※悪態だらけですが、褒めてます 畑編集長&ジャンクハンター吉田 クロスレビュー 『帰ってきた 魔界村』

 

2月25日にCAPCOMから発売された『帰ってきた 魔界村』をのジャンクハンター吉田と、編集長の畑史進がクロスレビュー!

 

■畑史進編集長のレビュー

 

『魔界村』

このタイトルを聞いて「あの難しいゲームだ!」とピンとくる人ってもう限られてくると思う。

初作のアーケード版が1985年で、翌年の86年にファミコン版が発売。『大魔界村』が88年、『超魔界村』が91年でそこから15年の時が空いて『極魔界村』。そこからさらに15年経って今回紹介する『帰ってきた 魔界村』が発売。いくつか枝分かれしたタイトルはあるものの、これだけ時間が空いたのはマーケティング的にもったいない。とは言いつつも、このゲームシリーズほど「二度と作らんで良し!」と思われるものもないだろう。

どれか一つでも遊べばわかるけど、操作キャラを全力で殺してくるゲーム構造の巧妙さに「開発者はなにか重大な悩みでも抱えているんじゃないか」と邪推してしまうほどこのゲームでは”嫌な目に会う”。

ゲームを遊ぶ理由は人それぞれあるだろうけど、大体は「良い心地になりたい」というのがほとんどの理由だと思う。仮に死にゲーと言われるようなゲームを遊んでいても強いボスや難所を突破して達成感を感じてその日を満足して終え、ビールでも飲んで勝利の余韻に浸りたい。そのために難しいゲームを遊ぶという人もいるだろう。

嫌な気持ちになるためにゲームを遊ぶ人なんかいない。だけど、このゲームシリーズを遊び、クリアしてきた人は「嫌な気持ちになるため」「尋常じゃない徒労感」に終わることを覚悟の上で、寧ろそれを感じたいがためにこのゲームを手に取る。常軌を逸した難しさに「クソゲーかこれは!?」と絶叫を上げ、コントローラーをぶん投げて「二度とやるもんか!」と大見得を切るものの、なんだかどこかクリアできそうな気がしてまた手にとってしまう。

コントローラーを再び手にとってしまったが最後、その日に”1ステージでも”クリアできなかったらその日の晩からこのゲームの悪夢を見てうなされる。悪夢を見たいならこのゲームは最高の導入になること間違いなし。

 

 

悪口を言っている様に聞こえるかもしれないけど、僕としてはこれでも褒めているつもりだ。

このゲームは「自らの首を締め上げるゲーム」だからだ。

 

そんな本作を発売に先んじてプレイさせていただいたが、現代のゲーマー媚びることなく、昔ながらのテイストをそのまま現代に顕界させ、「死にゲー」というジャンルを今一度考えさせられる最凶烈悪の内容となっていた(褒め言葉です)。

 

本作は『魔界村』と『大魔界村』という2作品をベースに再構築したもの。感のいい人ならピンとくるだろう。この2作品は多くのゲーマーから100円玉を掠め取ったアーケードから展開された作品で、続く『超魔界村』はコンシューマー作品に加えて、ファンの間でも少し議論される二段ジャンプがなく、正真正銘の硬派な『魔界村』作品である。ということは?

 

やべぇほど難しい。

 

回りくどい操作は一切なく、攻撃ボタンと、攻撃の打ち分け、ジャンプと気休めの魔法とスキルでクリアを目指していくことになる。頼れるのプレイヤーの「アクションゲームスキル」。この腕一つでこのゲームに出現するあらゆる難所を突破していく他ないわけだ。このゲームを文章で説明するにはかなり難しいし、文章ですべてが伝わるものじゃない。

ただ、このゲームを苦しめているポイントは端的に言える。

「レトロ時代のアクションゲームの嫌な要素を闇鍋的にぶちこみ、より悪化させる調味料を加えている」

 

レトロ時代のアクションゲームの嫌なポイントその1「敵に接触したら一方的にダメージを受ける」

これは未だに理解することができないが、多くのサイドスクロール型アクションゲームは敵と接触するとダメージを受ける。ゲームによっては操作キャラクターのHPの半分以上持っていく場合もある。その敵とフェアに戦うなら敵もダメージを受けるはずなのに敵はノーダメージ。だいたいこういったシステムを目にしたら「主人公が極度の潔癖症」と思うしかない。

 

レトロ時代のアクションゲームの嫌なポイントその2「主人公が金槌」

お姫様を救うために悪魔のような敵をなぎ倒していく屈強な主人公。強力な脚力で野を超え山を超えて行くその様相はまさに英雄と讃えても差し支えないが、なぜか泳げない。水に落ちたらドボン。本作の主人公アーサーは最初こそ鎧をつけているが、ダメージを受けると脱ぎ散らかしてしまう。脱いだ後はパンツ一丁で歩き回り敵を蹂躙していくのだが、水に落ちたら泳ごうとする意思を見ることなくあっさりと沈んでいく。鎧をつけていたらわかる。だが、パンイチというスイミングに最適な格好で沈んでいくとは一体何事なんだ!?

なぜこうアクションゲームの主人公たちは総じて金槌が多いのか・・・

 

レトロ時代のアクションゲームの嫌なポイントその3「色々とニョキッと出てきちゃう」

先程、敵に接触するとダメージを受けるという話をした。敵の攻撃を受けたらダメージを受けるのはわかる。

しかし、このゲームは主人公が移動する先をすべて分かっているかのように敵が攻撃を放ち、ジャンプした着地先に敵がニョキッと出てくる。こうしたニョキッと出てくる場面はレトロアクションゲームがプレイヤーを激怒させる常套手段であり、脈々と受け継がれてきた。場合によっては出てきた瞬間が背景の色と重なって見えづらくなっている場合もある。あえて見えづらくしているのか、そうなってしまったかはわからないが、とにかくプレイヤーの行動を先読みすることがこのゲームには多い。

明らかに意図していることも明白だ。

このゲームでは同じステージ中に何度か死ぬと、「ステージそのものの難易度」を下げる事ができる。これを選択するとどうなるかと言うと・・・明らかにゲーム側の先読み行動が少なくなっている!

正直このプログラムは称賛に値する。このプレイヤーの行動先読みプログラムをどの様に考えて作っているのか詳しく話が聞きたいくらいだが、プレイしている最中には考えたくもない。プレイ中は寧ろ、ゲームが何を考えているのかという先読みを要求してくる。

 

レトロ時代のアクションゲームの嫌なポイントその4「動きが色々もっさりしている」

これはゲームによるかもしれないが、このゲームに関して言うなら「ジャンプや落下中に制御ができない」ことに加えて移動スピードが周りと比べて著しく遅いの2点に尽きる。アーサーの移動速度に対して敵キャラクターの移動速度は約1.5倍以上ある。逃げようものならあっという間に追いつくし、突進してこれをジャンプで交わすとなったらこれもある程度の心構えをしていないと何もでき位まま終わってしまう。もうこの移動速度を受け入れてサイキッカーにでもなるしかない。

 

他にも色々挙げられるが、こうした嫌なポイントを闇鍋的に打ち込んでかき混ぜ、最後に仕上げの調味料を加えて完成させたのが『帰ってきた 魔界村』とうゲームだ。もちろん褒め言葉だ。

先程も書いたようにこんなに嫌なポイントを加えて強化しているのに、決してクリアできないわけではなく、ちゃんと落ち着いて、適宜様々な問題を対処していくとちゃんとクリアできる、もしくは攻略の糸口が見える設計になっている。

これがファミコン時代から脈々受け継がれ、時間が空いても変わらないのが凄い。

 

その一つに伝説的なデザイナー、藤原得郎氏が関わっているのが”安心”の出来の秘訣なのかもしれない。

藤原氏は初代『魔界村』からすべての正統シリーズ作品に携わっている。

だからこそ、いつもの『魔界村』となっているわけだ。

 

一応”一通り”クリアしたものの、プレイ中は正直気が気じゃない事が多かった。

今作は4つの難易度が用意され、難易度を下げるとアーサーのアーマーの耐久値が上がっていく。レビューのためにも最高レベルから一つ下の難易度でプレイしたが、正直それでもきつい。そこからさらにステージ難易度も下げたが、イライラは半端なく募っていく。正直目の前に開発者がいたらぶん殴ってしまいかねない。

もし、本作の開発者を隣においてプレイするという実況動画を撮らせてくれるならパフォーマンスの一つにイライラの果てにぶん殴るというのをやらせてほしいくらいだ。

 

 

今作では魔法などが全部スキルツリー、「オービィの木」で習得するようになっており、覚えた魔法はいつでもゲーム中に放つことができる。魔法は放つとその瞬間無敵判定が発生するが、だからといって難易度が緩和されることがない。

また、オービィの木では死んだら低確率で鎧がついた状態で復活するものや、武器の所持数がアップすると言ったものもある。武器の所持数アップはこのゲームで真っ先に習得するべきスキル。なぜかというと、落ちている武器を拾ったら現在持っているものに上書きするため、事故か何かで触れてしまったときの保険になるからだ。

これらのスキルを集めていったらゲームが楽になるじゃん! とおもうでしょ?

難易度が緩和されることがない。

よくできているよ本当に(血涙)

 

一応誤解のないように言っておくと・・・

 

ぶん殴りたくなるほどムカつくし、それくらい激むずだけど、よくできたアクションゲームです。

 

しかし、なんでアーサーはいつもパンツ一丁で、プリンセスはこんなド変態のおっさんに会いに来るのだろうか?

ワンダースワン版の『魔界村』はちゃんと鎧を着ていたけど、墓場でデートをしている(密会か?)。大人になったときに改めて第1作目のオープニングをみたら事後で、苛ついた悪魔(非リア充)が嫉妬に駆られてプリンセスをさらったようにしか見えないんだよ・・・

だからこんなに難しいのか?

 

そもそもパンツ一丁のおっさんに会いに来るお姫様も大概だろ・・・

 

 

■ジャンクハンター吉田(マゾゲーマー)レビュー

 

●「難しい」が誉め言葉の難易度MAXなアクションゲームが帰ってきた!

本気でニンテンドースイッチをぶっ壊したくなるゲームに遭遇するとは思わなかった。それが『帰ってきた魔界村』である。その意図は何度挑戦しても先に進めない妥協を許さない高難易度なゲームデザインに苛立ちも頂点に達し、御年50歳にして途中でアーサーが不条理な死に方をして、チェックポイントまで戻されリスタートを繰り返すたび、手に持っているスイッチを床に叩き付けたくなったってわけ。

とは言え、決してその高難易度に憤慨しているわけではない。むしろ『魔界村』とは本来ならば難しくなくてはならないアーケードゲームだったから、プレイ時に難易度を”伝説の騎士”というドMプレイよろしく最大に上げて勝手にプレイしているだけなのでね。ちなみにこの難易度はもはやシリーズ最凶クラスの難しさになっており、本シリーズお約束な墓場から始まり最初のステージボスを倒すまでなんと3時間もかかってしまったほど。その前に久々の魔界村シリーズだったので、オリジナル版の『魔界村』をニンテンドースイッチで無料ダウンロードしリハビリ的にまずはクリアを。当時ゲームセンターでやり込んだ指とカラダが覚えていたのか、はたまた大好きすぎてアーケード用基板まで購入し(筋金入りの魔界ムラー諸君はファミコン版のガクガクな動きのフレーム数の低さに憤慨していたはずだ)キョーワインターナショナル製のコントロールボックスに繋いで自宅でもワンコイン、ノーコンティニューで二周目までクリアしていた青二才時代を思い出しつつ、プレイ中覚醒したのかサクサク進めてあっという間に三周目まで行けた自己満足感。まだ腕が衰えてないと自信満々に漲っていたからか、調子に乗って『帰ってきた魔界村』もハードコアにプレイしようと最大難易度に挑戦してしまったという罠でござんした……。

 

 

●魔界村シリーズ史上、歴史に残る高難易度さに50歳のオヤジはヤル気全開!

兎に角、骨太で狂ったほどの難易度に動体視力や反射神経が衰えている年齢にして俄然ヤル気が起きてしまい、普段は3~5時間プレイしてレビューを書くのがマイスタイルだったのだが、さすがにステージ1しかクリアできていないっていう情けないお粗末さでは元ハイスコアラーのプライドがっ! というわけで、さらに地獄を味わうべく、そのまま氷のステージにも2時間ばかりトライ。結果は惨敗。ステージボスにすら到達できない始末。でもこのようなアクションゲームは”覚えゲー”でもあるため、指先と脳内へしっかり敵の動きなどを正確にインストールしつつ何度も繰り返しプレイするのが楽しいわけで、気持ちは折れずに不思議とプレイできてしまう謎。

この”伝説の騎士”なる極悪難易度のモードこそ真の魔界ムラーになるためいつか制覇しなくてはならないのだが、さすがに5時間もプレイしていると我に返り「まだステージ2じゃねぇかよ……」と泣き出したくなってきたので、レビューを書くためにもダークサイドへ堕ちそうな心を刷新し、”見習い騎士”というヌルい超初心者向けのアクションゲームが苦手な人向けモードを試してみる。”若き騎士””孤高の騎士””伝説の騎士”と4段階のレベル設定が用意されているが、真ん中2つは興味なかったので手付けず。
キックオフから”伝説の騎士”を5時間もプレイしていたからか簡単すぎて驚きの連発。初プレイからノーミスで墓場のステージボスまで簡単にクリア。”伝説”と比べて”見習い”は敵の数が圧倒的に少ないし、発射してくる敵弾も少なくヌルい。簡単すぎたのでどうなっているんだろうと確認作業をしてみると、アーサーが水に落ちて死んでもその場復活できるし、魂になって数秒間浮遊して復活ポイントへ移動できるチートさまで加わっているではないですか。さらに敵とぶつかったり攻撃を受けたりしても、アーサーの鎧が徐々に壊れていくだけで数回耐えられる。本作お約束な一発食らって鎧が無くなりパンイチになるわけではないのでこれは簡単だわ。金の鎧まで獲れば武器も射出速度がアップしたり攻撃力も上がったりとパワーアップするので余裕で進めるから、今まで魔界村シリーズに触れたことなかった人にもこれはお勧めできるモード。

『帰ってきた魔界村』の”伝説の騎士”モードではアーサーが残機制ではなくライフ制でもなく、チェックポイントから何度もリスタートできる仕様へ。だからなのか、何度もトライしたくなる中毒性が高いのだろう。だが、ステージ頭と中央付近、ステージボス前の3カ所しかチェックポイントがないためリスタートで何度もチェックポイントまで戻され、ステージ構成を必然的に覚えていく”死にゲー”としてのドライな精神は魔界村らしく変わっていないのは嬉しい。

5時間も手こずったことからそれなりの自分ならではな攻略法が見えてきた。魔界村シリーズは短剣(ナイフ)が射出が早いことで一番使い勝手が良いのだが、16:9のワイド画面になったのが災いし、画面上に飛び道具は3発しか出せない=無駄に攻撃して的を外すと大事な時に武器が発射できなく目の前からウッディ ピッグが現れて体当たりされ死亡というのをステージ1で何度も体験。昔ながらの4:3の画面ではこんなこと起こらなかったがまさかワイド画面が攻撃時のマイナス要因になるとは……これも開発者の罠としか思えん。このことに気を付けるようになってからようやく光が差し込んできて、先に進めるようになったので試験に出ると思って覚えておいて欲しい。コントローラのセッティングで攻撃ボタンを任意で連射できるようになっているがこれはあきらかに罠だ(苦笑)。無駄な攻撃させるだけさせた方が難易度がさらに上がってしまう完全なまやかし。それと魔界村シリーズ特有なアーサーのモタモタした動きは本作でも嫌なぐらい踏襲されており、しゃがみ状態から左右へ移動しようとするとすぐに動けないのは仕様(しゃがみ歩きができないってこと)。一度立ってから左右へ動く癖をつけないと先には進めないからね。魔界ムラーは全員知っていることだがビギナーは絶対知っておいて損はないし、これも試験に出てもおかしくないアーサーの基本動作。あとはジャンプした瞬間に攻撃とジャンプ頂点から降下の瞬間に攻撃する基本動作を覚えておけば応用動作として重要になるところも出てくるはずだから覚えていて欲しい。あ、アーサーは魔法使えるんだけど、”伝説の騎士でやっていたので使えるまで成長させられなかったのであしからず。

 

 

●試しに2プレイヤー協力プレイモードをやってみたら思わぬ面白さを発見!

本作から2人同時プレイが可能になったのだが、アーサーが2人になるわけではなく、アーサーの守護神的なサンテンジーなるご先祖様を2プレイヤー側が操作し、各種魔法でアーサーをサポートして進める。試しにゲーマーの娘にサンテンジーを使わせて協力プレイしてみたが、補助魔法のおかげで”死にゲー”じゃなくなり、難易度に大きな変化が生じたのだ。3種類のご先祖様を入れ替えることが可能で、バリアを張ってあげたり、床を作ってあげたりなど様々な場所でそれぞれが得意の魔法に切り替えてアーサーを助けられるのは面白い。

特に”伝説の騎士”モードではCPUのアルゴリズムの裏をかかないと敵弾がジャンプした着地地点に画面外から飛んできたりと不条理な死に方が多かったものの、サンテンジーのおかげで全てが解消された。このサンテンジーは常に浮遊しているので操作もしやすく、お互い声を掛け合いながらプレイすると2人の呼吸次第になるが高い難易度の場所も進みやすくなるのは本当に有り難い。補助魔法以外にちゃんと攻撃もできるのでアーサーのオプションとしては最高のパートナーになる。
さらに嬉しいのがサンテンジー本体がダメージを受けると魂になってしまうが、しばらくすると復活が可能なのでアーサーが死ぬまでは常にサポート可能。ぶっちゃけ最初から2プレイヤーの協力状態でやっていれば5時間も詰むほど無駄にプレイを費やさなかっただろう。残念なのがこのモードはオフライン専用なんだよね。オンラインでできたらハードルが下がったのに(難易度下げさせたくないんだろうけど)ニンテンドースイッチのJoy-Conを2つにセパレートして遊べるのは楽しいので2人でのプレイを激しくお勧めしたい。

 

 

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