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映画レビュー 今年上半期ベストワン!『SRサイタマノラッパー2』

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入江悠監督の最新作は「SRサイタマノラッパー」の続編であるものの前作を超えられてはいない。……こう書くとネガティブなレビューかもしれないがそれは決して違う。全てのシリーズ作品において初代作はその後に生まれる続編がいくら評価されたとしても続編が生まれた切っ掛けが初代作であることからどんなに傑作であろうとも超えられないという意味なのだ。これは筆者が映画を品評する上での持論である。



その初代作は筆者が今まで観て来た邦画の中でオールタイムベストテンに入るほど心を打たれた作品であり、映画的文法を壊した撮影技法など新たなる才能の映画監督が現れたと衝撃を通り越したほど手放しで大絶賛させて頂いた。
今回紹介する続編の2は、1にあった画面全体からほとばしる殺気めいた演出臭が感じられぬも、女子ラッパー役の女優たちが醸し出すアップダウンな気持ちの波を作り出すダウナー気分の演技が冴え渡る秀作。入江監督より「東映とかが一時代を築いたプログラムピクチャーが好きなので全都道府県をサイタマノラッパーを素材にして制覇するまで続編を撮り続けて行きたい」と伺っていたことからストーリーテリングに納得。1を観ていれば2でも”入江フォーマット”な巧みな演出と撮影手法を感じられるはず。



ロングショットを効果的に用い、少ないパンニングを駆使したFIX寄りの絵作りで対象人物を妙技なまでに捉えたり、カメラの画角に入っている役者たち誰もがミスできない緊張感を生み出す長回しの演出やらラップシーンやらも健在。実は入江監督が築き上げた技法は昔の日本映画で見られていたのだが、今では激しいカメラワークを使ってカット割りも増やし、少しでも役者のNG負担を減らすようにしている”



ゆとり撮影”が殆ど。本作2では130強しかないカット割り(前作と比べてカット割りがかなり増えたのはフラッシュバックシーンが随所に入るため)を察しても妥協のない演出が伝わってくる。
そんな最中、時代と逆行するべく入江監督は出演する役者陣の演技を舞台俳優的演出技法で行なっているとしか思えないシーンが2でも多々見られた(一度、入江組の撮影現場を実際の目で見学してみたい!)。その証拠は1と2で共通した部分であるのだが絶対に人物のカットバック描写を入れてないこと。これにより役者自身もヘマは出来ないだろうし、舞台における演技同様キャメラ=観客の目を通したライブ感と没入感を与えてくれる。その分、役者にはプレッシャーという負担を背負わされることから必至な表現が必然的に発生して観る者を”サイタマノラッパー”な世界観へ誘ってくれる。




ラスト10分のワンカットでの長回しショットは、夢追い人であるならば全員が涙惹かれるであろうリリックをラップで歌い上げるラッパー軍団たちの見事なハーモニーは必見。これがハリウッド映画、もしくは日本のテレビ局主導のブロックバスター映画であれば女子ラッパー軍団たちが全員勢揃いしてのハッピーエンドとなるだろうが、パンクなハートも持ち合わせている入江監督独自の美学から相変わらずのアンハッピーエンドへ。しかし今回は少々明るい未来を感じさせる終わり方でもあるので次回作の栃木(実は劇中でIKKUが栃木とキーワードを発している)編にも期待が高まる。が、恐らく1と2同じく物語のテンポと展開はプログラムピクチャーならではな演出だと推測できるのでヘタに広げ過ぎないようミニマムでマクロな冒険話をキープし続けてもらいたい。



1と同様に2でも狙い済ました驚きの少ない地味な展開をコミカルな演出でカバーし、さらに誰しもが夢を追い求めた(続けた)経験や体験を観る者へオーバーラップさせ、必ず壁にぶち当たる等身大像を素のまま(時折オーバー過剰な演技もあるが)に表現している手法こそ”入江フォーマット”ではなかろうか。そういえば……劇中でTOMが着ていたアメリカ産のゲーム「GTAⅣ」のニコがデコレーションされたTシャツが気になった。「the american dream」と書かれていたのは何か狙いあっての自己表現だったのかなと勝手に勘ぐってしまう。それほどまでに”サイタマノラッパー”が好き過ぎて毎年恒例行事として劇場公開を望んでしまうのだった。
レビュアー:ジャンクハンター吉田


SRサイタマノラッパー2~女子ラッパー☆傷だらけのライム~
6月26日(土)、新宿バルト9ほか全国順次ロードショー
<ストーリー> 
かつて群馬の山奥で、ヒップホップ音楽に憧れた女子だけのラップチームが結成された。しかし当時、女子だけのラップチームはあまりに早すぎたし、たいして人気になることもなく、彼女たちはいつのまにかバラバラになった。やがてヒップホップ自体のブームも過ぎ去り、若かった彼女たちも今はそれぞれ地味な日常を送っている。ところが彼女たちはあることをきっかけに再びラップの楽しさを思い出す。目標はただ一つ。自分たちがかつて見た夢のために、一晩限りのライブをすること。果たして、彼女たちはいくつもの壁を乗り越えて歌うことができるのか?
監督・脚本:入江悠
『SRサイタマノラッパー』
(ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2009グランプリ受賞、韓国・第13回プチョン国際ファンタスティック映画祭NETPAC賞受賞、池袋シネマ・ロサ(東京)と苫小牧シネマトーラス(北海道)にて初日動員歴代1位の記録更新)
出演
山田真歩
安藤サクラ
桜井ふみ
増田久美子
加藤真弓
駒木根隆介
水澤紳吾
岩松了
2010年/HD/ステレオ/95分   
配給:ティ・ジョイ    
[公式サイト]

(C)2010「SR2」CREW

    

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