『劇場版 機動戦士ガンダム00』水島精二監督インタビュー!!




賛否両論でザワザワしている『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』ということで水島精二監督にインタビューしてきました!!水島監督!応援してます!!




今回の劇場版のアイディアは、TVシリーズを制作する前から決まっていたことなのでしょうか。



TV版をやりましょうとサンライズさんから依頼があった時に、僕がやってみたいものが二つありますと。そのうちのひとつが今回の劇場版のベースになっています。人と人との戦争や諍いというものは語り尽されていると思うので、せっかく僕みたいな”ガンダム人脈”以外から呼ばれた人間がやるのであれば、”チャレンジ”をするというのがひとつの目的だろうと。そこで、いわゆる地球外にいる知的生命体とのファーストコンタクトものはどうだろうかと。そこで”すれ違い”によって起きる戦争というのも、戦争のひとつの形だしコミュニケーションという大きなテーマとしては同じではないだろうか。という話をしました。
ただ、このアイディアを話す時に「宇宙人と戦うガンダムはどうよ?」みたいな感じでしてしまったので(笑) 「火星人みたいのがでてくるんですか?それは面白いですね」ってちょっと冷たい眼で言われまして(笑) 「それでしたら監督のもうひとつのアイディアでおっしゃった、大国間による戦争ではなく、どこに諍いの種が落ちているのか分からないような現代を反映させた作品のほうがいいじゃないんですか。やっぱりガンダムは人 対 人ですよ」と言われたんですよ。
それでTVシリーズが始まったんですが、1stシーズン2ndシーズンと番組が続いていく中で、「ソレスタルビーイングの創始者であるイオリア・シュヘンベルグが掲げる”人類が宇宙に進出する時に諍いの種を持って行かないよう、みんなが平和というものを携えて宇宙に出るべきである。”という理念が、いつか実現するであろう”地球外生命体との対話”という彼の大きな夢のための布石であった。というような流れにつながっているよね」という話になった時に、それだったら、これを、TVシリーズの後に”本当にファーストコンタクト”しちゃう話ってありですよね!ということを脚本家の黒田くんが気付いてくれたんですよ。僕はそれを聞いて「なるほど!これだったら映画くらいの規模でやるのであれば面白いんじゃないか」と思って俄然やる気がふくれあがりました(笑)
そういったやりとりが、劇場版をやりましょう!と言われる前までの段階で、その2ヶ月後くらいに映画化、もしくはTVシリーズの続編化でという提案をされて、「やりますか?」という話があって「是非映画でやりたいです!」と答えて映画化が動き出したという感じです。






ガンダムシリーズは昔からよくご覧になっていたんですか?



1stガンダムは、ちょうど中学から高校にあがるくらいだったので、実はTVシリーズはほとんど見逃していていまして(笑) 最終回一本前くらいの「あれは憎しみの光りだ!」とか(笑) 「何がーっ!?」という感じで(笑) そんな感じで最終回を迎えて内容が全く分からないという。でも、実はこれがきっかけでアニメを観るようになりました。
ガンダムのことを知りたくて友達の家に行ってアニメ誌のバックナンバーを読んだりして、他にもいろんなアニメがあることを知って、多くのアニメを追いかけるようになりましたね。
僕が専門学校1年の時に「機動戦士Zガンダム」が始まったんですけど、実は友達と遊ぶほうが楽しかったりとかしてあまりガンダムを観ていなんですよ。あとカミーユが僕は駄目で(笑) 最近、改めてZガンダムを観直してすごく面白かったんですけど、当時、20歳そこそこの僕はその面白さが分からなくて(笑) とにかく観ていなかったですね。あとは業界に入って、一緒に仕事している仲間が参加しているからとかそういう理由でいくつか観ていましたけど、シリーズ通して観たのはOVA「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY」とか「∀ガンダム」くらいですかね。どちらかというとガンダムは”薄い”ほうでした(笑)



どういう経緯で「ガンダム00」の監督の依頼がきたんですか?



サンライズに池谷さんという若いプロデューサーがいまして。次の新しいガンダムをやれと会社から指示されて、その時に彼がサンライズにいる演出家ではなくて自分の興味がある人を呼びたいと。会社としてもそういうムードがある時期だったらしくて、それが理由で誘われたようです。とにかく、お話しをいただいた時はビックリしました(笑) サンライズの中にもっと向いてる人がいるんじゃない?という話をしたら「それでは面白くないので、是非、外で活躍されている方とやりたいんです」と言っていただいて。






この「ガンダム00」では戦争というものをリアルに描いていますが、戦争をアニメで描く際にどういった点を注意されましたか?



実際に僕らが例えばアフリカに行ったとか、中東のほうに行って少年兵を見てきているわけではないんですが、現実問題として、ちょっと自分がそのことに対して興味をもって調べると、いろんなソースから現実に起こっている世の中の出来事って見えてきますよね。今、ものすごく情報が溢れていて、その中から取捨選択して自分で何を信じるかというのも”受けて側”のある程度力量に掛かってきている中で、戦争を描く、つまり、フィクションの世界といえども世の中で起こっていることを映し出すということは、特にガンダムという戦争を描くという”命題”がある作品では、いわゆる大国の戦いではなく、もっとそれよりも小さい所で起きている情報を拾い出して描いたほうが適していると思いました。戦争というものを100%伝えることはなかなか難しいとは思うんですけれども、でもその努力はするべきだろうと思って、裾野を広く、描くべきことを拾いにいったというのはありますね。実際、ガンダムという作品で戦争というものに初めて触れる子たちもいるので、そこをにらんであまり類型的ではない、なるべく他の作品では見せていないものを見せていこうという狙いもありました。主人公の刹那が、ああいったバックボーンを背負っているのも正にそれで、本来であれば、物語の主人公って感情移入しやすいようなキャラクターを設定すべきだってことは勿論分かっているんですけれども、それをあえて分かりづらい、でも逆に興味を持ってもらいたい対象として据えてって考えていったのも、今言った理由からですね。



このガンダム00の脚本・シリーズ構成を黒田さんが全て担当されているとなっていますが本当ですか?



本当です。



こういったことはよくあるんですか?



一人で全部を書くというのはなかなかないです。TVシリーズをやっている間、レスポンスが早くできるように僕と黒田くんは同じ部屋にいたんですよ(笑) 他のスタッフが2階にいるんですけど、僕らだけは4階の、本当にマンションの一室に二人で。
彼はヘビースモーカーで、僕はタバコを吸わないので、分煙の為に部屋は分かれていたんですけど(笑) 何かあればすぐに話せるような環境にいたので、実際、シナリオだと5・6稿書いてもらってますけど、会話で交わした改稿はもっといっぱいありました。それでも彼が苦手な傾向のお話とかあるので、僕のほうから他のライターを入れようよって提案しても、彼は頑として言うことはきかず(笑) 「いついつまでに上げますので、それでチェックしてください。そのスケジュールが守れなくなった時には監督に従います!」って言って、がむしゃらに原稿を上げてくるんですよ(笑) なので、一日くらいズレても「そこまでやってくれてるんだったらもういいや、じゃあ頑張ろう!」みたいな感じで乗り切りましたね(笑) すごい熱意でした。一人で書ききりたいという熱意が。






黒田さんとお仕事をされていかがでしたか?



彼の面白さは、分かりやすさというところと、彼の方向性というのは2ndシーズンで強く出ていると思うんですけど、シンプルなんですね。僕は割と複雑に色んな考え方を入れたいんですけど、彼は非常に少年漫画的なんで、1stシーズンでは、むしろ僕がそれをブレーキをかけ過ぎてしまった部分がありました。じゃあ2ndシーズンではもっとドライブをかけて、突っ走っていこうみたいなところがあって、2ndシーズンは対立構造もハッキリしているので、その中で黒田くんの力がなるべく良い形で出るようにしようと考えながら進めていきました。



TVの1stシーズンと2ndで雰囲気が違うのはそういった理由もあったんですね



1stシーズンの途中から黒田くんのテイストが掴めてきて、僕がこうやりたいと言っていることを描くために、彼としてはやりづらいことをしてもらった部分があったりして、じゃあそれがこの作品にとって必要なことかっていうと、そこはもっと黒田くんと合う形で作品を作っていったほうが絶対に面白くなるので、そこの部分でちょっとづつ修正をして、お互いに自分の考えていることをフィルムにいい形で定着するようにバランスをとっていきました。「ガンダム00」は、黒田くんの他の作品とちょっと違いますし、フィルムの個性になったんじゃないかなと思います。




ガンダムマイスターの中ではどのキャラが好きですか?



一番好きなキャラは、やはり刹那ですね。やはり自分がこの作品で一番チャレンジしてみたかった想いを一番具現化しているキャラクターですし、すごく扱いが難しくて苦労させられたキャラクターでもあるんですよ。後半に行くに従って自分が望んでいた主人公像になっていってくれたので、成長が描けたという部分ですごく役者の宮野くんを含め自分の中では大きなキャラクターになりましたね。



水島監督はこの「機動戦士ガンダム00」や「鋼の錬金術師」(2003)など痛々しくてすごく辛い作品を監督されている一方で、「はなまる幼稚園」のような和み系のものも監督されていますが、監督の作風がどちらのほうなんですか



僕は組む人によって色が割と変わる傾向がありますね。例えば「はなまる幼稚園」みたいな作品をやる時に、原作の持っている”ほんわかさ”を活かしつつ、作品に”骨”をちゃんと入れようと思った時に選んだライターが小黒さんで。彼はマニアックな方なので、例えば幼稚園や保育園に関して調べて書いてきてくれるんですね。だから小黒さんのそういう部分を含めてキャラクターの成長劇を書くんだったら、”ほんわかな部分”はこちらで足していけば、こういう風に出来あがるんじゃないかって”ひな形”みたいなものを思いついたりとかしました。
「鋼の錬金術師」も最初にオファーがあった時に原作を読んで、これはすごく生々しくするべきだと。夕方の6時という時間帯に観てもらうということは、主人公の痛みというのが伝わらないといけないから、その痛みを書ける人、この作品世界を共有した時に僕よりもその世界を強く印象づけられる能力を持っているライターは誰だということで會川さんを選びました。彼とはいつもそういう痛みというか、世の中にある不条理ともいえる出来事、でも、そこに向かっていかなきゃならないというような話をよくしていましたし、そう思って進むんだけれどもやっぱりなかなかうまくいかないというのを、彼はドラマの中にうまく落としこむタイプなので、じゃあ彼とやろうと。
「ガンダム00」に関しては、池谷プロデューサーが水島さんと黒田さんが組んだ作品を観てみたい!(笑) っていうのが最初にあって、じゃあ黒田くんと”いかにうまくやるか”そして黒田くんの味を”どうやって出すか”ということを念頭に進めていったら、それが自然と作品のカラーになっていったという感じですね(笑)



今回の劇場版のラストではかなり思い切ったことをしていますね。今までのガンダムシリーズとは違ったことをやろうという狙いがあったんですか?



ありますね。ただ、僕自身がガンダムを全て観ているわけではないので、割と自分の描きたい結末、それから若い人に作品を観てもらいたいというのがあるので、夢のある終わり方、人間を信じて終わるような感じにしたくてやったんです。でも、今回の映画のラストシーンを提案してそれが出来あがっていく過程で若干弱気になり(笑) 「本当にこんなハッピーエンドにしちゃってよかったのかなガンダムで」と言っていたら、ガンダムが好きなスタッフが「何を言っているんですか。こんな明るい未来を提示している終わるガンダムは今までないんですから。しかも監督のやりたいって言ったことなんですから自信をもってくださいよ!」って逆に発破をかけられました(笑) 
人類が進化するって言うと大袈裟なんですけど、各々が”平和”というものをきちっと考えて、諍いや戦争を回避しようという想いをしっかり持っていれば、平和な世の中は作れるんじゃないかなと思っています。もちろん、難しいというのは分かっていますけど。



最後の質問です。もし、もう一度ガンダムを監督できるとしたら、今度はどんなテーマでやりたいですか?



今度はもう少し戦争ものとしてのテイストを睨んで、その中での悲喜こもごもな部分を描いてみたいなと思います。今回はSFだったりファンタジー的な要素がベースにあったりしたので、地に足のついた、もっと生臭いものをやってみたいなと思います。



これから『劇場版 機動戦士ガンダム00』をご覧になる方にメッセージをお願いします。



ガンダムという30年培われてきたコンテンツだからはじめてできる、ガンダムらしからぬ”ガンダム映画”だと思います。ガンダムというものが30年の間にどういう”幅”ができたのかというのを確認してもらえたりすると、古くからのガンダムファンの人は「なるほどね」と思っていただけると思いますし、初めてガンダムに触れる人も、ちょっとパニック映画的なノリも用意していますので、それだけでもワクワク観れるんじゃないかと思います。是非、劇場まで足を運んでいただけた嬉しいなと思います。
『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』
9月18日(土)より全国ロードショー

監督:水島精二 副監督:角田一樹 長崎健司 名取孝浩
脚本:黒田洋介 キャラクターデザイン:高河ゆん 千葉道徳 
メカニックデザイン:海老川兼武 柳瀬敬之 寺岡賢司 福地仁 鷲尾直広 中谷誠一
音楽:川井憲次 企画・制作:サンライズ 配給:松竹
    
CAST
刹那・F・セイエイ 宮野真守
ロックオン・ストラトス 三木眞一郎
アレルヤ・ハプティズム 吉野裕行
ティエリア・アーデ 神谷浩史
デカルト・シャーマン 勝地涼
[公式サイト]
(c)創通・サンライズ・毎日放送

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