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『VAMP』小中和哉監督・中丸シオン・高橋真悠 トリプルインタビュー

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【取材・文 畑史進】

ヴァンパイア作品は映画の黎明期から多く制作されたポピュラーなジャンルの一つだが、『ウルトラマンネクサス』の小中和哉監督と、中丸シオンのタッグで制作された『VAMP』は、現代日本の異常さをテーマに置きつつ描かれた異色のヴァンパイア作品である。

本作は、父親から性的虐待を受けている女子高生・美以那(高橋真悠)と、彼女の前に現れた“ヘマトフィリア(血液耽溺者)”の苓(中村シオン)を中心にした“耽美的ダークファンタジー”。ふたりは劇中で初のフルヌードによるベッドシーンも披露しており、女性同士のラブシーンとアクションが本作独自の世界観を構築している。

キングレコードが主催している映画レーベル「ホラー秘宝まつり」で、8月23日(金)から9月5日(木)までキネカ大森(東京)、8月24日(土)よりシネマスコーレ(名古屋)、シアターセブン(大阪)で上映されることが決まっている。「ホラー秘宝まつり」は新旧作の上映に併せて観客が面白いと思った映画に投票する企画も用意され、2014年の開催以来、人気を着々と集めている。

今回、監督を務めた小中和哉と、主演の中丸シオン、高橋真悠の3人同時のインタビューを敢行し、本作に対する思いを伺った。


【インタビュー】

—今作はお兄さんの小中千昭さんとのコラボレーションとなりましたが、ヴァンパイアやファンタジーなどの要素が絡み合っていますがどのように打ち合わせをされていたのでしょうか?

小中監督:最初は兄弟でホラーの映画をやろうということで始めたのですが、打ち合わせをしていて、兄の書いていた短編ヴァンパイア小説・アンソロジーを元ネタとして使おうという話になりました。
既に草案の時点で苓の元になったキャラクターとして血液を日常的に飲まないといけない人“ヘマトフィリア(血液耽溺者)”がいて、彼女が2代目の女性ヴァンパイアとなる人と出会うという骨格になるストーリーは出来ていました。
そこから「人を殺すことをためらわない」異常心理を抱えた人。それこそ猟奇的事件を引き起こす心のダークサイドに分け入ったような方向からヴァンパイアを描けないかと話し合って企画書を進めていった感じでした。


—ジャンルとしてはどのようなものでしょうか?

小中監督:人間の心理をヴァンパイアものの形式を借りて描くという、サイコサスペンスなものだと思っています。


—この脚本を受け取ってどのような感想を抱かれましたか?

高橋:最初は映画に出られるというだけで嬉しくて、客観的に読めなかったんです。それから数日経って読み返すと色々な要素があってただ怖いだけではない。(異常者の中に)ちゃんと人間のリアルな心とドラマが印
象に残っていて私はそこを大事にしていきたいなと思いました。

中丸:2年前に監督から大人の女性と女子高生のヴァンパイアのお話を作っていることを聞いていて、いざ脚本を読んでみたら容赦の無さと描き方に衝撃を受けました。
監督とは『ウルトラマンネクサス』という、比較的低年齢層の方が御覧になる番組でご一緒していたので、こんなに思い切ったことをされるのかという衝撃がありました。
役を練るために綿密に読んでいくに連れて苓を理解するのに悩む事もたくさんありましたが、それは監督と一緒にディスカッションすることで乗り越えてきました。


—演じる前と終わった後で印象が変わったりしましたか?

高橋:私はシオンさん演じる苓への印象が変わりましたね。
苓が自分のことを打ち明けるシーンでは、脚本を読んでいたときは苦しいという気持ちが芽生えていたんですが、ミステリアスで何を考えているのかわからないキャラが人間らしさを出したんでそこが撮影中に実感できました。

小中監督:苓がやっていることは酷いことだから、普通の人だと同情の余地はないんだけど、シオンさんの芝居で印象が変わったのかもしれないね。
逆に美以那もやっていることは酷くてね。性的虐待を父親から受けてはいるものの、直接父親には吐き出さずに行きずりの男を殺そうとしたりするから。
でも冒頭でお客さんに美以那に同情させなきゃ映画として成立しない。
真悠さんの芝居でそういうことをやってもしょうがないかなと思わせる子になったんで、文字で読む以上に成立したんじゃないかなと思いましたよ。

中丸:読んでいるときは本当に容赦ないシーンが続く印象でしたが、いざ完成された映像を観ると凄惨さよりもエンターテイメント性が際立って成立していると感じました。


—中丸さんと高橋さんが最初にあって抱いた印象はどんなものでしたか?また監督はなぜこのお二人を起用しようと思われたのでしょうか?

高橋:私が最初にシオンさんを知ったのは、この映画にも出ていらっしゃる渡邉翔さんが私の所属する無名塾の先輩で、その方が「俺の好きな女優さんがいるんだよ」と舞台でのチラシを見せてもらって凄く綺麗な女優さんだなと思ったんです。
その後再現ドラマ(小中監督がドラマ部分を演出したNHK「ファミリーヒストリー」)でご一緒させていただいて、そのときは軽く挨拶する程度だったんですがとても気さくな方でした。

中丸:よく写真のイメージで凄く堅い?人だと思われちゃうんですが、私はちょっと抜けているところがあって・・・

高橋:美人で気さくって人として最強だと思うんですが、シオンさんがまさにそれでした。

中丸:以前やった別の現場の時には、共演シーンはなかったんです。
今回共演させていただいて、高橋さんとは役としてお互いディスカッションをあえてしないでテスト本番とぶっ通しでやったんです。アクションを始めとした感情の激しいシーンに動じないし、役としての悲しみや苦しみを私のココロの映像に鋭く突き刺さって、凄い役者さんだなと思いました。

小中監督:ふたりとも役に入り込むという点は似たタイプだけど、今回苓は謎の女という登場の仕方をして、物語は美以那の視点で展開するから、より観客に感情移入してもらうために気持ちをビビッドに表現していかないといけないのは美以那の方なので、高橋さんの現場での入り込み方は半端じゃなかった。
だから他の役者さんに本気でやらなきゃという意識にさせてたと思いますよ。
いつもその役目はシオンさんがやる人で、今回は高橋さんがそれを率先してやったという感じでしたね。
シオンさんは『ウルトラマンネクサス』でヒロインを演じられましたが、1クール目の最後に敵に操られたマリオネットだと自覚する狂気のキャラクターで、最後は主人公の腕の中で血だらけで死んじゃうという。朝から子供にこんなもの見せるなと新聞に投書が出たくらいで。
オーディションのときは気が狂ったシーンをちゃんとやれますかって、色んな女優さんにやってもらいましたが、彼女だけが演じきれたんです。

中丸:ちょうどその頃が、他の作品で裏社会に生きる金髪の少女の役を演じていたので、一転して可愛いヒロインにならなきゃとオーディションに行ったらとんでもない役だったという・・・(笑)

小中監督:その後シオンさんを活かせる作品はなにかないかなって色々探って、一緒にやらせていただいたんだけど、今回はやれる役だったんでシオンさんにお願いしましたね。
高橋さんはオノ・ヨーコさんの再現ドラマをやってもらったときに無名塾にこういう方がいらっしゃるんだ。と知ったのと同時に『西の魔女が死んだ』を観ていたんで、あのときの子がここまで成長したんだと言うことで、今回の脚本にあっているなと思って声をかけさせていただきました。


—撮影で大変だったことはなんですか?

小中監督:撮影期間が短かったんで現場ではとにかく撮るだけになるので、いろいろ考えたり悩むことは撮影前にしておこう、と台本を読み合わせしたり、台詞一言一言の解釈や言い回しを「あぁしよう、こうしよう」と決めたり、ベッドシーンまでの流れは何が一番いいんだろうとかそういう事を詰めていきました。現場でももちろんいろいろありますが、どんどん撮っていける体制を作ることができましたね。
夏なので、作業は大変な時期でしたけどね。

高橋:大浦さんとのシーンですかね・・・実際に殴られたわけじゃありませんが自分の体の上に男性がまたがるというのは、美以那としてというより自分自身の心が傷ついたんですが、実際の美以那にその傷が同じになるということはありえないんで、ただただ周りの役者さんのエネルギーを自分が受け止める、吸収するということに専念してそれに演技で応えたという感じでした。
現場から離れて家についたときのほうが現実に戻されてぐったりくることはありましたね。

中丸:昼夜逆転するシーンなどが後半続いてきて、だんだんハイになっていくことはありました。それはスタッフさんもそうだったと思うんですが、堀内さんとの2人のシーンは大変さというより強烈な印象が強く残っています。
台本以上の事をもっとやろうという御提案のほうがすごかったと覚えています。

小中監督:堀内さんも役にのめりこめる人で、「あの人はその状況で縛られていたらプレイだと思うでしょ?」って色々提案してくれたんです。僕らも「さすが先輩素晴らしいですね、気づきませんでした」って感心させられました。

中丸:その結果そのシーンは楽しめましたけど、先輩が「もっと叩いて、本気で叩いて」って仰ったので、私も「先輩、失礼します」という感じで楽しくやらせていただきました・・・


—ヴァンパイアという血を扱う映画にしては飛ばし方が上品というか、やや物足りなさを感じたんですが、これはあえて抑えた感じなのでしょうか?

小中監督:必要条件として、これだけやればこの映画としては十分だろうという程度はやったつもりですね。


—ベッドシーンへの経緯が男目線からするとかなりあっさりしたものだなと思ったんですが、お二人の中で役としてどういう気持ちで臨んだのかヒントを頂けないでしょうか?

中丸:人間同士で性別を超えて、お互いが物凄いトラウマを抱えていてお互いの足りないものを埋め合うと言うイメージでした。
確かにあそこまでの感情というのは難しいもので、その行動に至る原動力がなにかということやなぜお互いがそこに行き着くのか色々悩みました。

小中監督:美以那が血の入ったグラスを飲もうとしたところを苓が止めて、その時美以那の唇に血がつく。二人が見つめ合い、苓が美以那を巻き込んではいけないと自分を制しながら、距離を詰めてキスをしてしまう。それは美以那を好きだからだけど、美以那の唇に血がついていたことが最後の一歩を踏み出させるきっかけになる。ラブストーリーとヴァンパイアもの両方の要素を入れて演出しています。


—中丸さんと高橋さんのジャンルが変わってしまうほどの激しいアクションシーンはどのような意図があったのでしょうか?

高橋:殴ったり蹴ったりどういうイメージで動けばいいのかイメージが湧かなかったんですが、私達の中で完結してもお客さんに伝わらないと意味がないですし、加えて私はアクションシーンが初めてでどうしていいのかよく分かっていませんでしたが、客観的に見せられるよう意識はしていました。難しかったです。

小中監督:それはカメラアングルの問題もあって、この殴り方ならこう見せるとか色々あるのよ。それはアクション監督の大橋明さんがよく指導してくれたと思います。そこが分かっているか分かっていないかで違ってきますね。

中丸:最初の稽古の時も映画と同じようにカット割りを幾つか作ってイメージトレーニングして、3日位練習したかと思います。相手も北岡龍貴さんというとてもアクションがお上手な方で、こちらのアクションに対して上手く受け止めてくださって、とてもやりやすい環境を作ってくださいました。
とにかく楽しかったですね。暗いシーンが多かったので、あのアクションシーンが最後の撮影ということもあって思い切り体を動かしてスッキリしたという思いもありました。

小中監督:確かに最後のイベントみたいなものだったね。
あと、アクション初めてで慣れていないかもしれないけど、二人共女優なので、激しいアクションとアクションの間のタメて見せるところでいい表情芝居をしてくれるんで、そこは女優さんの良いところが出たんじゃないかなと思いますよ。
映画のジャンルが変わるくらいのアクションにしたのは狙いもあって、はじめはジャンルムービーではないと見せかけて、後半やっぱりジャンルムービーという映画を作ろうとしたんです。
自称ヴァンパイアのサイコサスペンスの地味目な映画かなぁと思ったら本物のヴァンパイアでバリバリアクションもあるアクションホラーという、ジャンルを飛び越えてる意外性を狙っていて、一粒で二度美味しいという感じを出したかったですね。


—完成された作品を観てどのような感想を抱かれましたか?

中丸:酷暑の中で撮影したにもかかわらず、日本を代表する特撮のスタッフが集まっているおかげでそういったものが一切感じられないヒンヤリとした感じの映像になっていることに驚きましたね。

高橋:観終わった後にくらくらしちゃって、夕張映画祭のときに初めて冷静に観られました。映画全体で背景が美しくて、女性全員が美しくて雰囲気をちゃんと醸し出していて、刑事さんもお父さんもみんな現実にいるかのように見えて感動しました。

小中監督:役者さん皆さんが、自分が演じる役をただの異常者だと突き放さないでそれもまた愛しい人間だと深めてくれている感じはありました。それぞれの役者さんがそれぞれの思いで役を愛して演じたんじゃないかな、と思います。


—御三方がこの世界に入ろうと思った原点は何だったのでしょうか?

小中監督:物心ついたときに怪獣映画やウルトラマンの映像の面白さに取り憑かれて、そのまま自主映画を作っているうちにプロになっちゃったと言う感じですかね。

中丸:私は幼稚園の頃に、俳優の父が(中丸新将氏)、ミュージカルの『オズの魔法使い』でブリキマンをやっているのを
見て「なんて夢のある世界なんだ」と感銘を受けてこの世界に憧れを抱くようになりました。
なので私は原点からファンタジーが大好きで、ホラーも好きです。
それこそ『エクソシスト』や、小さい頃には白黒映画で『ドラキュラ』を観たり『リング』の貞子に釘付けになって。ですね。私は何度も彼女を演りたいと思ったくらい。
キューブリック監督の『シャイニング』や韓国映画『乾き』も好きでした。

高橋:私は地元が宮城県で塩釜に写真の現像で通っていたカメラ屋さんがあったんです。
そのときにカメラマンのおじさんから「モデルをやってみたら?」という感じから地元のモデル事務所にはいったことから始まったんです。それが小学3年生くらいでしたね。
この世界をずっとやりたいなと思ったのが、小学5年生のときにCMの撮影をさせていただいたときなんです。
たった15秒の映像のために2日もかけて、更に大勢の大人たちが撮影しているという過程に感動したことでした。その時はお芝居というよりは、作品作りに関わりたいという感じでした。


—『西の魔女が死んだ』で高橋さんを知ったんですが、等身大に近い自分を演じるほうが得意だったりされますか?

高橋:まだ私が経験不足なんで何が得意かはわからないんですが、『西の魔女が死んだ』の時は完全に自分の実力どうこうというより、何も考えずにセリフを喋っていただけの私がたまたま監督の中で合致しただけでした。
自分とはぜんぜん違う役をやってみたいとは思います。


—今後どのくらいの年齢のキャラクターを演じてみたいと思いますか?

高橋:あっでも私、女子高生の役やりたかったんですよ。でもこの歳(24)になってもうだめかなと思ったんですよ。

小中監督:大丈夫。今はかなり許容される時代になったから。前田敦子さんだってやってるわけだし。


—中丸さんはまた高校生の制服に袖を通されたわけですがいかがでしたか?

中丸:去年の夏に35歳になったわけですが、そのときに17歳の役をやって少し恥ずかしかったですね・・・如何でしたでしょうか?(笑)

小中監督:『犬神家の一族』の市川崑さんなんかは高峰秀子さんのおばあさんを女学生にしたからね。あれは女優いじめの最たるもので、それに比べたら可愛いものだと思いますよ。


—この映画をこれからご覧になるお客さんへのメッセージをお願いします。

小中監督:ヴァンパイアものって定期的に作られていて、「人間の本質」であるダークな部分を認めて共存するというヴァンパイアの哀しさ、人を殺さないと血を吸えない、生きていけない。
そういった部分は人間にもどこかにあるもので、そんな人間のダークサイドを如何に本気で演じるかということをテーマに作った映画です。そこを中丸さんと高橋さんがガチで演じられているので、ぜひ楽しみにしていてください。

中丸:監督と出会ったのが『ウルトラマンネクサス』という作品で、その時のスタッフさんとキャストがいらっしゃって、この作品以外にも何度か共演させて頂いていたわけですが、今作ではそういった方たちが少し飛んだ役を演じていらっしゃるので、そこも楽しみにしてください。

高橋:人間ドラマの要素も強いですが、監督を始めとしたスタッフさんやキャストも良い意味でやりたいことを面白がってやって、皆で一丸になって必死になって作った作品なので、その雰囲気が好きでした。皆さんもそこを感じ取っていただけたら幸いです。

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