韓国発の超過激スタイリッシュ・ヒロインアクション映画『悪女/AKUJO』が、2018年2月10日(土)よりロードショーとなる。
今回、本作のプロモーションで来日したチョン・ビョンギル監督に単独インタビューを敢行し、本作への思いを伺った。
[取材:畑史進]
史上最強の女殺し屋。最後の暗殺ターゲットは、最愛だった人―。犯罪組織の殺し屋として育てられたスクヒ(キム・オクビン)は、育ての親ジュンサン(シン・ハギュン)にいつしか恋心を抱き、結婚する。甘い新婚生活に胸躍らせていた矢先、ジュンサンは敵対組織に無残に殺害されてしまい、逆上したスクヒは復讐を実行。しかしその後、国家組織に拘束されてしまい、政府直属の暗殺者として第2の人生を歩み始める。やがて新たに運命の男性に出会い幸せを誓うが、結婚式の日に新たなミッションが降りかかり――
—本作を制作するに至った経緯と思いをお聞かせください
ビョンギル監督:自分の前作(『殺人の告白』)が大変ありがたい評価を受け、更に僕に投資をしてくれるという会社が現れ、僕に作りたい映画を作っても良いと言って下さったのが最初でした。韓国では今まで女性を主人公にしたアクション映画は成功しないという空気があったので残念に思っていました。そこへ自分の思い描く好きな映画を作っても良いというチャンスが巡ってきたので、誰もが作ってこなかった女性を主人公にしたアクション映画に挑戦しようと思いました。
—この映画は画とストーリーどちらが先行した感じでしょうか?
ビョンギル監督:一番最初は簡単ではあるんですが基本的なプロットを描いて、そこから必要なビジュアルをハメ込んでいき、ストーリーを構築してきました。
—冒頭からファーストパーソン、一人称視点の映像から始まるんですが、今年の春に『ハードコア:ヘンリー』という全編一人称視点で描かれる映画が公開されました。この映画に影響を受けたりされた部分もあったのでしょうか?
ビョンギル監督:実は『ハードコア』が公開される前から私達も一人称視点の映像を作る準備や機会がありました。数年前にVRというものが出てきたときにVR映像を作る仕事がありまして、その際にVR映像の作り方を勉強したことが本作に活かされた部分もあります。また、これまでにも一人称視点の映像を映画の中に取り入れることはありましたが、『ハードコア』は最初から最後まで一人称視点で作られた映画なので高い注目を受けたこともわかります。一方で僕は『ハードコア』が公開されていた時期に、一人称の視点で撮りつつワンシーンワンカットを諦めるべきかどうか考える岐路に立たされていました。ただ我々は刀を使ったアクションや途中で3人称に切り替えたりすることをやってみたかったのです。『ハードコア』がもし自分たちと同じ考え方を持って制作されていたら自分たちは制作する意義がないと思ったのですが、幸いにもあの映画は最後まで一人称視点で描かれてかつワンシーンワンカットではなく、ジャンプカットもいっぱい使ったものでした。そうでないとあそこまでの映画は作れないですし、そうしたことが知れたからこそワンシーンワンカットで本作を作ることへの難しさも分かり、挑戦心を持って本作の制作を始めることが出来るようになりました。後はあの『ハードコア』は主に銃ばかりが出てきてそれで終わってしまいましたが、我々は刀、ナイフ、短刀を使ったので違うと思います。一番の違いは映画全体を一人称だけでなくいかにして三人称にして一人称に戻すのかという挑戦も出来たことだと思います。そして先だって仕事をしたVRの短編映像を作った際のノウハウも活用してこの映画になっていると思います。
—この映画は血しぶきが多くかなり監督のこだわりが垣間見えました。
ビョンギル監督:おっしゃる通りで、刃物の血の出方と銃撃の出血は違いがなくてはいけません。刃物の場合は空気圧で膨らんだものに傷が入って切り傷に沿って勢い良く出る感じに。一方銃撃の場合は爆弾が爆発したような出方にするよう分けて演出を施しています。
—ビョンギル監督はどのようにしてこの映画業界に携わるようになっていったのでしょうか?
ビョンギル監督:何故かアクション出身と言われているのですが、実は違うんです。過去には独立の短編映画を撮ったり、一応ソウルのアクションスクールに6ヶ月通って修了してからドキュメンタリー映画も撮っていたのですがその映画が『俺達はアクション俳優だ』という作品なんです。もしかしたらそれが何故か巡り巡って韓国の方で僕がアクション俳優出身となってしまったのです。
—なぜアクション俳優を目指そうと思ったのですか?
ビョンギル監督:子供の頃から絵を描くのが好きだったので画家になりたいと思っていました。でも美大に通うことが出来なくてその道は諦めたんです。韓国で数え年25歳のときに軍隊を除隊した後、本当に自分がやりたいことは何なんだろうと考えるようになりました。そうしたら僕は映画が好きなんだ、アクション俳優でもいい、監督でもいい、美術でもいい、とにかくその業界に携わりたいと思うようになり、その最初の自分へのテストとしてアクションスクールに入って何かしらの道が切り開けないかなと思ったんです。ソウルアクションスクールはオーディションにさえ合格すれば授業料が無料で通うことができました。もし合格していなくても別の道でこの業界に足を踏み入れて一人で映画を作っていたと思います。
—『悪女』はプレビズを作っていると思いますが、それも監督ご自身で作られたんですか?
ビョンギル監督:もちろんです。どういったアクションをどういったアングルから撮るのかというデザインを僕が考えて、それを別の技術者、エンジニアが作ってくれています。
—本作のバイクチェイスは本当に素晴らしいシーンでしたが、どれくらいの時間をかけて撮られたんですか?
ビョンギル監督:この映画のオープニングからエンディングまでのアクションシーンはプレビズも作りましたし、それをもとに練習も随分重ねました。そしてバイクのシーンですが、実際にバイクを走らせるのは難しいのでどうすれば良いカットが取れるか、恐らくこうすればいいだろうという計算を巡らせて撮影に臨んだ結果、思いの外すんなりとうまくいって思った以上の画が撮れました。そこまでには不可能ではないか思いもありましたが、勇気を出して一歩を踏みだしたことが成功の秘訣かなと思っています。
—ドローンも使って撮影されたんでしょうか?
ビョンギル監督:ドローンは使ってないですね、お金が足りなかったです・・・。ただカメラの台数はトンネルのシーンは一台で、それ以外のシーンはオートバイに小さいカメラを何箇所か付けて撮影しました。そうしてあのバイクシーンはあそこまでのクオリティまでに仕上がったんです。
チョン・ビョンギル
【監督・脚本・製作・アクション監修】
1980年8月7日生まれ。スタントマン出身という異色の経歴を持ち、アクションスクール訓練生だった時の経験を活かして、2008年、29歳のとき、『俺たちはアクション俳優だ』で長編映画デビュー。2012年には、藤原竜也主演×入江悠監督で日本でもリメイクされ大ヒットを記録した『22年目の告白 -私が殺人犯です-』のオリジナル作品である『殺人の告白』の監督・脚本をつとめ、新人監督賞を多数受賞した。それから5年―、今作で再びアクション映画のメガホンを執る。自身の短編映画『Standing on the Knife(英題)』をもとに、「悪女にならざるをえなかった女性の人生」をテーマに、汚れた世界で生きぬく“悪女”、スクヒを作り上げた。
『悪女/AKUJO』(R15+)
2018年2月、角川シネマ新宿ほかロードショー!
配給:KADOKAWA
(C)2017 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & APEITDA. All Rights Reserved.
公式HP:akujo-movie.jp
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