メタルギア最新作『METAL GEAR SOLID PEACE WALKER』小島監督に直撃インタビュー!


大好評発売中、メタルギア最新作『METAL GEAR SOLID PEACE WALKER』。
ここまで最先端テクノロジーで業界をけん引してきたメタルギアシリーズだが、
最新作のプラットフォームはPSP。
メタルギアが今後見据えるものは何なのか。ジャンクハンター吉田が小島秀夫監督に話を聞いた。



吉田 : ここまでメタルギアソリッドシリーズは最先端ハードでのリリースでした。しかし最新作『ピースウォーカー』のプラットフォームはPSPですね。PSPで発売しようと思った理由は?


小島 : いっぱい理由はあるんですけど・・・。日本のPSP市場はかなり特徴がありまして、中高生が主なんです。なぜかというと家のリビングで据え置き型のゲームが出来ない、自分の部屋にテレビを買ってもらえないから、必然的にPSPを持っているんです。親や学校の目から逃れている唯一のゲームマシンがPSPなんですよ。この市場にものすごい人数がいるというのがあります。メタルギアシリーズはこの10数年、ソニーさんの据え置き型のプラットホームと共に歳をとってきた。しかしメタルの市場的には倦怠期というか、新しいユーザーにもっと入ってきてほしい。長い歴史のあるシリーズタイトルも実はメタルと同じ現象で、年齢層が下の子はやっていないんですよ。若い子はポケモンとモンハンなんです。PSPに「メタルギア」を投入することで若い子たちに知ってもらって、その壁を取り払いたいというのがあります。


吉田 : ということは今回のレーティングはやっぱり下がる?


01.jpg小島 : 今回は「C(15才以上)」に下げました。流血はないようにしましたね。「メタルギア」シリーズは最先端のテクノロジーを使って制作してきたんですが、これまでの垂直方向の進化だけじゃなくて、水平の方向にも広げたいというのがありました。今はまだ携帯ゲーム機と据え置きゲーム機の表現の幅は全く違いますけど、10年後にはクラウドコンピューティングの時代になっていくと思うんです。いつどこでプレイしてもゲームの中身は同じで、家でやるときには音響施設があって、外でやるときは当然画面は小さくなるけど、それなりに同じゲームが場所を選ばずに遊べる。それをPSPに最新作を投入することで早めに実験しておきたかった。なので今回は当然絵と音のスペック的なクオリティは下がります。しかし「メタルギア」を常に持ち歩いたらどうなるか、という発想でゲームデザインして創ったのが今回の「ピースウォーカー」なんです。結果的に垂直方向の「高み」を狙えなかったので、ゲーム上は出来ないことがかなり増えるんです。でも僕はゲームデザイナーなので「出来ないことを別の方法で再現できないか」ということはすごく楽しかったですね。「メタルギア」自体、その考えから生まれてきたので。ですからゲームデザイン的にはかなり進化してます。グラフィックやサウンドのクオリティは落ちましたけど、そこじゃない部分で進化できたんでよかったと思いますよ。


吉田 : ゲーム性があがっていると


小島 : ゲーム性もそうですけど、開発上、PSPだと割り切らなければ出来ないところがあるんです。たとえばPS3とかXBOX360だと、人ひとり作るのにも髪の毛とか全部作らなければいけなくなる。キャラクターを10人出そうとすると、とんでもないことになるんですけど、PSPでは記号化してしまえばいい。そもそも出来ませんからね、PSPだと。そういう意味でゲーム性を広げることができた。フィギュアスケートでいうところの、4回転ジャンプをしなければならないメタルギア。それもいいんですけど、今回は水平方向で違う演技をしたと。


吉田 : PSPに未来を感じてるようなことをツイッターに書いてたのは、そういうことなんだ。


小島 : PSPでも導入部分は普通に「メタルギア」できるんですよ。潜入したりビックリしたり。そうやって続けていくと、知らず知らずのうちに途中で二回くらいゲームの目的が変わっていくんです。それと今回の「核抑止」っていう大きなテーマがシンクロしてる。それが結構いけてるんです。そして最終的には今までにない「メタルギア」になってると。 


吉田 : 今回初めてCO-OPモードついてますけども、やっぱりメタルギアオンライン(以下MGO)から得た経験はあるんですか?


小島 : 今回は対戦もあるんですよ。3対3までできます。


吉田 : え!対戦あるの?


小島 : MGOでやった拠点制圧のルールも入ってます。それはそれでありますけど、MGOはCO-OPがなかったので、それを早いうちにやっておかないといけなかった。今回は「メタルギア」のCO-OPをどうしていくかっていうのも課題でした。CO-OPは今や主流になってるので、「ピースウォーカー」は一人でやっても、何回も遊べますし、CO-OPだけじゃなく、対戦やユーザー同士の交換もあるんですよ。携帯機の要素ほぼ入ってると思います。メタルをプレイしつつ、できることがどんどん広がっていくんですよ。気がつくと「なんかすごい新しい」と思うはず。


吉田 : PSP最大の難点はコントローラー操作だと思うんですけど、ここはかなり悩んだんじゃないですか?


小島 : そうですね。毎回ハードの性能が上がっていく中、初めての引き算なんです。匍匐(ほふく)での移動とかも切りました。匍匐自体はできるんですけど。そのへんは仕方ないです。ゲームデザインとして割り切るしかないですから。


吉田 : 体験版バージョンアップしてから操作の形態が変わったりとか、色々試行錯誤してるのが見えました


小島 : 操作は今回3つ選べるんですけど、アクションタイプとかハンタータイプとか。PS3の感覚だと最初はてこずるかもしれないですね。これも仕方がないですね。グリップ感などは、やっぱり慣れるには多少時間がかかるかもしれません。


吉田 : 今回の「ピースウォーカー」を理解するために、見ておいたほうがいい映画ってありますか。


小島 : 今回の舞台は1974年で「MGS3」からの10年後の話です。ベトナム戦争後くらいの映画を。『ワイルドギース』なんかもいいですね。あの辺の名作を見ながらプレイしてもらえれば。あと今回AI兵器っていうのが出てきます。これはあの時代のSF映画へのオマージュですね。あの頃はそういう夢を持ってましたもんね。機械に命を入れるとか。今は誰もそんなこと考えてない(笑)。「機械は人間が使うんだ」って。『地球爆破作戦』『2001年宇宙の旅』などのSFとかも見ておくといいかもしれません。あとは反戦運動の映画とか、ピースマークとかは『M・A・S・H』みたいな、若い人はそういうテイストの映画を見たらなんとなくわかると思います。オッサンたちは見る必要ないと思います(笑)。体の中にしみついてますから。


吉田 : たしかに(笑)。見ておいたほうがゲームをより楽しめると。


小島 : そうですね。もう「冷戦」をよくわかってない人も増えてきたと思うので、そういうテーマの映画も見といたほうがいいかもしれませんね。『合衆国最後の日』でミサイル1本でお偉いさんが集まってウダウダ言ってるような(笑)。あとは、「ドクターストレンジラブ」(『博士の異常な愛情』)とかもいいですね。そのままの名前のキャラも出てきますから。


吉田 : 前作「MGS4」が08年。そこから2年で世相的にも経済的にも変わったと思います。ゲームの普及も変わりました。海外のゲームからの影響などはありますか。


02.jpg小島 : それは当然あります。そうはいっても悩んだんですよ、今回PSPでやっていいのかって。海外で主流のチームがPSPでやることってあり得ないんですよ。やっぱり海外はXBOX360やPS3、PCの一番新しい技術を使って、大きいバジェットで全世界に売るっていうハリウッド方式なんです。でもこれはいい機会だと思うんです。ゲームデザイナーとして20数年、一度下に降りてみてようと。4回転ジャンプみたいな大技じゃなく、小技、基本をちゃんとしようよって。うちのスタッフもPS3でやった直後なんで、デザイナーなんかかわいそうですよね。もう「この画面許せない」みたいな(笑)。でもプログラマーとかも含めて、一回冷静に自分を見るというか。グラフィックとかサウンドとかごまかしがきかないですから。そうやってるとゲームとはなんぞやというところが見えてくるんですよ。僕らは20数年前にファミコンとかMSXでスタートしてる。当時はイメージはできていても、技術的な表現力が足りないから、ルールを考えるんですよ。今までそれでやってきたんですけど、若いスタッフはそれを知らないんで衝撃だったみたいですよ。だからすぐ相談に来ます。「できないっす。」って。そういう時、めっちゃうれしいんですよね。「できません?ハハハ、こうやったらできるやろ」って。ちょっと株が上がった感じしますよね。


吉田 : 今回はPSPだったから、この短いスパンで新作が出せたんですか?


小島 : ちょうど一年半ですね。実際の開発は1年ちょっとです。「MGS4」に関してはすべてにおいて作りこまなければいけないという意味で莫大な量だったんですが、今回1個1個は簡単に作れるんですけど、それがものすごい量になるので、それも今までにないほどですから。PSPならではのボリュームというか、表現ではないところのボリュームです。


吉田 : PSPの容量はUMDの片面2層だから2G弱ってとこですもんね。


小島 : 全然足らないので最後削ったんです。


吉田 : 2枚組にはするって考えはなかったんですか。


小島 : それはめんどくさいです(笑)。「MGS4」はブルーレイで2層にしても足らなかった(笑)。で、今回ちょっとチェックのために1カ月延ばしました。全仕様ですごい物量があるので、チェックに何百時間とかかるんです。今までは十数時間とか、長くても20時間でしたから。遊べる部分がいっぱいあって、その組み合わせも延々とあるので、なかなか終わらないゲームなんです。それをチェックするには全部人間がチェックしなければならないんですよ。それを論理的に計算してみると、あまりにも莫大な量なんでいっぱいカットしました。


吉田 : もったいないー。では、いつかディレクターズカットは楽しめるようになるとか。


小島 : でも、感覚的には変わらないんですよね。200ミッションが100ミッションになったところで。骨は一緒なんで。容量もそうですけど、無線の音声とかも「MGS4」より多いんじゃないですかね。無線機のデータがブリーフィングファイルっていうモードでいつでも見れるんですけど、SONYさんとコラボさせていただいて、74年当時のSONYのカセットなんですよ。それがたくさんあって、いつでも聞けるんです。それでいろんなキャラの伏線とか生い立ちがわかったりします。電車の中でゲームしたくなかったら、それをずっと聞いてたらラジオドラマの代わりにもなりますよ。これが9時間くらいある(笑)。


吉田 : 9時間も入ってるんですか!「MGS4」はiPodだったけど、今回はSONYさんなんですね。


小島 : 歴代のウォークマンが出てきますよ。最初のやつと曲の頭出しが可能になったやつなど。


小島 : 最初のやつを開発していくと曲の頭出しが可能な機種が出てくるんです。最初はものすごい使いにくいですよ。最後は一番新しいのが出てくるんで使いやすくなりますよ。


吉田 : ズバリなんですけど「MGS4」のスネークはお尻がプリプリでセクシーでしたが、今回ズバリエロ的要素はあるんですか。これがないと小島秀夫じゃないみたいな(笑)。


小島 : エロというとレーティング的にアレなんですが、「パス」ですね。パスもかわいいだけじゃないですからね。アッと驚くものを。ほかにもセクシー要素はいっぱいあります。スネークとカズヒラ・ミラーってやつが、BLっぽいです(笑)。特別ミッションで本編関係ないんですけど。。


吉田 : それは誰のために作ったの?(笑)


小島 : 若い子のため!カズヒラは今すごい人気あるんですよ。杉田さんの声で、ブリーフィングファイルにそういうエピソードがいっぱいあります。カズヒラって女たらしなんで、基地の女の子を全てに手を出しちゃうような奴なんですよ。で、スネークが怒って、2人が裸でシャワールームで殴り合いするんです。そんで、2人でボコボコになった後抱き合って「ハハハ」ていってるような。


03.jpg吉田 : それ収録されてるの?


小島 : もちろんあります。


吉田 : モザイクが入ってる?


小島 : そこは妄想ですから音だけで。そのへんは大人なんで大丈夫です。


吉田 : よかった。そういう要素が入ってないと、小島秀夫監督作品じゃないから。



小島 : 中学生も理解できる男気とか、熱い部分というのがあります。5分前までは敵だったやつを仲間にして戦いますからね。


吉田 : ストーリーの全容はまだわからないけど、どんどん妄想が膨らんでくる!どんなゲームになってるんだっていう。


小島 : 伝えられないんですよ。言えないんじゃなくて、言ってもわからない(笑)。やらないとわからないんで、売りにくい(笑)。


吉田 : メタルギアの進化版だ。


小島 : そうですね。ハードが落ちた分だけ進化したという。


吉田 : すごいね。ハードはダウングレードしたのにゲームの内容は進化してる。こう考えるとすごい。


小島 : 次はこのまま上がりますよ。ハードはどれかわかりませんけど、ゲームデザインはいけるっていうのがわかったんで、
     この形のまま一番上のハードでやりたいですよね。PS3とかXBOX360とかPCとか。


吉田 : XBOX360で次出るやつは制作総指揮ですよね


小島 : あれは総指揮ないです。


吉田 : 名前貸してるだけ?


小島 : いやいや、一応プロデューサーですから。コジプロでやってるんで。さっきも打ち合わせだったんですけど、どうしても入ってしまうんですよね。これは違う。なんやこれって言ってしまうので、そうなると自分のゲームになってしまうんで。今までは『ピースウォーカー』があったんですが、これ終わったら危ないので、違うのに早く走ろうと思って。


吉田 : 次は海外版の『ピースウォーカー』ですか。


小島 : 今やってます。


吉田 : 海外版と国内版の違いは。


小島 : あんまりないですよ。言語と、ちょっと調整してるぐらい。


吉田 : 難易度については。


小島 : 海外の人にやってもらったんですけど、ちょうどいいと言うので。


吉田 : ちょうどいいんだ。日本人には難しいかもしれないけどね。


小島 : システム的に特徴があるんですけど、携帯機のゲームなんで、ミッションでストーリーも切れてるんですよ。並行軸でいろんなミッションが並んでるんです。やらなくてもいいですし、5分しかなかったら5分のミッションもあるんです。時間がなかったりする場合は、ボス敵を壊したり、敵を殺したりすればいいんですよ。今回は敵を殺すと回収できないですけどね。さらにAI兵器のパーツとかも抜けたりするんですよ。ポッドに入ってハル9000みたいに抜いたり。そのチップを集めたらどうのこうの、とかも用意してます。砲台を壊すと砲台もとれなくなるので、それは協力プレイでやったほうがいいですよ。それでも難しいって人は、敵をどんどん回収すると、自分の基地で武器を作ってくれるんですよ。で、武器がどんどんいいのになってくるんで、それで倒せます。それでも倒せない人は、みんなでやって倒せば何とかなります。


吉田 : ミッションはやり直しがきくようになってる?


04.jpg小島 : 何回でも遊べます。そのミッションの評価によって、基地の大きさとかも変わってくるんですよ。どんどん人を集めて、その人たちを配置して。オートモードもあるんですけど、(研究開発)工作班とか(実戦部隊)傭兵、糧食班とか諜報班とかって割り振ってそれぞれにどういう人がいるかでどんどん大きくなってきます。食糧班に優秀な奴がいるとレーションとかいっぱい作ってくれる。工作班も設計図があればそれを作ってくれるんですよ。人が増えると、食わせていかなければいけないので、食糧班に人を送らなければいけないとか。傭兵班は別の紛争地帯に派遣もできるんですよ。


吉田 : シミュレーション要素がすごい。


小島 : ミッション、ストーリーを追ってやってるうちに、仲間を集めて大きくしていく。で、運営やってるとこれが楽しいんですよ。開発とかに手を入れると、早くいいものが出来るので、それをやってるうちにそっちがかなり自分の中でウェイトを占めていくんですよ。もっと大きくしたいと。最終的にはものすごくでかくなって、その人の行動次第で、英雄度とかも決まる。英雄度が高いほどいろんな人がリクルートできるんですよ。向こうから入れてくれって。基地の上限は300人なんで出来が悪い奴はファイヤーってしてください。これが経営者の方はたまらんわけですよね。現実社会ではなかなかそういうわけにはいかないので。「ファイヤー!」って大塚明夫さんが言ってくれます。


吉田 : 最高それ!



小島 : そのたびに言ってくれますよ。


吉田 : 300人がMAX?


小島 : MAXです。入れ替えていったらどんどん大きくなって、どんどん優秀な人が入って、ものすごいものが作れていくんです。これはほぼ終わりがないです。これを最初に言うとめんどくさいという感じがすると思うんですけど、そんなことはないです。彼らが勝手にやってくれるんで。その人たちを、アウターオプスっていう別のところに連れて行って戦わせてると、雇ってくれっていうのもできますし、奪った武器とか戦車とか装甲車も使えますよ。


吉田 : ついにそこまで進化しちゃったんだ。


小島 : 全部をフルにして全武器を開発してったりすると、ものすごい時間がかかります(笑)。そこまでやらなくても、対戦したりもできますし、「デリバリー」っていうのがあって、友達へのプレゼントを段ボールに仕込めるんですよ。誕生日のお祝いをあげるとか。で対戦すると勝手にそっちに行ってるんです。いついつオープンとかにしておくと、開けたらハッピーバースデイが流れたり、音楽とかも選べます。ほかにポケモンみたいにトレードも出来ます。AさんとBさん交換しようとか。諜報班とかいると、いろんなテクノロジーを持ってきてくれるので、それでレーダー作ったりして。それがどんどん自分のミッションに反映もできます。


吉田 : このシステム使えばメタルギアシミュレーションみたいなのは完全に出来ますね。


小島 : 最終的にやろうと思えばどんどん巨大になるんです。最初は軍隊のない国コスタリカが侵攻されて、バラックに住んでいる国を追われた奴ら20人くらいに助けてくれと言ってくる。そこにプラントが与えられて、人を集めて大きくしていって、事件を解決していったら、歴史に関与してしまう。これは、世界から見たら脅威なんですよ。国家に属さない愚連隊みたいな奴らが最新兵器を持ってる。最終的にみんな狙われる。世界から見たら駆逐したいんですよ。こういうのはあってはならないと。思想とかイデオロギーとか関係なく動いているんで。そこで最後どうするかというと・・・核を持つんです。


吉田 : やっぱり核なんだ。


小島 : 抑止力の究極を自分で体験してもらって、中学生の方に嫌な気持ちになってもらうんです。


吉田 : これだけやる要素があったら、中高生は勉強しなくなっちゃうな


小島 : これで勉強できるんです。ゲバラやニカラグアのこととか、コスタリカのこととか。かなり勉強になりますよ。


吉田 : 世界史だけ強くなっちゃう。


小島 : 74年は試験に出ないですけどね。


吉田 : 話を聞いてると、実は本編はすぐに出来上がって、サブ的な部分がえらい時間かかってるんじゃないかなという感じがするんだけど


小島 : ストーリーは5年くらい前に出来てますからね。ものすごく出来ることが多いから、全体を見てる人は僕と数人しかいないんで、それも不安なんです。僕も今まで体験したことがない。部品、パーツを作ってる人はそれしか作ってないんで、他のことは知らない。それで合わせてみたときが怖いんです。でも今回これがよかった。それからみんな、「俺たちは天才だ」とか言い出して。「お。お前天才か」みたいな。ほっとしましたけどね。


吉田 : PSPで作りこむってすごいな。ライバルはモンハンだね、まさに。


小島 : 今回のコスタリカってジュラシックパークのロケ地でしょ。今回出てくるんです。モンスターハンターポータブル2nd Gに登場するモンスターそのものが。曲も含めて。


吉田 : それってコラボレーションしてんの?


小島 : そうです(笑)。


吉田 : たまんないですね。


05.jpg小島 : UFOみたいなAI兵器も出てくるんですけどね。ゲームやってたら、見たら足元にモンスターの足跡があったりするんです。で、あることをすると、ゲームの中にトレニャーがいるんです。トレニャーが島に船で連れて行ってくれるんです。するといつでも行けるミッションになるんですが、そこでモンスターハンティングが出来ますよ。


吉田 : すごいな。モンハンプレイが出来ようになってるわけだ。


小島 : レーション(携帯食糧)を焼いたり出来ますよ。こいつらの素材取って、武器だって作れますよ。


吉田 : 武器も作れるんだ。


小島 : しっぽ切ったりしてものすごい武器作れますよ。モンハンミッションはトレニャーに会った後いつでもいけます。メタルとモンハンで一緒に中高生応援しましょうと。



吉田 : ミリタリー系ゲームといったら、「メタルギア」シリーズっていうのは、世界的にマーケット広げてきたんだけども、「コールオブデューティ4 モダンウォーフェア2」がぐわーっときたじゃないですか。


小島 : まぁいいんじゃないですか。


吉田 : モダンウォーフェア2とかやってると、FPSで「メタルギア」どうなのかなと。


小島 : いいんですけど、それは僕がやらなくても、というか。作りたいは作りたいんですけどね。それは僕の役割じゃないかなと思います。FPSってあまりルールを変えられないじゃないですか。海外のクリエイターには「ゲームデザイナー」っていう人はほぼいないんですよ。レベルデザイナーはいっぱい優秀な人がいて、マップを作らせたらむちゃくちゃうまいんですけど、システムを変えない。プログラマーに頑張ってもらってリアル感を出したりとか、物理でこんなことしたりとかで、ああいうゲームがいっぱい出てくるんでしょうけど、僕は一応ゲームデザイナーなので、誰もがやったことのないゲームとかいうのを・・・まぁそういうこと言ってるからいけないんでしょうけどね。FPSはやりたいんですけど、FPSのジャンルで括るのはちょっときつい。僕が作るともしかしたらFPSと言いながら違うものかもしれないので、そうなると本当に好きな人はやらないかもしれない。


吉田 : なるほどね。アーケードの「メタルギア」は3Dですね。稼働はいつ?


小島 : あれはまだ稼働時期未定、今の段階では参考出展という形にさせていただいているので。


吉田 : なるほど。


小島 : 3Dはアバターのおかげで流れが変わりましたからね。


吉田 : アバターはどうでしたか。


小島 : まさにキャメロンでしたね。わらかしますね。


吉田 : エイリアン2そのままやってたりね。


小島 : HALOをパクったって言い出してね、その返しが「何言ってるんだHALOは俺をぱくってるじゃないか」って。素晴らしいです、キャメロンは。サインしてくれって言ったら殴ったとか、最高やなお前はみたいな。やっぱり、演出はうまいです。お話の作り方とか。棺桶で始まって、お兄ちゃんの棺桶燃えて、出てきて足が使えない、で無重力から始まって。ああいうのはさすがキャメロン。映像的にはゲームのムービーパートみたい。


吉田 : たしかに


小島 : 絶対やってはいけない「顔が青、耳とがってて、しっぽが生えてる」なのに売れてしまうという。お前最高やな、どこまですごいねんみたいな。


小島 : 必ずカメラ引いて物凄い数を出すんですよ。FFのムービーみたいなもんですよね。


吉田 : 結局やりたかったのは、エイリアン2とかあぁいうドンパチ物だったというか。


小島 : 大佐とかいいですよ。どこにいたんですか、あの俳優。誰が見つけるんですかね。


吉田 : あの人が一番の肝だった気がする。


06.jpg小島 : 僕がモーションキャプチャーで大分苦しんだんで、あのシステムがあればって、ずっと期待してたんです。最近メイキング見てたら、力づくでやってるなーって印象がある。でもあのおかげで、モーションキャプチャーの地位があがったんで、俳優さんとかも今後やりやすいと思います。キャメロンのメイキングが見たいんです。キャメロンといえば、メイキングのほうがおもしろい。アビスのメイキングが最高ですね。未だに見ます。スタッフにぼろかす言われた時とか(笑)。キャメロンも頑張ってるなーって。一番最初にプールに潜って、一番最後に上がってくるとか。


吉田 : あの努力がないとここまで来れないでしょ。


小島 : キャメロンとか黒澤明さんとかは、俳優を駒だと思ってるんで嫌われますよね。ハートロッカー見ました?


吉田 ; 絶賛してるじゃないですか。


小島 : ビグローじゃないんですよ。


吉田 : ビグローっぽくないって感じですか。


小島 : カメラマンのチームがほとんどやったんじゃないですか?たまにハイスピードが出て「ビグロー!」と思うんですけど、いいですよ。銃火器の扱いが最高。


吉田 : スナイパーのシーンとか。


小島 : つばでジャムった弾を洗うんですけど、あんだけやっておいて、もうしんどいから帰ろうかって帰っていく。お前ら最高やないか!って。あんな勇気ないですよ。決着つかないですから。逃げたかどうかわからない。すごいリアルですよね。


吉田 : 映画評論家の町山智浩さんが言ってたことなんですけど、あの映画では、実際に銃を撃つ時、観測手って人がいるじゃないですか。撃たれたかどうかは観測手の視線になってますよね。実際に銃撃った反動で上がっちゃうから着弾したかどうかわからない。


小島 : スナイパーって必ずバディなんですよ。観測手とスナイパー。


吉田 : あの映画の影響でスコープで見て着弾したという描写は今後なくなっちゃうんじゃないかと。


小島 : そうですね。大体はバディなんですけどね、ホントは。観測手がやられてしまうんでどうするっていう。ちゃんとした物語は大体そうなんですけど。スティーブン・ハンターはちょっと違いますけどね。一人で風向きからみんなわかってる。カゲロウで湿度までわかるっていう。すごいなこいつは!って。それにしてもあんだけアメリカ人のことしか考えてない映画もないですよね。


小島 : キャスリーン・ビグローもアカデミー賞のときアメリカ人の兵士だけに感謝したらしいですよ。すごい国や、これは絶対生き残るわって。


吉田 : 小島さんのツイッターにNYPDでボムブラストスーツ着たって書いてあったじゃないですか。どんな感じだったんですか。


小島 : 重たいですよ。


吉田 : 動けるんですか。


小島 : 手だけ出てて、映画のは偽物だと思うんですけど、本物は重たいですよ。
     メタルの「2」のとき、爆弾処理班の取材にいったんです。ファットマンというキャラクターが元々、爆弾処理班で。あんだけ重装備なのに手はむき出しですからね、当然。でも今はほとんどロボットですけどね。なんとか着るのは着れますけど、あれで解体した人はなかなかいないと思いますけど。


小島 : 「ハートブルー」とかもそうですけど、ビグロー作品は男の描き方が少女漫画なんですよ。なんかそこだけちょっと嫌なんですけど、おっさんはもっと汚いんですよ。ホントは。


吉田 : 「ブルースティール」みたいなどんよりした感じでもないんだ。


小島 : ちょっと男たちが変ですよね。破滅思考入ってるんですよ。殴り合いが。それが今回の『ピースウォーカー』もちょっと近いですね。女の子から見てちょっと色っぽい男というか、崖っぷちにいる色っぽい男というんですかね。


吉田 : さっきアバターの話が出ましたが、映画は大分3D化が進んできました。ゲームも3Dがいろいろとでてきましたね。そこに対して考えをお持ちですか?


小島 : ゲームの3Dはメタル「2」からやってました。すごい簡単なんですよ。CGなんで、カメラ位置は自由なんで。処理は2倍になりますけど何もむずかしくないですね。世の中の流れで業界をあげて、そっちに行こうとしていますし、アバターが成功もあるから当然そっちに行くと思います。ゲームはすごく3D得意なんですよ。コンピュータとCGなんで元々立体ですから。それによって何か変わるとは別に思いません。白黒がカラーになるみたいな、自然な上がり方をしていくかと。


吉田 : 核になるのは、ゲームデザインの部分がってことですか。


小島 : 3Dになるからといってどうなることはないと思います。キャメロンがうまかったのは、別に3D自体は新しくなかったんですけど、手前に出さない3Dだったので、あれはプロモーションもかなりうまいですよね。自然に3D。


吉田 : ナチュラルになってましたね。たしかに。


小島 : 僕は3Dで見て、2回目2Dで見たら、2Dのほうが良かったんです。アバターの最初の宇宙船ってかたちがわからなかったんです。ピンが合ってないんですよ、今の3Dって。これが、人のここ見たいってところにピンが合うようになれば、ほんとの3Dになる。10~20年したらそうなると思うんですけど、そうなればゲームデザインの域になります。今の3Dはただ一方的にやってるんで。2Dのほうがキャメロン節がわかりやすい。3Dはアクションとか把握できなかったですからね。アバターは大好きですよ。僕、キャメロンはやっぱり好きですね。


METAL GEAR SOLID PEACE WALKER
メタルギア ソリッド ピースウォーカー
 
プラットフォーム:PlayStation Portable
ジャンル:タクティカル・エスピオナージ・アクション
国内価格:UMD版/5,229円(税込)  DL版/4,700 円(税込)
発売時期:2010年4月29日
プレイ人数:1~6人


(C) 2010 Konami Digital Entertainment


 

コメント

タイトルとURLをコピーしました