映画『乱暴と待機』インタビュー特集 奈々瀬役 美波さんにいろいろと聞いてきました!

いよいよ10月9日(土)から公開となる映画『乱暴と待機』。奈々瀬役で強烈なインパクトを与えた美波さんに、演技や映画制作現場での雰囲気等をインタビューしてきました!




※映画『乱暴と待機』インタビュー特集の第二弾として、公開直前の10月7日には番上あずさ役の小池栄子さんのインタビューを掲載予定です!



編集部:美波さんの映画デビューは『バトル・ロワイアル』ですが、もともと俳優志望だったのですか?CMで拝見する機会が多いので、モデルさんというイメージが個人的には強いのですが。




美波さん:「小さい頃から映画を観るのがすごく好きで、可哀相な役とか、哀しい物語の中に入ってお芝居をしてみたいと思っていました。それで今の事務所にスカウトされて、『バトル・ロワイアル』でデビューしたんです。ある化粧品のCMをやってから、雑誌のお仕事は増えたんですけど、あまりモデルという意識はないですね」



編集部:たまたま結果としてモデルとしての仕事も増えたという感じですか?



美波さん:「そうですね。だってそんなに背も高くないし、グラマーでもないし、私はそんな風に思ったことがないから(笑)。日本って、ハーフだからモデルっていう意識なのかもしれませんね(笑)」



編集部:そういえば、ちょっと昔の話になってしまうのですが、「クロックタワー3」というゲームでも深作欣二監督ともお仕事されていますよね。このゲームの主人公のキャラクターの”モデル”をやられたと聞きましたが、深作監督はどんな方でしたか?



美波さん:「面白い経験でした。金髪のかつらを被ったりして、自分の顔がゲームになるなんて不思議だな~と(笑)。深作監督とは今は亡きジュリアナ東京のイベントの待ち時間にお会いしました。その時、私は中学生だったと思いますが、監督に映画を撮り始めたきっかけを伺うと、「フィルムの回る音が好きなんだ」とおっしゃっていて、とっても(映画への)愛に溢れた素敵な方だなぁと思いました」



編集部:深作監督は、演技をつける ときはどんな感じだったんですか?



美波さん:「『バトル・ロワイアル』では、過去のシーンに登場する生徒役で撮影は1日だけだったのですが、監督は絶対に妥協しない方でした。本当に映画に対して情熱をそそがれていて、愛とパワーがすごいって思いました。だから私も一生懸命全力でやろうと思いました。予算や時間の制限がある中で“こだわり”というのは監督それぞれ違うと思うんですが、情熱・愛・パワーは今回ご一緒した『乱暴と待機』の冨永監督に対しても感じました。だから、私も本当にすべての力を入れ演技したい、この映画がよくなってもらいたいって思いました。」
編集部:映画が始まって、最初に美波さんが演じる奈々瀬が登場するシーンですが、本当にびっくりしました。まさか、あのやかんの音と一緒に・・




美波さん:「粗相しちゃいます(笑)」



編集部:あの件は最初から監督のプランだったんですか?それとも現場でどうやったら面白いかっていう話をして決まっていった んですか?



美波さん:「まず、一番注意したのは、”面白く”したくなかったんです。そのことに一番気をつけて演技を組み立てていきました。わざと“笑い”を狙うということは避けるようにしました。この映画のすごいところは、“笑うための映画”じゃないところ、でも笑っちゃうけれど(笑)。“笑い”を追及するのではなく、ギリギリな“interestingな面白さ”を撮影に入る前からずっと監督とディスカッションしました。どこまでやっていいのか、逆にやりすぎなのか。演じる上で形からではなく、奈々瀬の心情から、彼女はどのような行動・振る舞いをするかという骨組みを作っていきました。ですから、監督からはかなり細かい指導がありました(笑)。
奈々瀬が最初に登場するシーンは、台本に「奈々瀬が“もじもじ”する」って書いてあったので、思い切り“もじもじ”しました。私の中では「アリだな」と思っていたのですが、モニターでそのシーンをみて「あ、これはないな」と思い、撮り直しさせてもらってあのシーンになったんです。
演じる上で気持ちの無理をせず、その中でどこまで冒険できるか、更に監督との意思疎通を図りながらやっていったので楽しかったです。
 (小池さんが演じる)あずさとのシーンもそうだけど、その瞬間瞬間で、キャッチできるものはキャッチしようと思って演技したところは結構ありました。それは監督との会話を”密に”してなかったらそういう演技は出来なかったと思います。監督の中でも奈々瀬像っていうのは完璧には固まってなかったと思うんです。でも決してズレてはいけない、ブレてはいけないという考えを、監督も私も持ってお互いに話しあって、どういった方向性で作っていくかっていう風なやりかたでした」



編集部:美波さんは、今まで様々なドラマ や映画、舞台で演技されています が、演技されるときってどんな感じなんですか?自分である程度役を作ってそれを主張するタイプですか 、それとも監督から求められたものに対して応えていくタイプですか?



美波さん:「役者として、求められたものに応えるということは、それなりのキャパシティー・準備がないとできないと思います。でないと演技に”無理”が見えてしまうというか」



編集部:(自分に)無いものを出した演技をする と無理が見えると。



美波さん:「無理しか見えないし、一生懸命にしか見えないと思います。私は、その役が何でこういう行動をとって、どういう暮らしをしてきたからこういう言葉になってと・・・いうことが気になるんです。
テストの時に、自分で作ったものを発表して、でも、周りから「これはこうなんじゃない?」って意見があったら、あ、じゃあやってみるかって演ってみます。でも、この心理ではちょっとそれは違うなって思ったときにするディスカッションがすごく楽しいんですよ(笑)。 監督が何を求めているか、「確かにそれはその通りだと思います」というパターンがある一方、役者さんとのコミュニケーションで生まれていくものもあるので、演じる側に何にもなかったらやっぱり”話にならない”気がします。
ただ固まったものを出しましたっていう演技はしないです、面白くないので。それに、そういう演技って自分の役に対しても失礼な事だと思います」



編集部:それは、自分で考えながら周りともディスカッションしながら、どんどん役を膨らましていくっていうことでしょうか。



美波さん:「そうですね。でも基本的には一人の作業というか、やはり最初に(役を)作る責任が役者にはあると思います。そのあとに、どうやったらいいか、というのはディスカッションで。例えば、ズボンを作ったことのない人には、ズボンを作ってくださいって頼まないでしょう?この糸を使うとほつれにくいとか、ちょっと遊びでこういう糸を使ったほうがいいとか、そういう知識や引き出しをいっぱいもってる人に頼みますよね。やっぱりそれだけの責任を持っていなくちゃいけないと思うから。役を演じるっていうことも同じ事だと思います」



編集部:この作品では登場人物が美波さん含め、ほぼ4人だけですが現場はどうでしたか?




美波さん:「4人というのに監督もこだわっていました。登場人物が4人しかいない世界で、掘れば掘るほど、そのネチョーっとした所が見えてくるんですよね(笑)。自分のエゴというか、恥ずかしい所や、なんかもどかしい所とか(笑)。
結局、奈々瀬は(山田さん演じる)番上さん、(小池さん演じる)あずさ、(浅野さん演じる)山根=お兄ちゃんとしか喋っていないので、そこにしかキーワード=判断材料が無くて。奈々瀬像を形づくる”客観的な目線”というのがこの3人しかない、そこがすごく楽しめました。10人のキャラクターがちょっとずつ喋った会話みたいに、ちょこちょこと引き出すのではなくて、3人だけからの奈々瀬に対する憎悪だったり、愛だったり、性欲だったりっていうのがすごく濃厚なんですよ。なんだかすごいワールドになったと思います(笑)」



編集部:奈々瀬の役をやられてどうでしたか ?劇中で、彼女の行動原理は、あまり説明はされていませんが。



美波さん:「私はあまり役の説明をしないほうがいいと思っています。理由付けをしたら簡単ですけど、理由付けをしてさっき言ったような「作った物を出す」ということはしたくないので。理由を付けるとそれ以外の動きができなくなってしまう気がして。ただ、ルールは作ります。具体的な説明はせず、行動の結果までの通過点の理由を作るんです。自分の解釈の中でその結果まで到達しやすいポイントだけを押さえるようにしています。今回の奈々瀬役では「誰からも嫌われたくないと思う」などというルールを設定して演技に臨みました。
理由を追求するのではなく、もっと他の部分を追求した方がいいと思っているんです。奈々瀬が番上さんに対して抱く感情(嫌われたくないから気を使う。なのに、その行動がまた嫌がられるんじゃないかと気にしてしまう)こそが彼女のルーツで、そこに“理由”を加えてはいけないと思っています」




編集部:これから観る方に、この作品のここを観てほしいというところをお願いします。



美波さん:「登場人物4人の、不器用さ、滑稽さ、人間として個人として隠しておきたい物が出ています。観ている皆さんは笑ってはいるけど、自分にも思い当たる節がきっとあるはず。隠してるでしょ?って思うんです。そういった部分がすごく”露出”してる映画だと思います。笑っているけど、自分にも当てはまる部分があるんだよって、笑えないんだよって。そんなことを濃密に、濃厚に描いていると思うので、それを楽しんで欲しいです」



編集部:ありがとうございました

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『乱暴と待機』 10月9日より公開



<ストーリー>

木造平屋建てが連なる市営住宅。“兄妹”でもないのに、2段ベッドが据えられた狭い部屋で暮らす英則と奈々瀬。その近所に引っ越してきた番上と妊娠中の妻・あずさ。挙動不審な奈々瀬に興味を持った番上は、言葉巧みに奈々瀬を誘い、乱れる。夫と奈々瀬の浮気現場を見つけたあずさは、包丁を片手に暴れる。人に嫌われないように怯えて暮らす奈々瀬は、今日もスウェット姿で“お兄ちゃん”が“復讐”を思いつくのを待つ。毎夜、天井裏から奈々瀬の姿を覗きながら、英則は“この世で一番凄い復讐”の機会をうかがう。“覗く・覗かせる”関係に変化が訪れたとき、英則と奈々瀬は語る。「・・・俺と離れたくないか?」「・・・めんどくさくても大丈夫、って言われたかったですよあたしは!」二人が見つけた“絆”とは―

<出演>
浅野忠信
美波
小池栄子
山田孝之
<スタッフ>
監督・脚本・編集:冨永昌敬
原作:本谷有希子「乱暴と待機」メディアファクトリーダ・ヴィンチブックス刊
製作:『乱暴と待機』製作委員会(メディアファクトリー、キングレコード、ショウゲート、ソニー・ミュージックコミュニケーションズ)
配給:メディアファクトリー、ショウゲート
宣伝協力:アニープラネット
2010/日本/カラー/ヴィスタ/DTSステレオ/97分/PG-12
[公式HP
 (c)2010『乱暴と待機』製作委員会

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