池袋サンシャインシティにて8月28日まで開催されていた「ウルトラマンフェスティバル2016」。終了直前の8月26日(金)には「レジェンドナイト」が実施された。
「レジェンドナイト」はその名の通りウルトラマン放送開始から50年を記念して、科学特捜隊のメンバーの黒部進氏、桜井浩子氏、毒蝮三太夫氏、二瓶正也氏、飯島敏宏監督、最新作ウルトラマンオーブの監督を務める田口清隆監督そしてウルトラマンこと古谷敏氏が登壇した。
以前、杉並公会堂で行われたウルトラマン50周年記念のイベントではビデオメッセージとなった毒蝮氏がこの度登壇することで非常にプレミアムなイベントとなった。イベント前にはマスコミ向けの囲み取材が行われ、取材中は毒蝮氏、二瓶氏のユニークな相槌、掛け合いが行われ終始和やかな雰囲気で質疑応答が行われた。
■質疑応答
—ウルトラマンは実際には古谷さんが入って腰をかがめて闘うスタイルでしたが、黒部さんがスーツアクターでしたら、どのような姿勢だったと思いますか?
毒蝮:這いつくばっているよ(笑)
黒部:どうだったでしょうね・・・現実にはわからないですね(笑)
—ウルトラマンでは一度カレーライスのスプーンを上げるというユニークシーンが有りましたが、あれはどういった経緯だったんでしょうか?
黒部:当時は現場で突然その話が出て実相寺さんが思いつきで話したことなんだよ。
毒蝮:台本無かったっけ?
黒部:ないない。
二瓶:繋がんないこと撮るのうまいんだよねあの人は。
黒部:そうそうあの前のシーンではスプーンは置いて行っているからシーンとしては繋がらないはずなんだよね。そこは許していただきたい。
—50年前の撮影で楽しかった思い出は何でしょうか?
二瓶:お腹すくんですよ、カレー食べる時なんかわざとNG出して食べてたね(笑)
毒蝮:今思うと、よく動いて飛んだり跳ねたりが出来ていたなと思うね。当時は体も自信があったから出来た。当時は免許取り立てで科特隊の車を運転するのが楽しかったな。
黒部:僕はそんなに楽しい思い出はなかったなぁ。50年前だからそんなに覚えてないし撮影も過酷だったとしか。
桜井:キャップはもうあちらの世界に行っちゃいましたけど、キャップ中心に気が合っていたと思います。楽しかったです。
古谷:僕は楽しい思い出は全く無し!
二瓶:だから僕と古谷は気が合わないの、僕は楽しかったけど彼は無い(笑)
古谷氏:何言ってんの?(笑)
—当時、二瓶さんのお宅にはカラーテレビがあったということですが?
二瓶:あった!だから当時、ウルトラマンのオンエアはカラーで観てた。みんな嘘だ嘘だって言うけどテレビもクーラーも家電製品は早くから入れてるのうちは。
—古谷さんの戦ってきた怪獣たちの中で印象深いものはなんでしたか?
古谷:ジャミラだね。一番好きな怪獣もジャミラ。もうその理由は僕よりも皆さんの方がお詳しいでしょう。あれは戦えないよ・・・
—ウルトラマンが凄いなと思われる事はどういう時ですか?
黒部:継続ですね。一時期ウルトラマンに光が当たらないで形を変えた時期もありましたけど、こうやってみると素晴らしい作品を皆さんと作ったんだなと思います。
二瓶:珍しいよここまで褒めるのって。
黒部:そんなことないよ。今日も孫と始めて1話から3話まで観たけどバルタン星人やベムラーも観たけど、本当に素晴らしいなって思いますよ。
毒蝮:歳を取るに連れて出て良かったなって思いますね。更にだいたい1話ずつ主役の回がみんなにあってドラマチックに人物が描かれているんですよ。東宝のカメラマンが来たりして全てに手抜きがなかったから今観ても本当に面白い。
—オンエアを見ることは殆ど無かったんでしょうか?
毒蝮:ないない!後でオンエアを見て「何だ、あいつ悪役だったのか・・・」って思うくらい。当時は台本が何冊も届いてるから何話だかよく分からなくなってくる。
黒部:それに特撮部分は書き込まれてないから実際にはどうなっているかなんて分からないんだよね。
毒蝮:まぁ50年経ってキャップはいないけど、こうやって皆生きてて揃うことなんか本当に良いことだなって思うよ。
二瓶:皆年金もらってんだろ?
毒蝮氏:あたりめーだよ!
—毒蝮さんがウルトラマンは凄いと思われるときはいつですか?
毒蝮:今でもサインを1日平均1回位お願いされるんですが、阪神淡路大震災や東日本大震災の後に小さな子供たちが「どうしてウルトラマンは災害を止めてくれなかったの?」って訊かれましたね。その時にウルトラマンやウルトラセブンは作ったものだよって言えなかった。そういう時に本当にウルトラマンがいたら世界の平和は守っていたかもしれない。円谷英二さんの気持ちは脈々と受け継がれているかもしれない。
—桜井さんは紅一点でしたが、どういうお気持ちで撮影に臨まれましたか?
桜井:当時は私のことを女性として扱っていなかったかもしれないので、そういう中でお仕事させて頂きました。ありがとうございます。
毒蝮:いや科特隊の中のマドンナですよ!だから可愛がったり、からかったりしていたんですよ。
二瓶氏:可愛かったんだよ~、当時は。
桜井氏:過去形ですか?(笑)
この後、古谷氏、ウルトラマンの体型が作品の良さに繋がっているという話に流れ、撮影が終わった後はドラム缶いっぱいの水風呂に入っていたことや、顔が出ない役者に科特隊は支えられていたと振り返り、古谷氏のスペシウム光線ポーズで記者会見は終了した。
その後イベント会場にて「レジェンドナイト」が開演された。イベントの最初にはバンド「ガラモンズ」による「ウルトラマン」「帰ってきたウルトラマン」の主題歌アレンジが演奏され、さらにプロジェクトマッピングによる第1話で描かれたベムラーを追うウルトラマンのシーンが最新のCGで描かれた特別上映が行われた。宇宙空間から地球に激突した後、ハヤタがベーターカプセルを上に掲げウルトラマンに変身!ベムラーとの直接対決が繰り広げられた。
その後黒部氏、桜井氏、毒蝮氏、二瓶氏、古谷氏、飯島監督が登壇してウルトラマンの撮影秘話のトークショーが始まった。特に古谷氏とウルトラマンが同時に登壇するとひときわ大きい歓声が起こった。トークショーでは終始二瓶氏、毒蝮氏を中心としたの軽妙な掛け合いがみられ、科特隊メンバーの中の良さを改めて感じ取れた。
古谷氏は「50年前に科特隊本編の撮影を見てると彼らは輝いて見えてたんです。」と会場に挨拶をしたところでトークショーが始まった。飯島監督から「ちゃんと出来るのかと思いながら撮影しました。今こうやって余裕持って喋れるなんて思ってもみなかった。みんな立派になったねぇ」しみじみと語りかけると、この時ばかりはベテラン役者陣からも緊張した様子が見られた。その後、飯島監督から演技指導を一番されたのは誰かという二瓶氏からの質問では「演技はキャップ(小林昭二)が一番ダメ。彼はチョロチョロ動くふしがあった」と振り返りつつもバッサリ答え、会場を驚かせた。撮影時の苦労話では、毒蝮氏は「スーパーガンの先を動かさずに倒れろなんて無茶な演技を要求されて、何度も撮り直しをした」という話に対し飯島監督は「1秒間に24コマ線を書き込む為に、他のスタッフから指示されたもの」とまだCGもない時代のビーム描写の書き込みの為の苦労を会場に分かりやすく解説してくれた。
この日一番の秘話はスペシウム光線のポーズに関して飯島監督から初めて明かされたことだった。最初は手の指を向けるものだったが魔女のポーズに見える為、片手を縦にして「横の手は縦の手を支えるためという意図だった」と会場に明らかにした。その後、飯島監督は自分が撮影した第2話からの撮影について「第1話でウルトラマンが赤い玉に乗ってくる、なんて知らなかった。当時は宇宙人が宇宙船に乗ってくるとは思わないからジャンプで空に飛ばすという構図にした。その後、第1話を観たら『なんだよあの赤い玉は!?』って驚くというよりも焦ったね(笑)」と当時を振り返りコメントした。
またイベントでは最新作「ウルトラマンオーブ」を撮影中の田口清隆監督が登壇、新作と旧作の交わるトークが展開された。オーブではCGをふんだんに使っているのではないかという質問に対し、田口監督は「予算が少ないからCGが使うことが意外と少ないんです。デジタル合成は使いますよ」とコメント。さらに昔のウルトラマンを参考にしている手法もあると話すと黒部氏は「嘘言っちゃダメ。お世辞言っちゃダメ。どうせ観てないでしょ?」と横からチクチク攻撃をして会場を沸かせていた。
最後に登壇者全員からの挨拶が送られて本イベントは終了した。
黒部氏:「50年という長い年月にわたって指示をしていただき本当にありがとうございました。小林さんも草葉の陰で喜んでいると思います。」
桜井氏:「本日は監督からも貴重な話が聞けて、毒蝮さんもプロのくせにマイクをオフにして自分のしゃべりたい時だけマイクをオンにするという変わらない事で安心しました(笑)これからも全シリーズを愛してください。ありがとうございました。」
毒蝮氏:「昔に出ておいてよかった。今はスタイルも良いイケメンだらけだから、俺や二瓶は絶対にキャスティングされなかったでしょう。そういう意味では本当に良かった。そして円谷英二さんも言ってたウルトラマン、ウルトラセブンも(現実には)いない。地球は地球人で守れと伝えるのが俺たちの役目ではないでしょうか。」
二瓶氏:「今回皆と会えて嬉しかったです、これからもウルトラマンも愛してください。僕の中ではウルトラマンにまさる作品はないです。」
古谷氏:「この舞台に立たせてもらったのは皆さんのおかげです。これからも生きている限り、ウルトラマンのスペシウム光線をやり続けていきます。」
田口監督:「50周年だけでなく100周年にも繋げられる作品を作り続けていきたいです。」
飯島監督:「色々面白い話がありましたが『ウルトラマン as No.1』これにつきます。ありがとうございました!」
[取材:畑史進]
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