映画レビュー　ゾンビが街の悪党どもを蹴散らす！『ゾンビ処刑人』

SFXアーティストとして『エルム街の悪夢3/惨劇の館』でキャリアをスタートさせたケリー･オプリーが、７年間の構想を経て完成させた初監督作品は、異色のゾンビ映画として世界中の映画賞を席巻した。
イラク派兵中に不慮の事故死を遂げた若き兵士バートは、墓場でゾンビとして甦った。そんなゾンビが街の悪党どもを蹴散らして人血を吸うことを思いつき、その結果、“夜回りガンマン”と称されるヒーローとして注目を集めることになる･･･というお話。

ゾンビ映画と言えば様々なタイプの作品が存在するが、本作は従来のこれらの作品群とは違ったタイプの作品である。まず、主人公バートは人間としての感情を持ち合わせており、無差別に人々を襲撃することなく、悪党だけにポイントを絞って人血を啜る。そして、このゾンビがヒーロー扱いされるというユニークな設定が新味だ。そして、相棒となる友人ジョーイとの粋なセリフのやり取りで笑わせるというバディー･ムービー風味がさらなる面白さを感じさせてくれるのがこれまたよろしい。
劇中ではブラックな笑いも伺え、実に面白い。バートが人間の食物を食べれば緑色のゲロを吐き散らし、後半部では大人の玩具=バイブを意外なことに使用する等、おバカで悪趣味丸出しではあるが、印象深いシーンとして高く評価したい。
ゾンビ映画ならではのグロテスクや笑いだけでなく、アクション要素やゾンビの悲哀感や人間社会の皮肉も描かれているため、ドラマとしての見応えも十分だ!!
本作をきっかけに、今後もユニークで新しいゾンビ映画が作られることだろう･･･。
レビュアー：佐々木貴之
『ゾンビ処刑人』
11/19(土)よりシアターN渋谷にてレイトショー他全国順次公開
(C) 2011. Putrefactory Limited, LLC