変わらずの脳筋映画なので、この手の作品が好きでたまらないという人は、ぜひ過去作も合わせてこの作品を流れで楽しんで欲しいと思う。

 

■鶴岡亮レビュー

 

鶴岡亮Twitter:https://twitter.com/ryoutsuruoka

 

 

『エンド・オブ・ステイツ』はジェラルド・バトラー主演のアクション映画『エンド・オブ~』シリーズの最新作である。シリーズを順当に並べると、『エンド・オブ・ホワイトハウス』(2013)『エンド・オブ・キングダム』(2016)『エンド・オブ・ステイツ』(2019)の順となる。シリーズモノと云われると他のシリーズを観ていないと今作の内容が解らないのではないか?と思われる方もいらっしゃるだろうが心配ご無用。本作のストーリーは新規の視聴者でも入っていけるシンプルな内容で、シークレット・サービス(大統領警護執行機関)のマイク・バニング(ジェラルド・バトラー)が、謎の組織にアラン・トランブル大統領(モーガン・フリーマン)暗殺実行犯という罪を着せられ、逃亡劇を繰り広げるという内容である。

 

<ジェラルド・バトラーとは>

 

主人公マイク・バニングを演じるジェラルド・バトラーは『オペラ座の怪人』(2004)では怪人役を務め、『300』(2007)から鍛え抜かれた剣闘士のような肉体美を活かしたアクションスターとしての活動が目立ち、近年だと『ジオストーム』(2017)『ハンターキラー 潜航せよ』(2018)でもその存在感を遺憾無く発揮している俳優だ。バトラーは歴代『エンド・オブ〜シリーズ』では主演を務めるにとどまらずに製作も兼任している為、三作目となる今作でも監督のリック・ローマン・ウォーや脚本のロバート・マーク・ケイメンと濃密に話し合って作品の方向性を決めて行ったという。本作でのマイク・バニングは長年の任務で身体と精神に疲労が蓄積しており、50代なら誰にでも襲い来るであろう自身の衰えを感じている状態で登場する。これは単なる役柄というよりもバトラー自身の悩みを投影しているような設定で、今作を通してメタフィクション的に自身の物語も描こうという姿勢が感じとられる。

 

 

<臨場感を追求したアクション描写>

 

そんなバトラーの思い入れの深い本作は、室内、湖、森林地帯、都市部を舞台にバラエティ豊かなシチュエーションでアクションを披露してくれる。各シチュエーションではマイクが自身の衰えを感じながらも、シークレット・サービス仕込みのナイフや銃火器を使用した素早い戦闘術を駆使し、『イコライザー』『96時間』のような「凄腕オヤジアクション映画」好きならば興奮待ったなしの殺戮の大サーカスが披露される。アクションの合間に炸裂する大爆発も本シリーズの十八番であり、今作ではシリーズ最大量の火薬が使用され、序盤からマイケル・ベイ映画のような過剰な迄の爆発のオンパレードが繰り広げられる。本作でメガホンを取ったスタントマン出身のリック・ローマン・ウォー監督は、これらのアクションシーンにリアリティを産み出す為に、役者陣の間近で大爆発を引き起こす鬼畜の所業で、演技を超えた生の感情を引き出す事に成功している。そのせいか、劇中マイクがしきりに「Fuck!Fuck!」を連発する様は、演技と言うより生のリアクションにしか見えない程である。そうした50歳を迎えたバトラーにも容赦しないハードなアクション演出によって、この作品に並々ならぬ臨場感を与えていると云えるので、危険を承知でこの監督と組んだバトラーの意気込みに敬意を払わずに入られない。

 

 

<エンド・オブ・ステイツのテーマ性>

 

そんなアクションに拘りを持った体制で作られている本作だが、しっかりとしたテーマ性も持ち合わせた作品になっている。そのテーマは「ハイテクvsアナログ」である。マイクを追い詰める謎の組織は、デジタル化された現代社会でドローン、監視カメラ、GPS追跡等のハイテク技術を駆使して追い詰めていく。対するマイクが逃亡の最中に頼りにするのが、シリーズ初登場の彼の父親のクレイ・バニングだ。クレイを演じるのは『48時間』(1982)で有名なニック・ノルティで、近年ではドラマ『マンダロリアン』(2019)でエイリアン種族アグノートのクイール役を演じ、79歳という高齢ながら役者としての幅の広がりを見せ続けているバイプレイヤーだ。そんなニックが演じるクレイ・バニングはベトナム戦争で悪夢を経験し、その後遺症から妻子を捨てて田舎で孤独な生活を送っている退役軍人だ。彼は老年ながら息子のマイクと同じく戦闘のプロフェッショナルで、ベトナム戦争時代に培ったアナログな仕掛け爆弾等のゲリラ戦闘術を使い、複雑な親子関係ゆえにマイクとぶつかり合いながらも共闘する。そうしたハイテク技術を使用しながらマイクを追い詰める謎の組織と、アナログな人間同士の絆で戦うバニング親子の両者は対立構造として描かれており、現代のハイテクに支配された世界にはバニング親子のような「人間同士のアナログな絆」も必要なのでは無いか?という単なるアクション映画に留まらないメッセージ性にも気づかせてくれる作品となっている。

 

 

シリーズ初心者でも入っていけるシンプルなストーリー、ダイナミックなアクション、ハイテクvsアナログの対立構造が生み出すバニング家の物語は必見なので、是非とも『エンド・オブ・ステイツ』をご覧いただきたい!

 

 

ブルーレイ(2D)
エンド・オブ・ステイツ ブルーレイ&DVDセット (2枚組)
発売日:2020/04/17
希望小売価格:4,527 円+税
製作年度:2019 年
ディスク枚数:2 枚
品番:1000761919
JANコード:4548967439236

【CAST】
ジェラルド・バトラー/マイク・バニング(宮内敦士)
モーガン・フリーマン/アラン・トランブル大統領(池田勝)
ティム・ブレイク・ネルソン/カービー副大統領(森宮隆)
ダニー・ヒューストン/ウェイド・ジェニングス(菊池康弘)
ニック・ノルティ/クレイ・バニング(池田勝)
ランス・レディック/デビッド・ジェントリー(関口雄吾)
ジェイダ・ピンケット=スミス/トンプソン(菊永あかり)
パイパー・ペラーボ/リア・バニング(矢尾幸子)
【STAFF】
監督:リック・ローマン・ウォー
脚本:ロバート・マーク・ケイメン

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