第21回 『新日本事件簿 第3章』

小宮山雄飛の東京DVDライフ 第21回 『新日本事件簿 第3章』



文章/小宮山雄飛
画/黒木裕貴
プロレスとはなにか?


これはとても一言で言えるものじゃないし、そもそも僕はそんなことを語れるほどプロレスを見てないんですね。


なので偉そうには言えませんが、すでに知られている事実として言いますと、プロレスとは勝敗が先に決まっている格闘ショーであることは事実なんですよね。そこが、例えば相撲とか柔道とかとは根本的に違うところです。


(もちろん相撲た柔道にも八百長みたいなことはあるんだろうけどね・・)



しかし、そんな勝敗があらかじめ決められた世界でも、裸の男達が本気でぶつかり合う訳ですから、時として熱くなり過ぎて予定外の暴走をしてしまったり、間違って本気で相手を怪我させてしまったり、逆にショー的な要素が強くなり過ぎて、明らかに嘘っぽくなったり、と色々起こる訳です。


 そういうのを『事件簿』という形でまとめたのが今回のDVD



『新日本事件簿 第3章』



です。



つまりね、楽しみ方はさっき僕が言った通りなのです。


決められてるはずの進行から外れてしまった時のドキドキ感、それに尽きます。言ってみればドラマのNG集を見てるような感じですよね。


でも、これが単なるドラマだったら



監督「はい、カット!」


役者「すいませ~~ん(笑)もうやだー、また間違えちゃった~~~!ウキャキャ(笑)」


監督「はいじゃあ、もう1回行こう!」



なんて感じでもう一回撮り直せば良い訳ですが、プロレスは四方八方から生でお客さんに見られてる訳です、「今のシーンもう1回お願いします」という風にはいかない。しかも基本的には「筋書きが無い戦い」という建前がある以上、そもそも「今間違えちゃいました~!」とは口が裂けても言えない訳です。敵・見方・レフリー・関係者が一丸となって、なんとかその間違いを成立させるように持ってく訳です。


そこが面白い!



そもそもが「事件簿」というのもおかしな話なんですよね。筋書きが無い戦いだったら、毎日が事件であって、何かが特別に事件とかってことじゃないでしょ。事件簿と呼んでる時点で、いつものは通常通りのストーリーで、これはちょっと間違っちゃったパターンを集めました、と自分で言ってるようなものです。



例えば前田日明が長州力の顔面を後ろから蹴って、長州力が眼下底骨折になってしまう。前田はこの事件で「プロレス道に反する」と新日本を解雇されてしまいます。だけど、後ろから蹴るなんていくらでもある行為だし、そもそもプロレスってそういうことでしょ? 相手が骨折しようが怪我しようが勝つために戦うのが本来のプロレスのはずで、中には凶器まで使って相手を攻めるレスラーもいるわけですから、変なとこ蹴っちゃったから失格ってのもおかしな話なんですよね。


そういう変な部分に、みんなで色々なストーリーを肉付けしてくわけです。あの時の前田はこうだったとか、その前にこんな確執があり・・・とかね。そういう、言ってしまえば証拠隠滅的なことを大の大人がみんなで一生懸命やってるのが面白い。



このDVDでは当時の関係者や雑誌記者など色々な人がインタビューで出て来るのですが、その全員が「本当のこと」を知ってるのに、それを隠して語ってる訳ですよ、そこが見てて面白いんですよね。



小川対橋本の一戦も同じで、小川が猪木にけしかけられていきなりガチの勝負をしかけて橋本をボコボコにしちゃうんですが、これもあまり正確に語っちゃうと逆に「じゃあいつものプロレスはガチじゃないんですか?やっぱりストーリーが決まってるんですか?」ということになっちゃうから、事件簿といって取り上げていながら、あんまりつっこんで喋っちゃいけない、という微妙なバランスで皆さんが語ってる。



なんかそこら辺にプロレスのワビサビみたいなものを感じるんですね。「いやいや、色々あるじゃない・・・分かるでしょ?最後まで言わせないでよ!」みたいな大人のグレーな世界。



こういう見方でプロレスを楽しんでる人がどれだけいるか分かりませんが、僕はプロレスの裏話的な本やDVDはそういう見方でいつも楽しんでおります。



意外とそういう見方をすると、プロレスってエンターテイメントの基本中の基本って感じがして、音楽でも芸能でもものすごくお手本になるのです。なのでエンターテイメントの仕事に携わってる人には、必見のDVDです!




小宮山雄飛(ホフディラン)

ミュージシャン
1973年8月14日生まれ
1996 年「スマイル」でホフディランのVo&Keyとしてデビュー。「遠距離恋愛は続く」「恋はいつも幻のように」「欲望」「極楽はどこだ」など、ヒッ ト曲を多発し、FUJI ROCK FESTIVALへの参加、日本武道館でのワンマンライブを成功させるなど、ライブでも活躍。日本のポップシーンにおいて根強い人気を誇る。デビュー以 来、シングル19枚、アルバム9枚(ベスト盤含む)をリリースしている。
絶賛発売中のニューアルバム『ブランニューピース』(DVD付き初回限定盤)に収録されている『恋人たち』『ニューピース』のPVでは、自ら監督を 務めるなど、多才な一面を持つ。2009年7月3日には、渋谷C.C.Lemonホールにて、デビュー13周年記念ライブを行い大成功!その模様を収録し たライブDVD『13年の金曜日』においても監督を務め、11月4日にライブCDとともに同時リリース、絶賛発売中! 
RISING SUN ROCK FESTIVAL 2010 in EZOへの出演も決定!
2010年7月3日(土)
ホフディラン ワンマンライブ
『14年の土曜日』
会場:SHIBUYA-AX
open 18:00 / start 19:00
チケット料金:3980円(ドリンク無し!)
ワタナベイビープロデュースDVD第3弾発売&自ら手売り
ゲスト:ゆってぃ / and more…
問い合わせ:HOT STUFF 03-5720-9999
5/9からの一般発売に先駆けて、HP先行予約を受け付けます!
受付期間   4月19日(月) 12:00 ~ 5月5日(水) 18:00      
  ※専用URL http://eplus.jp/hoff-hp2/   
・ホフディラン HP http://hoff.jp/
・軟式ブログ http://blog.excite.co.jp/yuhi-blog/
・こむぞう http://comzo.cocolog-nifty.com/
・シコウヒンTV http://www.andsmile.tv/
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黒木裕貴(クロキユタカ)
東京生まれのイラストレーター。
CDジャケットや書籍・雑誌、アパレル等で幅広く活躍中。
また、影絵やコマ撮り作品をつくる映像作家としての顔も持つ。
official website http://www.kurokiyutaka.com/
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