安田 菜津紀 × 堀 潤 登壇 オフィシャルレポート 『プライベート・ウォー』ゲスト登壇イベントレポートご掲載

STORY
英国サンデー・タイムズ紙の特派員として活躍するアメリカ人ジャーナリスト、メリー・コルヴィン(ロザムンド・パイク)。2001年、ジャーナリスト入国禁止を無視してスリランカの内戦を取材中に被弾。左目の視力を失ったメリーだったが、その取材を評価され優秀外国人記者に輝いた「英国プレス賞」受賞式に印象的な黒い眼帯を付けて現れる。以降黒い眼帯は彼女のトレードマークとなった。“生きる伝説”と称えられ、戦場記者を天職と考えるメリー。最前線での体験はPTSD(心的外傷後ストレス障害)として彼女に襲い掛かるが、世間の人々の関心を世界の紛争地帯に向けさせたいという彼女の想いは、さらに強まっていく。2012年、シリア。過酷な状況で包囲されている28,000人の市民の現状を伝えるため、報道カメラマンのポール・コンロイ(ジェイミー・ドーナン)とともにホムス入りしていたメリー。砲弾の音が鳴り響く中、チャンネル4・BBC・CNNの英国公共放送全局が同時ライブ中継を行うという、彼女の記者人生において、もっとも危険で過酷なレポートが始まった――。

【以下プレスリリース文掲載】

英国サンデー・タイムズ紙の“伝説の記者”メリー・コルヴィンの半生を描いた映画『プライベート・ウォー』が9月13日(金)TOHOシネマズ シャンテほかにて全国ロードショーいたします。

世界中の戦地に赴き、レバノン内戦や湾岸戦争、チェチェン紛争、東ティモール紛争などを取材してきた女性戦場記者、メリー・コルヴィン。2001年のスリランカ内戦取材中に左目を失明、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しみながらも、黒の眼帯をトレードマークに世間の関心を紛争地帯に向けようと努めた“生きる伝説”は、2012年、シリアで受けた砲撃で命を落とした――。 真実を伝える恐れ知らずのジャーナリストとして戦地を駆け抜け、女性としての豊かな感性で生き抜いた彼女の知られざる半生が今、語られる。

東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材をする安田氏は「メリー・コルヴィンさんは面識は無いが、記事も読んでいたし知っていた。ジャーナリストという存在を聖人として美化しなかったところが良かった、人間らしい一面もあったり、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の部分もちゃんと描いていた。主役がジャーナリストではないという最後投げかけのところまで持って行けたのかなという感覚が観た後にありました」と映画の感想を語り、堀氏も「戦争が引き起こす不条理を描いていて、彼女を英雄視してみせようとはしないメッセージが観た後にあるので、非常に巧みな映画だなと思いました。」と同意した。

安田氏は取材に行く際の原則として「例えば普通はA地点があってそこに行くかは多数決で決めるけど、私たちは治安感覚が安定していないところに行くので少数決を原則としているんです」と明かし、取材時に重要視していることについて「身を守るヘルメットや防弾チョッキはもちろん大事だとしつつも、1番重要なのは“人間関係”だ」と断言した。

「私自身シリアを取材するときには、現地メディアで働いていた方々がパートナーとして取材を手伝ってくれる、彼らの存在なく

して私たちの取材は成り立たないです。私たちは現地でどんなにひどい状況を目にして傷ついても、日常に戻っていけるんですが、手伝ってくれている彼らっていうのはその現場自体が日常なのでホッと息をつける場所が無いんです。だからメリーさんの人生にもみなさんには想いを馳せてほしいですが、おそらく彼女と一緒に現地で取材をして同じように厳しい現場を見続けているパートナーたちのことも考えてみてほしいです。」と訴えた。

「メリーがどんなに止められても現場に駆り立てたもの、“600人以上の死体が埋められているんだ、2万人以上が取り残されているんだ、行ってみなきゃわからないじゃないか”そこの部分に対しては非常に共感を持っている、それはやっぱりメディアに関わる人々の使命であるということを伝えたかった監督のメッセージ」と堀氏。

イラクやシリアで様々な国のメディアやジャーナリストと情報交換してきたうえで、日本のメディアの印象について安田氏は「日本で起こっている自己責任論をうまく説明できないんです、ポカンとされる。」と明かし、「アメリカの記者と話したときは“ジャーナリストにバッシングするという概念が無い”と話していて、オランダの記者には“バッシングする時間があるなら、現地のことをもっと知る時間にしたらいいのに”」と言われ、日本にあるジャーナリストに対する自己責任論が、海外と日本のメディアとの一番の大きな違いだと指摘する。

続けて「それは何でなんだろうって考えた時にやっぱり彼女たちと話していて感じたのが、もちろんメディアに対する不信感は決して日本だけの問題ではなくて欧米でもそういったことは起きている、でも少なくともメディアっていうのが何のための役割で現場に行く必要があるのかっていうこと市民レベルでまだ実感があるから。」さらに、日本でも決して少なくない“行く方が悪い”といったニュアンスの意見に対しては「例えばシリアでは海外の記者や現地の記者がこんなことが起きているってことを発信していきますよね、じゃああなたたちがわざわざ現地に行く必要なんてないんじゃないっていうことは時々言われるんですよね。それは一面では正しいと思うんです。ただお借りした映像だったり写真で全てが済むんであればやっぱりそのジャーナリズムの根幹って歪むと思うんですよね。日本から現地に行ってみて何か日本の中で例えば行ってみないとわからないっていうのはそこなんですよね。日本の情報の中で偏っているなこれは、とか現地のこういう面が日本では報道されてないなとか、何が日本と感覚が違うのかだったりその感覚と一緒に持ち帰ってきて初めて遠い地とちょっとだけ心の距離が縮まっていくと思うんですよね。現地の肌感覚と日本の肌感覚をどうやって照らし合わせて肌触りのある映像だったりその写真あるいは言葉っていうのを紡いでいけるかっていうのは今むしろネット時代だからこそ求められていることなのかなってことは思いますよね。」とジャーナリストとして現地に足を運ぶ意義を語った。

堀氏は「“現場がこうであるというファクト”を伝えることは要なので、今言論の世界を見ると安直に“~に違いない”“~であろう”“~に決まっている”というものばっかり。そんな中で現場はこうだった、この人はこう言っていたという丁寧なファクトの積み重ねができるメディアをみんなで育んでいきたいし大事にしていきたい。日本がシリアがイラクが韓国がっていう大きな主語ではなく、この映画のようにそこに生きる人々やちいさな主語に対する取材への理解や価値っていうのをもっともっと共有していきたい」と強い想いを語った。

安田氏は「原点に立ち返りたいんですが、この映画で伝える仕事だったりジャーナリズムの意義っていうものももちろん考えて欲しいんですけれど、やっぱりそのジャーナリストっていうのはあくまでも主役ではないので彼女達が見ていた目線の先ファインダーの向こう側に皆さんに思いを馳せていただきたいなっていうふうに思うんですね。これは特にメリーさんが最後に取材をしたシリアの方々に私もよく同じような事言われますが。自分たちのことを本当に苦しめてきたのは何か知ってる?って、それは自分たちの上に爆弾落としてくるような勢力でもなくイスラム国みたいな過激派の勢力でもなくってこれだけのことが起こっているのに世界は自分たちに関心を寄せてない、世界を自分たちのことを無視してる、その感覚がじわじわと自分たちのことを追い詰めてきたって。じゃその無関心ではない道ってどういう風に選んでいったらいいんだろうかっていうことをこの映画は投げかけてきたと思うんです。

今日皆さんの中で例えば刻まれたシーンだったりあるいは顔だったり人々の表情だったりがあれば皆さんの間でこういう映画観てきたんだけれどどう思う?って、今度良かったら一緒に見に行かない?と少しでも足元から一緒に輪を広げて頂ければ私達こういう風に映画に携わらせて頂いた一人としては嬉しいなという風に思います。」と締めくくった。

監督・製作:マシュー・ハイネマン『カルテル・ランド』
脚本・製作:アラッシュ・アメル
製作:シャーリーズ・セロン
出演:ロザムンド・パイク ジェイミー・ドーナン トム・ホランダー スタンリー・トゥッチ
主題歌:アニー・レノックス「Requiem for A Private War」
2018年/イギリス・アメリカ/カラー/5.1ch/スコープサイズ/110分/英語/原題:A PRIVATE WAR/日本語字幕:松岡葉子 映倫区分:G
©2018 APW Film, LLC. ALL RIGHTS RESERVED 提供:ポニーキャニオン/ハピネット
配給:ポニーキャニオン.
公式サイト:privatewar.jp

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