映画レビュー 人間としての温かさと優しさを描く感動作 映画『ヤコブへの手紙』


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フィンランドのアカデミー賞で最多四部門を獲得した感動のドラマ。監督はフィンランドやスウェーデンで活躍する新鋭クラウス・ハロ。
終身刑の女性レイラ(カリーナ・ハザード)は恩赦によって出所。所長のススメで盲目のヤコブ牧師(へイッキ・ノウシアイネン)の家に住み込み、彼に届く多くの手紙を読み、返事を代筆するという仕事をすることになる。ある日、毎日届いていた手紙が一通も来なくなり、ヤコブ牧師は酷く落ち込んでしまう。そんなとき、レイラはある秘密をヤコブに打ち明けるのだが…。
レイラとヤコブ牧師の繊細な交流を通して、人生に嫌気をさしていたレイラが絶望的な状況から再生していく様子を静謐なタッチで描く。悩める人々の手紙に対し、神の存在を信じて祈るヤコブ牧師の存在が、人間としての温かさと優しさを感じさせる。
ラストは、レイラの意外な真実が彼女自身の口から明かされ、同時にヤコブ牧師にも…。お涙頂戴モノや感動を押し売りにした作りではないが、そういう類の作品で泣けてしまう方なら、ついつい涙を流してしまうだろう。
メインキャストはヤコブ、レイラ、郵便配達人(ユッカ・ケイノネン)の三人で、冒頭で刑務所長、ラストで男三人と登場人物はかなり少数で、作風は地味で素朴…という様に低予算であることが丸わかりだが、決して本作を簡単に侮ってはならない!!上映時間は75分と短いうえに、ストーリーも複雑さや難解さを感じさせないわかり易いものだから、気楽に観て頂きたい。
レビュアー:佐々木 貴之


『ヤコブへの手紙』
<ストーリー>
恩赦で12年間暮らした刑務所から出てきたレイラは、ヤコブ牧師の家で働くことになった。片田舎に一人で暮らす年老いた彼のもとには、悩みをもった人々からの手紙が郵便配達人によって毎日届けられる。レイラの仕事は盲目の牧師のために手紙を読み、返事を書くこと。毎日届く手紙を楽しみにするヤコブと、嫌々ながら仕事をこなすレイラ。そして、突然現れたレイラに不信感を抱く郵便配達人。そんなある日、ヤコブへの手紙がぷつりと来なくなってしまう。生きがいだった手紙が届かず、日に日にふさぎこんでしまうヤコブ牧師。そんな彼にレイラと郵便配達人は、手紙が届かないことを隠して『手紙が届きましたよ』 と告げる。そしてレイラは、今まで誰にも話せなかった、あることを打ち明けるのだった。「親愛なるヤコブ牧師…」。
2011年1月15日より銀座テアトルシネマほか全国順次公開
監督:クラウス・ハロ
出演
カーリナ・ハザード
ヘイッキ・ノウシアイネン
ユッカ・ケイノネン、エスコ・ロイネ 
2009年 フィンランド フィンランド語 75分 35mm カラー シネマスコープ SR/SRD
原題:POSTIA PAPPI JAAKOBILLE 
後援:フィンランド大使館 
配給・宣伝:アルシネテラン
公式HP:
http://www.alcine-terran.com/tegami/

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