東映アニメーション創立60周年記念作品として絶賛放映中の『タイガーマスクW』。梶原一騎原作、辻なおきが作画を務めた人気作品「タイガーマスク」のその後を現代にあわせて描いた作品となっており、新日本プロレス全面協力のもと、旧作同様に実在プロレスラーが登場することでも大きな話題をよんでいる。
今回は作中に出てくるプロレスラー、オカダ・カズチカと劇中で声を当てている声優、森田成一にインタビューを敢行した。オカダ選手の意外なエピソードや森田氏の熱いプロレス愛のトークが展開され、時代とともに出来上がったアニメとプロレスの垣根を崩すようなアイディアが飛び交うインタビューとなった。
[インタビュアー:ジャンクハンター吉田、畑史進]
—『タイガーマスクW』が10月から放映されてからはや1ヶ月が経ちますが、改めて「タイガーマスク」に対する思いを聞かせて下さい。
オカダ:僕はアニメ・マンガ版を知らない世代なので、やっぱり佐山聡さんのイメージが強いですね。今見てもすごい人ですよね、僕の師匠や先輩など周りの人の憧れが“タイガーマスク佐山さん”で、それがアニメや漫画から来ているというのは作品自体の凄さを感じます。
森田:僕は初代を再放送で観たのですが、アニメよりも漫画の「タイガーマスク」が、僕がヒーローを演じる上での根っこ、ヒーロー像のイメージの元になっているんです。作中では自己犠牲で伊達直人が死んでしまうのですが、あの当時、子供が見る作品は如何に正体がバレずに自己犠牲をするかというところがありましたね。 今は変身モノでも正体がバレていることが多いですが、『月光仮面』の「どこの誰だか知らないけれど」という言葉の通り正体を隠すところが正義だと思っていたんです。特に「タイガーマスク」の最終回は鮮烈なイメージで、涙を流しながら読んだんです。エンターテインメントの世界で自分がヒーローを演じる根っこになっているので非常に大事な作品です。 佐山聡さんの初代タイガーマスクも、自分の世代だったので熱心に見ていました。「タイガーマスク」からプロレスへの気持ちが始まっているんですが、リアルバウトの世界もしっかり見ている世代です。 久しぶりにタイガーマスが復活したことはプロレス漫画・アニメがない中、非常に嬉しかったです。新日本プロレスさんと共に、作品を盛り上げていければなと思っています。
—オカダさんの師匠もウルティモ・ドラゴン先生なのでタイガーマスク同様にマスクを被って子供たちのヒーローでしたが、オカダさんも新日本プロレスのヒーローなのにTVCMで子供たちに呼び捨てにされて「オカダさんだろ!」って言ってるのはキャラとして最高だと思いました。
オカダ:ありがとうございます(笑)
—ちなみに本作では真壁さんも声優として出演していますが、オカダさんも声優で出たいと思いませんか?
オカダ:僕も出る気満々ですよ!自分の役は森田さんにお任せしているんで、オカダ・カズチカの付き人役をやってみたいです(笑)
—ウルティモ先生みたいな役でも良いんじゃないですか?
オカダ:いやいや!付き人でオカダに「この野郎!」って怒られて泣いてます。
森田:それやるなら別撮りでお願いしていいですか?録る度に横にいるオカダさんに謝らなくちゃいけない。「(台本に)書いてあるんでスミマセン!」って(笑)
オカダ:やっていくうちに機嫌が悪くなるかも(笑)
—オカダさんは普段からアニメはご覧になるんですか?
オカダ:今でもよく観ますね。子供の頃はプロレスだと『キン肉マン2世』を観ていて、あとは『ドラゴンボール』『ワンピース』を観ていました。
—ご自身がこの様にアニメになったわけですが、もっと格好良く描いてほしいなど感想や注文はありますか?
オカダ:とても格好良くしていただいて僕はすごく満足です。
森田:8月にイベントでお会いした時に演技については「しっかりお願いします」と良いプレッシャーをかけてもらいましたが、今日も何社か取材を受けている中、ちょいちょいプレッシャーを受けている気がします・・・。組合う前のいい感じの距離感のプレッシャーなんで流石プロレスラーだなぁと感じています(笑)
—作中でも良い立ち回りでご出演されていますね
森田:今は物事を表から俯瞰している感じで描かれていて、その雰囲気をどう演じるかと考えています。リング上で闘っているオカダさんは皆さんよくご存知かと思うのですが、一歩下がったようなところは見たことがないと思うのでそこを如何にリアルに演じようかと思っています。
—森田さんは『ファイナルファンタジーⅧ』以来モーションアクターも演られていますが、オカダさんの役を演られるにあたって経験が活きていていると感じることはありますか?
森田:普段から戦う役も多く、実際に剣道と空手をやっているのでリアルな声の出し方ができます。刀でも振り下ろし、薙ぎ払い、切り上げの呼気の発し方ってどれも違いますし、空手の場合もワンツーを打つ時、蹴りでローに行くのかハイに行くのかというところでも声の出し方は違ってくるんです。攻撃だけでなくダメージを受けた場合もどこに受けたのかで、声の発し方って変わってくるんです。そういうところは役者をやる上でのこだわりがありますね。どこでも「ウッ」って言うわけでは無く、頭をやられた場合、腹の場合、レバーの場合という使い分けもやってきています。今回の『タイガーマスクW』でもそういうところは出していきたいと思っています。ところが実際のオカダさんはファイトの時に中々声を出さないので、そことのせめぎあいの中でよりリアルに近づけようと考えています。
—森田さんはゲームでもアニメでも主役を演られることが多いですが、そうなるとヒーローを意識されることは多いんじゃないですか?
森田:僕も数々の作品を通じて“ヒーロー”を教えてもらった側なので、僕自身も「ヒーローとはどういうものなのか」を伝えられるように考えています。
—オカダさんはプロレスでメインイベンターとなったのですが、ヒーロー像はどう作っているのですか?
オカダ:ヒーロー像とは違うのですが、リングに上ったら自分が一番かっこいいと思っていますね。チャンピオンは強ければなれますがそれだけでは駄目だと思いますし、僕を観ている子どもや女性男性全てに魅せていかなきゃと思っているんです。その場合はリングに上って自分自身がないと駄目だと思っています。
—我々もそうでしたがスターを見ると子どもは影響を受けるじゃないですか。そこは意識されたのですか?
オカダ:子どもはCMの影響で「オカダ」と言ってくれるのもありますが(笑)、最近は地方で子どものファンが増えていますね。子どもの時に受けた影響ってずっと残っているのでそういう部分では子どもを大事にしています。わざと僕の真似をしている子を指差したりしていますね。たまに横で「え、俺?」ってなっている大人もいますが(笑)
—昔はプロレスラーの体にペタペタ触ることもありますが最近は減りましたね
オカダ:僕はあえてさせないようにさせていますね。僕はカッコイイ自分を観られたい大事なシーンだと思っているので、そこで服を引っ張られたくないんです。地方とかは別ですけど、カッコイイ自分を見せるために若手を横につけて壁にして絶対に触れないようにしています。
—そこはヒーロー像として大事な部分ですね
オカダ:そうです。
—オカダさんから森田さんにここはこうして欲しいという注文はありましたか?
オカダ:・・・いや、森田さんに全てを任せています。
—何か言いたそうですけど本当ですか(笑)
オカダ:いやいや、本当に森田さんに演っていただきたくて!それで森田さんに決まって嬉しいので、僕のイメージを壊さなければ全然大丈夫です!
—「森田さんに演っていただきたい」というきっかけは何ですか?
オカダ:『ファイナルファンタジーⅩ』のティーダですね。
—ゲームお好きなんですね?
オカダ:好きですね!今は『ペルソナ5』をプレイしてます。『マフィア3』も買ってやりたいのですが、時間がなくて・・・。他にも『ニーアオートマタ』や『キングダムハーツ』も出ちゃうしどうしようかなと。早く『ペルソナ5』終わらせなきゃ間に合わないぞと思っています(笑)
—格闘ゲームはやらないのですか?
オカダ:あまりやりませんね。野球とかサッカーとかスポーツはやるんですけど、格ゲーはやらないです。
—プロレスラーはプロレスゲーム好きな人が結構いますよね?
オカダ:でも最近は出ていないですよね・・・。プロレスゲームって面白いなと思ったのが、ゲージ類がなくて、頑張れば逆転できちゃうじゃないですか。僕はプロレスゲームがきっかけでプロレスの世界に入って行きているんですよ。ニンテンドウ64で出た『闘魂炎導』をプレイして、そこから実際に試合を見てプロレスにハマったんです。
—でも新日本プロレスのゲームをやってウルティモ先生のところに入ったわけじゃないですか。なぜ新日本プロレスを選ばなかったのでしょうか?
オカダ:募集を見たら80kg以上が規定だったんですよ。あと、当時は新日本プロレスでも総合が始まった時期で「面白くないな」と思ったんです。そこで『闘龍門』みたいな華やかなルチャの様な技があったりと面白そうだったのでそちらに行きました。
—そこから新日本プロレスに入ったわけですから、運命は皮肉ですね。
オカダ:そうですね。でもそこからメキシコでの経験も活きているので良かったと思います。
—それは自分を表現する上手さですか?
オカダ:いや、受け身とか色々な引き出しだと思います。ルチャの引き出しもあって、新日本プロレスのやり方やアメリカのプロレスのやり方など色々な見せ方があると思います。
—『タイガーマスクW』の話に戻りますが、第5話ではバトルロイヤルでリング上から外へぶん投げられて終わりましたが、どう思われましたか?
オカダ:5話の放送は巡業中だったので、まだ観れていないんですよ。そういう噂は聞いていますが・・・、でも僕は負けることはないです!だから5話を観ていないのかな(笑)
—今後アニメでどのような活躍を期待していますか?
オカダ:強く格好良く華やかでいてくれればと思いますね。
—タイガーマスクとの戦いも希望されていますか?
オカダ:そうですね、タイガーマスクと向き合っているわけですからいつかはやらなきゃ駄目ですね!
森田:僕もタイガーマスクと戦いたいです。新・タイガーマスクを演じている八代拓はまだまだ若くて、プロレスも観たことがなかったんです。この作品をきっかけにプロレスを見るようになったんですが、プロレスを知っている世代、知らない世代、新旧のプロレスの捉え方を演技の中に入れていければいいと考えています。一番最初の「タイガーマスク」に出演していた方もいらっしゃるので、3世代揃うわけです。この3世代の形を『タイガーマスクW』に閉じ込めることが出来たら面白いなと思います。
—森田さんがプロレス好きなのが伝わってきますが、実はタイガーマスクを演りたかったのではないですか?
森田:演りたいですよ!憧れですからね。だから虎のマスクを被って脱いでみたらオカダだったみたいな展開もありだと思います(笑)
オカダ:「俺が本当の虎だ!」ってね(笑)
—ナオトの代わりにタイガーマスクになってみる。というエピソードがあっても良いかもしれませんね
森田:良いですね。タイガーマスク1号2号3号っていうのもありだと思いますね(笑)
オカダ:・・・マスクの用意しないとなぁ
森田:このイラストを見ていただければ分かるんですが、2人のマスクが合体して半分づつに描かれていますよね?実はこのマスクを見るとプロレスファンはグッと来るんです。1985年だったかな?初代の佐山さんがマスクを脱がされた後にファンが投げたマスクを被るんですが、それに似ているんですよ。色合いが少し違うだけなんですよね。これ見たときに「うおぉ懐かしい!このカラーリングだよ!」ってなったんですよ。往年のファンはこのキービジュアルを見た時に唸っていると思うんですよ。
—詳しすぎますよ!本当にプロレスが好きなんですね!ちなみにオカダ・カズチカ選手のメイン回も欲しいですよね?
森田:きっとあると思いますよ。「お当番回」というのがあって、それはメインキャラ以外で脇役がメインになる回のことなんですが、ついこの間の6話がうっすらと「お当番回」になっていました。
—オカダさんがアニメで初披露の新技をやって、その後に新日本プロレスの試合で同じ技をやってくれたら良いなと思ったんですが、どうでしょう?
森田:願望はありますよ。オカダさんに作っていただいて後からアニメのほうが良いかもしれませんね。
オカダ:技を作ってアニメで流していただいてからの流れなんでしょうけど、僕は勝ちたいのでその前に試合で出しちゃう恐れがありますね(笑)
森田:そこは大人の事情で我慢しましょうよ!
オカダ:いや、でも勝つためにはこの技が必要なんだってなると思うんですよ(笑)
—その際は少し森田さんもオカダさんも脚本に携わったほうが良いですね。そうするとクレジットにも乗るので。
森田:『キン肉マン』でも子供たちの描いた超人がそのまま作品に出てくるということもありましたが、せっかくご本人もいらっしゃることですし、ご本人の発案されたものが良いと思うのです。
オカダ:色々な技を考えて、どれか採用してもらうのも面白いですよね。僕らもどれなんだろうってワクワクするので。で、結局採用されない(笑)
—登場選手の全員に3つくらい考えてもらえばいいと思うんです
森田:そうですね。僕らもいくつか考えて「どれが良いですか?」って選ばれたものをやってくださいというのも面白いかもしれませんね。
オカダ:良いですね!
森田:でも出来る技に限ること!空中に浮いて・・・なんてことは不可能なので(笑)
オカダ:そうそう(笑)でも外道さんと組むのはやめてほしいな、やられちゃうから・・・
森田:せっかく新日本プロレスさんとタッグを組ませて頂いているので、もっともっと深く関わりつつ作品を押し上げていくことが出来たらなと思っています。そうするとプロレスファンとアニメファンの境がシームレスになって良いなと思います。
—確かに佐山さんがタイガーマスクで出てきたときにはビックリしましたもんね。
森田:このヤングライオンのマークが付いたTシャツに『タイガーマスクW』バージョンのTシャツも出てくれば嬉しいですね。
—そうですね、新日の選手の名前も覚えていただくきっかけになればいいですね
森田:みんなで「レインメーカー」をやれたら良いですね。
オカダ:新技も考えますね、声の出る新技を。
—確かに森田さんを活かさなくちゃいけませんね。
森田:今日も1日ずっとそれを言っていたので効果が出てきました(笑)無理のないところで!
オカダ:そうですね(笑)
【あらすじ】
現代のタイガーマスクは2人いる――!?
主人公は「東ナオト」「藤井タクマ」、2人の若きプロレスラー。彼らは小さなプロレス団体「ジパングプロレス」の練習生だったが、「ジパングプロレス」は悪質プロレス団体「GWM(グローバルレスリングモノポリー)」に潰されてしまった。報復のためナオトは富士の裾野で訓練を受け「新タイガーマスク」となり、一方タクマは「GWM」を裏で操る組織「虎の穴」にあえて入り「タイガー・ザ・ダーク」となる。「光のタイガー」「闇のタイガー」2人を待ち受ける戦いと友情の行方は――!?リング上では敵だが、目的は同じ。「虎の穴を潰せ!」
『タイガーマスクW』
毎週土曜深夜2時45分 テレビ朝日系列全国24局で放送!
(C)梶原一騎・辻なおき/講談社・テレビ朝日・東映アニメーション
公式サイト:http://www.toei-anim.co.jp/tv/tigermask_w/
タイガーマスク DVD-COLLECTION VOL.1 [ 富山敬 ] |
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