映画レビュー キューバ映画初のゾンビ映画『ゾンビ革命‐フアン・オブ・ザ・デッド‐』

先般公開された『Z108地区~ゾンビ包囲網~』は台湾映画初のゾンビ映画だったが、続いてキューバ映画初のゾンビ映画も登場。筋金入りのゾンビ映画ファンであるアレハンドロ・ブルゲス監督がメガホンを取り、ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭の銀カラス賞をはじめ、各国の映画祭で賞を獲得した。

42歳でまともな職に就かない中年フアン(アレクシス・ディアス・デ・ビジェガス)は親友ラサロ(ホルへ・モリーナ)と怠惰な日々を過ごしていた。ある日、キューバの首都ハバナにて人々が凶暴化して襲撃し合うという異常事態が発生。アメリカより資金援助を受けた反体制派による蜂起か新たなる革命と報道されたが、フアンらは普通の人間ではないことに気づく。この危機的状況を乗り切るべく、フアンはゾンビ化した近親者を殺害できない人のための代行殺人業を始めるが、ゾンビはますます増殖し、手に負えない状況になってしまう……。

ゾンビ映画に登場するゾンビは、ウィルスによる感染が原因であったりするが、本作ではその原因が明かされない。また、フアンたちは凶暴化した人々をゾンビであることを一切口にせず、吸血鬼や悪霊と予測する。こういった従来のゾンビ映画とは異なる新味を描き出すことに成功している。

また、従来のゾンビ映画で観られるゾンビ撃退シーンは銃器で頭部を撃ち抜くといったシーンも多かったが、本作では銃器類は使用せず、鉈、ボートを漕ぐために使用するオール、バットを武器としている点も面白い。ゾンビを斬りつけ、叩きつける際に観られるグロやバイオレンスは容赦なく描かれ、ファンの期待に添った仕上がりでよろしい。

本作はコメディー要素も取り入れられているが、笑いのセンスも実に素晴らしい。先述した風刺をはじめ、個性的なキャラクターたちによるおバカな笑いは、わかり易い上に面白さをしっかりと汲み取れる。個人的に特筆したいのは、マッチョな黒人の存在だ。そのルックスとは裏腹に血を見るのが大の苦手であるため、血を見るやすぐさま倒れてしまうシーンが少しくどいと思えるほど観られ、目隠ししてゾンビと闘う姿は忘れ難い。

ゾンビ映画ならではの描写や笑いだけでなく、フアンとラサロによる男同士の友情、フアンと娘カミーラの父娘愛も描かれているため、好感度はさらに高まっている。
ゾンビ映画の新たなる趣向を引き立てることに成功し、見せ場やドラマ部分に創意工夫を施したブルゲス監督の腕前は確かなモノだ!

レビュアー:佐々木貴之

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『ゾンビ革命―フアン・オブ・ザ・デッド―』
10月27日(土)より、新宿武蔵野館にてレイトロードショー!!
公式サイト:www.finefilms.co.jp/cubazombie

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