畑編集長&ジャンクハンター吉田 クロスレビューPS4『デイメア:1998』

2月20日にDMM GAMESから発売された『デイメア:1998』をゾンビ愛好家のジャンクハンター吉田と、小学2年生の頃に自宅に友達を呼びつけて『バイオハザード』を目の前でプレイし、その翌日PTAに晒し上げられた過去を持つ編集長の畑史進がクロスレビュー!

 

■畑史進編集長のレビュー

 

このゲームを開発したInvader Studiosはイタリアを拠点に活動するゲームスタジオで、2015年にはInvader Gamesという名前で『バイオハザード2』のTPS(非公式:念の為)、発表して大きな話題をよんだ。公開当時は90年代を代表するサバイバルホラーゲームが現代風のTPSリメイク、クオリティが高いうえにインディーズスタジオから発表されたのは大変な衝撃だった。

この一連の出来事はゲームメディアがこぞって取り上げるだけでなく、バイオファンから熱烈にリスペクトされわけだけど、後にInvader Gamesはカプコンに呼び出しを受けてゲームの開発を中止とする(当たり前っちゃあ当たり前)。

一体どんなヤバい作品なんだろうか!

 

 

早速プレイを開始すると開始数分でタイトルの「1998」からもすぐに分かるように元ネタとなった『バイオハザード2』と日本への愛に満ちたリスペクトが感じられる様々な要素に直面してもうニヤニヤしっぱなし。しかし、このゲームはそんなリスペクトに留まることなくインディーズスタジオながらゲームとしてクオリティ高さからすぐに夢中になってしまい、ついつい時間を忘れて完璧なプレイの模索をしていた。

 

おおまかな操作方法は、最近のTPSゲームを踏襲しているので詳細な紹介は省くけど『バイオRE:2』と大きく違う部分は銃器を構えていない状態で攻撃を行う近接攻撃と、全力ダッシュをした際に消費する「スタミナシステム」が実装されていること。

移動に関して補足すると、左スティックを倒すと徒歩となり、L1ボタンを組み合わせたら早歩き、そこからさらにL3ボタンを押し込むと全力ダッシュするという3段階となっている。この様に自身の体力や残弾数だけでなく、スタミナも管理しなければならない。

 

先程も「随所に『バイオハザード2』へのリスペクトに溢れている」と書いたけど、具体的にどの様なところなのかと言うと、最初にマスクを付けた特殊部隊員を操作するところからスタートするし、最初に出会うNPCが黒人の警備員(しかも出会った時点でに虫の息)。研究所を通過して広いホールに出たかと思ったら内部の構造が見覚えのある造形をしていたり、「所長室」に向かったりと妙な既視感を覚える。形態はどうあれ、とにかくあの『バイオハザード2』を遊んだことがある人ならニヤニヤさせられてしまう。

 

 

おっと、オマージュポイントばかりあげていてもしょうがない。本作独特のポイントも紹介しないと失礼に当たる。

このゲームで特徴的なのがリロードならびに弾薬の管理方法。

この手のサバイバルホラーゲームにおける弾薬アイテムは基本的に入手するとそのまま残弾数が増え、銃に装填された弾が尽きるか、任意のタイミングでリロードを行うのがスタンダードだろう。ところがこのゲームには銃に弾を装填するまでの間に「マガジンに弾をこめる」という手間を挟んでいる。

どういうことかと言うと、プレイヤーがステージ内の各所で銃の弾を入手したとする。所持アイテム欄を見ると銃弾の他にマガジンの形をしたアイコンを見かける。ここでもしマガジンに弾が入っていなかったら、メニュー画面内でマガジンに弾を装填(ここでの操作は昔懐かしい「組み合わせ」)。そこからアイテム画面を解除して、マガジンを空にするか任意のタイミングで弾の装填されたマガジンに切り替えるという流れになる(文字に起こすと回りくどいね)。最初は独特なシステムに少々まごついたものの、かなり現実的で味わいのある作りに感心させられた。特にマガジンに弾を装填する時のコマンドが「組み合わせ」だから、当時『バイオハザード2』を遊んでいた身からすると懐かしさがこみ上げてくる。

 

リロードもこのシステムにのっとったユニークなもので、クイックリロードと通常リロードの2つが用意されている。クイックリロードはリロードボタン(□ボタン)を短く押すだけで発動するが、これをすると直前に装着されていたマガジンは床に落として(回収可能)、アイテム欄にある別のマガジンを装着するという流れになる。

通常リロードの方はリロードボタンの長押しで発動し、もう一方のマガジンを落とすことなく別のマガジンにゆっくりと切り替えという流れになる。この様に通常のリロードはゾンビが周囲にいない安全な状況を確認してから行うことになる。

現実での手間をゲームに落とし込むとあまり好まれない傾向にあるが、銃に関してのリアリティを追求したことで既存のサバイバルホラーに新しい緊張感を生み、見事面白さに昇華させていると思う。この点に関しては意欲的に挑戦できるインディーズスタジオの為せる技だろう。

 

続いてサバイバルホラーゲームのお決まりの謎解き要素。

このゲームは他の同ジャンルのゲームと比較しても段違いに謎解き部分が難しく、一つの謎解きに対して10~20分ほど当たり前のようにかかってしまう。このへんは『アローンインザダーク』の影響が強いのだろう。Invader Studiosのスタッフが90年代サバイバルホラーに対するリスペクトを別メディアで語っていたことから、なんとなく伺い知ることができる。

謎解きもただ単に直前に置いてあったオブジェクトや、メモ書きのヒントから解いていくのではなく、ギリシャ神話に対する知識を要求され、そこからさらに推察を交える箇所がある。かなり脳みその酷使してくるので最初のチャプター1だけでも2時間近くかかってしまった(この辺の謎解きは年々頭が鈍ってきているような気がするがそんなことはないと信じたい)。少しでもプレイを楽にするならメモとして手元にスマートフォンなど手軽に画面を撮影できる機材を置くといい。

 

ゾンビの造形も『バイオハザード2』からインスパイアを受けたものがいくらか見られつつもバリエーションに富んでおり、ゾンビ作品が好きな人にとって概ね好意的に受け入れられるだろう。

 

残念な部分を挙げるならゲームサウンドの部分で、効果音の左右の音分け調整が甘いところ。僕はPS4純正のサラウンドヘッドホンを使っていて、プレイ中何度かゾンビのうめき声の聞こえる方向にカメラを向けてもそれらしい敵がいなかったので、別の階層か隣の部屋だと思ってカメラを戻した後に襲撃されるということがしばしばあった。こんな感じのことを1時間の間に何度もやっていたらすっかり方向感覚が狂ってしまい、珍しく3D酔いを引き起こしてしまった。

 

音周りの部分以外は非常によく出来ているゾンビゲーなので、最近別のゲームでゾンビのいる街から脱出して、刺激の足りない日々を過ごしている人は是非このゲームで足を踏み入れていただきたい!

 

■ジャンクハンター吉田(ゾンビ愛好家)レビュー

 

新型コロナウイルスのせいで仕事が飛びまくっていて自宅謹慎中に近いぐらい、久々に仕事部屋でやることなく引き篭もっちゃっていたので、PS4版で静かに発売されていた『デイメア: 1998』をダウンロードしてみた。ってかDMMさん、もっと宣伝するべきですってばー。

ホラー好きの面々へこの作品の話題を出しても「え? なにそれ?」「そんなホラーゲームをDMMがPS4で出していたのかよ!」みたいなレスポンスしか返ってきてないですぜ~。非常にもったいない!

 

 

本作は結構昔にネットで話題となった『Resident Evil 2 Reborn』がベース。カプコンの『バイオハザード2』をファンメイドで制作していた有志の開発チームが『バイオハザード4』以降で採用したビハインドカメラな三人称視点のTPSで『バイオハザード2』をやってみたいと意欲的に開発した作品だった……と、当時海外のネットニュースで出ていたのが記憶に残っている。

 

だが鋭意開発中の最中、カプコンが『バイオハザード RE:2』を自分たちでセルフリメイクに走る。間違いなくファンメイドの完成度の高さに驚愕して慌てたんだと思うが(当時このファンメイド作品はバイオハザードファンから大歓迎されていた事実もある)、カプコンが公式に『バイオハザード2』のリメイクを発表してしまったからにはこれ以上開発することは著作権の侵害にも抵触する可能性もあるだろうし、危険との判断からやむを得ず中止に……。と思いきや、実はカプコンとファンメイドの開発スタッフは水面下で良好な関係値を築きあげており、互いに情報共有して『バイオハザード RE:2』と『デイメア: 1998』の開発を進めていたそうな! 『デイメア: 1998』にはカプコンで『バイオハザード』シリーズに関わった開発者の方々が協力している事実!

 

 

結局『バイオハザード』のIPはさすがに使わせてもらえるわけないので『デイメア: 1998』とオリジナルタイトルへと変化しリリースされていったわけなんですよね。えっとですね、ワタクシは間もなく50歳になろうとしている老害ジジイな年齢ですので、もうゲーム専門誌も買わないし、ゲーム系専門のウェブすら見に行くこともないのですね。唯一はSNSなどでのクチコミみたいな感じで「あ、こんなゲーム出てるんだ? じゃあ買ってみようか」ってレベルなんです。完全に一般人目線(汗)。仕事を頼まれない限り、ゲーム関係のフィールドには年齢的な問題乗り込んでないのです。なもんで、まさかDMMさんが日本語にローカライズしてこの幻の作品(完成させた作品として)を気づいたら発売していたことに驚きを隠せないであります。

 

で、『デイメア: 1998』を触れたファーストインプレッションはと言うと……懐かしき90年代の『バイオハザード』ライクで個人的には肌に合った感強し。過去にプレイステーションなどで柳の下のドジョウ状態で似たようなホラーゲームが沢山作られた大昔を思い出させてくれる。当然本作はまさに『アナザー・バイオハザード』のポジションと扱ってもおかしくない完成度になっており、無駄に戦闘すると弾薬のシビアさを痛感させられたりと20数年前にフラッシュバックしてしまいそうな描写にワクワクしてしまった。

 

進めていくと緊張感がより増していき、難解な謎解きに翻弄されまくってしまうのはもう自分の年齢が若くないからかもしれないが、これこそが昔の『バイオハザード』が持っていたポテンシャルだったよなぁとシミジミ。ノーマルでプレイしてたら全然先に進めん! もう年寄りには向いてないのかと絶望しそうになったがイージーなモードで遊び始めるとノーマルよりも随分チューニングがされていて遊びやすくなっていた。若い人以外はノーマル以上を選択して遊んではいけないと無用な警告をしておきます(苦笑)。

 

個人的に気に入っている部分はシナリオの面白さ。本家(っていう表現は良くないけども)『バイオハザード』と比べて物語への没入感はこちらの方が正直いって上だと思わされた。『バイオハザード』シリーズだけじゃなく、様々なホラーやSFなどどこかで観たことのあるシーンがオマージュとして随所に盛り込まれているからなんですね。映画の元ネタ探しするのも面白いはず。まさかの『ジュラシック・パーク』や『遊星からの物体X』的シーンなど、映画ファンを喜ばせてくれるシチュエーションとかオタク心におもいっきり突き刺さった!

 

 

ボタンのレスポンスの悪さ含め操作形態には若干の癖はあるものの、プレイしていくうちに指が慣れていく感じ。スタンダードなTPSと見せかけて、銃の取り扱いが個性的。マガジンに弾を装填しないと発砲できないので、使用済みのマガジンに弾を詰めることの重要さをリアルに味合わせてくれる+マガジンを大事にしないといけない。このリアリスティックな展開は他のゲームでは味わったことがなかったような!? ここの銃に対するリロード操作はもたもたしたらプレイヤーが危険を伴うため賛否が出ると思うが、実際に銃撃をしたことのある経験者ならば「ある、ある」な表現で新しい試みに最初面倒とは思ったが現実的なところでの臨場感を与えようとする開発者たちのオリジナリティが感じられて決して悪くはない。今の便利で簡単に銃が撃てるゲームに慣れ親しんだ若いプレイヤーらは毎度毎度行なわねばならないリロード儀式にうんざりするかもしれんが、それこそ「ゆとり」と呼ばれてしまうゾ!

 

グラフィックが前々世代すぎるとか不満が出てくるとは思うけど、元は少数の開発スタッフで作ったファンメイドのインディーゲームってことを頭に入れておいたほうがよろしいかと。本家は百人単位の開発スタッフたちと作っているんですぜ。それを比較するなんてあまりにもナンセンス。こじらせ系『バイオハザード』ファンが難癖つけてくると思うので、ワタクシは敢えてシネマゲーム研究家(もうこの肩書は何年も使ってないけど)のポジションとして映画ファンに向けてこちらの作品はイチオシしたいですね。

コメント

  1. ゴールドE より:

    まだ発売されてないけどPCエンジンminiについて吉田さんが書いた記事を読みたい

タイトルとURLをコピーしました