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【連載コラム】畑史進の「わしは人生最後に何をみる?」 第10回 横山緑監督最新作 「半裸監督・森田義之最後の挑戦」のレビュー

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畑史進(編集長Twitter):https://twitter.com/cefca_vader?lang=ja

 

コロナウィルスで外出自粛が要求される中、ニコニコ動画に意欲的な新作映画作品が5月9日から無料で公開された。

 

『半裸監督・森田義之最後の挑戦』(以下 『半裸監督』)

 

 

監督・脚本は横山緑。現在は立川市市議会議員のくぼた学として市政に奮闘している彼が制作した本作はどの映画作品にもとらわれない破天荒な演出を取り入れていた。

 

世の中には『スター・ウォーズ』や『パイレーツオブカリビアン』のようなA級と言われる映画作品が存在すれば、『エイリアンVSアバター』のようにB級、C級のような作品が有象無象に存在する。

これらのA級、B級、C級は何を持ってして振り分けているのかは定かではないけど、大体「出演している俳優」や「映画監督」の知名度やフィルモグラフィー、そして予算がどれだけ割かれたのかというところで判断される。

 

じゃあこの映画は何級かと聞かれると、正直に答えてしまうとC級未満。D、E、F、G…O級、いや下手をするとZ級のような有様の代物で、バカ映画の部類に入ってしまいそう。もちろん商業映画としては成り立たない。

 

だったらそんな物をこの場を使って紹介するな!と言われてしまいそうだけど、正直この作品を観ている時には大笑いさせてもらったし、観終わった時の僕の心の中は「まぁこんな“映画”が世の中にあっても良いよね」というほっこりした気持ちが浮かんだからこの場で紹介するわけ。

 

ざっくりと映画の内容を紹介すると、あるサイトで投げ銭を得て生活をしていた主人公の森田義之(演:よっさん)が何かしらの理由でアカウントBAN(サイトの永久追放)を受けて、新宿で路上生活を送ることになる。

その生活の中、森田はAV監督の募集を知って人生最後の逆転とばかりに面接に行き、無理を言って新作AVの監督を獲得。仲間と喜びを分かちう森田だが、当然のことながら経験は無くどうすれば良いのか途方に暮れる。

そこで仲間の一人が伝説のAV男優「ポリフェノール秋山」に会いに行く事を提案し、これに森田も賛同。ポリフェノール秋山に土下座してAV撮影の師事を乞うことに(なぜただのAV男優に監督の師事を乞うたのかはちょっとわからない・・・)。

 

前半部分をだいぶ端折って文字化すると筋の通った内容のように見えるが、実際の映像を見ると、一般的な商業作品を見ている人にとっては目に余るような演出がいたるところに存在する。人によっては最初の一分で見切ってしまうかもしれないが、この味に慣れてくると意外にもツボにはまってくるのがこの手の作品の面白い所。

 

それもそのはず、この映画は低予算の自主制作映画であることを念頭に入れていてもツッコミを入れたくなるようなポイントがいくつも存在する。そのうちの一つを挙げるならAV監督面接時のシーンでは、森田がストロングゼロを飲みながら「俺は路上カーセックスがしたいんだ!」と社長に迫るという常軌を逸した様子を見せる(しかも直前のシーンにはストロングゼロが見当たらないというおまけ付き)。他にもポリフェノール秋山の髪が異様に多く長かったり、突然役者の衣装が変わったりと枚挙にいとまがない。

この様にこの映画作品は鑑賞者がツッコミを入れながら観る作品となっており、そのポイントをみんなで共有する事を目的としている。そのうえで本作をニコニコ動画というコメントを交えて鑑賞するサイトに適した形で制作している非常に稀有な作品だろう。

 

“ごく普通”の映画を映画館や自宅などで観る人にとっては中々理解できないかもしれないが、ニコニコ動画のようなコメントの流れるサイトでは、動画の感想やツッコミをコメントで指摘し、これを共有する文化がある。

この映画『半裸監督』は、あえてそのようなツッコミポイントを残すことでやや映画作品として保ちつつもニコニコ動画との親和性を図り、観客と制作側が共に楽しんでもらえるように工夫がなされている。

 

ここで少し話がずれるが、『貞子』や『としまえん』『コンジアム』のような昨今のホラー映画ではネット動画を模した映像を採用しており、ニコニコ動画同様にコメントを劇中の映像に流していることがある。

これの是非はさておいて、実際ニコニコ動画やYouTubeのようなサイトに触れている人達がこれを見ると一種の違和感を覚える。その違和感の正体は大体「コメントの不自然さ」によるものと思うが、そのコメント不自然さは動画作りの不自然さから来ていることが多い(もちろんコメントの文体、内容もあるけど一般公開作品という理由がある)。

 

 

 

 

これらの一般商業作品の現場に携わる人達はプロフェッショナルの集まりのため、どうしてもいかなる工夫を持ってして画作りを行ったところでも「プロの画」になってしまう。それに対してこの『半裸監督』はどうみてもアマチュア監督の画作り。

プロの画というのはどんなに工夫して下手に撮ってもそこにあるのは「プロの画」であって、下手に撮れと言っても限度がある。これはある種の職業病みたいなもので仕方のない部分ではあるが、この仕方のない部分がネット動画風演出として変なものになり、結果として完成した映画作品にニコニコ動画風のコメントを付けると「違和感」を生み出すことに繋がる。一方でこの作品におけるツッコミポイント、もといコメント挿入のポイントとなるシーンは計算しているかのようなタイミングと画になっており、素人の自主制作映画といえども結果として目が話せない作りになっている。

 

 

これを自然にやってしまう横山緑監督は一種の才能だと言っても良い。今後この手の演出を求める監督はこの部分だけに横山緑監督を起用してみたら良いと思う。

 

またこの映画は非常に説明的なセリフが多いことから聞いているだけでもうんざりしてしまう事があるが、独特な画作りに着目すると中々面白い部分が見えてくる。

この作品の特徴の一つに登場人物が説明的なセリフを口にするときに共通するのが「やたらとアップを多用する」ということがある。どういう感じか説明すると、カットが切り替わったときに登場人物がカメラ目線になって様々なアクションを取りながら説明的なセリフを観客、または他のキャラに向かって放つ。この構図が漫画の一コマのような演出で非常にユニークだ。

漫画というのは作品にもよるが、説明的なセリフに加えてキャラクターのアップを効果として使用することが多い。そういった事を念頭に入れて様々なシーンを見返すとこの映画は漫画的な文法を映像作品に取り入れている作品であることに気が付かされる。

 

そうして観ていくと不思議なことにくどく感じられるシーンも興味深く観ることができ、この監督の新しい方向性を期待できるように思える。

是非、横山緑監督には昨今話題になった「100日後に死ぬワニ」のようなTwitterで流行った漫画をこの映画に登場するメンバーで映像化すれば、かなり面白く仕上げてくれるのではないかと思った。

 

少し褒めてばかりだとアレなのでちょっと気になったポイントを上げるなら、この作品は後半部分が全然別モノの作品になってしまうので、無理してそのシーンを入れるくらいなら30分の作品としてまとめてしまったほうが良かったんじゃないかと思った。

そういう惜しいと思える部分があるのもこの作品の愛すべきバカ映画たるゆえんでもあるのが・・・

 

監督の話ばかりになってしまったので、この映画のベストパフォーマーを紹介したい。主人公の森田を演じたよっさんは個性的で彼にしか演じられない特異なキャラクターを演じきってくれて僕自身かなり笑わせてもらったが、今回はさだはるという不気味なキャラクターを演じきったサダさんを推したいと思う。

さだはるを演じたサダさんはこの映画において特に説明的なセリフが多く与えられ、場面の切替時には観客の気分を切り替える役割を見事にこなしており、横山緑監督の演出に見事ハマったキャラクターであったからだ。どこまで演出指導を施したのかわからないが、ここまで役と役割を演出に絡めて見事にこなした役者はプロでも見られない。

 

 

拙いところは多々あるものの、こうした自主制作映画には素人なりの工夫ポイントが見られるので一概に馬鹿にできない。

今後もこうした意欲的な愛すべきバカ映画作品を取り続けて欲しいところである。

登録すると試写会チケット 情報がやたら貰えるかも!

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