【連載コラム】畑史進の「わしは人生最後に何をみる?」第11回 企画がとっ散らかった感と大人の黒いお金が見え隠れするユニークな展覧会「MANGA都市TOKYO」レポート

 

※今回は個人のコラムという形式で取材したイベントをレポートしています。畑自身、学術的見識というものへの理解が薄い(かつ嫌悪感が強い)ため、かなりひねくれた内容となっています。
ただ、この展覧会がアニメファン、ゲームファン、漫画ファンに対して足を運ぶに十分な理由が無いと思っているため、会場に行く前の一つの判断材料としてお読みください(畑自身ひねくれ者であることを念頭に入れて下さい)。

 

【文・畑史進】

 

編集長の畑です。クソ暑い猛暑の夏・・・
言葉が変ですね、クソ猛暑の夏をいかがお過ごしでしょうか?

 

国立新美術館で今日から11月3日(火・祝)まで開催される「MANGA都市TOKYO」というイベントに取材に行ってきたのでその感想を交えたレポートを話そうかと思います。

このイベントは何かということについて、国立新美術館のホームページにはこう記載されている。

 

国立新美術館は、2015年開催の「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」(2015年6月24日~8 月31日)を皮切りに、同展をタイ、ミャンマーに国際巡回するなど、日本が誇る独自のカルチャーを世界に発信する取り組みに力を入れてきました。2018年は「ジャポニスム 2018:響きあう魂」の事業の一環として、フランス・パリにて『MANGA⇔TOKYO』展(2018年11月29日~12月30日)を開催し、来場者が3万人を超えるなど現地の人々をはじめ多くの皆様より高い評価を頂きました。このたび、「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」と題しまして、装いも新たに凱旋展示を実施いたします。

 

 

といったように、アニメや漫画、そしてテレビゲームという日本が得意とする娯楽コンテンツを特集したものを2015年に行った後、海外で改めて展開(おそらくクールジャパンという文字通り寒い流れに乗ったんでしょう)。
それを新たに再編成して逆輸入したのが今回の展覧会だというそうな。
で、具体的にどんなことをコンセプトにしているのかっていうと、パンフレットの「主催者ごあいさつ」にはこう書いてある。

 

漫画・アニメ・ゲーム・特撮のと、東京という都市との間に展開される、<虚構>と<現実>の相互関係をみることで、作品の中で東京がどのように表現されてきたかをみていくだけでなく、<現実>の都市東京が<虚構>の影響をと受けて変化しているという事実を紹介します。

 

 

つまりは東京を舞台にした創作物が現実の東京にこんな影響を及ぼしましたよ。という展覧会というわけ。
先に言っておくと、この手の展覧会は基本的に、主催者が「これはこうであり、こうだ!」という結論のもとで構成されていくものなので、見るときには「あ、うんまぁそう“かも”ね」という俯瞰目線で見る心構えが大事。
ただ、今回の展覧会に関しては「え?そうなの?そう考えるの?まぁ確かにそうかもしれないけど」という感じで、主催者側の伝えたい思いが大きすぎて、見ているこちら側が鵜呑みにしようにも飲み込めない。というか各セクションの紹介文と作品の紹介文を見比べても「それは無理があるんじゃない」という感想すら抱いちゃう。

 

 

大体、サブカル系のライターたちが論じる「これはこうであり、こうだ!」といった内容というのはあくまで一つの見方。作品をどう感じるかというのはお客さんの視点が一番大事であって、サブカル系のライターはたまたまその仕事にありつけたことで、大きな拡散力を持つメディアで発言する機会を得て発言できているだけに過ぎない。だから、その大きな声を耳にしたとしても「そんな考えもあるのね」程度に聞くくらいで十分。
そこに70%以上共感する部分があったら自分の考えや新しい感性として取り入れるのが良いくらいなんじゃないかと思う。まぁ、過去に色んな場所で『スター・ウォーズ』について論じてきていた自分がこんなことを言っちゃってどうなの?と思う部分もあるけど、僕自身もそんなもんだと思っているからこう言っているだけ。

 

で、件の展覧会の流れなんだけど、東京の歴史を振り返りながら各時代をテーマにした作品を交えて紹介するコーナーでは、江戸時代なら『さくらん』、大正時代なら『サクラ大戦』や『はいからさんが通る』というふうに、東京の歴史とこれらの作品がどのように混じり合ったのかを紹介していっている。
他にも東京タワーのようなシンボルマークが色んな作品でどのように扱われたのかだとか、アニメや架空のキャラクターが東京の都市とどのようにタイアップしていったのか、といった聖地巡礼の部分にまでおよんでいる。

 

さっきからずっと話しているように、展覧会に掲示してある解説文はこれらの歴史、土地、シンボルマーク、交通とそれらのテーマを扱った作品との関連性を「各専門家が専門家の目線で勝手に解釈して紹介しているだけ」なので、作品への熱量の高いファンがこれらを見たら納得するか、拒絶するかのどちらかになると思う。その上、かなり多くの作品が掲示されているので、作品を知らない人からすると「あっ、ふーん」くらいの感想しか抱かないだろう。

 

さて、このこの手の企画に対して懐疑的な目線の僕が「MANGA都市TOKYO」というイベントに対して感じたことは何かというと、「目線は独特だけど、結局これって何が言いたいの?誰が得をするの?」ということだけだった。
というのも、作品はあくまで作品であって、仮に作中で実在する土地や歴史を舞台にしたり、実在するオブジェクトを作中に登場させたりしたところで、その作品の核となる部分やテーマに大きな影響を及ぼすかとなると凄く疑問だからだ。

 

展覧会の中にはゴジラが取り扱われていたりしたけど、確かにゴジラが東京を舞台にしたことが何度もあったが、いくつかの作品は東京以外でも成立する可能性があると思う。それを無理に東京と絡めてこういったシンボルマークが登場しました。ゴジラによる破壊が「過去と未来の災害に対する日本人のリアリティ感覚~」なんて言われても「はぁそうですね、そうですか」というくらいにしか思わない。

 

江戸時代を舞台にした『さくらん』や大正時代を舞台にした『はいからさんが通る』や『サクラ大戦』も凄く熱意を持って解説文を書かれているんだけど、そのどれもが「言わんとせんことは解るけど、その作品はあくまでモチーフ・着想としてその時代を扱っただけで、なんか色々と無理があるような・・・」という得体のしれない違和感すら感じてくる。

 

 

聖地巡礼にまつわる特集でも『こちら葛飾区亀有公園前派出所』や『ラブライブ!』のような作品が出てきたけど、解説文読んでも「だからどうした?」という感想しか抱けない。確かに『こち亀』は東京を舞台にしているから東京という土地を語るに必要な作品であるかもしれないけど、だからといってそれ以上の何をここで語る必要があるのだろうか。というちょっと冷めた疑問まで抱いちゃった。

 

サクラ大戦で女性の社会進出を語られるとは思わんかった・・・

『ラブライブ!』に関しては電車や舞台となった秋葉原や神田明神で様々なタイアップが催され、現実に大きな影響をもたらしました。みたいな感じで紹介されているけど、むしろ「害悪ラブライバー」といった社会問題児の出現に関してなんで言及せんのか・・・という邪な感想まで湧いてくる始末。

 

こんな奴ライブ会場くらいでしか見ないけど、なんで電車と一緒にセットにした?

 

これ、おそらく駅ナカコンビニの「NEWDAYS」とのタイアップのことを指しているんだろうけど、NEWDAYS側が拒否ったのかもね

このように、全体的に企画に関する解説文を読んでもどこか中途半端感を否めないのがこの展覧会。
出口に近づくにつれてだんだん気づいてきたのが、これって「作品と東京」というあまりにも限定されたテーマになっているからあまり共感できないのかもしれない。そりゃあ日本各地に範囲を広げちゃうと収集がつかなくなるのかもしれないけど、あたかも東京という土地がすごく特別で、そういった土地から生まれた作品、舞台にした作品ということを全面に押し出してテーマにするといろんな意味で局地的な内容になってしまう。
だって今回ここで扱っているマンガやアニメ、テレビゲームは全て日本で作られていて、当然最初のお客さんは日本人だから、日本語を使っている。そこで「土地や歴史が作品とどのように絡み合って影響を及ぼしたのか」というテーマで展覧会をするなら「東京」というのはあまりにも限定的すぎる。「東京=日本」というメッセージを全面に押し出しすぎだろう。

 

 

ただでさえ47都道府県と日本にはいろんな場所があるのに、そこから1つの場所を選別して、そこに関連した作品となると数が扱える作品が少なくなるのは当然で、逆に東京以外を舞台にして制作された作品の中には日本を代表できる作品もあるわけで、東京で無いからと今回のテーマ、企画から除外するのはちょっと納得が行かない。
逆に日本で制作しているアニメや漫画制作が現場の大半が東京にあると、必然的にモデルの大半が東京になるわけで、そこに意味を見出そうとすると無理が生じてくる。解説文でどうしても同意できない部分が発生するのは、そういった「無理押し」から始まった「無理が通れば道理引っ込む」状態になってしまっているからだと思う。
最終的には「今まで好きな作品だったけど、変なうんちくを語る変なオタクが現れて、作品そのものから手を引いちゃう前に関係を断つ」という心理が働くようになって、取材が終わったらそそくさと会場を後にしちゃった。

こんな物を海外で展開していたのかと思うと頭が痛くなるし、なんで素直に扱える範囲で「MANGA NIPPON」というテーマでやらなかったのかとすら思う。

 

家に帰ったあとでこのレポートを書いているうちに、だんだんとこの気持ちの悪いチグハグ感の正体に気づいた。それは、マンガやアニメ、ゲームに限らず、実写映画作品やドラマもいれて「映像作品(または虚構作品)と東京」という、もっと広い層にリーチするようにしなかったことにあるんじゃないかということ。
東京を舞台にした映像作品で、現実と作品相互に影響をもたらした作品となるとかなり限られてくるけど、今回の企画の趣旨のように無理をすればいくつか出てくるはず。特に聖地巡礼の魁的な作品となった『男はつらいよ』シリーズなんか扱えてくるはずで、なんでこの場に無かったのか不思議でしょうがない(もちろん実写作品であるのは承知している)。
その他にも『東京物語』や『バイオハザードIV アフターライフ』『ウルヴァリン サムライ』とか話題になれる作品は色々ある。そうすると、本来の目的であった「虚構作品と東京」といったテーマも、もっと回収しやすくなっただろうに、なんでわざわざアニメ、ゲーム、マンガといった縛りプレイに走ってしまったのか謎だ・・・

 

あと、会場を出たら物販のコーナーとかもあるんだけど、ここで取り扱われているのは全部老舗のグッズメーカーとして有名な「二次元コスパ」の商品ばかり。最近は秋葉原のアトレでも大々的なタイアップ企画をしている会社さんですが、ここまでくるとなんだか嫌なお金の流れを感じますねぇ・・・

あっそうそう、なぜか知らないけど、東京とは全く無縁な「100ワニくん」もこのグッズコーナーにしれっと馳せ参じておりました。

最後にまとめると、結局発起人、企画者の幅の狭さ(オタク感)がこの展示会に滲み出ちゃっているんじゃないのか?という感触を僕は抱きました。
いや、もしかしたら最初から「MANGAとTOKYOをかけ合わせましょう」というコンセプトで始まったのはいいものの、その後の企画会議で意思疎通や上手くまとめることが出来ずにできず、とっ散らかったまま今日の展示に至ったんでないか?(そうだとしたら宿題ができない小学生のレベルなんですけど・・・)
とまぁ、こんな感じである意味珍妙な展示会なので、怖いもの見たさで酒の肴の話のネタにする感覚で行くのはありかと思います。ただ、ここにある展示の解説物はあくまでその解説員の「こう思います」なので、鵜呑みに出来なかったら無理に飲み込まなくても良いかと思います。
ただ、それにしては1600円は強気すぎるんじゃないですかね・・・

1600円あったらここに展示してある作品の中古品が買えます。それで自分の見識を広めたほうがよっぽど有意義かと・・・

 

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