【三池崇史×椎名桔平が24年前を振り返る!】『新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争』トークイベント

『新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争』
これぞ三池!記念すべき劇場映画デビューを飾ったピカレスク・バイオレンス!あらゆる犯罪のるつぼ・新宿歌舞伎町で勢力を伸ばすチャイニーズ・マフィア“龍爪”。彼らを追う新宿署の一匹狼・桐谷は、警官刺殺事件の捜査を続ける中で、弟の義仁が“龍爪”に関わっていることを知り愕然とする。

【以下プレスリリース文掲載】

デジタルシネマにフォーカスし、“若手映像クリエイターの登竜門”として次代を担う新たな才能の発掘を目指す「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」(開催中・7月21日(日)まで)では、「トップランナーたちの原点」と題し、世界に名だたる巨匠4監督の貴重なデビュー作を特集上映!

本日7月17日、日本を代表する映画監督である三池崇史監督の劇場映画デビュー作『新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争』の上映が行われ、三池崇史監督と本作が劇場映画初主演だった椎名桔平が登壇してトークイベントを開催しました。

『新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争』は、1995年の公開当時、東京では新宿シネパトスでわずか2週間のみ公開され、その後現在に至るまでスクリーンで上映されたことのほとんどない、三池崇史監督の幻の劇場用長編デビュー作。トークイベントでは、今年の本映画祭国際コンペティションで審査委員長を務める三池崇史監督と、椎名桔平、そして『新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争』のプロデューサーであり、現在は本映画祭ディレクターを務める土川勉の三者が、製作から公開に至るまでの当時の思い出を振り返りつつ、今や海外でも高く評価され、日本を代表する映画監督である三池崇史監督のキャリアの出発点となった同作の制作秘話などを語りました。

〇三池監督はたった今『新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争』をスクリーンでご覧になったばかりということで、デビュー作をご覧になったご感想は?

三池:今と変わらないな、というか進歩していないというか。面白いものを撮りたいんだ、というエネルギーがあって。新宿を舞台にしているんですが、最新作も新宿で撮っていて、同じ街でもこんなに気配が変わったんだなと不思議な感じがあった。久しぶりにフィルムでの上映で、良い意味でのフィルムならではの劣化というか。デジタルでいつまでも美しく残るというのも意義のあることではあるんですんが、もうすでに我々はフィルムの時代にはシステム的には戻れないんですよね。だからこれはもう過去の遺物として少しずつ劣化していきながら、その劣化が尊くなるという。

〇『新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争』の企画のスタートは?

三池:それまでもVシネは何本も撮っていたが、最初から劇場公開するということで作った映画としてはこれがデビュー作。当時から新宿には様々なアンダーグラウンドな人があふれていたけど、新聞やテレビだけの情報で生きている人からしたはそれはもうファンタジーの世界ですよね。もう今ではすでにヤクザものなんていうのはファンタジーになっていますが、当時はまだヤバい気配があった。許可を取らずに勝手に撮ってますからね。何かあったら「逃げろ!」というようなね。そういう時代でした。

〇この作品を作ろうというテーマはすぐに決まった?

三池:テーマというのは、結局は方便なんですよ。ただ、映画のテーマって、大げさに言ってしまうと生きていることと同じで、どうして今自分はここにいるんだろう。自分が生きている意味ってなんだろう。というものにカメラを向けて、だからどんなにファンタジーなものを作っても、いつも現実の方が飛び越えてしまう。だからあまりジャンルというのは関係ないんですよ。コメディであってもミュージカルでも、世界中どこでも実はテーマは一緒っていう。だからテーマははじめからそこにあるはず。テーマのために作るのではなくて、作るとそこにテーマがあると思います。そのためには、キャスティングとか色々と武装しなければいけない。だから僕ら当時作ってて衝撃でしたよ。当時の椎名桔平のヤバさっていうのは。今はだいぶ丸くなったけどね(笑)

椎名:24 年経ちましたからね(笑)

〇椎名さんを主役にしようということになった決めては?

土川:まずはカッコいいことですよね。それと、次には、三池監督のアクションに耐えられるかということ。全力疾走で走れる役者さんはそうそういない。それと前から僕は椎名さんの品のある芝居が大好きだったんですよ。

〇椎名さんははじめにこの作品の脚本を読んだときのことは覚えていますか?

椎名:正直覚えていないんですけど、24 年前、31 歳で。昨日僕もDVD で24 年ぶりくらいにこの作品を観まして。「この時こう言ったな」とかついセリフを覚えてたりするんですよ。ロケで台湾に行った時のこととか思いだしたりして。ひとり酒が美味しかったなあなんてね。残留孤児2 世という設定の役で、まじめな一面とそうじゃない一面が混在している非常にやりがいのある役でしたね。予算も少なかったと思いますが、撮影は大変でしたからね。新宿で朝7 時くらいから何度も走って、本当に吐きそうになってましたから。車を追いかけるわけですからね。大きな経験をさせてもらった映画でしたね。

〇今村昌平監督もこの作品をご覧になったと。

三池:今村監督の助監督をしていたんですよ。今村監督が唯一観た僕の映画じゃないかな。あの人手ごわいんですよ。なかなか宣伝になるようなコメントも言わないんだけど、エレベーターで帰りに見送ったときにね、「面白かったよ」って言ってエレベーターのドアが閉まっていったんですよ。いやなオヤジだなあ~(笑)って思い出がありますね。昨日のことのように思い出しますね。

〇撮影も大変だったということですが。

三池:皇居前のロケなんで許可取らずにやってましたからね。迷ったら、『やっちゃえ』という時代だった。歌舞伎町でも僕らが車で走って撮影してても誰も気づかないけど、その後ろを椎名桔平が走ってたらね、そりゃみんな「あ、椎名桔平だ!」と驚くわけですよ。吠えながら車追っかけてるんだから。カットカットはほぼ一発でいけてたと思うんですけど、カット数を重ねてるんでね。そりゃ短い時間では無理なわけですよ。交通量の問題とかね。でもそういうのも含めて魅力がある。エッジが立ってたんですよね、「やべぇなこの男」っていう。当時ナンバーワンでしたからね。

椎名:自分ではあまり思ってないんですけど、でも何年か経って、三池組に参加したときに、若い俳優さんたちに監督が「この男はやばいんだから」って言っててね。「もうみんな知らないんだからやめてくださいよ」みたいなね、そんなこともありましたけどね(笑)

三池:やばくても、そのやばさを持ったまま居られるのが映画業界だったんですよ。セットの裏でケンカしてるようなね。それはいけないことなんだけど、単なる娯楽を作って、というのとはちょっと違う世界だった。なんにもなくて、作ってる段階ではどこで見せるかなんてのもなかなか決まらないわけですよね。そういう中から「これを見ろ!」みたいにこじ開けていく。そのためには広く支持してもらえるものよりも、「こんなの最近ないよね」って思ってもらえる狭いところに向けて直接ぶつけてた。それはもしかしたら自分自身にだったのかも知れない。気合がいる世界でしたよね。でも楽しんでた。

椎名:このころの時代の持つ良さは確実にありますよね。今は、テレビほどではないけど、映画も奔放にできない状況をどこか感じてますから。そういう閉塞感がどこかあるんだけど、最近ネットフリックスとかの作品に出ると、本当にリミットなくやれちゃうっていうね。世界配信同時にしちゃうわけですから。それが「映画」なのかっていうのはまた違った論点になるんですけど。僕ら役者からすると、そういったものから影響を受けて、感化されて、映画がもっと自由な方向に向かうとすれば、やっぱりこのころの自由さが土台になるというか、そうやって時代と映画っていうのが変わっていくんだろうなと思いますね。その時はまたぜひ三池監督とご一緒したいですね。

三池:椎名さんは(人柄が)だいぶ丸くなったんで(笑)。でも丸くなったふりをしてるんですよね(笑)。丸くなきゃ受け入れてくれない人に尖ったところを見せる必要はなくて、生きるすべとして爪を隠すんですよ。でもそれは鈍ってなくて、いざというときに「いけ!」といったらガッと行ける。その瞬発力はまだまだ持っていると思いますよ。今の日本の若い俳優たちには、海外の映画とかドラマが憧れになっているのが残念に感じますよね。

〇尖った椎名さんと三池監督が再び組むこともありそうですね。

三池:甦らせるかもね(笑)。

椎名:ぜひ甦らせてください(笑)。

〇当時、劇場公開初日のことは覚えていますか?

三池:映画館でローリングタイトルに自分の名前が出るのは、信じられないくらいの、非常に不思議な体験でしたよね。ワクワクしながら、でも不思議な。夢っていうと甘いんですけど、それされもフィクション、映画の延長のような感覚でしたね。

椎名:この2~3年前までずっとアルバイト生活でしたからね。よほどうれしかったと思いますよ。新宿の映画館にかかった初日は。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019(第16回)開催概要
■会期:2019年7月13日(土)~7月21日(日) <9日間>
■会場:SKIPシティ(埼玉県川口市)
■内容:国際コンペティション、国内コンペティション、特集上映、関連企画、イベント等
■主催:埼玉県、川口市、SKIPシティ国際映画祭実行委員会、特定非営利活動法人さいたま映像ボランティアの会
■公式サイト:www.skipcity-dcf.jp

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