この市長!史上最強!!映画『超強台風』レビュー


こんな市長を待っていた!!



観測史上最大の超巨大台風が中国沿岸部のとある都市に向かっていた。お偉いさん方は、市民を避難させるべきかで悩み中である。もし、避難させた後、台風が上陸しなかった場合、莫大な経済的損失が生じてしまうからだ。どうしたもんかと、全員が鼻くそをほじりだした時、一人の男が決断を下した。
「金より大切なのは市民の命だ!緊急避難させろ!」


彼の名は市長。本当の名前はまだない。



もう、ずばり言ってこの映画の見所は、この市長である。危機一髪現場登場率98%はダテじゃない。船を守りたい漁師、難産でお困りの妊婦、その妻に会いたい夫、台風の目を撮影したいアメリカ人などなど、いろんな理由で避難し遅れた人々を救うために市長はスーツ姿のまま、自ら危機一髪現場に飛び込んでいく。
ドリフファンならずとも思わず「市長!後ろ!後ろ!」と声を出してしまうような状況になっても、市長は動じない。避難を嫌がる漁師たちを熱い言葉で説得だ。もちろん、漁師たちは感動して全員ボロ泣きである。かっこいいぜ市長。この市長に任せておけば大丈夫だ。あんしんパパ以上の安心感。セガール主演の映画を見ている時のような安心感。市長が登場したり、何か決断を下す時、必ずこの映画の感動的なテーマ曲が流れるのも安心ポイントだ。



台風も負けてはいられない。なんてったって超強台風である。CGを極力使わず、実際の台風の映像とミニチュアワークを駆使して描かれる超巨大台風の猛威。堤防を破壊し、町に押し寄せる高波!車、人、犬、こぶた、たぬき、きつね、ねーこ、にゃーお。それらを全てを吹き飛ばす暴風雨!この質感、この重量感、CGじゃ出せねぇだろ!!そんな作り手たちの気合いが伝わってくる。
避難所に逃げ込んでも、タンクローリーがゴロンゴロン転がってくるわ。高波にさらわれたアメリカ人の乗った車が窓からドンガラガッシャンと飛び込んでくるわ。さらには押し流されてきた巨大漁船が見事に激突するわで、むしろ、ここに避難しなかった方が安全だったんじゃないかと思わせる、危機一髪発生率100%の避難所である。おまけにサメまで飛んでくるわで、もうメチャクチャである。しかし、市長はこんな状況でも過去の職歴を生かし、果敢にもサメに闘いを挑むのであった。棒きれで。もう、サメをボコボコぶん殴る。なんか、サメがとてもかわいそうに思えてくるくらいボッコボコにする。サメだって好き好んで陸地に来たわけじゃないだろうに。まさに、とんだとばっちりである。
そんな、市民の命を守るために自らの命を顧みず全力で闘う市長の姿に政府関係者や一般市民も心を動かされていく。皆で力を合わせて必死に台風に立ち向かうのだ!



市民を守りたいという市長の熱い想い。そして本格的なディザスタームービーを作りたいという作り手たちの熱い想い。その2つが合わさり発生したのがこの「超強台風」だ。台風の進路を予測するのは難しい。この映画も観客の予想の斜め上を通過していくだろう。途中、思わず笑ってしまうシーンが多々ある。B級、バカ、チープ…..そんな言葉が吹き荒れるだろう。しかし、嵐が止み、ふと空を見上げると「観客をドキドキワクワクさせたい」そんなピュアな青空が広がっている。それがこの映画の中心、台風の目ではないだろうか。



見終わった後、体温が2度くらい上がること間違いなしのこの映画。肌寒くなってきたこの季節にぴったりの映画です。


レビュアー:ミヤヂ


『超強台風』
9月25日(土)より 新宿ミラノほか全国順次ロードショー!!

監督・製作:フォン・シャオニン   出演:ウー・ガン、ソン・シャオイン、リウ・シャオウェイ 他
中国/2008年/94分/原題:超強台風/字幕:東野聡/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル
[公式サイト]
配給:ブロードメディア・スタジオ 

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