【抽選で3名様にオリジナル扇子を読者プレゼント!】ファーミングシミュレーターとアクションゲームの歯車をうまく噛み合わせた“糞”ゲー『天穂のサクナヒメ』インプレッションレポ

 

【文・畑史進 Twitter:https://twitter.com/cefca_vader?lang=ja】

 

11月12日、えーでるわいす開発、マーベラスより発売された『天穂のサクナヒメ』というゲームを遊んだら、「10年ぶりくらいに非常に強い衝撃を受けた作品」だったので、こちらを紹介していこう。

 

先にいうとこのゲーム、 PV を見た限りでは全然ピンとこなかった。(というか、PVで損してるよ・・・)

 

 

なんでかって、横スクロールの激しいアクションに稲作作業を加えたっていうことをすごく押していたPVなものだったから「まーた奇をてらったゲームが出てきたのか」っていう印象しか受けなかったわけ。

すっかりこのタイトルの存在を忘れていたある日、たまたま先行でプレイしているメディアさんの人と仕事することがあって、「どうよ?」って聞いてみた。そうしたら「すごく感触がいい、むしろアクションパートがいらないくらい」って、やたらべた褒めするのだから半信半疑で稲作パートを色々見させてもらった。ぶっちゃけた話見る前までは「なんちゃって農作業アクションに毛が生えたもんだろう」と思っていた。そうしたら、作業工程が多い上に、育成システムの細かさに感心してしまい、見ていく内に子供の頃に母方の婆さんや爺さんが畑仕事や、田んぼ仕事をやっている姿を思い出して、その時の記憶と実プレイを照らし合わせて次第にあれこれ口を出すようになってしまう。

 

そこで気がついたわけ。「これはすげーよく出来てるなぁ」と。

 

で、そこから色々と稲作とアクションパートがどういう風にリンクしているのか実プレイと合わせて話を聞いていくうちに、どんどん興味が高まっていって遂にプレイに至った。

 

■やればできる駄女神のアクションの作り込みに感心させられる

 

このゲームの初めは「サクナヒメ」と言う女の子の姿をした神様の主人公が、天界で粗相をしたバツとして地上に落とされて、勅命を果たすまで天界に戻れない。という、日本昔話でよく聞くような触りから始まる。昨今流行りの“駄女神”が好きな人には愛らしい展開かもしれない。

 

さっきも書いたように、このゲームには横スクロールのアクションと稲作、ファーミングシュミレーターの要素が掛け合わさっているわけなんだけれども、最初に横スクロールのアクションから手っ取り早く紹介しよう。

 

 

横スクロールのアクションパートは、『悪魔城ドラキュラ』のような探索を重きにおいた迷路のようなマップではなくて、RPG作品のダンジョンのような構造となっている。マップ上にはうさぎや雀、豚を模した獣が現れて、武器を持ってサクナヒメに襲い掛かる。この敵のデザインが鳥獣戯画のようなテイストになっていて、和風アクションRPGとして非常に親和性が高いものなっている。そのため見ているだけでも新鮮な気分を味わえる。

 

サクナヒメはこれらに対して鍬や鋤、鎌のような農具を使って戦う。まぁ、これらの農具を武器として使うなんて農家の人からすれば言語道断なわけだが、ファンタジーだからこそ許されるご愛嬌なので突っ込まない。

そんなサクナヒメのアクションは昨今の横スクロールアクションと同じように、スピーディーなモーションでテクニカルな技が用意されている。

□ボタンは片手武器の弱攻撃、△ボタンは両手武器の強攻撃を繰り出し、連続して押すことでコンボとなる。更にこれに方向キーを組み合わせると、特殊なモーションで攻撃を行う。◯ボタンは必殺技の武技を放ち、これも攻撃ボタンと同様に方向キーを組み合わせることで様々な技を打ち分けることができる。

 

 

このゲームの中で最も特殊なアクションがR1ボタンを押して発動する「羽衣アクション」。 羽衣は『スパイダーマンの』蜘蛛の糸のように伸びて、天井にひっつけるとその方向に向かってサクナヒメが移動する。R1ボタンを長く押し続けることで引っ付いた先にへばりつくこともできる。加えて羽衣を敵に伸ばした場合は敵の背後に回り込むことができるため、これを使いこなすと横スクロールのハクスラ系アクションとして一段と面白さと刺激が増す。

 

 

アクションパートで特に驚愕させられたのが、倒した後の敵に向けて消滅前に強攻撃をぶつけると、ギミック攻撃として発動できることだった。

どういうことかと言うと、このゲームの道中には大きな岩が転がっていて、これに対して方向キーの横と強攻撃を組み合わせると岩を大きく吹き飛ばすことができる。吹き飛ばした岩が敵にぶつかると多大なダメージを与えることができるため、攻撃力の低い序盤はこのアクションをかなり重宝する。これは絶命した敵の死体に対しても行うことができるため、敵が消滅するまでの刹那に強攻撃をぶつけることで「ギミック攻撃」に転用して更に効率よくアクションパートを攻略できる。海外のゲームとかではよくある要素だけど、日本のゲームでこうした要素があるのはなかなか面白いと思った。まあ死体蹴りに当たるので、もしかしたらバグなのかもしれないが、もしそうであったとしてもこの辺は修正しないでそのまま残して頂きたい所。

 

アクションパートでは、敵以外にも野草や倒した敵の肉、きのこ、根菜と言った食材から木材鉄石、粘土、獣の糞といった材料を回収して、サクナヒメの農具(武器、装備)の作成から日々の食事の調理、稲作パートで活用するアイテムの収集も兼ねている。こうした収集要素は他のゲームでも見られるためあまり珍しいものでもないけど、この稲作パートでの農作業のアクションからシステム周りの作り込みが凄いことから、回り回ってアクションパートでの収集要素がおざなりにできないことに繋がってきている。

 

■稲作とアクション、キャラの成長という絶対に折り合いがつかなさそうな要素を成立させた奇作

 

先にべた褒めすると、アクション主体のゲームではよほど細かいことを気にする性格でもない限り、無視しがちになってしまうアイテム収集要素はサブコンテンツとしてファーミングシミュレーターを用意しても“面倒くさい要素”に留まって最悪終盤は放置されることが多い。ましてや2本の柱としてメインに引き上げられたら疎まれることこの上ない。

しかしこのゲームではアクションとファーミングシュミレーターを2本同時に成立させるだけでなく、ファーミングシミュレーターのプレイと、アクションゲームにおける素材収集要素をうまく噛み合わせることに成功している。

 

このゲームは稲作を通じて良い米を生産することによって、サクナヒメのレベル(ゲームでは格という)が上がり、ステータスも大きく成長していく。つまり、高ステータスハイレベルのサクナヒメを見るためには相応に稲作パートを頑張ってプレイしていくしかない。

これを聞くだけだとかなり面倒くさいように思える。その上、この稲作パートは、横スクロールのアクションの遊びのみを追求する人にとって鬱陶しいくらいに細かい作業がある。田植えはもちろんのこと、稲の成長を阻害する雑草むしり、稲の状態観察、水位の管理、収穫の際の稲刈り、天日干し、千歯こき、脱穀、 種籾の選別とミニゲームレベルの操作を逐一やらされる。横スクロールアクションの爽快さのみを求める人だったらこうした細かいミニゲームは無視してしまって、適当に終わらせてさっさとゲームを進めたいものだが、肝心の操作キャラ、サクナヒメの成長が関わっているとなったら真剣に取り組まざるを得ない。

 

 

ましてや解放されていくアクションパートのステージには開放されるごとに強い敵が配置されるし、これらをストレスなく、効率よく倒してステージクリアして、サクサクとプレイしていくためにはサクナヒメの成長は再重要案件となる。となるとますます稲作パートは大変重要な要素となってくる。ゲームのサイクルとして非常に完成度の高い噛み合い方をしているシステムだと感じた。

 

さて、そんな稲作パートの流れだが、先も書いたようにこのゲームは本当に現実の稲作作業と同じような複数の作業工程を経て、一年かけて稲を成長させていく。成長した稲は刈り取り後、全てが食料になるわけではなく、来年の作業のために種を選別し、翌年の春になって再び稲を成長させていく。田起こしや田植えなんかのプレイヤーの細かな操作が入るところでは、妥協せず徹底して取り組むことで良い稲が育っていくことに繋がる。そうした細かな作業を徹底して行った先にサクナヒメのステータスが上がると、次も良い米を作ろうとやる気にさせられる。こうしてプレイヤーはどんどん稲作のドツボにハマっていくというわけだ。

 

 

そんな稲作パートで最も驚かされたのが「肥料の生成」。このゲームでは、拠点となるステージ内にボットン便所が用意されている。ここから糞尿を汲み取って、肥壺に入れて肥料を生成する。この肥料を生成する際、 アクションパートで収集した一部の収集アイテムを入れることで肥料をより良いものにすることができるのだけど、ここでよくよく肥料のパラメーターを確認すると、毎回パラメーターの値が微妙に違っていることに気づく。そこで自分のプレイ録画を振り返ってよくよく見てみると、 どうも直前に食べた食事に応じて肥料のパラメーターが変わっているようだ。言うまでもないがうんこのパラメーターが良ければ良いほど良い稲が育っていく。

 

 

なんてこった!31歳にもなってうんちの最良パラメーターをゲームの中で考えさせられるとは。良い稲を作るためには良い献立を組み上げ、良い献立を揃えるにはアクションパートで狩猟に行かなければいけない。いい献立から出てきた良いうんちは、翌年の良いお米に育っていく。当たり前な自然のサイクルではあるけれども、これを実際にゲームに落とし込もうなんてするクリエイターが出るとは思いもしなかった。

 

要はこのゲーム、”良いうんち”を作り出すためのゲームだ。

 

世界よこれが本当の糞ゲーだ。いやうんこゲーか、うんちゲーか。

 

というか、普通うんちを肥料にするんだったら『モンスターハンター』みたいにワンボタンで済ませれば良いものをワザワザ肥溜めに運ぶ作業(しかも美少女のより良いうんこを生成して、美少女に運ばせて良い作物を食わせるド変態ゲームだ!)を入れている時点で狂っている!

 

 

キャッチコピーの「米は力だ」は絶対に僕だったら採用しない。「糞は力だ」くらいが精神年齢小学生の僕にしっくり来る。あと、これはPV制作者に言いたいのだけれども、あの最初に出したトレーラーの構成は明らかに間違っている。稲作のシステム紹介と稲作を行ったことによるサクナヒメのレベルアップを映して、ボットン便所の汲み取りからの運搬シーンや 肥料のパラメーター部分をもっとピックアップするべきだった。勿体なさすぎる。

僕もあの時、他メディアでのサンプルプレイを見て、ボットン便所からの肥料作成の流れを観ていなかったら絶対に興味を持たなかった。もっとプレイにフィーチャーしたトレーラーを作った方がいい。

ここまでアクションRPGのゲームを遊んでいて新鮮な体験を覚えたのは本当に久しぶりだ。ここ最近いいゲームに巡り会えていないなという人はこのゲームをぜひ手にとってほしいと思う。そんなゲームでした。

 

 

というわけで今回こちらのインプレッションレポートを最後まで読んでいただきありがとうございます。

 

 

エンタジャムの読者に向けて『天穂のサクナヒメ』のオリジナル扇子を抽選で3名の方にプレゼントいたします。

応募方法はエンタジャムの公式ツイッターのフォローと下記のTweetをリツイートするだけ!

 

 


 

 

 

 

応募締め切りは12月6日(日)の23:59までとなります。

発表は発送をもってかえさせていただきます。

 

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