
【文・畑史進(編集長Twitter):https://twitter.com/hata_fuminobu】
PlayStationが2028年1月からディスク生産を廃止するというニュースでもちきりだ。
これに伴ってPlayStation 3、PlayStation Portable、PlayStation Vita向けのゲームアーカイブスを含めるダウンロード販売のタイトルも2027年に終了するということ。あまりに突然の発表でお財布の緊急出動に耐えられないという声も聞こえてきそうだが、そもそも2021年に発表されて反発の声の大きさから撤回された過去があるのだから、今回の発表で慌てふためくようでは「そもそも買う気も興味も無かった」だけだと思うのだけどね。まぁSIEの発表では2026年内に順次終了させていくというので、今のうちに本当に欲しいものだけをさっさと買ってしまったほうが良い。ちなみに昨今は日本を軽視しがちなソニー様なので買うのは早いほうが良い。
ディスクメディアの終焉と「個人所有」の終わり
それよりも一番のショックはディスクメディアの終焉だろう。 ここ最近ブルーレイディスクに関連する話題で明るいものは何一つ無い。ブルーレイを提唱したソニー自らがブルーレイディスクレコーダー(再生専用機ではないぞ)や録画用ディスクの生産から撤退するという、「既に映像データは個人所有の時代では無い」ことを知らしめているにほかならない。レーザーディスクから物理メディアに慣れ親しんだわしからすると正直言ってこんな思想クソくらえと思う。
ある人は「ゲームデータがブルーレイディスクに収まるものではなくなった」と言って擁護めいたことを言っていたが、わしに言わせればそもそもの話「ゲームデータを物理メディアに収めるのが普通」だと思うので、ゲームクリエイターの怠慢でもあると思うのよ。
そんなことはさておき、今回はソニー(PlayStation)側に立つと、今回の物理メディアの廃止はある一点においてソニーの言い分もあるだろうということを書く。こんな事書いても何の得も無いが、日本のゲームライター、ゲーム系ジャーナリストでここを突っ込んでいる人が見当たらないので少し筆を取ることにする(マジで一人くらい居てほしい)。
ソニーが絶対に口にしない、ディスク廃止の「最大の理由」
PS側の理由としては「違法改造」「ハッキング、クラッキング防止」が最大の理由だ。 もちろん、こんなことは一言も言っていないし、あくまでわしの推測だが絶対に問うても答えないだろう。なのでここからはこの話を前提にして持論とケースを書いていく。妄想と言ってもかまわん。また、極力分かりやすく書くため、あえて浸透しているワードを使っているので厳密なツッコミは野暮。
結論を先に書くと、今回のPlayStationのディスク版の生産中止はユーザーによるハッキングを防止する最終決断であり、ついにその時代に到達したというのが答え。

初代PSからPS2まで:力技と改造チップのいたちごっこ
PlayStationのハッキングの歴史は初代から遡る。 ファミコン時代からソフトダビングをするマジコンがあったのは有名な話で、ディスクシステムで採用されたクイックディスクもシャープ製のワープロに読み込ませたら中身が見れてコピーができるのは知っている人なら知っている話。CD-ROMを採用したPlayStationでデータのコピーなんかは、CD-ROMの読み書きができるPCを持っている人だったら当たり前にやっていた。当然ソニーもバカではないのでプロテクトを用意するが、PS1のクローズ固定スイッチを力技で固定して、起動中に遊びたいゲームのコピーディスクと差し替えれば遊べてしまうという脳筋なことに目を瞑れば案外脆弱なものだった。

https://www.playstation.com/ja-jp/playstation-history/1994-ps-one/
から
その後にMODチップを買って取り付ければコピーディスクが起動できるという本格的な改造で突破する方法も広められ、ここからさらにPlayStation側もソフト側にRHP(Read Homing Protection)プロテクトを仕込んだりといたちごっこな状況が続く。 一番厄介だったのがプロアクションリプレイ(PAR)の存在。俗に言う改造ツールだが、こいつがPlayStationの後ろにあったパラレル端子に挿すことであらゆるゲームに改造コードを使用することができた。さらに応用的な使い方で、PARのメニュー画面を経由してから無理やりコピーディスクを起動するといったトンデモな使い方まであった。

イメージとしてはこの状態から回転中のディスクを引っこ抜く感じ

PlayStation 2の時は「Swap Magic」というものがあって、これを特定のタイミングでコピーディスクに挿し替えてプレイすることもできた。さらにゲームソフトをISOデータ化して、特殊な形状をしたメモリーカード経由でMicro SDカードからゲームを起動する方法や、BB Unit部分を弄ってHDDを取り付け、このHDD内にゲームをインストールしてそこから起動して遊ぶなんてこともできる。最近はもうディスクの読み込み部分を取っ払って、MicroSDやSSDにゲームのイメージデータをぶち込んで遊ぶ改造なんかもある。

https://www.playstation.com/ja-jp/playstation-history/2000-ps2-psp/
なお、ここまで改造のことについて書いているが、調べれば普通に出てくること。あくまで自己責任、自身の所有物を自分で使用する自由の範囲であるのと、改造されたものを売買することが違法なので、ここまでの話は犯罪の教唆ではない。勘違いしないように。
システム・ソフトウェアによる防壁と、オンライン時代のBANリスク
そんなこんなでやられ放題だったPlayStationもPlayStation 3の時代に入ると状況が一変。ゲームの起動にはOSであるシステム・ソフトウェアのバージョンとの照合が入って、古いシステム・ソフトウェアに対して新しいゲームを使用する際には強制的にソフトウェアのアップデートが入る。例えカスタムファームウェアでコピーゲームなんかが遊び放題になっても、名目上は古いシステム・ソフトウェアなので最新ゲームが遊れないという環境を構築した。が、これもいたちごっこでカスタムファームウェアも年々アップデートされて新しいシステム・ソフトウェアも対策されていく。ただ、このシステム・ソフトウェアという概念のおかげで改造に関する情報も日々追わなければいけなくなったので「面倒だからもういいわ」と諦める層も効果としてあった。

https://www.playstation.com/ja-jp/playstation-history/2007-ps3-ps-vita/
より
ソニーの違法改造PlayStationに対しての執念は凄まじく、警察と連携してヤフオクなどのオークションサイトでカスタムファームウェアの導入された改造PlayStation3の売買を発見したら追跡するという徹底ぶりなので手を出さないように。
据え置き機のPS4もシステム・ソフトウェアが導入されており、依然カスタムファームウェアが存在するが、現在はオンラインゲームが浸透して少しでも異変を検知したらPlayStationのアカウントごとBAN、購入したゲームも全てパーになるので改造するメリットよりデメリットのほうが上回ることになった。
PSPでの大流行と、独自規格でガチガチに固めたPS Vitaの執念
ところがここまで改造対策を施してきたPlayStationに最悪の暗雲が立ち込める。なんと同じ様にシステム・ソフトウェアを導入した携帯機PlayStation Portableでカスタムファームウェアが広がってしまった。これは修理の際に通常とは電圧の異なるバッテリーを使って文鎮化したPSPを強制起動する方法がなぜか流出して、ここからPSPの改造、カスタムファームウェアが一気に進んで、インターネットの大衆化からアップロードされたISOデータを違法にダウンロードして遊ぶという、立憲民主党所属の議員も真っ青なムーブメントが起きてしまう。無論、PSPのUMDドライブからのイメージ化もできるのでこんなものではソニーの面目丸つぶれ。なによりソフトメーカーに対しての顔向けができない。

https://www.playstation.com/ja-jp/playstation-history/2000-ps2-psp/
より
そこで登場したのがPS Vita。UMD規格を廃止して、メモリーカードはメモリースティックではなく専用のメモリーカードに。バッテリーの交換もユーザーではできなくなるという徹底ぶり。こういった独自規格の強さが相まって現在まで続く「Vitaは失敗ハード」の話に繋がってくるわけだが、ここまでPSP時代に改造されまくったらそらここまでの対策をするわなと当時から思っていた。とはいえ結局、USB接続してファイルにアクセスできるから改造突破されてしまったわけだが・・・

https://www.playstation.com/ja-jp/playstation-history/2007-ps3-ps-vita/ より

この様に大きさは似ていても厚さ、形状が異なる。
PS5の鉄壁を揺るがした、2026年の「不穏な空気」
とにかくここまでソニーは出来うる限りのハッキング、コピーゲーム対策を施してきた。2015年にはPARもサポートを終了して日本を撤退。オンラインの普及で家庭用機において安易な改造がゲーム体験を狭めることになるという、一種の圧力のような空気まで作り上げた。 PlayStation 5はプロテクトがかなり厳重で突破は難しいとされてきた。

ところが2026年はじめから不穏な空気が出てきた。Limited RUNから発売された『スター・ウォーズ レーサー リベンジ』というPlayStation4用のゲームディスクがPlayStation 5のハッキングに使えるという噂が出た。噂というよりすでに実証まで済んでいた。 これは2026年の1月はじめに「Boot ROMキー」がネット上に流出したことから始まる。解析していくと『スター・ウォーズ レーサー リベンジ』のメニュー画面に脆弱性があって、そこを経由してPlayStation 5にユーザーが直接アクセスできることまで発覚。現在このゲームは当初3000円から4500円程度だったのが(円安反映 元値は15ドル程度)、アメリカのオークションサイトのeBayで5万円以上の値がついてしまった。

よりによってこいつが原因
そもそもLimited RUNはどんなものかというと、この会社はダウンロード専売で人気のあるゲームをパッケージ化、ディスク化して販売するというビジネスを行っている。中にはNESやSNESなど昔のゲームの再現カートリッジを生産して販売している。勿論PlayStationや任天堂の許諾を得て作っている。日本ではSUPER DELUXEというブランドで『悪魔城ドラキュラ アニバーサリーコレクション』や『改造町人シュビビンマン コンプリートコレクション』が販売されている。

これは64の『帝国の影』復刻生産

『Hi-Fi RUSH』も元々はDL限定だしね

『スター・ウォーズ レーサー リベンジ』自体は2002年にPS2に向けて発売されたゲームで、内容もニンテンドー64で発売された『スター・ウォーズ レーサー』をベースにした続編。これも2016年にPS4でダウンロード販売が開始されて2019年にLimited RUNからパッケージ化されただけだった。
別コラム「スター・ウォーズ ゲーム研究本を出すために 第56回 ポッドレース大特集『スター・ウォーズ エピソードⅠ レーサー』『スター・ウォーズ レーサー』」
外部ツールの脆弱性:ソニーが導き出した結論
だいぶ長くなったが、ソニー、PlayStationからすると、せっかくPlayStation 5の強固なプロテクトもゲームディスクを入れられただけで脆弱性が露呈するという顛末に頭を悩ませたのだろう。PCも含めてそうだが、どんなにセキュリティやプロテクトを強固にしていても外から外部デバイスを挿されてしまうとその部分は口が開いた状態で脆弱になる。そのデバイス内に悪意のあるソフトが混入し、接続された瞬間に起動するような代物だった一巻の終わり。一応、PlayStation 4のころから外付けのUSBデバイスにアクセスでき、そこからダウンロードゲームを起動するという仕組みはあるが、それ以外のものは認証プロセスの関係からアクセスしづらいようになっている。ところが、ゲームディスクというゲーム機の深層までアクセスできる“外部ツール”が入ったらどうなるか?しかもゲームディスクはただの起動&動作キーとしての役割に留まっているが、ゲーム側としては受け入れざるをえないものだとしたら最悪の代物。
一昔前と比べるとゲーム機の拡張コントローラーもバラエティ色が無くなってきたと思う。特にPlayStationはマスコンなど特殊コントローラーの生産に対してはかなり慎重で、HORIなどの周辺機器メーカーに対してPlayStation 5の仕様の公開をするのにかなりの制限をかけている。善意で作ったものが不要な接続でセキュリティホールとなるかわからないからだ。 そうなることが分かった現在、コピー対策、ハッキング対策に力を注いできたソニー、PlayStationとしては「ディスクメディアの廃止」は自ずと出てくる結論だろう。 発覚から半年以上が経過しているが、関係各所との調整や工場の稼働など全て調査してシミュレーションして結論を出すには十分な時間と言える。
まさかの復刻ゲームがキッカケ、しかもスター・ウォーズのゲームということでわし個人も驚きを隠せないが、今回のディスク廃止について少しでも理解が進むと良いと思う。
一応最後に
わし個人としてもディスク廃止は嫌ですよ。




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