映画レビュー ゲームで育った世代にストライク!『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』



エドガー・ライト監督の実質的なハリウッド長編デビュー作でもある本作は、普通の映画好き万人であれば面食らうような突飛に作られたマニアックな青春映画。基本ベースにあるのがビデオゲームと音楽。エドガー監督の大好物な要素だけで彩られた内容が逆に海外での興行成績を大惨敗へ導いてしまった不の要素でもあったのは残念極まりない。
まぁ、それもそのはず。マニアックなビデオゲームを主軸にしたジャパニーズ・カルチャーを大量に映像へ導入していることから、日本文化に興味ないガイジンさんたちにはそれらの元ネタを知らずに鑑賞させられているわけだから、原作者のブライアンとエドガー監督の脳内へジャックインしているだけの世界観を完全理解するまでに至らなかったのであろう。
幸い、日本は後発でのロードショーであるため、元ネタを解析するまでに時間があった。敢えてここでは書かないけども手前味噌ながら4月21日発売の『映画秘宝』で本作の特集を組み、そのページ内で元ネタ大全を長谷川町蔵氏と一緒に作ったので、映画のパンフレットよりも確実に細かく紹介できていると自負! 間違いなく元ネタを予め知っておいた上で観る方が楽しめるので参照推奨。実は元ネタを解析するまで20回も繰り返し観たんだよね。そんな筆者が太鼓判を押すのだから……と、たまには自信満々に『映画秘宝』を買うよう薦めてみる(笑)。知っておけば鑑賞中、頭にクエスチョンマークが飛び交う確立がグンと減るんでね。主にゲームの元ネタは80年代中期から90年代前半に発売されていた任天堂(『ゼルダの伝説』等)やセガ(『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』等)から発売されていたゲームのネタを中心に構成しつつも『レゴ スター・ウォーズ』や『NO MORE HEROES』のような比較的新しいゲームにまでオマージュを捧げて作られているので、何度も鑑賞して元ネタを探すロールプレイングゲーム的なことをやってみるのもいいかも。まさに筆者がそうだったように(苦笑)。
自分はジャズ以外の音楽は疎いので、その方面に関しては触れてはいけない領域でもある気がするからパスさせてもらうが、多くの元ネタの大半がビデオゲームからなので、ゲームで育った世代にはストライクな作品。一方、ゲームを知らない、または興味のない人にはゲームの元ネタを知らないと笑うに笑えないシーンが多々出て来てしまうゆえ、ストレートに駄作と決め付けてしまう輩も出てくるような気がしてならない。でも、映画は丁寧に作られていることを知ってもらいたい。日本の漫画的手法の画面分割なスプリットスクリーンやら、効果音を文字で表現したりとブライアンの漫画で示された原作意図を十分に理解したうえで撮られている部分をもっと評価するべきかなと。
2代目『パニッシャー』ことトーマス・ジェーンがノンクレジットなカメオ出演しているシーンは最大の遊び的見せ場なので見逃さないように。エドガー監督いわく「トーマスのスケジュールがたまたま空いていたことと、マーベル側からも了承頂いたのでTシャツのドクロマークとトーマスの登場は『パニッシャー』のパロディとして撮った」とのこと。本筋とは大きく関係ないシーンでは最大のオイシイ見せ場でありキラーショット! 何度も観ていたのが要因なのかどうか分からないけど、メアリー・エリザベス・ウィンステッドがドリュー・バリモアに見えてしまうのは筆者だけだろうか?
レビュアー:吉田味庵(元ジャンクハンター吉田)
『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』
4月29日(祝・金)より、シネマライズ他、全国順次ロードショー!
キャスト
マイケル・セラ、メアリー・エリザベス・ウィンステッド、キーラン・カルキン、
クリス・エヴァンス、アナ・ケンドリック、アリソン・ピル、ブランドン・ラウス、
ジェイソン・シュワルツマン、斉藤祥太、斉藤慶太
配給協力/アステア+パルコ
(C)2010 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:http://www.scottpilgrimthemovie.jp

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