『テッド・バンディ』柳下毅一郎&田野辺尚人トークショー

【STORY】

1969年、ワシントン州シアトル。テッド・バンディ(ザック・エフロン)とシングルマザーのリズ(リリー・コリンズ)とは、あるバーで恋に落ちる。素晴らしい出逢いの一日から始まり、デッド、リズと彼女の幼い娘モリーの三人は、幸福を絵に描いたような家庭生活を築いていく。しかしその運命は一変。テッドが信号無視で警官に止められた際、車の後部座席に積んでいた道具袋を疑われて逮捕されてしまう。マレーで起きた誘拐未遂事件の容疑だった。またその前年にも女性の誘拐事件が起きており、キング郡警察の発表によると、目撃された犯人らしき男の車はテッドの愛車と同じフォルクスワーゲン。
新聞に公表された似顔絵は、テッドの顔によく似ていた。突然の事態に混乱するリズ。テッドはすべてまったくの誤解だと説明するが、次第に、いくつもの事件の真相が明らかになっていき・・・。

 

 

 

【以下プレスリリース文掲載】

この度、映画『テッド・バンディ』が12/20より劇場公開致します。本作は、日本以外はNetflixで配信となり、日本のみ劇場公開となるファン待望の注目作。

 

1970年代アメリカ、30人以上の女性を惨殺したとされるテッド・バンディ。IQ160の頭脳と美しい容姿で、司法・メディアを翻弄し、“シリアルキラー”の語源になった稀代の殺人鬼。女性からは恐怖の対象でしかないはずですが、刑務所には連日多くのファンレターが寄せられるなど、魅惑的なカリスマ性も持ち合わせていました。3度死刑判決を受けるものの、無罪を主張。法律を学んでいた彼は、ついには自らが弁護人となり法廷で徹底抗弁を繰り広げたのです。本作では、世界を震撼させた殺人犯の裏側へと迫ると共に、バンディの長年の恋人の視点を通して善人としての姿を描き、観客を予測不可能な迷宮に誘い込んでいきます。主演は、今までの“爽やかアイドル”系イメージを完全脱却し、演技派俳優としての評価を一気に高めているザック・エフロン。テッド・バンディを愛してしまったヒロインにリリー・コリンズ、判事役に名優ジョン・マルコヴィッチなど豪華キャストが充実の演技を見せます。監督はドキュメンタリーの分野で高い評価を受けるジョー・バリンジャー。記録映像やインタビューなどを通してバンディに迫ったNetflixオリジナル作品「殺人鬼との対談:テッド・バンディの場合」でも監督を務め、劇映画とドキュメンタリーシリーズ、両方のスタイルで“悪のカリスマ”とも評される人物を徹底的に掘り下げていく試みに成功しました。

 

この度、映画評論家・特殊翻訳家であり「シリアルキラー展」にも寄稿されている柳下毅一郎さんと、「別冊映画秘宝」編集長である田野辺尚人さんをゲストに迎えトークショーを行いました。

 

「マーダー・ウォッチャー」という殺人を研究する日本で初めてのシリーズを立ち上げたが、3号目で5、6か所から有害図書として摘発され、4号目が出せなくなったという過去を持つお2人。この雑誌が現存していたら真っ先にこの映画『テッド・バンディ』を特集するだろうと笑いながらトークショーがスタート。本作は、バンディの恋人の視点から物語が進むので、殺人現場の詳細は出てこない。このことに対して、「テッド・バンディは犯行が巧妙だったので、特にフロリダなど初期の現場では物証が何もない。見つかっていない死体がいくつもある」と柳下さんは話します。「映画を観ていると本当にバンディが犯人なのか分からなくなるけれど、当時はあやふやな目撃情報しか無かった。だからこそ真顔で「自分はやっていない」と言われると「あ、そうなのかな?」と思ってしまう。この映画も殺人現場を見せないという部分で、観客に彼は冤罪なのではないか?という印象を持たせるような作りにしている」と、映画で受けるバンディの印象と、当時世間が彼に抱いていた印象に共通する部分があると分析しました。続けて「バンディが何をしたかは本人に聞くしかない。目撃者は全員彼に殺されているわけですから。それでも本人は「自分はやっていない」と言うわけだから、こういうところがバンディの事件の面白いところだと思う」と柳下さんが話すと、田野辺さんは映画の原作に関して言及。「この映画の原作は、バンディの恋人だったエリザベス・クレプファーの自伝。恋人側から普段のバンディの姿を描いているのがすごく面白いところ」と本作の魅力について話しました。

 

更にテッド・バンディという人物に踏み込んだトーク展開に。柳下さんは「74年の犯行が最初の殺しだとされているけれど、それ以前にもやっていたという説もあるんですよね。具体的に証明されたことは無いですけど、一般論として殺人鬼は犯罪を重ねれば重ねていくほど手口が洗礼されていく。けれど、テッド・バンディは最初の事件からあまりにも手口が洗礼され過ぎていて、その前があるのでは無いかと憶測されている」と、未だ明かされることの無い疑惑について語り、そもそも何故頭脳派で容姿端麗なバンディが連続殺人に手を染めたのかも解説。「1973年の夏、バンディは数年前に自分のことを「成熟していない」という理由で振ったステファニーという女性と再会し、再び付き合うようになる。久々に再会したバンディが自信に満ち溢れている姿を見て、彼女は彼との婚約にまで至るけれど、突然バンディは彼女を振ってしまう」と柳下さんが話すと、すかさず田野辺さんの「掌返しですね」という合いの手が。「その後からバンディの殺人が始まる。彼の被害者は、みんなタイプが同じで、長い髪を真ん中で分けている、ステファニーとそっくりな女子ばかり。彼女を振った時と同じような感覚で、バンディは犠牲者を選んで殺し続けたと言われている。リリー・コリンズの演じたリズも同じタイプの見た目ですよね」と柳下さんが語り、「自分を幼児扱いして振った女が憎くて憎くて仕方がない。この憎悪があらゆる人に広がっていくというわけです」と田野辺さんが補足。

 

また、バンディの持っていた人としての魅力に関しては、「裁判官に判決を言い渡された後、裁判官に「身体に気を付けて」と言われるシーンが本編にもあるけれど、あれは本当にあった話。死刑判決を下した後でさえも、こんなセリフを人に言わせてしまう、謎の魅力があった」と柳下さんは語ります。

 

本作の監督、ジョー・バリンジャーについては、「映画秘宝」はかなり前から注目していたそう。「「パラダイス・ロスト」では状況証拠だけで犯人に仕立て上げられてしまった青年3人組が、死刑判決までいったところにバリンジャー監督は斬り込んでいった。この青年たちが冤罪では無いかと思う人が増えて、ピーター・ジャクソン監督なども参加した釈放運動が盛り上がったのはバリンジャー監督のおかげといっても良いですよね」とお2人ともその影響力の大きさを語りました。

 

最後に、テッド・バンディが何故こんなにも残虐な殺人鬼として有名になったのかという話になると、柳下さんは「この頃はまだFBIが連続殺人の捜査をあまりしていなかったので、州を跨いだ事件という共通のデータベースがなかった。連携が全くないままだったし、当然ながらDNA鑑定も存在しなかった。70年代という時期だからこそ、こういう犯人が生まれてしまったと言える」と、人生を狂い咲いた殺人鬼について語りました。

 

原作:エリザベス・クレプファー『The Phantom Prince: My Life With Ted Bundy』
脚本:マイケル・ワーウィー
監督 ジョー・バリンジャー
出演:ザック・エフロン リリー・コリンズ カヤ・スコデラーリオ ジェフリー・ドノヴァン アンジェラ・サラフィアン ディラン・ベイカー ブライアン・ジェラティ ジム・パーソンズ/ジョン・マルコヴィッチ
原題:Extremely Wicked, Shockingly Evil and Vile
提供:ファントム・フィルム ポニーキャニオン
配給:ファントム・フィルム R15+ ©2018 Wicked Nevada,LLC

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