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【エンタジャム独占】 Nintendo Switch用ソフト 『パワプロクンポケットR』 山本拓プロデューサーインタビュー

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【取材・文 畑史進 (Twitter:https://twitter.com/hata_fuminobu)】

 

 

 

2021年6月のNintendo Directで衝撃が走った。

「10年の時を超え蘇る!」というナレーションとともに見覚えのあるシルエットを見た瞬間。いや、シルエットだけで見慣れているパワプロくんとはちょっと違う輪郭に反射的に気づいた。「『パワポケ』やん!」。目白押しの新作発表群の中で全身の細胞が震え立つような感覚を感じるとは僕も歳を食った。

 

2021年11月25日に発売された『パワプロクンポケットR』は初代『パワプロクンポケット』『パワプロクンポケット2』の選手育成モード「サクセス」と、新選手育成モード「サイバーバル」を収録したゲーム。育成した選手はNintendo Switch版『eBASEBALL パワフルプロ野球2020』に移行することが可能だ(以降『パワポケ』『パワプロ』と省略)。

野球選手を育成するはずが、常軌を逸したストーリー展開に根強いファン層が形成され、GBC、GBA、DS時代を代表するシリーズの一つとして挙げられる。

 

 

初代『パワポケ』『パワポケ2』はすでにGBA時代に『パワポケ1・2』としてリメイクされているが、『パワポケR』ではランダムイベントの発生確率が当時よりも格段に増えていることから初作やリメイク作品よりも賑やかになっている。また、野球システムもNintendo Switchの『実況パワフルプロ野球』に準拠しているため、試合パートもだいぶ遊びやすくなっており、当時、甲子園優勝できなかった人もクリアしやすくなっているのではないかと思う。

 

 

今回エンタジャムでは10年ぶりの復活を遂げた『パワプロクンポケットR』の山本拓プロデューサーに独占インタビューを敢行した。『パワプロクンポケット1・2』の実質的なリメイクで様子見をしている未購入のプレイヤーは参考にしてほしい。

 

 

—読者に向けて自己紹介をお願いいただけますか?

 

山本:私は『パワプロクンポケットR』でプロデューサーを担当いたしました山本拓です。僕がシリーズに関わったのは『ダッシュ』が最初で、その後『9』以降、最後の作品まで見届けました。その後は『パワプロ2013』から現在もサービス提供中のモバイルゲーム『実況パワフルプロ野球』(パワプロアプリ)も担当していました。今回はスペシャルミッションとして『パワポケR』の復活をやらせていただきました。

 

 

—『パワプロアプリ』でもプロデューサーということですが、実際はシナリオの監修とかされているんですか?

 

山本:シナリオは別に「シナリオ班」という別チームがあってそこは西川(西川直樹:パワプロクンポケットシリーズ ディレクター)であったり、別のメンバーがコアとなってシナリオ監修をしています。僕がそこに対して意見具申するということはない状態です。

 

 

—『パワプロアプリ』も『サクスペ』もガッツリ遊んでいるんですが、両作品の展開って同タイミングにならないものなんですか?『パワプロアプリ』が先行体験、自分の戦力強化の試験場みたいな状態になっていてビジネス的にもったいないなぁと思っているんです。

 

山本:先日も有名作品とのコラボレーションで両作品は同じタイミングでのリリースを実験的にやりましたが、今後はその方向に進めるよう検討はしています。少しずつ合わせられるように考えております。

 

 

—『パワポケR』ですが、発売後の手応えはいかがでしょうか?

 

山本:やはりコアなファンの方を中心に現代のハード、現代のグラフィックで遊べるということをかなり喜んでいただいでいる感じです。特に「戦争編」は動画配信者の方が遊んでいたいただいて、かなり楽しんでいただいて盛り上がっているのは良かったなと思っています。

 

 

—「戦争編」も初期のツキが5になって随分優しくなりましたね。それでも死ぬときには死ぬんですが。本作は近年のサクセスとは違って優しすぎず、難しすぎずという塩梅でしたが、当時のシビアさを再現する調整は大変だったんじゃないですか?

 

山本:そうですね。企画段階でも現代テイストで優しくしようという方針ではあったんですが、とはいえやっぱり「極亜久高校編」や「ドリルモグラーズ編」はまだリセットがない時代でした。シリーズの後期に入ると5回までリセット可能になりましたが、今作ではそれも無くなったので「初作に近くなって難しくなった」という声も聞いており、難易度調整は大変だなとは思いました。

 

 

 

—まぁ人生にリセットは無いですから、コレくらい難しくしたほうがメリハリ付くとは思います。

 

山本:「これが良さだ」とおっしゃる方も多くいらっしゃいますね。ある意味リセット後の座談会(野球仙人の知恵袋)も「シリーズの味だから欲しかった」というご意見もありました。

 

 

—最近のアップデートも確認したんですが、細かいイベントのスキップも可能となりましたね。(イベント進行中に+ボタンを押すとイベントスキップができる)

 

山本:そうですね。昔の作品と比べて演出(擬音のカットインなど)が増えているので、読み飛ばしのテンポが悪くなるということで実装いたしました。

 

 

—逆に今の御時世は「隙間時間のプレイで短時間のクリア」が求められている中、『パワポケ』はどうしても1時間半~2時間の時間がかかるのは一種のハードルですが、それをアップデートでショートカットできるようになったので、かなり遊びやすくなったと思いました。

 

山本:そこは我々の反省点だなと感じていました。

 

 

—ファンとしては今回の復活劇は嬉しいの一言に尽きるんですが、スタッフとして今この現代にこのシリーズを復活させる意義は何だったんでしょうか?

 

山本:本家『パワプロ』はおかげさまで今でも大変好評でパワーアップし続けているんですが、「野球」というスポーツをテーマにしているゲームである以上、野球を知っている人が買うのであって、小さな子供さんにリーチするのはちょっと難しい部分があります。『パワポケ』の良さは野球以外の要素を多分に含んでいるので、そこから野球に触れてもらって「野球っておもろいんだ」と感じてもらい、より将来的に本家の「パワプロ」シリーズに触れてほしいなという考えがあります。

そして、過去の凄く熱い声があって今復活させるとお客さんに喜んでもらえるであろう。という2つの軸がありました。

 

 

—野球を知ってもらう、ユーザーの他ゲームへの誘導という話でいうと、『パワポケ13』でリアル等身の野球が追加されたり、選手の顔データが表示されたりとかなり工夫されてきていましたね。

 

山本:そうですね。昔は携帯機、据え置き機で市場が別れていて、据え置き機に劣る携帯機でもリアルに近い野球体験のゲームが欲しいという声もありました。それを提供するために進歩してきたゲームシリーズでもあったので、力を入れてきました。実況の入った『パワポケ10』はかなり手応えを感じました。

 

 

—『パワプロ』で好きなワンシーンが、ゲーム起動時の「野球しようよ」というメッセージイラストが出てくるところなんです。あれはゲームだけじゃなくて現実でも「野球を楽しんでほしい」というもう一つのメッセージでもあるんですが、『パワポケ』に無いのはなんでなんですか?

 

山本:あれがなぜ入っていないのか、どのくらいのタイミングで差し込まれるようになったのかは把握できていないですが、こちらの方まで差し込むように降りてこなかったですね。あれがシリーズの理念でもあるのでどこかで入れられれば良いですね。

 

 

—『パワプロ』『パワポケR』に共通している話ではあるのですが、サクセスの背景イラストの場所ってモデルがあったりするのですか?

 

山本:昔のものだったらこの大阪の周りの風景の可能性はあるのですが、最近は無料、有償の素材データを使っています。

 

 

—今作はランダムイベントの発生確率が格段に上がって旧作よりも賑やかになりましたね。

 

山本:そこもちょっとした裏話があって、実は意図的ではありませんでした。スクリプトのシステム自体が『パワプロ』で、そこに載せ替える作業をしたら過去作のイベント発生率と『パワプロ』のサクセスのイベント発生率が大きく異なっていることから起きてしまったことなんです。結果として発生しすぎたなと思っています。

 

 

—逆にあれは正しいと思いましたよ。というのも、旧作では運悪く見られなかったイベントが発生していたのでかなり新鮮な体験をしたんです。獨田マリコもあんなに登場しなかったろってくらいで。人によっては昔攻略できなかった彼女候補も楽しめるようになったかと思います。

 

山本:そう言っていただけると嬉しいです。ただ、一部不利益になるイベントも同じように発生確率が上がったので、そこはユーザーさん第一で下げるようにアップデートで少し抑えました。

 

 

—確かに荒井紀香の登場頻度も減りましたけど、逆に早くしないとという焦燥感に駆られるのでゲームとしてかなり楽しめました。

 

山本:そこは本当にバランス調整の難し良いところですね。

 

 

 

—少しアプリの話になるんですが、『パワプロアプリ』で培ったノウハウは今作でも生かされていたりするのですか、また、逆もあったりしますか?

 

山本:そうですね。当時『パワポケ』でメインを張られていた人が現在『パワプロアプリ』で中核メンバーになっているので、西川もそうなんですがガッツリと当時のノウハウは『パワプロアプリ』に継承されています。特に顕著なのが「ダン&ジョン高校」のサクセスです。あれは『パワポケ』シリーズの裏サクセスで、ディレクターの三浦が手掛けたものなので『パワポケ』のDNAがまだ生きていると感じられるかと思います。

今回、『パワプロアプリ』のメンバー全てが『パワポケR』の制作に参加できなかったのですが、新旧のスタッフ間でノウハウの循環ができていると感じております。

 

 

—立ち絵に関してもお伺いしたいのですが、『パワプロ2020』ではLive2Dが使われていたのに対して、今作採用されなかった理由はなんだったのでしょうか?

 

山本:今作は『パワプロ2020』より前のSwitch版『実況パワフルプロ野球』がベースになっているので今回は採用を見送ったという形でした。要望があれば今後のリメイクでの採用も考えようかと思います。

 

 

—シナリオを読み通していて感じたのですが、色々と突っ込まれる昨今、現代に合わせて試行錯誤の末の工夫をされてるなと感じました。サクセスの難易度もそうですがテキストの編集が大変だったんじゃないですか?

 

山本:そうですね。まずは西川はじめ制作内で資料を集めて、問題になりそうなところピックアップして確認と議論をし、ちゃんとした理由が出るならそのまま残そうと進めてきました。『パワポケ』である以上「ここは守らないと」と、ファンであるお客さんに納得してもらえるギリギリの調整を行いました。そこからさらに権利侵害、法務的に問題がないかというフィルターを通して最終的に「CERO:B」という形に落ち着きました。

 

 

—やるせないと感じられるところもあったかと思いますが、ある程度は「ここは良いんじゃないの?」という精神で突破したところもあったんじゃないですか?

 

山本:おっしゃるとおりで、特に「美才流喜多高校」もそのまま行くか、彼ら自体をオミットするか悩みましたが、当時のお客様の印象に残る高校でもあり、残したいという制作メンバーの思いもあったので、漢字を変えてなんとか残すことができました。まさかね君も彼はただの一個人なので問題ないだろうという考えでした。

逆に戦争編は実をモチーフとしているものの完全な架空世界なので必要は無いだろう、ということでそのままの状態を提供しました。

 

 

—リメイクに際して期待した人もいたかと思うんですが、よう子先生の彼女化は検討されなかったんですか?

 

山本:要望があればぜひ考えたいですね。

 

 

—シリーズ全体の話にもなるのですが収録されてきたミニゲームは、MSXやファミコン時代のKONAMI製のゲームが収録されていてレトロゲーマーも注目することもありました。ミニゲームの選別や制作はどのような基準があったんですか?

 

山本:だいたいスタッフのやりたいこと優先で決めていました。。もちろん、お話に沿ったミニゲームを作るのが優先で、例えばブギウギ商店街のダチョウレースとかはダチョウが出てきて~、だったらレースが良いんじゃない?というノリから作っていったこともありました。

他にもプログラマーが「コレを作りたい」というのがあったらそれが採用されたということもありました。

 

 

—まさに『パワポケ6』とかその欲望を詰め合わせたような仕上がりでしたね。

 

山本:そうですね(笑)。僕もその欲を言ったこともあって、『パワポケ10』でのミニゲーム「ぴったりあわせてPカード」はドンジャラみたいなゲームでしたが、これに参加する前は僕が PSP版の麻雀格闘倶楽部の制作作業をしていて、それを参考に「麻雀風のゲームを作りたいです」と言ったら採用されました。

 

 

 

—今作は「セルフ転生」ができるようになったのが大きなポイントだと思うんですが、これは以前から要望があったんでしょうか?

 

山本:昔は携帯機でみんなが持ち寄ってワイワイ遊ぶこともやりやすかったんですが、今作は据え置き機での発売ということも踏まえつつ、現代は一人で遊ばれる方も多いだろうということで、セルフで転生できるように設計いたしました。

 

 

–転生で彼女がドンドン増えていくじゃないですか。ある種の後ろめたさがあるんですが、あれこそ議題に挙がらなかったんですか。

 

山本:そのハーレム要素はオミットするかどうか企画時に挙がりましたね。ただ『パワポケ2』の特徴的な要素であるのと、専用のイラストも用意されているのでこれはそのまま残しておこうと落ち着きました。

 

 

—あれを容認する野球仙人もちょっと可笑しいですよね。

 

山本:確かに(笑)

 

 

—「俺のペナント」が今後実装されるということですが、もう目処は立ってきているんですか?

 

山本:はい、実装される目処は立ちつつあります。期待してお待ち下さい!

 

 

—『パワポケ』のストーリーや彼女イベントって先に結末から考えたんですか?それとも設定を先に考えて徐々に構成していったのでしょうか?

 

山本:メインストーリーは西川が一人で考えていましたが、大まかな起承転結はチーム員全員に提示して、個別の彼女イベントはそれぞれの担当が考えていくという分業スタイルでした。それである程度固まってきたところで西川が確認して、他の彼女イベントで齟齬やメインストーリーとの矛盾が生じたときには西川が手直しするという流れでしたね。

 

 

—シリーズが進んでくると、過去作との矛盾が生じていることもありましたが、今回のリメイクではこのあたりの修正を行う予定はあったんですか?

 

山本:西川も現在『パワプロアプリ』の方がメインになっていて、今作では都度意見をもらうという形だったので、ガッツリと変更を加えるということはやりづらかったですね。

 

 

—メインストーリーでいうと、今回改めて「ドリルモグラーズ編」を遊ぶと、このシリーズって凡田の物語なんだなって感じるんですよね。彼女と遊んでいるところを冷やかしてみんなに言いふらしてマニア道を突っ切っていたら最後は自分一人になっていた。ある意味映画『レディ・プレイヤー・1』を先駆けたキャラになっていましたね。

 

山本:確かに凡田さんは後半レギュラーキャラになっていましたね。西川がどこまで想定して彼の人生を作っていたかはわからないですが。

 

 

 

—このゲームが商売相手にしているユーザーはマニアなのに、マニアポイントが上がるとゲーム的にあまりよろしい展開にならないっていうところ面白い点ですよね。

 

山本:確かに言われてみると変ですよね。良いことも全く無いですし。何事も度が過ぎるとよろしくないというメッセージで受け取っていただけると。

 

 

—野球パートを遊んでいて気づいたんですが、最近の『パワプロ』では主人公はパワプロくんの顔で、ユニークキャラはイラストを描き起こしたモデルが作られて、その他のモブキャラはつぶらな瞳の顔モデルという棲み分けになっているじゃないですか。

今作の主人公はパワポケくんのイラストがそのまま描き起こされていて、野球パートでパワプロくんの顔がモブとして出ているのはなにか意図があるんでしょうか?

 

山本:正直そこまで深い意味はなく、元々汎用キャラクターとしてのパワプロくんなので採用しているというだけですね。

 

 

—初代パワプロくんこと、戸井くんも現代に復活しましたがこれは昔のCMなど、過去のものと照らし合わせながら制作されたんですか?

 

山本:そうですね。過去の画像がアーカイブとして残っているのでグラフィッカーがそれを見ながら作り上げました。

 

 

—「サクセス」ってある程度基本が90年代に完成されていて、そこにアクセントシステムを『パワポケ』で都度加えていっていますが、このシステムが現代の『パワプロアプリ』までどれも丁寧で感心するんです。こういったアイディアってどこから湧いてくるんですか?

 

山本:チーム員で色々相談しながら企画会議で考えているんですが、ある程度大きな部分が決まったら担当を決めてその人が調整するという形になります。

 

 

—近年だと『パワプロアプリ』とかで物凄い化け物選手をポンポン製造できちゃうこともありますが、アクセント的なシステムで予想外な展開になったらその後はどうされるのでしょうか?

 

山本:確かにこちらが意図しない化け方をして強い選手ができてしまうっていうのは過去に何度かありましたけど、シリーズを続けていくと、その化けた選手が育成できたという基準からスタートしなければいけないのでその後の調整が大変ですね。

特に『パワプロアプリ』や『サクスペ』になると新しい高校を実装してもそこで育成できる選手がこちらの想定より弱い選手になってしまうとユーザーの皆さんは前の高校で遊ぶ、という流れになってしまうので、バランス調整がとても大変ですね。。

 

 

—『パワポケ』シリーズってあの手この手の演出で全年齢対象のゲームという地位を守ってきたのは天才的だなとは思ったんですよ。これらのアイディアって誰が考えてたんですか?

 

山本:そこはシナリオ担当だった西川や、グラフィックに落とし込んだのはドリル株式会社の藤岡さん(パワプロクンポケットシリーズ:ディレクター)、萩原が考えていましたね。

 

 

—どの演出も嫌味がなくてスッキリとしているんですよね。むしろちょっと笑い袋をくすぐられるようなもので。

 

山本:だいぶギリギリの部分を攻めるものだっただけに、お客様からの問い合わせからご意見いただくこともありました。

 

 

—そこが面白い部分でもあるんですが、コレが売りのゲームなだけに宣伝もかなり難しいところもあったんじゃないですか?

 

山本:ですから今回も宣伝では「ダークすぎない」けど、ハチャメチャで色々驚きのある世界の「なんでもありの野球ゲーム」みたいな形で新規の皆さんを「おいでおいで」という方向でプロモーションを展開しました。

—マーケティングの観点からも話をすると、『パワポケ』シリーズは任天堂ハードの『パワプロ』にしか選手が移行できなかったじゃないですか。で、『パワプロ』と『パワポケ』で選手を育成すると圧倒的に『パワポケ』のほうがトンデモ選手の育成ができて、僕らが子供の頃は「強い選手を作りたいなら『パワポケ』買え」っていうある種の風潮があったんです。これって上手い誘導だなって子供心に思っていたんですが、そういった狙いはあったんですか?

 

山本:明確にそういう戦略は無かったと思います。ただ、当時から『パワポケ』のほうが製作者の裁量に任されていることが大きかったんです。一方で本家『パワプロ』のほうが厳しいバランスチェックがなされていて、結果的に『パワポケ』がチェックをすり抜けた強い選手を育成しすいという環境になったんだと思います。

 

 

—『パワポケ』シリーズってどうしてもNPBの実在選手が出てくる関係上、任天堂のバーチャルコンソールに出すことが難しいという課題がありましたが、今作では実在の選手を収録しないという形にしました。これは今後も出るであろう新ハードでも展開しやすくすることを想定した設計ですか?

 

山本:今までは『パワポケ』は携帯機、『パワプロ』は据え置き機という位置付けがありました。今作は商品の位置付けとして棲み分けを作ろうとしたときに、野球以外のバラエティに富んだゲームを提供する『パワポケ』。実在選手を『パワプロ』でお楽しみいただくという方針を作りました。

とはいえ、実在選手がいないと『パワポケ』を買う意義が無いという方が多数存在するのであるなら考えなければいけないかなと。

 

 

—任天堂ハードで展開されてきたゲームシリーズではあるんですが、とはいえ、ソフトの売上を考えてのマルチプラットフォーム戦略が当たり前の昨今、今後PS4などで展開される予定はありますか?

 

山本:確かに『パワポケ』は任天堂ハードで展開されてきました。今回リニューアルするにあたって任天堂ハードを所有されている方は『パワポケ』を購入してくれる層でもあるだろうということで採択しました。もし、新規層開拓でPS所有層にも需要があるなら検討はしていきたいなと思っております。

 

 

—名物コーナーだった「質問コ~ナ~」の質問なんですが、あれは結局誰が答えていたんですか?

 

山本:あれは当時の開発メンバー全員が総出で答えてましたね。藤岡さんがプリントアウトしたものを回覧で回して、答えられるところをみんなが埋めていって、最終的に藤岡さんが手直していったんです。中にはパワポケくんのセリフ調で書いていた人もいましたね。

現在、雑誌のおまけコーナーで企画しているものは僕の方で答えさせていただいております。この現代にネット上で企画するとなると質問数が多くなってしまうのが想定されます。過去の質問コ~ナ~は“全部”に答えていたんで、そうなるとピックアップになってしまうため趣旨とズレることから昔みたいに企画するのは難しいかなと思います。

 

 

—全部に答えていたんですか!? だってあの当時は抜粋されて2ちゃんねるなんかで話題になったじゃないですか。そりゃ最終作までやるわけがない。

 

山本:印刷漏れが無い限りは全部楽しく答えていましたね(笑)。

 

 

—コレも過去の話なんですが、星影ヒヨリは誰が声を当てていたんですか?

 

山本:あれは確か当時のサウンドスタッフが歌っていたと聞いています。

 

 

—「サイバーバル」に関してですが、あまりにも硬すぎて最初のエリアのボスを倒したところで疲れちゃって、その後、続かなくなってしまったんですが、今後なにか修正を入れる予定はありますか?

 

山本:あれは僕もちょっと硬くしすぎたなと思っているのと、CPも入手しづらいと思っています。今後のアップデートで改善したものをお届けしたいと思っています。一人で遊ぶには辛い設計になってしまいました。

 

 

—昔のパワポケポイントじゃないですけど、サクセス終了時に何かしらCPがもらえる設計だったら流れができて遊びやすくなるんじゃないかなと思います。

 

山本:なるほど確かにそれは良いかもしれませんね。

 

 

—いち開発者としてパーソナルなお話をお伺いしたいのですが、山本さんがゲームクリエイターになられた理由はなんだったんでしょうか?

 

山本:小さいときからゲーム好きだったのが理由で、小学生の頃からファミコンのゲームが好きでした。大学で情報学科に行ったのもゲームプログラマーになるのが目標でした。それもゲームが好きで、ゲームの仕事がやりたいという原動力から来ています。そして自分が主体となってゲームを作りたいというのがあったんです。

 

 

—その学生時代は野球ゲームを作られていたんですか?

 

山本:残念ながら野球ゲームは作っていなかったですね。全然別のものを作っていました。KONAMIに入社した頃にはすでに『パワプロ』と『パワポケ』がある状態だったわけですが、『パワポケダッシュ』に参加するまでは『麻雀格闘倶楽部』をはじめ、大相撲のゲームやスケボーのゲームを作っていたので、特に野球に思い入れが強かったということはありませんでした。

 

 

—先程からお話聞いているとバラエティに富んでいるのもうなずけて、色々経験があって参加されているから今の『パワポケ』まであるんだなと伺えます。特に今回、初回特典だった『パワポケダッシュ』も野球ゲームではないんですが、改めて遊んでみるとちゃんとカードゲームでも野球らしさが出ていて良かったなと思うんです。

 

山本:ありがとうございます。あれは僕ともうひとりのディレクターで一緒に考えてメインで頑張っていたので、そのお言葉をいただけると嬉しいです。

 

 

—これから『パワポケ』シリーズ後期をリアルタイムに遊んでいたかつてのプレイヤーがドンドン業界に入ってくるかと思うんですが、そういた未来のゲームクリエイターが持つべき目標や技術ってなんでしょうか?

 

山本:難しいですね。ゲーム会社って職種採用なのでプログラマーだったらC言語だったり、プログラムの知識だったりが必須です。デザイナーだったら3Dモデルやモーションの作製技術が必須ですね。そこでキラリと光るものを持っていると良いですね。僕も元はプログラマーで現在はプロデューサーやディレクターをやっているので、皆をまとめる役職に立つなら他の職種にかんする知識も必要になると思います。

とはいえ、まずはスタートラインに立つなら自分の担う職種で光る知識を持って、あとは先輩たちからの教えを吸収して、向上心をもって取り組んでいただければと思います。

 

 

—まさに今の『パワプロアプリ』とかでもそういったノウハウを下の人達に教えている真っ最中という感じなんですね。

 

山本:おっしゃるとおりで、僕らの時代にはプランナーという職種は無く、プログラマーやデザイナーがゲームを考えるというものだったんですが、完全に分業になってシナリオの人が『パワプロ』『パワポケ』らしいシナリオの書き方などを教えている最中ですね。

 

 

—他のシナリオ主体のゲームとは違って『パワプロ』ってアクセントのついたユニークシステムも込みでシナリオを考えていかなきゃいけないから普通のシナリオ作りと比べて大変なんじゃないですか?

 

山本:確かにセンスのいるところだと思います。現に次の高校のテーマを何にするのかというところでみんなから募集して、ある程度固まったら一人システム担当を中心に開発を進めていくんです。そこで途中うまく行かなくなったら一度手を止めて別の高校の制作を進めるとかやっていますね。

 

 

—なるほど、そうやって『パワプロ』のサクセスって完成されていくんですね。そのノウハウの伝承とサクセスの制作過程の話を伺うと『パワプロ2020』の「エジプト高校」って『パワポケ』のユニークシステムにも近かったこともあって、かなり完成度高いなと思ったんです。

 

山本:ありがとうございます。

 

 

—そこも踏まえて話を伺いたいんですが、今いるスタッフで『パワポケ15』を作ることはできると思いますか?

 

山本:『パワポケ15』という形で出すのはちょっと難しいかなと思います。とはいえ、「次が出るなら」という仮定の話としてですが、サクセスがまるまる一個増えるのは厳しくても、単なるリメイクじゃないちょっとしたミニストーリーかミニイベントを入れていくのはどうかなと、考えたりします。今作では「サイバーバル」でお話を入れることができなかったので。そちらでは過去のキャラクター総登場みたいなことをしてあげたいなと思っています。

 

 

 

—確かにそれはファンとして見てみたい気持ちは強くなりますね。今後の話なんですが『3』以降を出すのって2パターンあると思うんです。1つ目は『3』単体をDLCでくっつけることもありかなと思うんですが、これは技術的に可能なんでしょうか?また、CERO的な問題からDLC自体難しかったりしますか?

 

山本:技術的にはできます。ただ、DLCに関して話をするなら、元々の『パワポケR』を持っていないと買うことができないんですよね。お客さんの要望として『パワポケ3』のサクセスをDLCで欲しいという声もかなり頂いているのも事実です。また、『パワポケ3』をDLCとしてリリースしてもCEROについては現在の対象年齢に合わせた表現になると思います。

 

 

—もう一つの手についても伺いたいんですが、このシリーズのリメイクをクラウドファンディングでユーザーから開発資金を集めるというのもあるかと思うんですが、それは会社として可能なんでしょうか?

 

山本:結構会社を辞められてからクラウドファンディングされてゲームを作るというのはありますが。企業としてクラウドファンディングで資金を集めるのが現実的に可能かどうかですよね。

 

 

—逆にこれだけ根強いファンがいると一本一万円でも出す人はいるとは思いますし、十分な資金調達の後、リリース後に一般の人はダウンロード販売で。というのもビジネスとしてありなのではと思うんです。ここでこのリメイクの火が消えてほしくないんですよ。

 

山本:確かにこの火は消したくないですし、一つの意見として検討させていただきます。

 

 

 

—最後に現在遊んでいるプレイヤー、購入検討者に向けてメッセージをお願いします。

 

山本:今回『パワポケ』のシリーズ復活ということで「極亜久高校編」「ドリルモグラーズ編」「戦争編」を収録しました。新育成モードの「サイバーバル」は現在敵が硬いという声からアップデートで検討したいと考えております。「野球バラエティ」として、手軽にみんなで楽しめるミニゲームなど野球以外の要素も収録していますので、ぜひぜひ手に取って遊んでいただけたらと思います。

また、こうしてほしいというご意見をSNS等でいただけたらできる限り検討していきたいと考えております。

 

 

—ありがとうございました。

 

山本:ありがとうございました。

 

 

 

今回インタビューを通じて感じたことは、まずはちゃんとした購入意思と、購入後の感想や意見を声にして発信することだった。

もし、現在の『パワポケR』について『パワポケ3』のDLC化など、今後の希望があるならSNS等で声を出していこう。

 

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コメント

  1. R より:

     パワポケRに対する作品評価はマイナス的な意見が多い中、このような記事が出ることはファンとして嬉しいかぎり。
     今後はアップデートやDLCという形で3以降の作品のリメイクや俺ペナの実装に期待したい。
     パワポケ作品が発売されていた頃に比べてSNSや動画配信者による投稿動画、その動画へのコメントなど作品を作っている方へのメッセージの発信が容易になっているので、リメイクの熱が今後も続いて、楽しめる野球バライティゲームであり続けてほしいと思う。
     記事を書いた方の作品への愛が伝わりとても面白い記事であった。

  2. 良い記事 より:

    自称?パワポケファンなyoutuberさんとかで、期待の裏返しなのかすごいネガキャンとかされる方もいて残念だったのですが、

    この記事からは、ゲーム開発の難しさと面白さと、開発にかかるスタッフの皆様の、シリーズをなんとか現代に蘇らせようとされた熱量が伝わってきました。

    楽しく遊んでおります。
    今後のシリーズ展開にも期待しております。

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