映画『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』公開記念 原恵一監督インタビュー


—本作を制作することになったきっかけは

杉浦作品はいつか映像化したいと思っていて、本作の制作をしたプロダクション・アイジーに杉浦さんの別の作品を持っていったんです。その時、過去にプロダクション・アイジーで「百日紅」の企画があったんですと言われまして。後日、「百日紅」のアニメ化いかがですか?とお話をいただいて、是非やらせてくださいという感じで企画がスタートしました。実は他のプロダクションでも(「百日紅」の)企画が上がっていたらしんです。危ないところだったぜ(笑) と思いました。何かめぐり合わせみたいなものを感じましたね。


—作品が完成して自信のほどはいかがですか?

自信ありますよ!誰が来てもドンと来い!みたいな(笑) 原作に恵まれたことが大きいですけども。

—杉浦作品を映像化にあたって悩んだりしましたか?

自分が最も好きと言ってもいい杉浦さんの作品ですしプレッシャーや不安はありました。杉浦さんの作品のファンはたくさんいらっしゃると思いますし、原作を読むのが一番いいよという方もいらっしゃるでしょう。だけども、僕は僕で杉浦さんの作品が一番好きなのは自分であると(笑) とにかく劣化させたくない。作品の世界観を壊したくない。そこでの苦労はありましたね。

—原作の一話一話を映像化してオムニバス形式にするという案はなかったのですか?

それはなかったです。やはりストーリーの軸がないと僕は嫌だなと思ったので。

—どのようにストーリーを構成していったのでしょうか。

目の見えないお猶というお栄の妹。彼女とのエピソードをクライマックスにしてお栄とお猶の姉妹関係を縦軸として描けばいけるんじゃないかなと思いました。その縦軸の”串”にチョイスした原作のエピソードの団子を串を通したいわゆる串団子的なイメージで構成すればいけるんじゃないかなと思いました。

—原監督というと登場人物が”泣く”イメージがありますが、本作ではかなり抑えた演出になっていますね。

僕は登場人物が泣かない作品は久しぶりなんですよ。原作の「百日紅」では誰一人泣かないんですよね。杉浦作品の凄いところは登場人物が泣かないのにすごく心が動かされるところなんです。だから今回は誰も泣かないと決めました。

—お栄を主人公にしたのは?

お栄が主人公の映画にしたいという気持ちがありました。原作ではお栄はあまり美人として描かれていないんですが、そこはあえて美人に描いてみたいなと。でも、美人なんだけども眉がちょっと太い。そういう残念なところを特徴をつけたいなと思ってこういうキャラクターデザインにしました。お栄って、
ぶっきらぼうでどちらかというと可愛げがない女なんですよね。だけど、そんな彼女が思わず頬を染めたり、不器用な片想いをしていたりとか、妹への愛情だとか、違う面を描くと人物像がどんどん深まるじゃないですか。そこが原作ではあまり描かれていない映画ならではの要素かなと。とにかくカメラはお栄に寄り添う。そういう姿勢で作りました。

—映画をご覧になる方へメッセージをお願いします

時代劇ということで嫌厭しないでほしいかなと(笑) お栄という23歳で職業を持っている女性が抱える仕事上の悩みだったり、恋愛だったり家族だったりと、それは現代にも共通するものでみなさんにもすごく共感してもらえると思います。是非映画館まで足を運んでいただければと思います。よろしくお願いいたします。

『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』5月9日(土)全国ロードショー
監督:原 恵一
原作:杉浦日向子「百日紅」
出演:杏、松重豊、濱田岳、高良健吾、美保純、清水詩音、麻生久美子、筒井道隆
立川談春、入野自由、矢島晶子、藤原啓治

制作:Production I.G 配給:東京テアトル
(c)2014-2015杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会

sarusuberi-movie.com

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