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映画レビュー 99.9%の絶望 0.01%の希望 世界終末映画『ザ・ロード』

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「ノストラダムスの大予言」と映画『マッドマックス』で多感な青春を過ごし、Y2Kが!グランドクロスが!ポールシフトが!と1997年~2000年までに世界は滅ぶ思想を髄液まで沁みこませてしまった世紀末待望世代の私にとって、鬱気味の曇天の下、男とその息子(らしき子供)が一緒にショッピングカートをゴロゴロ押しているカットを見た瞬間、あぁ世界終末最高!という気分になれる、お手軽世界終末ロードムービー『ザ・ロード』!!と勝手に思いこんだ私が愚かだった。。。。。



とにかく全体の雰囲気が重く気分も滅入る、でも画面から目が離せない。観ることを止めたいという気持ちと興味がまぜこぜになり、グイグイと作品に引き込まれるという近年でも上位にランクインする大収穫映画。作品に対しての好みはともかく、映画=エンタテイメントという言葉が哀しいくらいに定着してしまった今の日本で、この手の映画が公開されるということ自体が称賛に値する。



とにかくこの映画、崩壊した世界を父と子が人間としての尊厳=愛情を守りながら、安全な地を求め”前へ”歩み続ける姿を感動的に描いたサバイバル映画・・・・といった感情を”直接揺さぶる”ような過剰な演出は潔いほどない。
映画全体を覆う99.9%の絶望と疲労。そして、それらの負の感情の積み重ねによる無感情。人が人を食用として狩り、人と人との関係を築くということが”異常”なことになってしまった世界で、ひたすら南へ向かう父と息子の姿が淡々と映し出され、色のついた世界は父親の頭の中でフラッシュバックする回想シーン(しかも妻子持ちの男性であればトラウマもののツライ思い出)のみという、演技・演出・編集・画面のトーン・美術などなど、映画の誕生以来、映画の先人たちが築いてきた数々の技法を駆使し、観客をジリジリと絶望の断崖に追い込む。さらに加えて、劇中に登場する”食人をする人々”でさえ、人を食べた後、暖炉やたき火の前で仲間達とつかの間、人間らしい表情を見せるのではないかと思え、また、彼らの食人行為が生き残るための選択の”ひとつ”として”理解”できるよう演出され、観客は彼らを単純に悪として憎むことも許されない。



瞬間的な死ではなく、終わりが見えないことへの恐怖。真黒ではなく灰色をした閉塞感。それでいて、目を離すことができないくらい美しく、冷たい灰色で統一された絵画のような世界。
終末に向かうこの世界の存在感が強くなればなるほど、ヴィゴ・モーテンセン演じる父親の息子の存在(=生きること)の重要性が増し、観客たちはこの二人がどうなるのかを否応なしに見守らざるを得なくなる。映画の最初からラストまで緊張感を保ち続けるクオリティーは素直に凄いと思う。また、監督やスタッフ、そして人間の極限状態を肉体全てを使って表現したヴィゴ・モーテンセンに、一人の人間として拍手を贈りたい。
                                
                                                                                             レビュアー:パッキー小林


『ザ・ロード』
6月26日(土)より、TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー!!
監督:ジョン・ヒルコート
出演:ヴィゴ・モーテンセン/コディ・スミット=マクフィー
        ロバート・デュヴァル/ガイ・ピアース
        シャーリーズ・セロン 
2009年/アメリカ映画/原題:The Road/ カラー/112分
シネマスコープSDDS/DTS/ドルビーデジタル
配給:ブロードメディア・スタジオ
[公式サイト] 

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