映画レビュー ド派手なドンパチを理屈なく楽しもう『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』



この手のオモチャ物販と連動しているようなシリーズ作に内容はあまり追い求めないが、月の裏側を舞台に……そして冷戦時代の米ソが競い合っていた宇宙開発競争まで遡ったプロットは、地球人が宇宙への憧れを抱いている現在ともオーバーラップできるので大変興味深く素晴らしいアイデアであり、少々タイムリーなネタとも被りまくるので一般人からの興味も惹かれるだろう。まだ人類が未踏の地としている火星にしなかったのは現実離れしているからなんだろうけどもね。ピーター・ハイアムズ監督でさえも『カプリコン・1』で大芝居打たせたぐらいだしさ。
アイデアが冴え渡るプロットに魅了されたのと同時に、3作目になってから日常の現実がコンピュータ・グラフィックスじゃないのかと思ってしまうほど現段階でもっとも優れたVFXを魅せてくれる『トランスフォーマー』最新作であるが、CGの素晴らしさを今更語るのなんてハッキリ言ってナンセンス極まりない。当たり前であるし、それが出来なかったらこのシリーズは生まれなかったわけだからね。
マイケル・ベイ監督は2作目で変形シーンを一瞬で完成させたのに対する観客側からの批判を受け止め、この3作目ではしっかりと見せるし、スローモーションも多用してくれるのは良い試み。しかし、人間の眼というのは恐ろしいことに慣れしてしまうのだなとも実感。1作目の時に得られた衝撃未体験ゾーン……つまり記憶に残るキラーショットは派手なVFXが数多くあるにも極少なし。それはプロットの面白さに数人で手掛けた脚本がついていってないからなのではなかろうか。随所に散りばめられている物語の破綻が折角の良いプロットを台無しにしている気がして仕方ない。おかげで説明が必要なシーンと必要ないシーンのバランスが保たれていない物語箇所に対し、頭には「?」マークばかりが浮かびまくる結果に……。結局は解明されないままの物語箇所が多いことから印象的なキラーショットが個人的に欠けていたのかなとも思わされた。唯一新しさを感じたのは米軍のムササビ隊ショットぐらいか。このシーンの空撮は本当に見応えがあるので大きなスクリーンで、且つ3Dで観ておいて絶対にソンはないと断言。あとはいつもの『トランスフォーマー』なので作品的安定感はバッチリ。

好きなシリーズであるがゆえに厳しく鑑賞してしまったが、グラボイズみたいな敵やら、非カンフー的ジャッキー・チェン映画のようなアクションやら、スターウォーズのライトセーバー音やら、パロディーなのかオマージュなのか不明だけども笑ってしまうシーンも多々あり。ジャック・ブラックにソックリな人物が2カットほど登場していたのだが、実際にあれは本人のカメオ出演だったのか気になる。
良い部分と悪い部分が混在しまくっている今作は、一応完結編扱いでパラマウント側は仕掛けているが、映画を観終わった後のお客さんは口を揃えて「どこが完結編なんだよ!」と言うだろう。それだけ物語の破綻に加え、解明されないまま話が進行しまくっていたのだ。ま、そんな映画は星の数ほどあるので言及しまくるのも野暮だが、『アイランド』で使用したカーチェイスシーンを劇中でそのまんま再利用したのだけは責められなきゃいけないのではないのかな? それとも観客側はわからないとでも思ったのか? 何はともあれ、このようなアクション映画は迫力を求めなきゃいけないから映画館の大スクリーンで鑑賞するに限る! 人間ドラマは希薄になったがそんなのは気にしなくてもいいでしょ! 全てCGだけども派手なドンパチを理屈なく楽しもう!
レビュアー:ジャンクハンター吉田
映画『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』7月29日(金)より全国超拡大ロードショー
製作総指揮/スティーブン・スピルバーグ
監督/マイケル・ベイ 
出演/シャイア・ラブーフ、ロージー・ハンティントン・ホワイトレー
ジョン・マルコビッチ、ジョシユ・デュアメルほか
配給/パラマウント  ピクチャーズ  ジャパン
公式サイト:http://www.transformersmovie.com/intl/jp/
(C)2011 PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved. HASBRO, TRANSFORMERS and all related characters are trademarks of Hasbro.
(C)2011 Hasbro. All Rights Reserved

コメント

タイトルとURLをコピーしました