ついに11月9日(土)より公開される映画『サカサマのパテマ』。本作の公開を記念して吉浦康裕監督、パテマ役の藤井ゆきよさん、エイジ役の岡本信彦にお話しを伺いました。

—今回のキャスティングはオーディション、それとも監督の指名で決めたのでしょうか?
吉浦監督
オーディションです。最初は主人公のパテマとエイジの二人を固めることから始めました。まずテープオーディションがあって。
岡本さん
大変じゃなかったですか?
吉浦監督
大変でしたね(笑) 全キャラ合わせてですけど50~100人くらいありました。特にパテマへの応募は多かったですね。
岡本さん
いろんなタイプの方がいらっしゃったんじゃないですか?
吉浦監督
そうなんですよ~
藤井さん
やっぱり全然違いました?
吉浦監督
違いましたね。劇中に「女の子の部屋に勝手に入るなんて紳士のすることじゃないわ」というセリフがあって、ツンとした言い方をしていた方もいらっしゃったんですが、比較的厭味のない感じで演じた方を選んでいった感じです。

—テープオーディションでは劇中のセリフを指定して行うものですか?
吉浦監督
オーディション用に指定するんです。キャラにとって大事なセリフとか、こういう面とこういう面の両方を聴いてみたいから激しいシーンと普通のシーンを混ぜ込んでみたりとか。それでテープオーディションで絞りこんだ後に、今度はマイクオーディションをするんです。スタジオで目の前で演じてもらいながら注文をつけたりしてさらに絞りこんでいきます。
—エイジはどのセリフを指定したのでしょうか?
岡本さん
「お前、サカサマなのか?」でしたね。冒頭のシーンからの流れが多かったですね。テープオーディションの時って、(台本のセリフの)横によくシチュエーションとか書いてあるんですけど、今回の場合、事細かにト書みたいなものが書いてあって(笑) ここはこういうシーンで、こういう理由でパテマがここに来て、そこで初めて見た時のセリフです。みたいな感じで書いてあって、そこに至るまでの過程がズラっと書いてあってビックリしました(笑)

吉浦監督
内容を観ていただけたらおわかりの通り(文字だけでは)非常に分かりづらい作品なんです(笑) なので多少は潤沢な言葉を使って説明しないと伝わらないなというのはありました。
台本としては変なんですけど、ちょっと小説みたいな感じになってしまいましたね。
—オーディションではいろんなパターンのパテマとエイジがあって、監督が最初にイメージしていたものがブレたりとかしなかったですか?
吉浦監督
それは無かったです。僕は声のイメージとキャラのイメージをしっかりと固めたうえで作るんです。まずは雰囲気で選り分けて。あとは技量とかもあるんですけども、まずは自分のキャラのイメージに合うかどうかが大事ですね。
—それで岡本さんと藤井さんに決まったわけですね!
藤井さん
やったー!
岡本さん
ありがとうございます!

—藤井さんはメインキャラを演じるのは初ということですが感想はいかがですか?
藤井さん
今年で声優3年目なんですけども、パテマを演じた時は1年目だったんです。なので監督からしてみたら結構な賭けですよね(笑)
パテマ役は本当に掴みたかったので、役が決まったと聞いた時はワーイ!って喜んで、その後にしくしく泣いて(笑) 忙しかったです。
吉浦監督
最初は僕も若干悩みました。ただ、声の雰囲気が抜群に合っていたし。今回は、ちょっと無理を言って、もう一回個別で藤井さんをオーディションさせていただいたんですよ。その時、前のオーディションの時よりさらに上手くなっていて。相当読み込んできたんだなと思って、これはいける!と思いました(笑)
藤井さん
最終オーディションでは絵コンテや資料を見ながら、監督にすごく丁寧に説明していただきました。

—収録の時は何か現場の印象など変わりましたか?
藤井さん
私はまだまだ一言二言の役やガヤのお仕事が多いんですけど、自分がメインを演じさせていただいて一番感じたのは、当たり前ですけど、作品はみんな命懸けで作っているんだなということ。あと、メインの方のために一生懸命全力でお芝居しようという意識が強くなりましたね。
吉浦監督
ガヤは大事ですから。
岡本さん
かなり大事ですよね

—エイジ役に岡本さんを起用した決め手は何ですか?
吉浦監督
藤井さんが決まった後にエイジの役の決め込みに入ったんです、僕はいろんな声優さんを把握している訳ではないんですけど、一回その人に決めたら、その人が過去に演じた役をかなり調べるんです(笑) (エイジは)少年っぽい声にしたかったので、ある意味擦れてないような、パテマと同じような雰囲気なんだけれども、藤井さんをサポートできる方がいいなと思っていました。
岡本さんはテープオーディションの時は、けっこう王道的にカッコイイ声だったんですよ。でも声質的にはすごくいけるような気がして、今までの岡本さんが演じた役を調べたら、二枚目から三枚目までいろんな役を演じていて、この方だったら僕がイメージしていた少年っぽい演技もできるのかなと思ってマイクオーディションの時にお願いしたら、もうバッチリで(笑)
岡本さん
よかった~(笑)
—本作は非常に謎が多い作品です。キャストの皆さんに敢えてラストを教えなかったりしましたか?
岡本さん
読んじゃったんですよね。できるなら読んだ記憶を消去して演じたかったです(笑) 収録の時はすべて忘れているつもりで演じました。

—藤井さんはいかがでしたか?
藤井さん
私はもうオーディションの段階で監督自ら説明していただいたので(笑) そうなるんですか!面白い!みたいな感じでストーリーを知りました(笑)
—収録は吉浦監督がディレクションするんですか?それとも音響監督に一任するのでしょうか?
吉浦監督
僕は音響監督さんをたてないんですよ。
もちろん僕はプロの音響監督ではないので、伝え方ひとつで役者さんを混乱させてしまう可能性もあるんです。おっかなびっくりではあるんですけど、今のところこのやり方がうまくいっていると信じたいです(笑)
—監督の演技指導はいかがでしたか?
藤井さん
シーンが終わる度に収録ブースに入ってきてくださって監督自ら演出していただいたので、熱が伝わってきて演じやすかったです。
岡本さん
現場にすごく一体感がありましたね。
—収録にはどのくらい時間がかかりましたか?
岡本さん
僕は一日でしたけど、藤井さんは収録の前から監督と読みわせしていましたよね?
藤井さん
収録の一週間前に実際にマイクで録りながら読み合わせしていただきました。
吉浦監督
収録本番の前に読み合わせをやらせていただきました。実は部分的にその時の声も使おうと思っていました(笑) 結果的にはあまり使わなかったですけど。

—パテマとエイジが初めて出会うシーンで注意した点はありますか?
岡本さん
収録の当日は、藤井さんがどんな感じでパテマを演じるんだろうという好奇心でスタジオに入りました。そしたら、もうそこにパテマがいた!みたいな感じでしたね(笑) なんか嬉しかったです。今回は、台本もあまり読み込まないようにしたんです。読み込んでしまうと練習しすぎて言い方を固定してしまう癖があるんですよ。今回はそれを絶対しちゃいけないと思って、エイジがこう思ったからこう言うみたいな流れを大事にしました。
吉浦監督
それは今回の演出の方向性とバッチリ合ってました(笑)
—藤井さんはいかがでしたか?
藤井さん
ありがたいことに順録りで進めていただいたので、最初はパテマとエイジくんの心が通じ合っていなかったのが、収録が進むにつれて二人の心が寄り添っていくさまが自然にできたかなと思います。
吉浦監督
実は藤井さんに決めた時、これは順録りにしなくてはと思いました(笑)
藤井さん
気持ちを作るまでに時間がかかるんですよ(笑)
吉浦監督
気持ちが乗ってくれば、もっともっと芝居がよくなると思ったので正解でした。

—二人が出会うシーンで映像の演出で注意した点はありますか?
吉浦監督
二人の重力が真逆であること。しかも、場所ではなく物自体の重力が逆なんですよ、ということを理解してもらうのに相当苦心しました。二人が初めて出会うシーンでいうと、まずリュックだけ落ちて、それが何故か“ぶら上がって”いる。それをエイジが見ていると、次のカットでそれをパテマが見降ろしているみたいな(笑) その積み重ねにかなり気をつかいました。
—最後に-映画をご覧になるみなさんにメッセージをお願いします。
岡本さん
この作品からいろんなメッセージを汲み取っていただいて、みんなで楽しんでいただきたいと思います。
藤井さん
この作品に関わらせていただいて嬉しい半面、お客さんとしても観たかった!という気持ちがすごく強いです。台本を読んだ時のワクワクドキドキ感を皆さんにも楽しんでいただきたいです。
吉浦監督
この作品は、なんだろうこれは?これからどうなるんだろう?みたいなワクワクドキドキする王道を目指しました。小さなお子さんから大人、そして、家族みんなで多くの方に観ていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします!
—ありがとうございました!
『サカサマのパテマ』
11月9日(土) 全国劇場公開
配給:アスミック・エース
(C)Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013
http://www.patema.jp
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