【連載コラム】畑史進の「わしは人生最後に何をみる?」 第19回 『ELDEN RING』はちょい過大評価されていないか?と思うお話

 

 

【文・畑史進(編集長Twitter):https://twitter.com/hata_fuminobu

 

皆様ご無沙汰しております。生放送をご覧になっている方はいつもありがとうございます。

花粉の舞う季節になりましたがいかがお過ごしでしょうか?

僕は別にHなこと考えているわけでもないのにほぼ毎日鼻血ぶーぶーでたまったもんじゃございません。

 

という前置きはさておき、今回は2月25日にフロム・ソフトウェアから発売された『ELDEN RING』の話をしていこうかと。

 

 

文字は見えても文章を読むきのない、結論を先に聞きたいセッカチくんに向けて端的に話せば「別に世間で高く評価されるほどのものじゃなくね?」という話です。この手の話ってすればするだけ自分にとって不利益しか無いんだけど、あまりにも盲目的に評価しとりゃせんか?という風潮なので少しばかし自分も意見を言っておこうかと思いまする。

 

最初にこのゲームの良いところを言っておくと、フロム・ソフトウェアが本作で初めて手掛けたオープンフィールドのマップの作り込みがスゲェってこと。このゲームはこれに尽きると思う。いきなりだだっ広い野原に放り出されてこれから何をすれば良いのかわからないけど、とりあえず風の向くまま気の向くままに移動して、地図の断片をそのうち見つけて、地図を凝視すると気になる箇所がプレイヤーの中に湧き、それを頼りに移動して分不相応な敵を倒したり、やり過ごしたりするのは冒険感があると思う。加えて敵の配置バランスはゲーム的に自然に作られていて、冒険に緩急がつけられているのは凄い。これほどの冒険感を強く感じる作品は他に『ゼルダの伝説』シリーズがあるけど、ベクトルが違うんで比較は割愛。

とにかくここまでのマップの作り込みをしている点は評価に値する。

 

 

 

正直このゲームの長所はここだけだと思う。

それ以外はいつも見る「フロムゲー」「フロムアクション」なので、アクションはいつもの通りのハイクオリティで仕上げているし、相変わらずのぶっ殺されっぷり。その驚異を少なくするためにプレイヤーはひたすらヒットアンドアウェイや逃走方法を模索する。やっていることは『キングスフィールド』の頃から変わらない。

要するにこのゲームは「フロムゲー+オープンワールド」なもんで、90年代に同社の『キングスフィールド』を遊んでいる身としてはこの時代から続くフロム・ソフトウェアの「キングスフィールド一本足打法」なスタイルに感心する。

先に行っておくとこれは揶揄しているわけじゃない。文字で見るとかなり軽く扱っているように見えるかもしれないが、これはこの会社の特徴、個性がゲームに反映されているというもの。

似たような例で言うならコーエーテクモゲームスの「無双シリーズ」みたいなもんで、あちらさんは毎作「〇〇無双」ってケツに無双という文字を付けるから大方の熟練ゲーマーはその内容が想起できるし、ファンでない人はよほどのことがないと購入に至らないという人もいると思う。

ところがフロム・ソフトウェアは『キングスフィールド』シリーズに幕を下ろしてから、『キングスフィールド』のシステムをベースに、新しい要素を足したり、変えたりして様々なゲキムズアクションゲームへの提唱をしてきた。その先に『デモンズソウル』というのが出てきて近年になって世界的にメジャーになったというわけだけど、要は他のメーカーがやってきた既存のシリーズ最新作で売る、IPを育てる方法ではなく、フロム・ソフトウェアという会社のブランドでゲームを売るというやり方だ。正直フロム・ソフトウェアの方針はメーカーとしてたくましい。

 

 

ここまで話した上でフロム・ソフトウェアが手掛けたこの手のアクションゲームをざっと振り返ると、さっきからも言っているように、向かう先にはプレイキャラと比べて分不相応な程に強い敵がうようよしていて、死を始めとしたダメージリスクを抑えつつ倒すためにヒットアンドアウェイ戦法を仕掛ける。これは『デモンズソウル』や『ダークソウル』から遊んできた人なら容易に理解できるだろう。「やっていることは『キングスフィールド』の頃から変わらない」と評したのはこういうことだ。

 

今作はそこにオープンフィールド、オープンワールドという現代では当たり前になったフィールドシステムが追加された。オープンワールドには膨大な広さを活かした探索がつきものでここが今作の壮大さを形作っていると力説する人が多いけど、「死にゲー特有の突然死と探索が隣り合わせになっている相性の悪さ」を見落としている人が多いんじゃなかろうか。

フロム・ソフトウェアの『キングスフィールド』系のゲーム、現代ではソウル系と言われているゲームでは地道なレベルアップ、キャラクターの育成と都度の探索が必要となる。もちろんそんなもの必要ないっていう人もいるだろうけど、それはこの手のゲームに慣れたごく僅かな人らで、ほとんどの人は地道なレベルアップと有益なアイテムを見逃さないための探索をしなければならない。

地道なレベルアップにはヒットアンドアウェイという時間のかかる戦闘を余儀なくされるし、アイテムや装備の探索には相応の時間がかかると同時に不慮の死を遂げることもある。いつ何時でも死が隣り合わせなこのゲームにおいてオープンフィールドのような広大なフィールドは通常の移動はもちろん、死んだ後の再開地点再開から再度同じ場所に向かうまでの時間が大いにかかる。死ぬたびに死の直前に居た地点まで移動するのはこれまでの作品ならばまだ気にはならなかったが、再開地点によっては退屈な移動時間を覚悟しなければならないときもある。

ようやっとの思いで前回死んだポイントに戻ってもすぐに死んでしまう可能性もある。

ここで言いたいのがフロム・ソフトウェアのような「何度も死んで遠くの再開地点に戻されるゲーム」に「オープンフィールドの探索要素」は非常に相性が悪いということ。探索は安牌なクリアのためには半ば強制なうえ、死ぬたびにこれまで以上の時間を消耗させられるのは人によっては壮大よりも冗長に感じるんじゃなかろうか?少なくとも僕は感じた。

詳細を書くと長くなるから割愛するけど、従来までの形式が強い『Bloodborne』のような箱庭系のゲームだと探索箇所が絞られることに加え、敵も本作に比べて少ないことから時間はそこまでかからない。また、オープンワールド系が時間がかかるのは『ELDEN RING』に限った話で無いのは他のゲームを遊んでいる人ならわかるだろう。そこに「死にゲー(フロムゲーというべきか?)」というような強者に数発で殺されるようなゲームで再開地点に戻されるゲームは時間を浪費したという感覚さえ覚える。

 

もしかしたら「そんなに嫌なら攻略サイトを見ればいいじゃん」と抜かす人もいるだろうけど、そんなのは相手にするまでもない。ゲームは普通攻略サイトをみてなぞるものでもない。

 

 

さて、なぞるという言葉に関連して今作のマップにも苦言を呈したい。

今作のゲームシステムはマップに予めメインミッションの位置を指し示すような親切マーカーは一切ない。ここはむしろプラスの評価で、昨今はこうした親切UIが画面をぐちゃぐちゃにするので、無いことは冒険心を掻き立てることにも役立っていると思う。本作にもマップに自分の備忘録としてマーカーを置くことが可能だが、むしろこのゲームには自分がこれから進みたい道を予め引く「ライン引き」のシステムを用意したほうが良いんじゃないかと思った。

というのも、これはプレイ中に何度も感じたことだけど、地図上で自分の行きたいポイントにマークしてからそこに向かってみると、先には切り立った崖にぶつかったり、奈落の底だったりと、直進できないようなシチュエーションが何度もある。それ自体は良いのだけど、だったら迂回するためのルートをマップ上でプレイヤーに自由に引かせてくれても良いんじゃないかと思う。これだけオープンワールドゲームが出てきていて未だにそれが作れていないってどうなんだ?

 

また、戦闘を始めとした危機的状況に陥るとマップが一切開けないということの不便さをこのゲームを完成させるまでに感じることは無かったのか。と言いたくなるほど不親切極まりない。このゲームは敵に発見されるとマップが開けなくなるのだけど、敵をやり過ごすためにどこかの方向に走り去らなければならない。そのようやくマップが開ける状況になって確認すると、自分がこれから向かう方向とはぜんぜん違う方向に行っていたりするなんてザラ。それで自分のも向かいたい所に向かうまでにまた多大な時間をロスするというわけ。ここでさっきのマップ上に移動予定のラインを引くなんて事をやらせてくれたらこんなことにはならなかったのにね。

 

特に今作はこのマップ周りのシステムが全然良くないと思う。各所のレビュー等で満点だらけだけど最後までプレイして不便に思わなかったのか?

 

あと、これはフロム・ソフトウェアのゲームによくある話なのだけど、だいたい1作につき3~4体くらいガバガバ調整を疑うような「クソボス」がいる。というか、今作は全体的にボス敵がかなり厄介な設計になっている。中にはこっちのボタンを感知して動いているんじゃないかと思うようなボスもいた。気のせいだと思いたいけどね。そのためか、今作では戦技「霜踏み」っていうのが割と強く設計されていたけど、その話はまた後で。

ボスや敵との戦闘で最悪だったのが「レバガチャ」での復帰。特定の状況下に入るときスティックやボタンをガチャガチャと触ることで解決する特有の操作だけど、今作では操作キャラが敵に拘束された時、その拘束から早く抜けるためにシステムとして用意されている。

 

 

ひとこと言いたい「ふざけんな!」って。

いい加減ゲームメーカーはレバガチャというコントローラーを狂わす、壊すような操作をプレイヤーに求めるなっての。ただでさえ近年のコントローラーはいつ使うかわからないような機能を携えて値段が上がっているのに、なぜ買い換えさせるような、自ずと壊すような操作を要求するのか。

このレバガチャはいい加減ゲームメーカーの協定で廃止かなにかにしろよ・・・

 

コントローラーにまつわる話をもう一つすると、操作性が全体的に悪い。特にアイテムの選択時に押す下ボタンやダッシュボタンは快適とは程遠い。アイテムは最大10個まで持てるけど、アイテムの“選択”をするためにはこの下ボタンを目的のアイテムがカーソルに合うまで複数回押す。6個先にHPの回復薬があるならその回数分押すだけ。もうこのシステムが前時代てきすぎて操作しづらいのと、さっきのレバガチャと相まって変な誤使用をするときもある。ただでさえフロム・ソフトウェアのゲームって先行入力が強いんだからこんなんで凡ミスカウントに加えられても納得が行かない。

同じ会社から出ている『アーマード・コア』もそうだけど、基本的にここの操作設計はあんまり良くないんだけどね。やりたいこと、プレイヤーに自由を与えようとしているのは分かるんだけど、コントローラーのボタン数が足りていないということは何かを削るなりしないと。それがゲームの設計ができていないって話なんじゃないだろうか。

 

難しいゲームを作るというのは本当に難しいと思う。ただ、この操作性の悪さは難易度の高さでもなんでもなく、このゲームを高く評価するのはおかしい。盲目的にも程がある。さっきのクソボスの話の続きじゃないが、全体的にプレイヤーに与えるダメージが非常に大きく、2発くらったらすぐに死ぬというのも珍しくない。そこにこの操作性の悪さによる思い通りに行かない回復薬の使用からレバガチャの使用が重なると呆れる。

 

 

最後に最近行われたアップデートの「霜踏み弱体化」や「一部魔法の弱体化」について話を。

ぶっちゃけこの手のゲームの技の弱体化は「あちらを立てればこちらが立たず」と言ったもので、成功することはあまりないと思っている。場合によってはやむを得ないということも頭にあるけど、本作のようなレベルアップ時に自分のゲームの進行方針で調整するというゲームシステムに限って言うならやるべきではない。アップデートで調整なぞしたら最低。としか評価できない。

何度も書いたようにこのゲームはレベルアップ時にプレイヤーの成長させたい能力を選ぶ事ができる。能力は武器の装備において重要な役割を持っていて、プレイヤーが使いたい装備、魔法、アイテム、技を最大限活用するためにゲームが進むと育成方針が固まってくる。突き詰めるところまで突き詰めたら最終的にはほとんど変わりないステータスになるらしいけど、今作のようなゲームで安直に技の弱体化はするべきではないって。今までその技のためにゲームを進めてきた人が馬鹿見るじゃないか。

 

そもそも、このゲームはその技の強さも踏まえて世界を構築しているんじゃないのか?

そこで安易に「バランス調整のため」と称して後から手を加えるのは最初からこのゲームはテストプレイもろくすっぽせず、不完全品として売ったという、物作りとして最低な事をしているんじゃないかと思う。もちろん、当初ミスをしていた武器の数値バグとかは修正して然るべきだけど、安直な技の弱体化はこのゲームが目指して作った世界観をぶち壊しただけじゃないんかと思う。

 

アップデート前までに「このゲームの世界観が素晴らしい。雰囲気が良い」とか言っている人は一体全体何を考えているんだろうとは思う。あなた達が好きになった世界観が制作側の不都合で勝手に書き換えられたら怒るべきだろうと。バランス調整という名のもとでやって良いわけじゃないと思うけどね。

 

と、ここまでこのゲームに対する問題点や改善するべきだろうと思う点を書いたけど、全体を通してもう一度振り返るとこのゲームのシステムにはあっていないけど、マップをここまで丁寧に作ったのはすごい。ただ、そのマップに合わせたシステムづくりが足りていないとは思う。

 

 

まぁ点数を出すとするなら100点満点中75点くらいかね。

満点、それ近辺は絶対にありえない。

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