いよいよ4月3日公開!『ソラニン』三木孝浩監督インタビュー

 いよいよ4月3日(土)より公開となる、感動の青春恋愛映画『ソラニン』。今回は監督の三木孝浩さんに撮影の裏話やこの映画に込めた想いなどをお聞きしてきました。


映画『ソラニン』予告篇


(編集部)4月3日公開の映画『ソラニン』について、いろいろと三木監督からお聞きしたいと思います。お時間をいただきましてありがとうございます。ではまず、映画の話が来る前に、原作はお読みになっていたんですか?
(三木監督)浅野(浅野いにお)さんの他の作品「素晴らしい世界」や「ひかりのまち」は持っていて、たまたま「ソラニン」だけ読んでいなかったんです。今回のお話しをいただいて、すぐ読んだら、ものすごく好きになってしまったので、是非という感じで映画の話を引き受けさせていただきました。
(編)浅野さんの作品の魅力ってなんでしょうか?
(三木監督)すごく画が緻密で計算されているというか、僕が特に好きなのは風景の描写ですね。そこに凄く気持が乗っていて、ただの風景カットではない感じがすごく映画的で、映像化したらどうなるんだろうと、ディレクターとしては想像力をかきたてられるところですね。原作者の浅野さんとお会いした時に、ロケハンを丁寧にされているという話を聞いて、やっぱり、そこで起こる物語というのを大事にしていて、ただの場所ではなく、”物語として意味がある場所”という考えかたで描かれているというのが印象に残っています。特に「ひかりのまち」でも、新興住宅地の団地の話なんですけど、そこで起こる物語というものをすごく丁寧に描かれているなと思っていて、映画的だなという感じがしましたね。
(編)原作と映画で撮影した場所って同じだったりするんですか?
(三木監督)そうですね。元々「ソラニン」が和泉多摩川という小田急線の沿線という設定なんですけど、他のロケ場所も探してみたんです よ。でも、和泉多摩川に来ると、やっぱりここで起こる物語なんだなというのが、すごくしっくりきて。そこ意外の場所は考えづらかったですね。
(編)映画版は原作をすごくリスペクトして作っていらっしゃいますが、もっと違った方向のものにしようという考えはなかったんでしょうか?
(三木監督)僕自身が浅野さんのファンでもありますし、原作の世界観は壊さないようにしようと思ったんです。その中でいかに映像化できるか、というのが最初の課題としてあって。ただ、映画化する以上漫画ではできないことをやらないと映画にする意味がないと思っていましたし、どれだけ漫画の世界観を活かしつつ、さらに、どれだけ映画的なものを盛り込めるかということを意識していましたね。
(編)映画化するにあたって一番苦労した点はどこですか?
(三木監督)最初の段階から一番時間をかけて作業したのは音楽の部分ですね。当然、漫画の中では音は出ていないので。それと、クライマックスのライブシーンで一体どんな音楽が流れているのかというのは、原作のファンの方も一番気になる部分でしょうし、想像を膨らませると思うんです。その期待感を裏切らないようにしたいな、というのがありましたね。とにかく、音楽に関してはすごく丁寧にやりました。「ソラニン」という曲が陰の主役みたいなものなので、今回の映画の話をいただいた時点から、誰に唄ってもらうか、誰に作曲してもらうかについては、プロデューサーとすごく話しあいましたね。いろんなバンドの曲を聞いたりして考えました。でも、最終的には、やっぱりアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)が一番ぴったりくるなということでオファーしました。
(編)キャスティングで、一番難しかったキャラクターは誰ですか?
(三木監督)ベースとドラム、つまり加藤とビリーですね。僕は今までPVや音楽の映像を主にやってきたので、バンドのリアリティーには”こだわり”がありまして。ベースとドラムは特に重要なんですよね。そこの演奏に嘘はつきたくないというのがあって。同時に、勿論お芝居も上手じゃないといけないので、そこが両方備わっている人を探すのにかなり悩みましたね。
(編)サンボマスターの近藤さんをキャスティングしたのは監督のアイディアですか?
(三木監督)最初に「ソラニン」を読んだ時から、近藤さんしか考えられなかったですね。「この役、近藤くんじゃん」って思ったんですけど(笑) バンドの活動が忙しいから難しいかなとは思っていたんです。でも先程言ったように、ベースというのは重要だったんで、駄目もとでお願いしたら快く引き受けていただけました。
(編)近藤さんと俳優として一緒にお仕事をされていかがでしたか?
(三木監督)近藤さんは、劇中のキャラクターの加藤とすごくシンクロする部分があって、大学を6年間行っていたりとか。
(編)そうなんですか(笑)
(三木監督)この映画の中で交わされるバンド感やメンバー間での会話、そこでの迷いだったり、喜び、それを実際にバンドで感じている人じゃないと嘘になるなと思って。近藤さんは、もちろん芝居の経験はないですけど、そのセリフに嘘はないんですよね。そこは、すごく助けられた部分でもありますし、やっぱ近藤くんにしてよかったなと思います。
(編)宮﨑あおいさんは自分で唄ったり演奏したり大変だったと思いますが、いかがでしたか?
(三木監督)ギターの練習を始めたのは撮影の2カ月前くらいで、ボイストレーニングなど本格的な練習を始めたのは、一か月前くらいからですね。普通に考えたらギターを弾くだけでも相当難しいのに、それを弾きながら唄いながら感情表現するって、いや、ほんとうにすごいなって思いましたね。
(編)キャストが全員揃った時はいかがでしたか?
(三木監督)グっときましたね。でも、撮影前に一度、”顔合わせ”というのがあって。それを脚本読みではなく、バンドのリハーサルにしたんですよ。それまではソロで練習をしてもらっていたんですけど、「皆さんはじめまして」という状態で、いきなり音合わせしてもらったんです。もちろん拙いながらも、せーので音を出してもらった時の感じが、ものすごくバンドの”リアリティー”があったんですよ。いきなり音合わせしてグルーヴ感がでるというのは本当に”ミラクル”に近いですね。宮﨑さんも、きっとその時「あっ、バンドってこういうものなんだ」「これがこの物語のメンバーなんだ」というのを感じもらえたと思うので、そのクランクイン前のリハーサルが、撮影後のお互いのキャラクターの関係作りに役立ったなと思いますね。
(編)監督が原作の中で描かれている年代だった時は、どんなことを考えていましたか?
(三木監督)多分、僕はラッキーなことに、その頃、そこまで”迷い”がなくて、何をやりたいのか分からないという状況は無かったんです。でも分岐点って多分誰しもあって、自分がこう、このまま進んでいくべきか、もうちょっと違う道を進むべきかって思う時期って誰にもありますよね。自分も前の会社を辞める時はすごく悩みましたし、そういう自分の経験を照らし合わせてこの映画に想いをこめたというのはありますね。
(編)今回が長編の劇場映画は初めてということですが、次の劇場映画のお話はありますか?
(三木監督)この『ソラニン』がヒットして、お話しがあれば是非!という感じですね(笑)映画は元々、小さいころから観ていて、映画監督になりたいとずっと思っていたので。まず第一作が撮れて嬉しい半面、ずっと撮り続けていきたいという思いもあるので、この先も映画の仕事を続けていきたいなと思っています。
(編)初めての映画の現場はいかがでしたか?
(三木監督)この映画の現場で思ったのは、皆がひとつの方向に向いていて、この映画を良くするためにどうするかを、それぞれがアイディアを出し合って進めていく現場だったので、その”情熱”が特に素晴らしいなと思いましたね。本当に皆映画好きなんだなというのが伝わってきました。
(編)好きな映画、影響を受けた映画はなんですか?
(三木監督)好きな映画は『ギルバート・グレイプ』ですね。影響を受けた作品は、大林宣彦監督の『時をかける少女』です。
(編)『時をかける少女』のどのへんに影響を受けたんですか?
(三木監督)小さな頃だったので、どこの何に影響を受けたかよく覚えてないんですけど、とにかく、「凄い!」というか、独特の映像表現を(大林監督は)されますよね。タイムスリップの時に、柱時計がコマ撮りでカタカタ動くところは「なんだこれは!?」と、小学校の時に、強烈なビジュアルイメージ、インパクトを受けて、この世界は何なんだ!?と思いましたね。
(編)では最後に、この『ソラニン』で一番見て欲しいところを。
(三木監督)クライマックスのライヴシーンですね。僕はいろんなバンドのライヴを見てきましたが、その場にいて感じる”ミラクル”というのがあるんですよ。何気なくフラっと入ったライヴハウスで奇跡的な体験をするというのは、実際にパフォーマンスをする人がいて、聴く人がいて、音が鳴っていて、そういう状況ではじめて感じるものだと思うんです。もちろんコミックでも想像上で、その”音”が鳴っていると思うんですけど、そこをリアルに感動体験を映画の中で表現できればと思って作ったので、是非そのライヴシーンを見てほしいですね。
『ソラニン』ストーリー
OL2年目で仕事に嫌気がさし、自由を求めて会社を辞めた芽衣子。音楽の夢をあきらめきれず、フリーターをしながらバンド活動を続ける種田。不透明な未来に確信が持てず、お互い寄り添いながら、東京の片隅で暮らすふたり。だが、芽衣子の一言で、種田はあきらめかけた想いを繋ぐ。夢を追いかけ、ある思いを込めて、仲間たちと「ソラニン」という曲を書き上げる種田。二人はその曲をレコード会社に持ち込むが、反応のないまま日々は過ぎていく。
そんなある日、種田がバイクで事故にあってしまう。遺された芽衣子は……。
※”ソラニン”とは?:ジャガイモの芽などに含まれる「毒」の一種。
『ソラニン』
4月3日(土)新宿ピカデリー、渋谷シネクイント他全国ロードショー!
原作:浅野いにお「ソラニン」(小学館ヤングサンデーコミックス刊)
監督:三木孝浩
脚本:高橋泉「ある朝スウプは」
音楽:ent
出演:宮崎あおい 高良健吾 桐谷健太 近藤洋一(サンボマスター) 伊藤歩
ARATA 永山絢斗 岩田さゆり 美保 純 / 財津和夫
製作:「ソラニン」製作委員会
企画:アスミック・エース エンタテインメント、IMJエンタテインメント
制作:IMJエンタテインメント
配給:アスミック・エース
2010年日本/カラー/2時間6分/ヴィスタサイズ/ドルビーデジタル
[公式サイト]
(C)2010 浅野いにお・小学館/「ソラニン」製作委員会  写真:太田好治

コメント

タイトルとURLをコピーしました