緊急企画!ホラーに明日はあるか?残酷映画祭2009 グランプリ受賞『牛乳王子』内藤瑛亮監督インタビュー

人気TVドラマ、コミックの映画化。人気俳優、タレントの起用など。安定したヒットとリスクヘッジという命題を抱えて製作される日本映画。それはそれで正しいと思う一方、エンタジャムは一抹の不安を感じます。


こんな日本映画界の中にホラー映画に明日はあるのか?と。2009年12月。残酷・ホラー・スプラッターという、アグレッシブなキーワードの下、ひっそりと、しかし熱い思いで開催された自主ホラー映画祭「学生残酷映画祭」。上映された数多くの作品の中から、これからのホラー映画界、もしかしたら日本映画界を背負うかもしれないインディー映画監督2人にインタビュー。唐突な企画で驚く方もいらっしゃるかもしれませんが、ホラー映画というジャンルで一生懸命面白い物を作ろうとしているクリエイターたちがいることを感じていただけたら幸いです。
 
『残酷映画祭2009 グランプリ受賞作品『牛乳王子』内藤瑛亮監督インタビュー』



内藤瑛亮監督プロフィール
1982年生まれ。映画美学校フィクションコース11期生。映画の原体験は母から薦められた「チャイルドプレイ」「エルム街の悪夢」。社会人として働きながら、自主映画制作を行っている。作品はスラムダンス映画祭、トロントジャパニーズ短編映画祭、ショートピース!仙台短編映画祭等、国内外の映画祭で上映されている。2010年、新作「先生を流産させる会」を撮影予定。
[牛乳王子 都へ行く]



インタビューの前に、内藤監督が撮った『牛乳王子』予告篇をご覧ください。


※個人差がありますが一部過激なシーンがありますので、ご注意ください
【牛乳王子 ストーリー】
老け顔の中学生・加藤真が自殺をする。恋心を寄せる同級生・安藤 舞の前で痴態をさらし、女子たちに笑い者にされたからである。加藤 真の怨念は殺人鬼・牛乳王子を生む。ボンクラ男子中学生の真っ直ぐに歪んだ恋愛を描いたラブストーリー。
(編集部)昨年の学生残酷映画祭でのグランプリ受賞。おめでとうござます。いろんな意味で凄い作品ですね。プロには絶対撮れないですねこれは。インディー映画なので当たり前ですけど。エグイけれども、なんか笑えたり。不思議な映画でした。
(内藤監督)ありがとうございます。
(編)今回の取材のために、内藤監督のYou tubeを観ましたけれども、監督のチャンネルは観賞に不適切のレッテルが貼られまくってますね(笑)
(内藤監督)そうですね(笑)ああいうのばっかりで。外人とかがコメントしてて、「お前の国では、こういうことしても許されるかもしれないけど、俺の国だったらタダじゃおかない」とか。いろんな書き込みがありましたね。
(編)牛乳王子はどのようなきっかけで撮ることになったんですか?(内藤監督)映画美学校という学校に行っていまして。そこの修了制作として撮影しました。
(編)修了制作は誰でも撮れるものなんですか?
(内藤監督)いえ。修了制作は全員が撮れるわけではなくて、何人かが選ばれて撮れるんですよ。(美学校では)ビデオ課題というものがあって、撮りたい映画の一部分を撮影して講師にみせるという、一種のプレゼンのようなものがあって。この企画を俺は撮りたいから、このシーンを撮ってきました。のような。その中で牛乳を女の子にかけるシーンとかラストシーンを撮って(笑)それで、この企画が通ったという感じです。
(編)『牛乳王子 ビギンズ』はそのプレゼンのために撮ったんですか?それを基にして、本編を完成させたという感じですか?
 


(内藤監督)そうですね。ビギンズを撮った時は、あれしか考えていなくて。その後、どうつなげようか。ということで脚本を作っていったという感じです。
(編)それで、2008年5月にキャストを募集して。襲われる女の子はオーディションでどのくらい集まったんですか?
(内藤監督)大変でした(笑)。自主映画に出たいという女子自体が少なくて。しかもホラー映画(笑)。一回OKしても後で断られたり。ほとんどの女の子はドン引きでした。
(編)牛乳王子を演じている方は?
(内藤監督)愛知に一緒にいた時の劇団仲間です。牛乳王子は脚本の段階から彼を念頭に作りました。役者をやるって東京にきて。彼をキャスティングして、さあ撮影というタイミングで、彼の愛知にいる彼女が、役者をとるか私をとるか という話で揉めて。で、彼が愛知に帰って結婚するという話になり、また揉めて。牛乳王子に出演して世のボンクラ男たちに元気を与えたほうがいい(笑)みたいな説得をして。結局、田舎に帰るのを少しのばしてもらって撮影できました。加藤くんの彼女には、私と彼ががホモなんじゃないか?という疑惑までかけられましたけど(笑)
(編)あの、劇中で一番、牛乳を執拗にかけられる女性はどうやってキャスティングしたんですか?
(内藤監督)あの子は、牛乳王子を演じている加藤くんと同じ劇団の後輩で『牛乳王子 ビギンス』に出ていた子です。なんか、この子だったらイジメてもOKな気がして(笑)
(編)ホントにヒドイことをしてますよね(笑)
(内藤監督)決して私の趣味ではないです(笑)。(牛乳王子を準備していた)その時期は、自分の中で”そういうモード”だったというか。女の人が徹底的に酷い目に遭う。そういう時に女性が魅せる美しさというか、強さというか。そういう時の女優さんのアクションや演技に映画的な感動を自分は見出していて。その瞬間を描きたかったというか。『牛乳王子』でいうと、主人公が女性に嫌われちゃって、牛乳王子という殺人鬼キャラクターになって、自分が優位に立とうとしている。けど、そのイジメに対して女性が完全に”屈しない”つまりその女性の強さであり、凄さであり。負けない凄い女性がいる。という
(編)作品のイメージになった作品はあったんですか?
 
(内藤監督)『悪魔のいけにえ』ですかね。延々とイタブられるところとか。牛乳を吐くところも、ホラー映画というより、ドリフターズ的な乗りなんです。
(編)今まで『牛乳王子』を”普通の”映画祭に応募したことはあるんですか?
(内藤監督)手当たりしだいに出しています。「ぴあ」とかは一次とかも通らず。地方のアットホームな映画祭にも応募しましたけど、審査員の方からのコメントで「目をそむけたくなりました」って書かれたこともあります(笑)。上映に選ばれても、観客がみんな引いてるとか。この前の学生残酷映画祭が一番幸せな感じでしたね。ホラー映画が好きな人と一緒に過ごせたというか。あと、この映画は、やはり男子の反応がいいですね。気持分かりますとか。上映が終わったあと、無言で握手を求めてくる方とか。
(編)海外の映画祭で上映があるように聞きましたが。
(内藤監督)今月(1月)なんですけど、スラムダンス映画祭というところの短編部門で上映があります。多分、日本からは私だけみたいなので、日本代表『牛乳王子』というかんじです。英語字幕も自分でつけました。叫び声ばかりで、あんまりセリフはないんですけども(笑)※スラムダンス映画祭:年々商業化していくサンダンス映画祭に対抗してインディー魂をリスペクトし、映画ライター、監督など新たな才能を発掘するための映画祭。オーレン・ぺリ監督の『パラノーマル・アクティビティ』も、この映画祭で上映。
(編)次回作の予定は?
(内藤監督)今年撮る予定です。”先生を流産させる会”という実際にあった事件があったんですが、それを映画にします。タイトルもそのまま『先生を流産させる会』(笑)。サスペンスになると思います。
(編)また、すごいタイトルですね。今度は長編ですか?
(内藤監督)出来あがった脚本が60分くらいの量があるので、いっそのこと90分くらいにして映画祭に出して、どこかに売り込めないかと思ってます。
(編)次回作もテーマは女性が追い詰められて、その時に魅せる強さというか。
(内藤監督)そう。(少し考えながら)そうですね。実は『牛乳王子』を美学校の講師に見せた時、牛乳
を吐くようなスペクタクルなシーンは撮れている。けれども人間が描けてないと。お前人間嫌いだろ。とか言われてしまって(笑)。ちゃんと人間ドラマも入れた脚本があって、その通り撮影したんですが、ちょっとかったるいと。そこでバッサバッサ編集してストーリーよりビジュアルのインパクトを優先してしまったのがそういうコメントに繋がったんだと思うんですが。なので、自分の中では次回作は人間ドラマをどれだけ撮れるかがテーマです。撮影は今年の7月か8月に予定しています。
(編)楽しみにしています。本日はありがとうございました。
『牛乳王子』上映スケジュール
スラムダンス映画祭2010(アメリカ) 開催期間:1月21日―28日
映画と音楽のおいしい関係 Vol.1 日時:1月29日(金) open 23:50 / start 24:00
料金:前売¥2000(おつまみ&1ドリンク付)/ 当日¥2000(1ドリンク付)


第13回調布ショートフィルム・コンぺティション日時:2010/3/7(日) 場所:調布市文化会館たづくり8階 映像シアター 審査員:瀬々敬久(映画監督) 、三浦淳子(ドキュメンタリー作家)、柳下毅一郎(翻訳家・映画 評論家)
インタビューVol2は、クレイアニメでホラーに挑む長尾 武奈監督を予定しています。

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