観る者を翻弄する!≪脳≫コントロール・スリラー『ジョナサン-ふたつの顔の男-』紹介コーナー


<記事:畑史進>

6月21日より『ベイビー・ドライバー』で初主演を勝ち取ったアンセル・エルゴートの最新主演作『ジョナサン-ふたつの顔の男-』が全国で公開される。本作は、ひとつの身体にふたつの人格が入っている男を、片方の人格の視点から追うというサスペンス映画。人格の一人は陽気で外交的で社交性の高い「ジョン」。もう一人は内向的とまでは行かなくとも日々を淡々とルーティーンな毎日を送る「ジョナサン」。彼らは全く正反対の性格でありながら、脳に埋め込まれた「タイマー」により12時間で切り替わるよう設定されている。

もちろん、片方の人格が起きているときはもう片方の人格は眠っている状態。そこで彼らは一つの体を共有していることから、社会生活に矛盾ないよう「ビデオメッセージで半日間あったことを報告する」「その日に起きたことを全て話す」「恋人を設けない」など、ルールを設けて生活する。映画はこの真面目なジョナサンの視点を通してスリリングに展開していき観客は次第にどちらの人格のストーリーが展開されているのかハラハラすること間違いなしだ。

二重人格モノをテーマにした映画はこれまでにも、『ジキル博士とハイド氏』を筆頭に、『ファイト・クラブ』(99)や『シークレット ウィンドウ』(04)、『複製された男』(14)など、本来の自分とはかけ離れた理想的な自分を作り出し、現実と乖離していくことから物語は展開されていくが、本作は少し違う。なんと医療技術を駆使し、脳にタイマーを埋め込むという新たな発想。そして12時間で正確に人格が入れ替わり、さらには各々の生活が確立されているのだ。

この近未来的で斬新な設定は一体どのようにして生まれたのか。メガホンをとったのは、本作が長編デビュー作となるビル・オリバー監督。アイディアの発端は高校時代に起きた、友人とのある会話だそうで、「友人が朝学校に来て、ロッカーを開けようとしたら鍵の番号が変わっていたんだ。そうしたら彼は、“もしかしたら夜の内に自分の中の別人格が覚醒して、自分の知らない間に行動をしているのかもしれない!”という話をしていたんだ(笑)。そこで、昼と夜とで人格が違うという設定は面白いなと思ったのさ」と明かす。

今回のアイディアを実現させるに辺り、医療関係者にインタビューをして回り、リサーチを重ねる中で、ビル監督はこのアイディアは決して想像上だけの話ではないことを知ったそうで「脳に信号を送る為の医療用デバイスがあって、それを埋め込むということは実際にあると聞いたんだ。今はパーキンソン病やてんかん、うつ病の治療に使われているそうだよ。人格をコントロールできるかわからないけどね!」と明かしている。

ひょんなことから得たヒントから、斬新な設定が作り上げられた本作。映画の中で描かれる脳タイマーは、近い将来身近なものになりそうな事柄だからこそ、ある種自分事として捉えられ、好奇心を駆り立てられること間違いなし!プロットを気に入り本作の出演を決定したアンセル・エルゴートお墨付きのストーリーを是非劇場でお楽しみください。

■プレビュー感想
1つの体に2つの人格が存在するという作品はプレス文にもあるように、過去に様々な作品があった。近年では『君の名は』の三葉と瀧の2人の入れ替わりが記憶に新しいかもしれない。本作の共通点は『君の名は』と同じように、日々の社会生活に矛盾が生じないよう報告し合うというルールを設けており、これを監督であり脚本に携わったビル・オリバーが意識していたかどうかはわからないが、海を超えて実に合理的であることが証明された。

この作品はネタバレを交えた感想が全く書けない類の作品で、このプレビューで興味を持てたら是非劇場に足を運んで観てほしい。そこで映画の内容に触れないところでこの作品を端的に紹介するなら、「真の主役は暗転シーン」ということ。この作品は先も書いたようにジョナサンの日常を目にすることから始まるのだが、ジョナサンがジョンへと切り替わる時に暗転が挟まり、観客は決して生のジョンを見ることなくそのまま翌朝を迎えたジョナサン姿を目にすることになる。

この暗転がジョンの活動時間と言わんばかりに長く取られていることもそうだが、その他にも観客に対して就寝するときの感覚に近いようなニュアンスを持たせていると同時に、他の映画にはない独特な空気づくりに成功している。この場面転換は映画的というより舞台劇に非常に近い流れで、舞台鑑賞に親しみのない人にとっては大変新鮮でかつ不安を誘う作品だと感じるかもしれない。この暗転の明けには必ずと行っていいほど“時計”が映し出され、暗転明けからの時計のカメラにフォーカスが移る光景は、見る人に様々な展開の想像を掻き立てさせることだろう。

『ジョナサン-ふたつの顔の男-』
6月21日(金)新宿シネマカリテほか全国公開
配給:プレシディオ
(C) 2018 Jonathan Productions, Inc. All Rights Reserved
公式サイト:http://jonathan-movie.jp/

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