“祝! 50周年 寅さんファン感謝祭”開催 山田洋次監督 「渥美清は誰も持っていない魅力を持っている俳優」

【取材・文・畑史進】

2019年12月27日に『男はつらいよ』シリーズ第50作『男はつらいよ おかえり寅さん』の公開が予定されている。
8月27日は第1作目が初公開された「寅さんの日」で、これにちなんで昨日は第1作目の上映会が行われ、上映後に山田洋次監督、寅次郎の妹、さくら役の倍賞千恵子、寺男源ちゃん役の佐藤蛾次郎が登壇しトークショーが行われた。

最初は第1作目に関する質疑応答が行われ、その後は50作に関するクロストークが行われ、会場はくるまやでの団らんシーンのような雰囲気で話す3人の会話に聞き入っていた。

山田監督は50年前の今日について聞かれると「当時の試写では誰も笑わなかったのでね、寅次郎はたしかに滑稽で面白いやつで出来の悪い弟なんじゃないかと思っていたからとんでもなく真面目な映画を作ってしまったという思いだった。ところが公開されると新宿松竹では盛り上がっているという話を聞いて信じられない気持ちだった。日本人全体が元気で活気にあふれていたと思いますし、段々活気がなくなっていっているように思います」と公開当時振り返った。

倍賞は「何歳だったか忘れたんですが、当時台本を頂いた時に『私の実家の近所にいたような人たちのうちの一人』を演じることに懐かしい思いをして、早くおいちゃん、おばちゃん、渥美さんと仕事をしたいと思いました」と話し、続けて佐藤は「ひと目で馬鹿だと思う役というのは結構難しくて」と源ちゃんの役柄の難しさを話しつつ、当時オーディションに1時間半遅れて臨んだことを明かして、山田監督にその事をいじられ、会場は笑いに包まれた。

50作目の話になると、山田監督は「思春期の頃の両親の存在というのは凄く疎ましい存在で、寅のような理解のある大人は必要な存在です。満男と泉はそうした時期に共に寅次郎から様々なアドバイスを受けていたわけです。この映画は今の柴又を舞台に昔の映画をつないでいくと、満男もさくらも博も年をとって姿が変わっているんですが、渥美さんは何も変わっていないから凄く幻想的な映画になったと思います。」
これに対し倍賞も「まるで50年かけて長い一本の映画を撮ったような感覚でしたね」と話し、山田監督も「こんな映画は二度と出てこないと思います」と同意した。

渥美清のエピソードを聞かれると佐藤は「大船撮影所の近くの中華そばがうまかった」と休憩の合間に食べた食事のエピソードから話し、これにつられて倍賞も「兄弟を長年やって、まるで2つ家族が有るような感覚でした。渥美さんからは役者として何かを言われることは無かったんですが、相手の立場に立って話すことを色々教えられました。渥美さんは心が病んでいる時に私や蛾次郎さんをよく食事に誘って、欲しいものはないかと聞いてくれて、色々元気をもらいました」と、渥美清、そして田所康夫の豊かな人柄のエピソードを明かした。

あまり渥美からねぎらいのプレゼントが無いと思われていた山田監督からは「脚本を書いている時に渥美さんは陣中見舞いにきてくれて、食事に誘ってくれたんです。銀座でご飯を食べてから旅館に帰ると憂鬱になるんだけど、そこで熱海に行って温泉に入りたいねって行ったら、渥美さんがタクシーの運ちゃんに熱海までって行って僕を連れて行こうとしたんだよ。結局仕事で外せないから戻ることになったんだけど、元気をもらったね。あの人は本当に自由な人だからすぐにそういう事を行動に移せたんだよ」と粋なエピソードも飛びだし、会場を湧かせた。

50作まで続いたことについて予感があったのとかという質問については「予感は無かったけど、毎回当たるもんだから4作も続いて『望郷篇』で終わらせる気で臨んだけどここまで続くことになったんです」と、27年に渡る長寿シリーズのスタートを振り返った。

イベントの最後に山田監督から「今日はこの催しにこんなに来てくれるとは思ってもいませんでした。50作目を是非楽しみにしていただければと思います。」という50作目への期待をふくらませるコメントで締めくくられて、イベントは和やかなムードで幕を下ろした。

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