『おしえて!ドクター・ルース』公開記念_ 星野概念さん×トミヤマユキコさんトークイベントレポート

<STORY>
家族をホロコーストで失った少女時代、終戦後はパレスチナでスナイパーとして活動し、女性が学ぶことが難しかった時代に大学で心理学を専攻。アメリカに渡り、シングルマザーとなり娘を育てた。
そして、30歳の時に、3度目の結婚で最愛の夫フレッドと出会う。自分らしく生きるために学び、恋し、戦い、働く。
いつだって笑顔で前を向く“ドクター・ルース”はいかに誕生したのか。

【以下プレスリリース文掲載】

アメリカでいちばん有名な“お悩み相談”で、90歳の現役セックス・セラピスト、ドクター・ルースの波瀾万丈な人生を描いたドキュメンタリー映画『おしえて!ドクター・ルース』を、8月30日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開いたします。

80年代のニューヨーク。日曜深夜のラジオ番組に全米は夢中になった。誰も教えてくれない性のお悩みをズバリと解決するドクター・ルース。身長140センチ、ドイツ訛りの彼女は、そのチャーミングなキャラクターでたちまちお茶の間の人気者に。性の話はタブーだった時代に、エイズへの偏見をなくすべく立ち上がり、中絶問題で女性の権利向上を後押しし、LGBTQの人々に寄り添い、社会を切り拓いてきた。

自分らしく生きるために学び、恋し、戦い、働く。アメリカで最も有名なセックス・セラピスト“ドクター・ルース”はいかに誕生したのか。ホロコーストの孤児、元スナイパー、シングルマザー、3度の結婚。時代に翻弄された90歳の半生をたどるドキュメンタリー。

この度、本作の公開を記念し、星野概念さん(精神科医など)、トミヤマユキコさん(ライター/東北芸術工科大学講師)をお招きしたトークイベントを8月13日(火)に実施致しました。

<トークショーレポート>

映画を観た感想について、まず星野概念さんが「とにかくすごい人。カウンセリングって、まずは患者さんから信頼してもらわないと、アドバイスできないから、はじめは繊細にコミュニケーションで距離をはかるけど、ルースさんは明朗快活にズバッと答える。放送禁止用語も言うけど、専門用語で真摯に学術的に答える、という普通できないことをやれるのがすごい。」と精神科医ならではの視点で、ルースさんのカウンセリングに着目してコメント。大学で、日本の少女漫画から読み解く、女性の労働について研究しているトミヤマユキコさんは、「42歳で博士号をとり、ラジオも52歳でデビューし、人生の後半で思いもよらないことが起きてる。ある仕事人の人生として、こんな快進撃がおこるのがかっこい。人生、何が起きるのかわからないぞという気持ちにさせてくれる。」とルースさんのキャリアに着目して、魅力を語りました。

ルースさんの対話力について、トミヤマさんは「普通カウンセリングは対話を重ねることが必要だけど、話を聞いてその場ではっきりと答えるって難しい。ルースさんは、いくつかの相手への問いかけのなかで、答えを導いていくのがうまい。まるで居合斬りみたいな。」と分析。普段から患者さんの悩みに向き合っている星野さんは「悩みに対する見え方の解像度が高い。沢山の人の相談にのってきているから、データベースも沢山ある。悩みに答えるのって凄く勇気がいるから、僕は何かを決めずに引き出す、というやり方をするけど、ルースさんはいくつか聞いて、なるほど、こうしなさいと自信を持って言える。質問を聞いただけ

で、彼女は違う景色や立体感が見えている。」と語りました。

本作の一番印象に残ったシーンや言葉について、星野さんは「ルースさんのお子さんやお孫さんたちが、彼女は過去の辛い経験を思い返さないように、防衛的な感じで働いているんじゃないか、と語っているところ。ある種、躁的防衛みたいな。ご自身は気づいていないけど、家族から見たら、彼女のそういう側面が見える。そういう部分があるんだなと思いました。」と家族の視点からルースさんの人物像に着目したと言います。トミヤマさんは、「すべての人はある意味ノーマルだから、ノーマルって言葉は好きじゃない、とか。そうした発言がマイノリティの人からは感謝されていたと思うんですよね。頑固に自分の信念を曲げないし、シンプルな力強い言葉で表現することで、人を繊細に救っていく。これはなかなかできないことだなぁと思いましたね。」とルースさんの名言の数々に心を打たれたと語りました。

また、性を語ることについてトミヤマさんは「日本は照れ隠しで笑いにもっていく。面白く喋ったり、

聞いたりとかネタに昇華して、照れ笑いに逃げているのが現状。アメリカで『セックス・アンド・ザ・シティ』のキャリー・ブラッドショーの“セックス人類学者”という肩書きも、ルースさんが開墾をしてきた土壌だからある。ルースさんのにこやかに、真面目に性に取り組んできた、そうした影響があると思う。」と日本とアメリカの社会の違いについて、独自の視点で分析しました。

最後に一言、星野さんは「すごくいい映画、というのを皆で共有してほしい。素晴らしい人なので、いろんなことを考えたりするきっかけになれば。」と語り、続けてトミヤマさんは「面白いおばぁちゃんの話として終わらせず、様々な心に残る名言もあるので、言葉の映画だなとも観れる。いい言葉を拾って実人生に応用して欲しい。」と締めくくり、和やかな雰囲気でイベントが終了しました。

監督:ライアン・ホワイト『愛しのフリーダ』
出演:ルース・K・ウエストハイマー
2019年/アメリカ/英語/100分/アメリカンビスタ/カラー/原題:ASK DR.RUTH/日本語字幕/髙内朝子 配給:ロングライド
longride.jp/drruth/

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