第22回 『WHO KILLED NANCY』

小宮山雄飛の東京DVDライフ 第22回 『WHO KILLED NANCY』



文章/小宮山雄飛
画/黒木裕貴
シド&ナンシー


パンクロックに詳しくない人でもこの名前は知ってるかもしれません。


伝説のパンクバンド、セックスピストルズのベース、シド・ビシャスとその恋人ナンシー・スパンゲンのことです。



1978年、ナンシーはチェルシーホテルのバスルームで刺殺される。同じ部屋にいたシドは容疑者になったが保釈され、その数ヶ月後に今度は自分自身が麻薬の過剰摂取で死んでしまう。とにかくロック史上最も過激なカップルです。



真相は定かではないけど、通説としてはドラッグで朦朧としていたシドが恋人ナンシーを殺したということになっている訳ですが


 「その事実はおかしい!」


というのを究明してるのが、今回の映画



WHO KILLED NANCY


です。



 
芸能人関連の麻薬・死亡事件といえば、当然押尾学が記憶に新しいですが、この事件はもうその規模が良くも悪くも(というか悪いんですが・・)全く違います!



とにかくシドもナンシーも毎日毎日ドラッグをやってる。たまたまその日強い薬をやっちゃったとか、そういうレベルじゃない。


毎日ベッドの上で下着のままドラッグ漬け(洋服すら着ない)、たまに食料を買いに行って、帰って来るとまたベッドの上でずっとドラッグ。


そういうトんでもない(いや、常にトんでる・・・)状態だった訳です。



酒井法子がサイバーのりPと呼ばれたり、TVインタビューで「ポ~ニョポニョ~~!」なんてハイになってる姿を見て、すっかりジャンキー呼ばわりされていましたが、この映画を見ると、本当のジャンキーとはどういう状況なのか分かります。


とても人前で「ポニョ~~!」なんて明るく言ってられないですよ。


可能な限りベッドやソファーから動かない。あるいはクラブや人前に行っても常に喧嘩や大暴れ。


もう完璧にイっちゃってます。



この映画では、結果的に言うとシド・ビシャスはナンシーを殺してない、という結論になってますが、その理由がまたすごい!



警察は、シドがドラッグでぶっ飛んでナンシーを殺した、と考えていますが、その場にいた関係者は全員


「シドは完璧にぶっ飛んでたから、人を殺すなんて無理だった・・・」って(笑)


そういうこと!?



薬をやって判断能力を失ってたのではなく、薬のやり過ぎで判断能力どころか凶器のナイフ自体持てなかった・・・というからすごい。


何がいんだか悪いんだか分からない。そんなになるまで薬物使って捕まってなかったことの方が、よっぽどおかしい。



事件の日、シドはツイナールという錠剤を30個も飲んでいて、全く動けない状態だったという。


ほとんどの関係者が、その日部屋でシドを見て「ほとんど動いてなかった・・・」と言ってる、ってその時点で通報しろよ!って感じですよね。


人を殺すどころか、自分が全く動いてない訳ですから、自分のほうがよく死ななかったな・・・という。



まあ、結果的にシド自身がその数ヶ月後に死んでしまう訳で、遅かれ早かれこの破壊的なカップルには死が待っていたんでしょうね。



映画の内容はそんな感じなのですが、感心するのは海外のドキュメンタリーってすごくうまく出来てるな、という点。



日本でドキュメンタリーというと、落ち着いた声のナレーションで、なんというか陰気なものが多いでしょ?


しかしアメリカでは、マイケル・ムーアに代表されるように、かなり重いテーマのドキュメンタリーでも極めてPOPに編集されてる。



この作品だって、冷静に考えてみれば薬物中毒と殺人という極めて重い内容の映画のはずなのに、映像がすごくスタイリッシュなんですよ。



こういうPOPなドキュメンタリーというジャンルが、日本でも出来たら面白いと思うんだけどなあ。


のりぴー事件とかも、この手法でぜひとも空白の5日間を映画化して欲しいものです。




小宮山雄飛(ホフディラン)

ミュージシャン
1973年8月14日生まれ
1996 年「スマイル」でホフディランのVo&Keyとしてデビュー。「遠距離恋愛は続く」「恋はいつも幻のように」「欲望」「極楽はどこだ」など、ヒッ ト曲を多発し、FUJI ROCK FESTIVALへの参加、日本武道館でのワンマンライブを成功させるなど、ライブでも活躍。日本のポップシーンにおいて根強い人気を誇る。デビュー以 来、シングル19枚、アルバム9枚(ベスト盤含む)をリリースしている。
絶賛発売中のニューアルバム『ブランニューピース』(DVD付き初回限定盤)に収録されている『恋人たち』『ニューピース』のPVでは、自ら監督を 務めるなど、多才な一面を持つ。2009年7月3日には、渋谷C.C.Lemonホールにて、デビュー13周年記念ライブを行い大成功!その模様を収録し たライブDVD『13年の金曜日』においても監督を務め、11月4日にライブCDとともに同時リリース、絶賛発売中! 
RISING SUN ROCK FESTIVAL 2010 in EZOへの出演も決定!
2010年7月3日(土)
ホフディラン ワンマンライブ
『14年の土曜日』
会場:SHIBUYA-AX
open 18:00 / start 19:00
チケット料金:3980円(ドリンク無し!)
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問い合わせ:HOT STUFF 03-5720-9999
5/9からの一般発売に先駆けて、HP先行予約を受け付けます!
受付期間   4月19日(月) 12:00 ~ 5月5日(水) 18:00      
  ※専用URL http://eplus.jp/hoff-hp2/   
・ホフディラン HP http://hoff.jp/
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・SHOOT UP http://www.shootup.net/

黒木裕貴(クロキユタカ)
東京生まれのイラストレーター。
CDジャケットや書籍・雑誌、アパレル等で幅広く活躍中。
また、影絵やコマ撮り作品をつくる映像作家としての顔も持つ。
official website http://www.kurokiyutaka.com/
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