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「自分に被害が及ぶという恐怖で、誰でも傍観者という名の加害者になることはあり得ます」『ビー・デビル』チ・ソンウォン インタビュー

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日常のある1点において、選択を誤ったがために取り返しがつかなくなることがある。サム・ライミの『スペル』(’09)は、ヒロインが銀行のローンデスク業務で、老婆を追い返したことをきっかけに、呪いとゲロの洗礼を浴びて狂乱の地獄巡りに叩き込まれる。

『ビー・デビル』のヘウォンは、暴行を受ける女性を目撃しながら、無視して立ち去ってしまう。逃れる術のない運命のドミノ牌は、この行為で倒されたと言っていいだろう。仕事場では、くしくも『スペル』のヒロインと同じように老婆に罵声を浴びせたことがトラブルのスパイラルを呼び、クビ寸前の強制休暇で故郷の島へ戻る破目に。
閉鎖的な島では幼馴染のボンナムが、夫や義弟からの虐待を受け、奴隷のような生活を強いられていた。やがて突発的な悲劇が起こり、地獄の釜の蓋が開く。“極端”から”極端”に振り切った、生々しいバイオレンス描写を送り出す韓国映画では、新人監督の活躍が目覚しい。『チェイサー』(’08)のナ・ホンジン監督、『息も出来ない』(’10)のヤン・イクチュン監督に続いて期待されるのが、『ビー・デビル』のチャン・チョルス監督だ。長編第一作目にして、カンヌ映画祭で注目を浴び、第14回プチョン国際ファンタスティック映画祭、第8回大韓民国映画祭では、ヒロインの一人、ソ・ヨンヒさんが最優秀主演女優賞を受賞した。

2/24~28の5日間に渡って行われたゆうばり国際ファンタスティック映画祭2011に登場した、『ビー・デビル』のもう一人のヒロイン、ヘウォンを演じたチ・ソンウォンさんにお話を伺った。

■■■傍観するヘウォンには腹が立つ。でもそれも現実■■■

――人間の心の闇を白日の下にさらけ出しているとともに、ショッキングなビジュアルに彩られた映画ですが、オファーを受けていかがでしたか。

「一番重要なのはシナリオでした。『ビー・デビル』の前は主な仕事はドラマで、いい映画の作品を待っていました。シナリオを読んだとたんはまってしまって、この作品をやらないと後悔するという気持ちでした。韓国では、低予算の映画だったにも関わらず、大ヒットしました。カンヌ映画祭ではワールドプレミアだったんですが、本当に反応がよかったです。今回はこのようにゆうばりファンタにも参加させていただいて、本当に嬉しいです」

――この映画は傍観者の罪が描かれています。チ・ソンウォンさんの演じたヘウォンも傍観者の一人ですが、このキャラクターをどう捕らえていますか。

「ヘウォンのような人を見たら、本当に腹が立ちます(笑)。でも、それが現実じゃないでしょうか。都会に住んでいると仕事もあるし、色々なことに忙殺されて、無関心で思いやりをなくすこともありますよね。他の人が暴力を受けたり何か被害に遭っていても、自分に被害が及ぶという恐怖で何もできないこともあるかもしれない。誰でも結果的に傍観者という名の加害者になる可能性はあると思います。
でも逆に、そうでない人も多いから、この世が成り立っているんだと思いますよ。人にはより親切に、お互いがもっと関心を持てるようになるといいんですけど」

――冒頭ではソウルの仕事や生活に疲れて感情を爆発させるシーンや、後半ではアクションもありますが、ヘウォンを演じて苦労された点は。

「ボンナムは、我慢して我慢して我慢して、我慢が爆発して行動に至るので、スッキリする気持ちになります。対するヘウォンは少し複雑です。傍観していたことへの申し訳ないという気持ちもあるし、基本的に感情を抑える演技なので大変でしたね。
撮影現場は雰囲気が良かったし、共演した全キャストやスタッフの方々が協力的で、1つの気持ちになっていい作品を作ることができたと思います。神様が味方してくれたように恵まれてましたね」

――ソ・ヨンヒさんとの共演はいかがでしたか。

「楽しかったですよ!実は、ソ・ヨンヒさんは大学の後輩なんです。仕事に入る前にシナリオを読んだら、ソ・ヨンヒさんが演じるボンナムが、本当に自分の幼馴染のような気持ちになりましたね」

■■■クライマックスと沐浴シーンは見逃さないで!(笑)■■■

――最後に、日本での公開に当たって、チ・ソンウォンさんからここはぜひ観て欲しい!というシーンを教えてください。

「クライマックスはぜひ観てください」
(その後のチ・ソンウォンさんの答えが結末に関わるものだったので、「これは言わない方がいいですか?」と確認する)

「(爆笑)“すみません。ちょっと待ってください。”(←流暢な日本語で気遣われる。以下、韓国語に戻って)2人が沐浴するシーンがあるんです。夜中に撮影したんですけど、もう冬を迎えようとするくらいの晩秋で、その場面を撮ろうとする度に雨が降ってきたり風が強くなって大変でしたね。山の中だしお湯じゃなくて水だったんですよ。寒いのに暑いふりをしながら演じた覚えがあります(笑)」

――夜の沐浴はセクシーでもあり、二人の感情の微妙なすれ違いを描きつつ、二人が子供に戻ってはしゃぐシーンでしたね。クライマックスへの布石として重要なシーンだったと思います。
それでは最後に、ゆうばりファンタに参加されていかがでしたか。雪が降り続いて、絵のような雪景色になりましたね。

「招待していただいて、本当に感謝しています。ゆうばりファンタがある時期なくなりそうになったけど、それを復活させたのが市民の方々の力だと聞いて、素晴らしい、尊敬すべきことだと思いました。映画に対する情熱と人の暖かさを感じました。なんだか昔からの知り合いのようです。(にこっと笑うと、ここで日本語になる)“ゆうばりはとってもきれいな所です”」

インタビュー:デューイ松田(ライター)

『 ビー・デビル 』
シアターN渋谷他にて全国順次ロードショー

監督:チャン・チョルス 脚本:チェ・クァンヨン
出演:ソ・ヨンヒ(『チェイサー』「善徳女王」)、チ・ソンウォン(『ハーモニー 心をつなぐ歌』)
2010年/韓国/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル/115分/デジタル上映/
原題:キム・ボンナム殺人事件の顛末/英題:Bedevilled/配給:キングレコード
公式サイト:http://www.kingrecords.co.jp/bedevil/
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公式アカウント @bedevilled_jp

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