テーマは変身願望？！『目を閉じてギラギラ』公開記念冨永昌敬監督インタビュー！

10/22(土)から、ヒューマントラストシネマ渋谷にて公開される『目を閉じてギラギラ』。本作の公開を記念して、冨永昌敬監督にお話しを伺ってきました。
—本作はどのような企画でスタートしたのでしょうか。
そもそもは、BeeTVという携帯チャンネルのための企画です。BeeTVには男性向けのドラマがあまりないので、Vシネマはどうだろうかと。で、いわゆるVシネマを目指すのであれば、その分野を代表する方にぜひ出ていただきたいということで、哀川翔さんに主演をお願いしました。そのうえ印象的な役どころで小沢仁志さんにも出ていただいたので、Ｖシネ四天王ファンの皆さんに顔向けできると思います。

—綾野さんを起用した理由は。
今のうちに捕まえておこうということです。
—一般的なイメージでいうところのVシネマとは違う雰囲気の作品になっていましたが、どのようにストーリーを作っていたのでしょうか？
きっかけはVシネだったんですが、やってみたら下町人情小市民劇みたいになってしまいました。実は、一緒に脚本を書いた鈴木謙一さんと僕は、いわゆる「バイオレンス映画」というのは得意ではなかったんです。だから、Vシネマ的な記号を踏まえつつ、どうやって”落とし所”をみつけるかみたいな感じでした。
—タイトルの『目を閉じてギラギラ』は、どのような理由でつけたのでしょうか。
寝てる時も瞼の奥で眼がギラギラしているという意味です(笑)
—誰がタイトルをつけたのでしょうか。
僕です(笑) 切羽詰まっている人は、寝てる間も油断してはいけないじゃないかという気持ちでつけました。

—哀川さんが演じるガンジー希崎というキャラクターはどのように作ったのでしょうか。

ガンジー希崎には、僕が勝手にモデルを用意しました。実在の元暴力団組長で、引退した後に半分人助けのために金貸しになった方がいて、その方の伝記を読んだんです。これがすごく魅力的な方でして、その元組長を知ったことで、Vシネマという娯楽性の高い表現を目指しながら人物造型は実録的という、理想的な台本を得られたと思ってます。
—野球を登場させた理由はなんでしょうか。

育ちも何もかも違う男たちを結びつけるものは何かというと、これは趣味なんじゃないかと。男たちの趣味の中で、一番分かりやすいものといえば野球。日本の男たちの共通の趣味といえば野球しかないんです(笑) 。綾野くんが演じた剛太にもモデルは沢山いると思うんです。ドラフト前に球団から不正なお金をもらって駄目になってしまった選手。そういう「実在」の強さに惹かれつつ娯楽映画に挑戦し、なおかつ我々も野球界の動静には寝食を忘れるような典型的な日本男児なので、もしかしたら縮図にもなっているかもしれない。
—劇中に登場する野球場は何処ですか？
川崎です。

—良い感じの寂れ方ですね。
台本に書いてあったものよりは随分立派なんです。本当は河川敷みたいなところでよかったんですけど、そういうところは予約で埋まってて、むしろ立派なグランドのほうが空いていたんです。
—寂れた所が好きなんですか？
そうでもないんですけど、制作部がなぜか寂れた場所を選んでくるんです。台本の通りの場所で撮影するにはハードルが多すぎて、その代わりに「こういう所どうですか？」と勧められた場所がだいたい寂れているんですね(笑)。で、渋々そこに行ってみると、結果的にそこを気に入ってしまうんです(笑)
—ロケ場所はいつも同じスタッフが探して来るんでしょうか？
そうですね。『乱暴と待機』の住宅を探してきたのも同じスタッフです。大体、目的地に向かう途中で偶然見つけることが多いみたいです(笑)

—ホープ商会の建物は実際にあるんですか？
実際にある建物で元々は廃工場です。台本では雑居ビルの一フロアだったんです。でも、雑居ビルだと撮影の際に不自由することが多いと思ったので、「プレハブでいいです」と言ったら、あの場所を見つけてきてくれて。撮影所願望みたいなものが自分にあるんだと思うんですけど、メインセットだけは、ともかく火気以外なら何でもＯＫという場所で腰を据えて撮りたいんですよね。そしたら、結果的に廃校だったり廃住宅だったり廃工場になってしまうわけです。
—だから寂しい場所が登場するんですね。
寂しさ自体は求めていないんです(笑) スペースが欲しいとなると使われていない所になるじゃないですか。
—裏寂しいところでロケするには合理的な判断があったんですね。
そうです(笑) 僕が物事を決める時は合理的なんです。

—冨永監督の作品には、笑ってはいけない雰囲気なのに思わず笑ってしまうシーンが多いと思います。笑ってもらうための演出を意識してやっているのでしょうか。
笑いが起きて欲しいという作りはしていないんです。バカバカしいものを見せるというのと、笑わせるというのは違うと思います。笑って欲しいわけではなくて、バカバカしいものをぜひとも見つめていただきたいのだと。バカな人物の息づかいに耳を澄ますことによって知ることができる現実もあるはずですから。
—本作でもそうですが、冨永監督の作品には唐突に主人公が変化するというシーンが共通して登場します。これはどのような意図があるのでしょうか。
僕自身の中で作品を超えてテーマにしていることがあって、それは男の自意識というものなんですが、それが今回も意図せずして出てしまいました(笑) 。

—意図的に変身する要素を入れた訳ではなかった。
そうなんです。手癖かもしれません(笑) 手癖ということは、絶対にやってしまうことなので、無意識のテーマだと思います。なので、今回も正直に仕事をしたということだと思っています (笑)
変身したがる男はハッピーだと思うんです。変身できる訳がないのに変身すれば全ては解決すると平たく考えている単純な人が僕は大好きで、賢い主人公にあまり興味がないんです。今回も、変身のケースがいくつかあって、ひとつは主人公の剛太ですよね。野球は駄目になったんだけど第二の人生を模索している、これもひとつの変身ですよね。それと表裏の関係にあるのが何故か竹内なんです(笑) 車とぶつかって頭を打ったのかわからないですけど、外的なきっかけで有無を言わせず変身してしまうという、変身過程の人なんです彼は。変身に成功した希崎、すこやかに変身しよとうと頑張っている剛太、そして、意図せずして進化の過程にある竹内。希崎がやっていることは、セリフでもありますけど「必死になってお金を返そうとしている人の手助けをしてあげることだ」ということなんですけど、それは、生まれ変ろうとしている人を手伝ってあげたいということなんです。だから、全ての登場人物が変ろうとしている訳です。なので、本作のテーマは変身かもしれません(笑)

—最後に劇場で『目を閉じてギラギラ』観る方にメッセージをお願いします。
女性が常に美しくなりたいという変身願望を持っているのと同じように、男も常に変身しようと思っている筈です。今回見に来てくれるであろう女性の旦那さん、恋人も変身しようとしているかもしれません。ふと見ると、ある日夫が違う姿になっているかもしれない(笑) 男とはそういう生き物であるというところを、楽しんでいただければと思います。
—ありがとうございました。
劇場版『目を閉じてギラギラ』
10月22日ヒューマントラストシネマ渋谷にて公開
キャスト
哀川翔（『ゼブラーマン』）
綾野剛（『GANTZ PERFECT ANSWER』）
三浦誠己　児嶋一哉（アンジャッシュ）　
渋川清彦　水崎綾女　杉山彦々　政岡泰志　木村文乃
山本裕子　渡辺真起子 / 小沢仁志　永澤俊矢
主題歌：哀川翔「目を閉じてギラギラ」（avex entertainment）
スタッフ
監督：冨永昌敬（『乱暴と待機』）
制作プロダクション：日活　制作協力：キリシマ1945　
製作・著作：BeeTV
(C) BeeTV