『映画 鈴木先生』公開記念!河合勇人監督インタビュー!

映画 鈴木先生

2007年文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した武富健治によるコミックを基に、どこにでもいそうな平凡な教師が、どこにでも起こり得る問題について過剰に妄想しつつ、教育現場の常識を打ち破って解決していく樣を描き、各方面で波紋を呼んだ伝説のドラマ「鈴木先生」が映画になってついに1月12日(土)より公開!本作の公開を記念して河合勇人監督にお話しをうかがいました。

—映画化おめでとうございます!

河合:ありがとうございます(笑)

—映画化決定までどのようなプロセスがあったのでしょうか?

河合:一昨年(2011年)6月にTVドラマの放送が終わって、映画を撮影始めたのが去年(2012年)の3月ですから、9ヶ月くらいあるんですよね。TV放送が終わった時は「みんな頑張ったけど映画はないな」みたいな感じでしたね(笑) でも、原作では後半の部分もあるし、「なんとかやりたいよね」という話はしていました。僕らがTVドラマをやっている時に、武富先生の原作が最終巻くらいまでいったんです。なので、エピソードとしてはまだ鈴木裁判以後、大きいものが残っているので、もう一回連続ドラマというのは難しいので映画だなとみんなで言っていました(笑) でも、実現するには(ドラマの)視聴率の問題もあったり。やりたいという思いはみんなあったんですが、なかなか現実的な一押しみたいなものがついてこなかった。でも、ドラマが終わった後、いろんなところから賞をいただいたり、徐々にそれが広がっていく感じが映画にしようという後押しになった感じですかね。放送が終わって、その年の年末にはどんなストーリーにしようかと話はしてましたね。その時はまだ正式に映画化は決定していなかったですけど。私やプロデューサーの中では、絶対にやるんだという気持ちがあったんですが、なかなか(笑) それで、そのまま年をまたいで3月に撮影を始めることになったんです。本当は8月の夏休みにやりたかったんです。出演する子供たちもそこで休みを取れるというのもあるし、彼女たちが成長期なので、そのくらいに撮らないと限界があるだろうと。3月の春休み、そこが多分限界だろうと。そこを逃すと、もう撮れなくなるというところで、ゴーサインがでたという感じです。

—久しぶりに生徒たちと会った時の感想はいかがでしたか

河合:中身はあまり変わっていないんだけど、見た目が変わっている子もだいぶいて(笑) やっぱり成長が速いなと思いました。確かにこれ以上は待てないなと思いました。僕らにとっては9ヶ月なんてあっという間なんですけど、彼らの肉体を通して見ると年月が経ったのがよくわかりましたね。

—原作の後半を2時間程度にまとめるにあたって、脚本の古沢さんとどのようなやりとりをしたのでしょうか

河合:基本的には連続ドラマの時と一緒でした。演劇篇と選挙篇と立て篭もり事件と大きな柱があって、どれをやろうかという話から入ったんですけど、最初僕は演劇篇をやりたいと言っていたんです。でも、演劇篇は大変だろうとなって。登場人物も3年生とか演劇部の子たちがでてきたりするので、新キャストを出すのか?という話になり、新キャストを出すと分かりづらくなってしまうのではないかと。それで、新キャストをだすのを止めようということになりました。最初は選挙篇は地味だから絶対ないだろと話しをしていたんですよ(笑) だから演劇篇と立て篭もり事件だろうと話していたんです。じゃあ、どうそれをくっつけるのかで試行錯誤していました。その中で、選挙篇が突如として浮上してきまして(笑) 古沢さんが、選挙篇と立て篭もり事件の根っこの部分のテーマがうまく貫けるんじゃないかというアイディアがでてきて、演劇篇は背景として成立させようと。とにかくこれで鈴木先生をやれるのも最後なので、なんとか全部を描きたいなということで今回の劇場版の形になりました。

—原作にはかなり面白いキャラクターが出てきますがカットする時に葛藤はありましたか

河合:すごくありました。でも、それをなんとか2-Aの生徒たちに落としこんでいきました。たしかに演劇篇のキャラクターでも面白い子たちがいっぱい出てきて、それはそれで魅力があるんですけども、それをやるにはもう一度連続TVドラマをやらないといけないなと(笑)

—今回も鈴木先生が妄想するシーンがありますが、長谷川さんがやり過ぎてNGがでたりとかはなかったんでしょうか

河合:長谷川さんも脚本を読んだ時に「妄想は克服したんじゃないんですか?」と最初は言っていたんですけど、「いや、鈴木先生はそんなに簡単に克服できないでしょう。さらに抑圧している部分が出てくるんじゃないんですか」と言って(笑) 映画版の冒頭の鈴木先生の妄想のシーンで、蘇美とキスをするというのは、長谷川さんのアイディアでしたね。あれはテストをやっている間に長谷川さんから出たアイディアでした。

—TV版では生徒役の子たちが入念なリハーサルを重ねて本番を迎えていましたが、今回もリハーサルは行われたのでしょうか

河合:今回もやっていました。

—それを聞くと、やっぱり演劇篇をみたかったですね

河合:面白いんだけどね。でも、ドラマに落とし込もうとすると、意外に大変なことが分かるんですよ。ちょっと背景でチラチラ映りますけど、あれをガチで真正面に持ってくると意外に難しいんですよ。

—演劇篇がないので、何故演目が「ひかりごけ」なのかもわからないですよね

河合:原作を読んでいないと分からないでしょうね(笑)

—原作を読んでいる方にニヤっとしてもらえればという感じなんでしょうか

河合:どちらかというと、あれ以上深くやれなかったというのがホントのところです(笑)

—私の拡大解釈なのかもしれませんが、学園を舞台に世界で起きているテロについて描かれていることに驚きました

河合:そういう解釈もできるでしょうね。絶対分かりあえない者同士が分かり会えたらいいよねという気持ちはこめています。

—原作もそうですが「鈴木先生」はどれだけ拡大解釈ができるかで楽しみが変わってくるところがあると思います

河合:それはありますね(笑) それが原作の持っているポテンシャルの高さだと思いますね。ドラマの中では、なるべく教室からでないようにしていたんです。それは教室の中が社会であるという考え方、社会の縮図が教室であるみたいな考え方で作っていたからです。映画版では、ちょっとだけ地域、社会に広げたので、それが世界にまで見えてくるというのはあるかもしれないですね。

—立て篭もり事件に関わる重要なキャラクターである、勝野ユウジと田辺ミツルの演出はどのような点を注意しましたか

河合:デフォルメはできるだけ抑えようとしました。見え方として、あまりにも異質な人たちとして、観ている人たちに引かれてしまったら嫌だなと。でも、やっぱりどこか自分に似ているというか、もしかしたら自分かもしれないと思えるようにしたいと思っていて。でも、できるだけ異分子のように、そして、あまりモンスター的にみえないように気をつけました。ミツルはかなり出番がなくて特殊な役柄です。ずっと引きこもっていて、ちょっと色はつけましたけど。セリフもそんなにあるわけではないので、難しい役でした。

—鈴木先生に登場するキャラクターは、すごく多面的なので演出する際に迷いはあったと思いますがいかがですか

河合:迷いはありますね。演じている役者にも迷いがあるでしょうし。なので、迷いながらというのが画に出ていると思います(笑) 

—完成した作品を観てご自分でいかがでしたか

河合:エンディングでグッときましたね。勿論、何回も観ているんですけども(笑) エンディングは助監督の方に撮っていただいたんですけども、あの子たちに希望を感じたというか、なんとなく鈴木先生の教えを胸にあいつらが社会に飛び立っていくんじゃないかなと思えて、ちょっと感動しました(笑)

—こういった子たちが、もっと増えてきたら社会や世界が変わるかもしれないみたいな感じがしました

そうなんですよ。鈴木先生という原作を含めてやっていて思ったのは、鈴木先生の言葉でいうと「心の革命」みたいなね。一人ひとりの気持ちの有り様が変わっていかないと、社会はなかなか変わっていかないんじゃないかという思いがあって、その心の持ち様を変えていくのが教育だったりするので、一番柔軟な中学生の子たちが多感な時期にそういう教育をうけることによって、もしかしたら社会が良い方にいくかもしれないという希望を託して終われたんじゃないかと思います。これで、なんとか鈴木先生を完結できたんじゃないかと思います。

—ありがとうございました!

『映画 鈴木先生』は、2013 年1 月12 日(土)より、角川シネマ新宿、丸の内TOEI、渋谷TOEI 他にて全国ロードショー!

【キャスト】
長谷川博己 / 臼田あさ美 / 土屋太鳳 / 風間俊介
田畑智子 / 斉木しげる / でんでん / 富田靖子
夕輝壽太 / 山中 聡 / 赤堀雅秋 / 戸田昌宏 / 歌川椎子 / 澤山薫 / 窪田正孝 / 浜野謙太
北村匠海 / 未来穂香 / 西井幸人 / 藤原薫 / 小野花梨 / 桑代貴明 / 刈谷友衣子 / 工藤綾乃

原作:武富健治「鈴木先生」(双葉社刊/漫画アクション連載)
監督:河合勇人
脚本:古沢良太
音楽:大友良英
主題歌:androp「Rainbows」(WARNER MUSIC JAPAN/unBORDE/respire)
企画・制作プロダクション:ROBOT
製作:映画「鈴木先生」製作委員会
共同配給:角川書店/テレビ東京
配給協力・宣伝:ミラクルヴォイス
公式HP:http://www.tv-tokyo.co.jp/suzukisensei/
(C)2013映画「鈴木先生」製作委員会

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