映画レビュー 迸るバカさとヴァイオレンス!!衝撃のオンパレード!映画『デッドボール』



9~10年ぐらい前だったか、シネクイントで開催された『地獄甲子園』の完成披露試写を観た直後から山口雄大という腹筋が痛くなるほどのギャグセンスで笑わせてくれた新進気鋭の映画監督に遭遇して現在に至るのだが……幾度となく『地獄甲子園』の続編を山口&主演の坂口拓本人も作りたいと言っていたのが、ようやく多少違った形ではあるが実現してしまったではないか! テレビ&劇場映画含め山口監督作を恐らく9割以上鑑賞している筆者+誰にも頼まれていないが彼の作品研究&分析を9年続けている筆者としてはこんな嬉しいことはない!なぜならば筆者自身『地獄甲子園』を”邦画オールタイムベストテン”に入れているからである。
今回は正式な続編ではないが(画太郎先生はOKかも知れないけど集英社が絡んでくるのでそう簡単に行かない)、山口&坂口のダブルぐっさんコンビのDNAがほとばしる野球をしないヴァイオレンス・コメディーは過激度を増していた。間違いなく冒頭のキャッチボールのシーンは『地獄甲子園』へのオマージュなのだが、やっていることがエスカレートしまくっている。敢えてパワーアップと表現したくないが(こう書くと『地獄甲子園』がショボい作品と思われてしまう)、バカさとヴァイオレンス度は良い意味で無駄に多く、今まで溜まっていたものを吐き出している2人が伺える内容であった。
気付かないとそのバカバカしさがわからないが、どこにいてもタバコをフレーム外から入手して吸う天丼ギャグのセンスや、自身の『魁!! クロマティ高校』、ジェームズ・キャメロン監督『アバター』のナヴィ族をパロったりとかヤリタイ放題。そんなバカさが爽快感を得られる部分であるが、役者の個性を引き出す演出にも注目したい。星野真里が男役を演じるのも幼児体系なので納得行くし、役者として試合の実況アナウンサーで登場している山寺宏一が決して『おはスタ』では発しない危険で汚い言葉等、衝撃のオンパレード。絵作りに関しては空間の使い方が巧みだった。恐らくフレーム外からタバコを手にする天丼ギャグのシークエンスを入れるためだったのだろうが、それが全体的に功を奏した結果だろう。クライマックスの人体破壊描写に関しても正面以外、真横からの画角も押さえているのは観たいところのツボをくすぐってくれる部分。
褒め過ぎるのも問題なので残念なところも加えておこう。個人的に若干物足りなかったのは、田山涼成のホモなシーン。もっと事前に過剰な演出を加えていた方がクライマックスで部下の男のケツを触ったりするシーンに深みが出た気がする。劇中途中でダーツの矢を自分の部下のケツへ的当てするべく投げ刺すサディスティックなシーンが入っているだけに余計そう感じた。最後になって男のケツが好きなキャラクターだったんだ、と理解出来るわけだしね。というわけでそこだけが少々勿体無いかなと。
WOWOWで放送された『SOIL ソイル』(監督:清水崇、山口雄大)を観ておくと本作をより面白く堪能できるかと。星野真里と田山涼成が再び、山口演出で蘇るところにオーバーラップするシーン多々なのでね。追記すると2人以外にも『SOIL ソイル』に出演していた役者が出ていたりするから……『地獄甲子園』と共に絶対に観ておいてもらいたい!あ、それと……とある有名な役者のカメオ出演を発見できるかな?
レビュアー:ジャンクハンター吉田
デッドボール
(C)2010 SUSHI TYPHOON/ NIKKATSU
7月23日(土)銀座シネパトスほか全国順次公開


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