映画レビュー 地獄と化した山で繰り広げられる決死のサバイバル!映画『共喰山』



『処刑山』に続く、漢字三文字山ホラーシリーズの最新作がついに登場です。処刑の次は共喰いだ!と、まさに食欲の秋にふさわしい映画となっております。今から1万2千年前、男が岩山に向かって一心不乱に壁画を描いていると、その背後から黒い影が忍び寄ってきます。志村、後ろ!後ろ!と言う間もなく、男は得体の知れない「何か」に襲われてしまいました。そして、話は一気にぶっ飛んで現代へ。壁画に興味津々の女子大生アーニャは友人5人と調査がてらのお気軽キャンプをしに山の奥地へとやって来ます。下見を兼ねて洞窟探検に出かけた彼女たちでしたが、突然、アーニャはパニックを起こし、転倒してしまいます。その時、アーニャの腕から流れた血が地面に染み込み、恐ろしい「何か」が目覚めさせてしまったもんだから、さぁ、大変!その夜、友達の金髪娘メルが「やっぱ、キャンプと言ったら全裸で水浴びよねぇ」と小汚い池で水浴びをおっ始めるのですが、そこはヒルヒルヒルのヒル地獄。彼女は池を飛び出しますが、具合が悪くなり寝込んでしまいます。お前、空気読めよ!という雰囲気が場を包み込みますが、それどころではありません。メルの歯は抜け落ち、屋根の上に投げる暇もなく、なんと今度は鋭い牙が生えてきました。
「デモンズ」そっくりの凶暴なモンスターと化したメルは、底なしの四次元胃袋と脅威の身体能力で山をビュンビュン飛び回り、ウサギ、カンガルーなど、ピョンピョコ飛び跳ねる動物のみならず、アーニャたちも喰ってやろうと襲い掛かってきます。そんなフライング食いしん坊を殺すか殺さないかで仲間割れが始まり、事態はますます悪化。せっかく思いついた作戦も失敗ばかり。1人、また1人と喰われていきます。まさに肉を血で洗うような鮮血のしゃぶしゃぶ地獄と化した山で繰り広げられる決死のサバイバル!そして、生き残った者たちが洞窟の奥で見たものとは!?
山で仲間が突然怪物になって、さぁ、大変!というホラー映画は干し肉の数ほどありますが、こちらの映画はちょっと趣が異なります。終盤の怒涛の展開もさることながら、未知なる自然やそれをも超える超自然的な存在、それに恐れ慄く人間、むき出しになる暴力性、ギクシャクしだす人間関係、というオージーホラーの特色が出ているからです。なんてったって、この映画の監督、ジョシュ・リード監督の父親は、倦怠期の夫婦が大自然の脅威に晒されて悲惨な目に合う、「ロング・ウィークエンド」(78)を撮ったコリン・エッグルストンなのです。幼い頃から、父親の影響で多くのホラー映画を見て育ってきた、まさにホラーエリートのジョシュ・リード監督。オージーホラーの伝統を受け継ぎつつ、監督が愛してやまない80年代のホラー映画のエッセンスをたっぷりと注入し、力づくでごねごねしたようなワイルドでパワフルな手ごねハンバーグ的この映画。映画館に友人たちとお腹を空かせた状態で見に行くことをオススメします。
レビュアー:ミヤヂ
『共喰山』
5月7日(土)より、シアターN渋谷ほかにてモーニング&レイトショーほか、全国順次公開
監督:ジョシュ・リード
出演:ゾー・タックウェル=スミス クリュー・ボイラン
2010年/オーストラリア/カラー/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/84分/デジタル上映/原題:PRIMAL
配給:キングレコード
公式サイト:http://www.kingrecords.co.jp/tomogui/
twitter @horror_ hiho
(C)2010 Prima Films Pty Ltd.


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