【STORY】
孤独な戦いは終わりを告げ、ようやく訪れた、“家族”と過ごす幸せな時間。 その平穏が破られた時、男の怒りは頂点へ―― いまだベトナム戦争の悪夢にさいなまれる元グリーンベレー、ジョン・ランボー。 孤独な戦いを経て、祖国アメリカへと戻ったランボーは、故郷アリゾナの牧場で、古い友人のマリアとその孫娘ガブリエラと共に、“家族”として穏やかな生活を送っていた。しかしガブリエラがメキシコの人身売買カルテルに拉致され、事態は急転する。
愛する“娘”を救出するため、ランボーは元グリーンベレーのスキルを総動員し、想像を絶する戦闘準備を始めるのだった――。そして、ランボー史上最高の頭脳戦が今、はじまる!!!
【文・鶴岡亮】
鶴岡亮Twitter:https://twitter.com/ryoutsuruoka
今作『ランボー ラスト・ブラッド』はスタローンが制作した映画プロダクション『Balboa Production(バルボアプロダクション)』が公開した最初の映画。スタローンはプロダクションに留まらずに脚本も手がけ、並々ならぬ力の入れようでもって作られたシリーズ最新作だ。今回は、劇中印象的だったランボーが実家の牧場の地下に掘っていた“地下トンネル“に関する部分を解説していきたい。
<ランボーが掘っていた地下トンネルの元ネタ>
冒頭、父が運営していた牧場の後を継ぎ、平穏に家族との共同生活を送っているかのように見えるランボー。しかし、その牧場の地下にはランボーが作り上げた地下トンネルが存在し、物々しい奇怪な存在感を醸し出している。本編を視聴した観客の多くは、何でランボーは地下にこんなものを掘ってるんだ?と疑問を抱いたことだろう。実はこのランボーの地下トンネルは現実にモチーフになったものが存在する。
それは、ベトナム戦争時代に南ベトナム解放民族戦線が建設した『クチトンネル』だ。クチトンネルは、ベトナムのホーチミン市に存在する地下三階で構成されたトンネル施設。そのトンネル内の距離は全長200キロメートルにおよび、カンボジア付近の国境線に迄通じている。各所に地上の敵を監視し攻撃出来る除き穴や、トンネルから川に出ることも出来るエリアも存在し、このクチトンネルを使った神出鬼没なゲリラ戦法に当時の米軍は苦しめられた。その地帯は米軍に難攻不落の『魔の三角地帯』と恐れられた程である。(現在は観光地にもなっているのでクチトンネルの中に入ることも可能。)
つまり、劇中ランボーが牧場の地下に建設していた地下トンネルは、彼がベトナム戦争で敵軍から受けたゲリラ戦法をモチーフにして作られたものなのである。では、このトンネルは映画演出的にどのような効果を齎しているのか?次の項で説明したい。
<牧場とトンネルの対比構造>
今作のランボーは牧場で“家族”と絡むシーンでは、今までと比べると台詞量が多く人間性を取り戻しつつあるキャラクターとして描かれている。それを「光」と例えるなら「影」の面がランボーの地下トンネルだろう。地下トンネルはクチトンネルを思わせるゲリラ戦用拠点になっており、そこにあるもの全てがベトナム戦争由来のモノで出来た空間である。トンネル内にはアメリカ国旗が掲げられ、南ベトナム解放民族戦線が使っていた「板に杭を仕込んだトラップ」や「杭を仕込んだ落とし穴」などが配置され、ランボーがトンネル内でかける音楽もベトナム戦争時の1968年に『The Doors』がアルバム『Waiting for the Sun』で発表した楽曲『Five to One』である。(因みに、同じくベトナム戦争モチーフの映画『地獄の黙示録』の冒頭でも、同アーティスト『The Doors』の楽曲『The End』が使用されている)
家族と過ごす安住の地の象徴である牧場の下に、ベトナム戦争の象徴のトンネルが存在する。このシチュエーションは、ランボーが人間性を取り戻しつつも、ベトナム戦争の傷を未だに引きずっているという二面性を映像で表現しているのである。
後にランボーはこの地下トンネル内で人身売買カルテル相手に殺戮を繰り広げるのだが、まるでスプラッター映画のモンスターを思わせる存在感だ。ベトナム戦争から産まれたキリングマシーンのランボーが、ベトナム戦争で埋め尽くされた地下トンネルで再び暴力に目覚める。この煉獄のようなハードなストーリー展開に心震えて欲しい。何かとネタ映画として観られやすい本作だが、こうした演出面がしっかりと作られている作品なので、そちらもチェックして是非とも御覧頂きたい。
監督:エイドリアン・グランバーグ
脚本:マット・サーアルニック&シルベスター・スタローン ストーリー:ダン・ゴードン&シルベスター・スタローン キャラクター
原案:ディヴィッド・マレル
キャスト:シルベスター・スタローン、パス・ベガ、セルヒオ・ペリス=メンチェータ、アドリアナ・バラーサ:マリア・ベルトラン、イヴェット・モンレアル、オスカル・ハエナダ
原題:RAMBO:LAST BLOOD/2019年/アメリカ映画/シネスコ/カラー/5.1CHデジタル/101分/字幕翻訳:林完治/ R15+
提供:ギャガ、ポニーキャニオン 配給:ギャガ 公式サイト:gaga.ne.jp/rambo/ 公式Twitter:@RamboMovie_jp
© 2019 RAMBO V PRODUCTIONS, INC.
コメント
オープニングの日本限定(?)雪崩救助シーンは「クリフハンガー」の続編用から持ってきて使った等の話があります。
実際どうなんでしょうか?
次回の記事でお願いします!